システムベンダブリーフィング

システムインフラベンダ ブリーフィング(8)

米ネクサンが狙うストレージ市場の空白とは?


三木 泉
@IT編集部
2009/5/12

国内市場に新たに進出してきた米ネクサン・テクノロジーズ。サーバ仮想化で市場のダイナミックな変化が期待できるiSCSIストレージをはじめとしたネットワーク・ストレージで攻勢をかける。高密度で省電力、コストパフォーマンスの高さが特徴だ

- PR -

 ネットワーク・ストレージ製品ベンダの米ネクサン・テクノロジーズ(Nexsan Technologies)が、日本市場の本格的な開拓を進めている。

 2008年12月には、ファイバチャネル/iSCSIストレージ「SASBeast」を世界に先駆け日本で先行発売した。これは、高密度なSAS/SATAディスクドライブの混在と、省電力性能を特色とした製品だ。さらに2009年4月には、同社のストレージ製品をiSCSI接続する統合的なコントローラとしての役割を果たし、レプリケーションやスナップショットなどの機能を付加する製品「Nexsan iSeries」を投入した

 以下は、米ネクサンCEOのフィリップ・ブラック(Phillip Black)氏へのインタビュー内容の抜粋である。2008年12月と2009年4月に行った取材の内容から、編集部で構成した。太字は編集部による補足である。

 SASとSATAを1台に混在させ、使い分ける

 米ネクサンは、これまで米国と欧州でのビジネスに注力してきたが、これに続いて日本市場に焦点を当て、2008年後半に本格的な進出を開始した。

 経済環境が悪化しているが、企業がIT予算を削減していることからくる問題はあるものの、逆に顧客が価格に敏感になっていることは、手頃な価格で知られるネクサンにとって有利に働いている。不況の悪影響は、相殺されている。大規模なストレージベンダとだけ取引をしていたユーザー企業が、より小さなベンダとも話してくれるようになった。コスト・パフォーマンスが高いことを理解してくれているからだ。

従って当社は、予算の削減などはしていない。世界第2位の経済で、当社にとって戦略的に重要な日本市場に対する投資も増やしているところだ。株式上場に向けた準備も進めている。

 2008年末に発表したSASBeastは、最大42ドライブを搭載できる密度の高さが特色だ。さらに1台のシャーシに、SASドライブ群とSATAドライブ群を双方配置。単一のソフトウェア・アプリケーションで、SASドライブの性能の高さと、SATAドライブの容量の大きさを使い分けるような用途をいち早く開拓していくという。

 アプリケーションがそのメタデータには高速にアクセスし、データ本体へのアクセスはそれほど速くアクセスできなくてもいいという利用形態は、当社がSASBeastで一番早く対応する。電子メールアーカイブなどでは、検索は高速にしなければならないが、電子メール・データ自体へのアクセスはほどほどに速ければいい。医療画像やカルテもそうだ。当社はこのような新たな用途にいち早く対応したいと考えている。EMC(のような大きなベンダ)ではないからだ。

 SASとSATAを別のシャーシで構成すると、全体としての価格が高くなってしまうし、スペース効率も悪い。しかし、当社の製品では同一のコントローラをSASドライブ群とSATAドライブ群で共用することができる。従って、非常に高価なRAIDコントローラ、そして電源装置のコストをより多くのドライブに分散できる。

 多くの人々が、このような階層的なストレージ利用に興味を示し始めている。数年前は、例えば14本のSASドライブで提供できる容量はたいしたものではなかった。現在では450GBのSASドライブ14本ならかなりのデータを収容できる。SASBeastのようにSAS/SATA混在で最大42ドライブを搭載できれば、1台のシャーシで大量の情報が収納可能だ。ほとんどの中堅企業には十分なレベルだと思う。

 SASBeastでは、この混在ドライブ構成で、異なる特性を持った複数のLUNを提供する。例えば高性能を要求されるLUNはSASドライブで構成する。そしてアプリケーションから、高速だが高価なSASドライブのLUNに書き込みたいか、より低速なSATAドライブのLUNに書き込みたいかを制御できるような世界が望ましい。

 当社では「Assureon」というアーカイブストレージ製品も提供している。この製品では、自動的に高速なLUNと低速なLUNを区別して使い分ける機能を提供している。

 ハードウェア的な柔軟性や拡張性を確保しながら、ソフトウェア的な機能の充実を図ろうとしているネクサンだが、ほかのストレージベンダとはどのように競合し、あるいは棲み分けていくのだろうか。

 ほかのストレージ・ベンダとどう棲み分けるか

 完全なストレージ・システムを販売しているベンダも、本当はハードウェアを外部から調達するソフトウェア企業であることが多い。こうした企業は当社のいい顧客になる場合がある。ファルコンストアはいい例だ。米国や欧州では、ファルコンストアのリセラーの多くが、重複除外や仮想テープライブラリ(VTL)を実現する同社のソフトと、ネクサンのRAIDシステムを組み合わせて販売している。

 従って、パートナーとしての関係を維持しているストレージ関連ベンダもある。シマンテックも非常に重要なパートナーだ。当社のリセラーの多くはシマンテックのリセラーとして「EnterpriseVault」、重複除外やディスクバックアップ機能を備えた「NetBackup」などを扱っている。当社はこうしたベンダの製品とともに利用できるハードウェアを供給する。

 いえるのは、ソフトウェアだけではできることにかぎりがあるということだ。当社のようなベンダのハードウェアを使わなければ、グリーンIT機能を使えない。

 一方、ネクサンも基本的なソフトウェア機能として、レプリケーションや仮想化の提供を進めている。長期的には、当社の提供するすべてのRAIDコントローラに、こうした機能を盛り込んでいくつもりだ。だからといって機能を何でも搭載するつもりはない。そうすると、販売チャネルで協力し合っている企業と競合してしまうことになるからだ。当社は販売チャネルをベースとする企業であり、そこにはおのずと役割がある。VARやリセラーに対して、完全なシステムを提供するための、ハードウェアとしてのビルディングブロックを提供することだ。

 当社の現在におけるOEM供給は、すべて業種特化型の企業を相手にしている。一般的なストレージベンダに対するOEM供給はしないと決めている。その理由は非常に簡単で、マージンの問題があるからだ。

 大手のOEMストレージ・サプライヤには、ザイラテックス、LSI、ドットヒルなどがあるが、このビジネスのマージンは低い。当社は、よりソフトウェアに力を入れた、よりマージンの高いビジネスをしている。当社は自社でRAIDコントローラの技術を持っているので、グリーンIT機能も搭載できた。

 デジタルビデオの市場ではOEM供給をしており、約60%のマーケットシェアを持っている。医療関連市場でもOEMビジネスをしている。しかしこれは業務特化型市場におけるビジネスであるため、高いマージンを確保できる。

 
1/2

Index
米ネクサンが狙うストレージ市場の空白とは?
Page1
SASとSATAを1台に混在させ、使い分ける
ほかのストレージ・ベンダとどう棲み分けるか
  Page2
iSCSIストレージ市場に生まれた新たな機会

Server & Storage フォーラム 新着記事
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

Server & Storage 記事ランキング

本日 月間