企業データセンター変革技術の現在
三木 泉
@IT編集部
2009/5/7
今年も6月に、千葉・幕張メッセで「INTEROP TOKYO 2009」が開催される。経済不況の影響を受けて、規模は縮小されたものの、RSA Conference Japanとの併催で立体的な展示が見られそうだ。今年はクラウドコンピューティングやデータセンターが大きなテーマとなる |
現在のITにおける最大の課題は、コスト削減プレッシャーへの対応だ。短期的なコスト削減にとどまらず、無理と無駄のないITオペレーションを長期的に確保していくためには、IT部門や企業データセンターの役割や体制を変え、体質改善を図っていく必要がある。6月に開催されるInterop Tokyo 2009でも、このことは不可欠なテーマとなる。
IT部門や企業データセンターにおける体質改善とは、具体的にはITをユーザー部門に対してサービスとして提供するという形態への変革だといえる。ITを、社内のユーザー部門を消費者とするビジネスとして捉え直すと、安定した確実な運用に加え、ニーズに対して迅速に対応できる柔軟性や拡張性の確保が必須となる。そしてなによりも、こうしたオペレーションをコスト効率よく、さらにユーザー部門に対して適切に課金管理できる仕組みのもとで実現していく必要がある。
幸いなことに、サーバ、ストレージ、ネットワークの仮想化技術の普及により、物理的なITインフラを共用しながらも、これを論理的に分割したり拡張したりできるようになってきた。この「仮想データセンター」を、複数のユーザーグループやアプリケーションに対して臨機応変に提供することを助ける技術が、急速な進化を続けている。サーバ、ストレージ、ネットワークの主要ベンダはすべて、「企業データセンター変革」をキーワードに、企業向けの製品やサービスを開発しているといっても過言ではない。
シトリックスはあらゆるシンクライアントを統合
INTEROP TOKYO 2009で「Xen Technology 2009 powered by Citrix」を展開するシトリックス・システムズ・ジャパンは、主に企業デスクトップ環境を切り口として、企業ITの変革を狙う企業の1社だ。
シトリックスとというと、従来型の、マルチユーザー対応アプリケーションをユーザー端末から遠隔的に利用する形態の「ターミナルサービス型」シンクライアントを連想しがちだが、現在ではあらゆるシンクライアントをカバーし、これらを集中管理のもとで利用できる環境を提供している。
つまり、サーバを仮想化し、そのうえで個々のユーザー用のデスクトップ環境を仮想マシンとして動かし、これを遠隔的に使う「仮想PC型」とも呼ばれるシンクライアント実現手法も提供している。また、4月に同社は日本ヒューレット・パッカードとの提携を発表したが、企業データセンター内で動くブレードPCを1対1でユーザーに割り当てることで、高度な演算能力やグラフィック処理能力を要求されるアプリケーションに対応するような形態も、仮想PC型と同じ接続管理のもとで提供できる。
ターミナルサービス型、仮想PC型、ブレードPC型と、企業内のすべてのユーザータイプに適応するシンクライアント環境を、共通な管理ツールで制御する仕組みにより、同社は企業におけるデスクトップ環境の改善と効率化を同時に実現しようとしている。
Citrix Receiver for iPhone |
シトリックスの仮想PC型シンクライアントを実現する製品である「XenDesktop」は、VMwareやHyper-Vの上でも動作するが、同社は2月にサーバ仮想化製品「XenServer」の無償化を発表、これにより仮想PC型シンクライアントの導入コスト引き下げを図った。
5月初めには、シンクライアントのメリットを広げる新製品「Citrix Receiver for iPhone」を提供開始した。これはiPhone用のアプリケーションで、ユーザーが外出していても、社内に安全に接続して、シンクライアント技術によって社内のアプリケーションを自由に使えるようになる。
同時に発表した「Citrix Dazzle」という企業PCユーザー向けソフトウェアは、企業ITのサービス化に直結するツールだ。サーバ側で動作する「Citrix Merchandising Server」と組み合わせることで、IT部門は社内ユーザーに対してアプリケーションを「販売」できる。アプリケーションによって、料金を無償にすることもできるし、ユーザーの属する部門に対する課金を設定することも可能だ。Dazzleでは、アップルのiTunes Storeのような使い勝手で、ユーザーがソフトウェアやSaaSアプリケーションを自ら選択し、利用できるようになるという。
キャッシュやSSL処理でコスト削減
F5ネットワークスは、負荷分散やキャッシュ、WAN最適化などの機能を提供するアプライアンス製品群「BIG-IP」を提供してきた。同社は経済環境の悪化によるIT支出意欲の減退に際して、BIG-IPのコスト削減効果の強化を進めている。
従来BIG-IPでは、特定機能をそれぞれ搭載した専用アプライアンスを提供していた。しかしF5が4月に発表した新製品は、負荷分散の「BIG-IP Local Traffic Manager」、Web高速化の「BIG-IP WebAccelerator」、サーバセキュリティの「BIG-IP Application Security Manager」の3つの機能を単一のハードウェア上で実行できるようにし、BIG-IP自体の調達コストを削減した。
BIG-IPのハードウェアプラットフォーム「BIG-IP 8900」シリーズ |
F5では、BIG-IPの負荷分散やキャッシュ、SSL処理などの機能を活用することで、サーバをむやみに増やすことなく大量のトラフィックを処理できることにより、ITコストを削減できると強調する。
負荷分散のLocal Traffic Managerでは、VMware vSphereとの連携でダイナミックなサーバインフラを構築できることも大きな特徴だ。稼働中の仮想マシンのCPU使用率が、事前に設定したしきい値を超えると、VMware vSphereは自動的に仮想マシンを追加し、Local Traffic Managerは追加された仮想マシンを自動的に負荷分散の対象に加えることができる。これにより、例えばWebサイトへのアクセスが突然増えても、即座に対応できる自動的なITインフラが実現できる。
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企業データセンター変革技術の現在 | |
Page1 シトリックスはあらゆるシンクライアントを統合 キャッシュやSSL処理でコスト削減 |
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Page2 クラスタリング、分散処理とSAN PCサーバの変遷の意味 |
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