CloudStack 3.0の新機能CloudStackによるプライベートクラウド構築術(6)

CloudStackは、オープンソースベースのIaaSクラウド構築・運用ソフトウェア。使いやすく、機能が充実していることなどから、大規模なデータセンター事業者や組織での導入が相次いでいる。本連載では、このソフトウェアをプライベートクラウド構築に活用する方法を紹介する

» 2012年05月17日 00時00分 公開
[荒井康宏, 島崎聡史一般社団法人クラウド利用促進機構/シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社]

 すでに多くの導入実績があるCloudStackですが、2月末に新しいメジャーバージョンであるCloudStack 3.0がリリースされました。このバージョンではさまざまな機能の追加や修正が行われましたが、今回はその中でもCloudStack 3.0の特徴となっている変更点を紹介します。

新設計のユーザーインターフェイス

 バージョン2.2系の頃から使いやすいデザインや日本語表示への対応などが好評だった管理画面が、CloudStack 3.0では刷新されています。

 従来はゾーン、ホスト、ネットワークなどCloudStackの構成要素をそれぞれ別々のメニュー項目からリスト表示できましたが、CloudStack 3.0では新たに、インフラストラクチャのメニューが追加されています。構成要素の階層がグラフィカルに表示され、そこからそれぞれの管理単位のリストに移動できるようになっており、CloudStackの管理概念が理解しやすくなっています。また、管理の際に重要な情報を一覧表示するダッシュボードのデザインも見直されており、使い勝手が向上しています。

図1 インフラストラクチャのグラフィカル表示 図1 インフラストラクチャのグラフィカル表示
図2 新しいデザインのダッシュボード 図2 新しいデザインのダッシュボード

ユーザーに対するネットワークサービスの提供

 CloudStackでクラウドサービスを提供するにあたり、理解しておく必要がある概念の1つとして「サービスオファリング」があります。別の言葉に置き換えれば、サービスメニューの定義です。クラウドサービスの利用者が仮想マシンに割り当てられるリソースと価格を定義したオファリングと呼ばれる設定を、サービス提供者があらかじめ作成しておき、利用者は仮想マシンを作成する際に、定義されたオファリングの中から要件とコストを考慮したうえで、利用したいものを選択して組み合わせます。

 CloudStackには以下のオファリングがあります。

コンピューティングオファリング
仮想マシンに割り当てるCPU速度、CPU個数、メモリ容量などの定義。バージョン2.2ではサービスオファリングと呼ばれていた。

ディスクオファリング
仮想マシンのHDD容量(プライマリストレージ上に確保)の定義。

ネットワークオファリング
仮想マシンが利用可能なネットワーク機能の定義。

システムサービスオファリング
CloudStackが提供する仮想ルーターのデフォルトプロパティの定義。他のオファリングとは位置付けが異なり、仮想マシンで使用されたりユーザーに表示されたりすることはない。

 特にネットワークオファリングは、CloudStack 3.0で大きく強化された部分です。CloudStackはDHCP、 Source NAT、Gateway、 Load-Balancing, VPN、Port Forwardingなどのさまざまなネットワーク機能を標準で備えており、サービス提供者はこの中から必要な機能を組み合わせてサービス化し、利用者に提供できます。

図3 ネットワークオファリングの作成 図3 ネットワークオファリングの作成

 また、CloudStack 3.0では、ネットワークオファリングで選択可能なネットワーク機能の一部を、外部のアプライアンス(Citrix NetScaler、Juniper SRX、F5 BIG-IP)に処理させることができるようになっています。ただし、機器によって利用可能な機能は異なります。例えばCitrix NetScalerと組み合わせた場合にはロードバランシングとStatic NATの処理をさせることができますが、F5 BIG-IPはロードバランシングのみに対応しています。

現段階ではCloudStackから利用可能な機能はまだ限られますが、こうしたサードパーティ製品との連携もCloudStackの魅力の1つであり、今後も機能拡張が見込まれる部分です。

 なお、CloudStack 3.0全般やネットワークオファリングの詳細については、CloudStack管理者ガイドが参考になります。

CloudStack 3.0.1における変更点

 2012年4月にはマイナーバージョンアップであるCloudStack 3.0.1がリリースされました。バグフィックスが中心のリリースですが、以下の点が変更になっています。

対応ハイパーバイザの追加

 このバージョンから正式にCitrix XenServer 6.0.2、VMware vSphere 5に対応しています。また、初回構成時に利用可能なBasic InstallationウィザードでXenServerだけでなくKVMが選択できるようになりました。

ライセンスの変更

 CloudStackのライセンスは従来GPLv3でしたが、このバージョンからApache License 2.0に変更されました。

 いずれのライセンスも利用、修正、再頒布などを制限しないオープンソースライセンスですが、相違点としては、Apache License 2.0は二次的著作物に対して同一のライセンスを適用する必要がないため、二次的著作物にも必ず同一のライセンスが適用されるGPLv3に比べて、ビジネス利用を前提とした開発参加がしやすいという点が挙げられます。

 Citrix社はオープンソースのCloudStackを、CloudStack.orgの運営から、Apache Software Foundationによる運営に移行すると発表しています。これにより、Citrixだけでなく、他の企業からのコントリビューションも促進されると考えられています。

 その他、CloudStack 3.0.1で行われた変更・修正の詳細については、下記のリリースノートが参考になります。


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