サーバ仮想化バトルロイヤル(1)

サーバ仮想化バトルロイヤル(1)

ハイパーバイザの価値とは


三木 泉
@IT編集部

2008/8/8

現時点で主要なサーバ仮想化ソフトウェアと考えられるのは、ヴイエムウェアの「VMware Infrastructure 3」、シトリックスの「XenServer」、マイクロソフトの「Hyper-V」だ。この集中連載では3社へのインタビューを通じ、それぞれの仮想化に対する取り組み方や製品の位置付けの違いを浮き彫りにする

 この3回連載は、サーバ仮想化ソフトウェア主要3社間の違いを、インタビューによって明らかにする試みだ。もとよりサーバ仮想化の世界は時々刻々と変化している。例えば、2008年7月29日にヴイエムウェアは、「VMware ESXi」のダウンロード版の無償化を発表した。VMware ESXiはヴイエムウェアのサーバ仮想化ソフトウェアのハイパーバイザ部分で、これまで495ドルで提供していたものが無料になった。金額的には大きな違いではないかもしれないが、買うのと無料で使えるのとでは天と地ほどの違いがある。サーバ仮想化ソフトウェアの個々の機能についても、どんどん変化していくため、ある時点で詳細に比較しても、すぐに意味をなさなくなってしまう可能性が高い。従って、この連載も3製品間の細かな比較を目指してはいない。これまであまり明らかにされてこなかった3社のサーバ仮想化に関する基本的な取り組み方や製品戦略の違いを明らかにすることが目的だ。

 本連載では、2008年5月下旬から8月中旬にかけて3社に行った個別インタビューから、大まかなテーマに沿って再構成して紹介する。再構成は編集部の責任において行っている。インタビューでは多様な質問を行っているが、各担当者の答えだけを示す。それぞれの発言は、可能な限り要約することなく、読みやすさを考慮した最低限の編集を加えるにとどめた。太字部分は編集部による補足説明だ。

 第1回である今回のテーマは、「ハイパーバイザと基本アーキテクチャ」だ。第2回はサーバ仮想化ソフトウェアの機能と価格、第3回は仮想化に関するビジネス戦略について取り上げる。

 マイクロソフト:Hyper-VはWindows Server 2008と一体のもの

 以下はマイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 コア インフラストラクチャ製品部 マネージャ 藤本浩司氏へのインタビューからお届けする。インタビュー時期は2008年7月中旬だ。

 マイクロソフトはWindows Server 2008のリリースに遅れたものの、2008年6月に仮想化技術「Hyper-V」の正式版を提供開始した。ダウンロード提供を開始しているほか、今後出荷されるWindows Server 2008にはHyper-Vが含まれた形で提供される。

マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 コア インフラストラクチャ製品部 マネージャ 藤本浩司氏

 多くのお客様が仮想化するとは思っているが、全員が全員仮想化するわけではない。お客様の選択によって、仮想化を入れたい場合は入れてもいいし、いままでのように、ベアメタル(注:サーバ・ハードウェアの意)の上に(サーバOSを)直接導入いただくというケースも十分あると思っている。

 お客様が使いたいときに柔軟に選択できる、ということをわれわれは考えている。Windows Server 2008には仮想化機能が入っている。お客様が仮想化を使いたいと思った時には「ロール」というボタンを押せば、勝手にHyper-Vが下に入り込んで動いてくれる。戦略的には、お客様が使いたいときに仮想化が使えるようなプラットフォームを提供していくということだ。

 サーバ仮想化にはハードウェアを有効に使え、バックアップや世代管理ができるなどいろいろなメリットがある。その意味でサーバ仮想化そのものの訴求と用途に応じた訴求を進めていく。(現段階では)ヴイエムウェアやシトリックスのように、単体のサーバ仮想化製品ではないので、それだけの訴求をしていくことは考えていない。あくまでもOSの一部としての訴求をしていく。

 Windows Server 2008との関連でいえば、われわれはWindows Serverで(サーバOS市場の)8割のシェアを持っている。Windows Server 2003などを使っているお客様が、次の段階として、例えばまもなく登場する6コアのサーバ機などを有効活用したいというときに、Hyper-Vの機能を使ってもらえればいいと思っている。しかしWindows Server 2008がHyper-Vありきだということではないので、マイクロソフトはヴイエムウェアやシトリックスとの多少のアプローチの違いはあると思う。

Windows Server用のリソースをそのまま生かせる

 サーバ仮想化市場については、いまはベンダ同士で争う段階ではなく、市場自体を伸ばしていく時期だというのがマイクロソフトの立場だ。サーバ仮想化市場を広げるという点でHyper-Vが貢献できることの1つは、幅広いデバイス・ドライバの対応だとする。マイクロソフトのサーバ仮想化のアーキテクチャでは、Windows Server 2008用のデバイス・ドライバが、仮想化でもそのまま使える。Windows Server 2008用には、多数の周辺機器用のデバイス・ドライバが提供されているため、多様な周辺機器を簡単に使えることになる。マイクロソフトは2008年後半に、単一サーバ用のスタンドアロン仮想化ソフトウェア「Hyper-V Server」を提供する計画を持つが、これはParent PartitionとしてWindows Server 2008を使う代わりにServerCoreを使うもので、アーキテクチャには変更がない。米国での予想小売価格は28ドルと発表されており、価格的なインパクトは大きい。

 マイクロソフト(の仮想化ソフトウェア)は、Parent PartitionであるWindows Server 2008のドライバを使う。このため、Windows Serverでサポートしている2万といった数のデバイス・ドライバをすべて使えるということが、われわれの一番大きなメリットだと思っている。ヴイエムウェアはハイパーバイザ層である「VMware ESX」にデバイス・ドライバを持っている。ではESXの動くハードウェアはどれくらいあるか。サーバ機は比較的高価な機種に限られている。ストレージなどさまざまな機器への対応も必要だ。多数の機器への対応は難しい。(デバイス・ドライバを)開発する人にとっても、ハイパーバイザのためにドライバを開発し、もう1つWindows Serverのためにドライバをつくって、というと大きな工数になるし、管理もしていかなければならない。(サーバ仮想化は)新しい技術であり、下のレイヤを支えるためにはセキュアでなければならないので、(他社が)この市場にはそれほど簡単にリーチできないだろうと思っている。

 このように、親としてWindows Server 2008が必要だが、これを持つことによって、いまWindows Server 2008が持っている多数のデバイス・ドライバを活用しながらやっていくことができる。ハイパーバイザの部分をもっと訴求しないんですかとよく聞かれるが、Windows Server 2008とプラスすることでアーキテクチャを実現している。従って、Windows Server 2008のデバイス・ドライバやアプリケーションが増えてくると、イコールHyper-Vのサポート範囲が広がっていくことになる。だからいままで「仮想化です、仮想化です」というメッセージを出してこなかったし、今後もそうするつもりはない。

 
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Index
ハイパーバイザの価値とは
Page1
マイクロソフト:Hyper-VはWindows Server 2008と一体のもの
  Page2
シトリックス:Xenは互換性のある普遍的なハイパーバイザ
  Page3
ヴイエムウェア:ハイパーバイザは同じではない

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