Oracle VMの世界(1)
Oracle VMの概要と特徴
日本オラクル株式会社
中嶋 一樹
2009/1/22
Oracle VMとは、オラクルが提供している無償のサーバ仮想化ソフトウェアである。Xenをベースとしているが、さまざまな機能追加や使いやすさの改善が行われている。本連載では、Oracle VMの製品コンセプトから機能、利用シーンまでを解説する |
Oracle VMの正体
- - PR -
Oracle VMは、オープンソースの仮想化エンジンの Xenをハイパーバイザに採用した、オラクルが提供する仮想化ソフトウェア製品です。まず Oracle VMの正体について種明かしをしましょう。Oracle VMの実体は、ざっくり以下のようなものだといえます。
Xen + 独自拡張
+ Oracleサポート
コアとなるハイパーバイザ部分については、オラクルがスクラッチから開発したものではなく、オープンソースの仮想化ソフトウェアとしてデファクトスタンダードのポジションにあるXenを採用しています。Xenの性能と安定性については定評があり、すでに多くのシステムで採用されているため、実績という意味では全く問題なく、安心して使えるものになっています。エンタープライズでの利用となるとサポートが問題になってきますが、Oracle VMについてはオラクルからサポートを受けることが可能です。これによって企業はXenという実績のあるエンジンを仮想化プラットフォームとして採用することができ、かつサポートという意味でも安心して運用することができます。そして気になるのは「独自拡張」の部分です。Oracle VMは単にXenをオラクルがサポートするというだけでなく、いくつかの魅力的な拡張を行っています。2008年12月時点でのスペックを基に、その拡張機能をまとめてみました。
- GUI
- QoS
- H/Aクラスタ
- P2V、V2V
- セキュアライブマイグレーション
- ネットワーク、ストレージパスの二重化
GUI
Xenそのものにはグラフィカルな管理画面は用意されておらず、基本的にはxmコマンドというCUIを通じて操作することになります。Oracle VMではVM Managerという管理ノードがWebベースのGUIを提供してくれます。
図1 VM Managerの画面 |
CUIではまずコマンド書式を覚えないとまったく操作ができませんが、GUIであれば直感的に操作が行えます。GUIが付属しているとマニュアルをそれほど読み込むことがなく操作できるのがうれしいところです。
QoS
VM Managerを通じてブラウザ上から、仮想マシンに割り当てる仮想CPU数の変更や、メモリ容量の変更だけでなく、ディスクI/Oの優先度設定、ネットワークの帯域幅設定といったリソース管理を簡単に行うことができます。
図2 QoSの設定画面 |
実際このあたりはコマンドラインでの設定がかなり煩雑なところなので、GUIベースで行えるのは非常に助かります。
HAクラスタ
仮想化によってサーバ集約を行うと、それまで以上にハードウェア障害によるインパクトが大きくなります。Oracle VMのHAクラスタ機能はサーバハードウェアの障害やネットワーク障害が起きた場合に、障害によってサービスが継続できなくなった仮想マシンを自動的に生き残っているVM Serverサーバ上でリスタートさせることで、自動的に復旧を行うものです。
図3 HAクラスタ機能 |
*VM Serverは仮想マシンを稼働させるOracle VMのコンポーネントです。詳しくは後述します。
サーバが壊れたら仮想マシンをリスタートさせる、というだけであればそれほど難しくなさそうです。単にPingなどで死活監視を行い、そのステータスによってリスタート処理を発動させれば良いだけです。しかし実際には「ダウンしているかどうか」の判断は非常に複雑です。サーバが過負荷によって一時的に応答できなくなっているだけかもしれませんし、スイッチ障害などによってネットワークが分断されたために監視に応答しないだけで、実際にはサービスを正常に提供できているかもしれません。そのような状態で誤ってリスタートさせてしまうと正常な仮想マシンをみすみすダウンさせてしまう可能性があります。
Oracle VMのHAクラスタ機能は、データベースにおけるOracle RAC(Real Application Cluster)やOracle Clusterwareの技術を応用して実装されています。VM Serverの状態監視には単純な死活監視ではなく、投票ディスクを利用したハートビートやネットワークのキープアライブなど、複数の監視手段を用いており、各VM Serverがクラスタ全体の状態を正確に把握できるようになっています。さらにロック管理を実装して排他制御を確実に行うという安全で手の込んだ設計がなされています。
P2V、V2V
仮想化の目的には既存のシステムを統合することが挙げられます。この場合に活躍するのがP2V機能です。これは現在ベアメタル(物理サーバ上にOSが直接インストールされている状態)で動いているサーバを仮想マシンとして動かすために、VM Serverが扱えるイメージに変換する機能です。また、V2Vというのはほかの仮想化製品のフォーマットで作成された仮想マシンのイメージを、Oracle VMで扱えるイメージに変換する機能です。具体的にはVMware ESXで作成されたイメージを変換することができます。仮想化インフラをOracle VMに変更したい、あるいは画一化を図る場合などに便利な機能です。
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Index | |
Oracle VMの概要と特徴 | |
Page1 Oracle VMの正体 GUI QoS HAクラスタ P2V、V2V |
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Page2 セキュアライブマイグレーション ネットワーク、ストレージパスの二重化 Oracle VMのシステム構成 |
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Page3 Oracle VMの差別化ポイント |
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