スーパーマリオはソーシャルゲームやゲーミフィケーションに影響を与えた

スーパーマリオはソーシャルゲーム
やゲーミフィケーションに影響を与えた


Cloudforce 2011セッションレポート&インタビュー

柴田克己
2012/1/11

エンタープライズとゲーミフィケーション

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 2011年12月14〜15日、都内のホテルで開催されたセールスフォース・ドットコムのプライベートイベント「Cloudforce 2011 JAPAN」では、同社の従来のコアコンピタンスである「クラウド」に加え、TwitterFacebookといった、ソーシャルメディアの持つダイナミズムを企業活動の中で積極的に活用していく「ソーシャルエンタープライズ」の実現が大きなテーマとなった。

 ソーシャルエンタープライズの実現に当たり、1つのカギとして注目を集めているのが「ゲーミフィケーション」の手法だ。今回のCloudforceでは、ソーシャルゲームの持つ「ゲーム的」な要素を、企業の活動に適用することで、顧客や従業員の参加意識やモチベーション、ひいては「成果」の向上を図る「エンタープライズゲーミフィケーション」に関するパネルセッションが開催された。

 「新潮流エンタープライズゲーミフィケーション」と題されたこのセッションでは、ゲーミフィケーションの活用に詳しい3人のパネリストが、それぞれの立場と経験から、このアイデアの重要性と、実際の効果について語った。

ゲーミフィケーションで企業内の情報探索コストを下げる

 最初に登壇したのは、米セールスフォース・ドットコムでチーフサイエンティストを務めるJ.P. Rangaswami氏である。同氏は、企業でのゲーミフィケーションが必要になった理由として、「仕事を行う場の環境が変化した」ことを挙げる。

「労働の質」や「組織」が変わった


米セールスフォース・ドットコム チーフサイエンティスト J.P. Rangaswami氏「ゲームと同じ情報制御が企業システムにも必要になっている」

 現在、労働に従事する人の多くが「ナレッジワーカー」となっており、ナレッジワークの特徴として、作業の進み方や成果物のスタイルが「一定でなく、変化に富んでおり、予測が難しい」ことに言及した。ナレッジワーカーには、決まった作業を決まった時間で黙々とこなすのではなく、刻々と変化する状況にリアルタイムで対応していくことが求められているという。

 また、人員配置でも変化が起こっているとする。従来は、企業組織として絶対的な「階層」があり、作業の優先順位付けや、「誰が、どの作業に携わるか」といった作業の割り振りについては、多くのコストを掛けて階層の上位に位置する「経営層」が行ってきた。これについても、「実際に現場に近いところにいるメンバーが判断し、ボトムアップで進めていく方がうまくいくケースが多いことが分かってきた」という。

「ポイント」「レーティング」「バッジ」「リーダーボード」による可視化

 市場の変化が加速するにつれ、それに対応するスピードも変化していかなければならない。その中で、リアルタイムなフィードバックループを作り上げるためには「リアルタイムな情報の可視化」が必要になる。Rangaswami氏は、それこそが「ゲーミフィケーションが必要になる理由だ」とする。

「テレビゲーム/ビデオゲームには、これらの要素がすでに含まれている。プレイヤーのアクティビティは非線形で、対応すべきスピードは刻々と変化する。ゲームの目的達成のために、プレイヤーは画面から得られる情報をリアルタイムに処理し、次の行動を選択していく。こうしたビデオゲームにおける情報制御の仕組みが、エンタープライズに必要とされはじめている」(Rangaswami氏)

 Rangaswami氏によれば、ソーシャルゲームなどに用いられている「ポイント」「レーティング」「バッジ」「リーダーボード」といった情報可視化の要素は、企業内の情報を見つけ出すためのコストを下げることに応用が可能だという。例えば、社内であるスキルを持った人物を探したい場合に、これらが視覚的な要素として人物にひも付けられていれば、その作業は極めて簡単になるだろうと話す。

「ゲーミフィケーションと可視化をうまくエンタープライズに導入することで、従業員のエンゲージメントモチベーションを高く保つための、フィードバックループを作ることが可能になる」(Rangaswami氏)

ゲームのノウハウが企業向けのサービスにも使える

 続いて登壇したのは深田浩嗣氏。携帯電話、スマートフォン向けのコンテンツプラットフォーム事業などを展開している「ゆめみ」の代表取締役社長である深田氏は、「ソーシャルゲームはなぜハマるのか」(ソフトバンククリエイティブ刊)の著者としても知られる。

 深田氏は「ゲーム業界の出身ではない」と自己紹介しつつ、「ゆめみではソーシャルゲームも提供しており、そのノウハウが企業向けのサービスにも使えることが分かった。われわれが手掛けるべき領域は、まさにその部分になる」とした。

ゲーミフィケーションの定義

 深田氏は、ゲーミフィケーションの定義を「利用者を楽しませ、没頭させるために、ゲームで使われている要素をゲーム以外の領域に活用すること」とし、その例として、「ランニング」という、従来は個人で行うストイックなスポーツに「ログの記録」「目標設定」「友人同士の競争」といった要素を加えることでリピーターを集めた「Nike+」や、回転寿司という業態に「食べた皿の枚数でクジが引ける」というゲームの要素を加えた「くら寿司」の事例などを紹介した。

「くら寿司」の事例(深田氏の講演資料より)

 また、ゲーミフィケーションには「利用者のモチベーション、行動をデザインする手法」「ソーシャル時代のおもてなし、ホスピタリティを表現するサービスデザイン手法」「利用者をヒーローにする仕組み」といった側面もあるとする。

 深田氏が次に挙げたのは、スウェーデンの高速道路における「スピードカメラ」の事例だ。本来、スピード違反をしている運転者を取り締まるために設置されたカメラを使い、ここでは「スピードを守っている人の中から、抽選で賞金(原資は罰金)を与える」というルールを適用した。実際に、このルールを適用することで、スピードカメラがある地点での車のスピードは約20%低下するという成果があったとし、これも「利用者の行動をデザインする手法」としてのゲーミフィケーションの好例であるとした。

「スピードカメラ」の事例(深田氏の講演資料より)

「Badge Fatigue(バッジ疲れ)」を起こさないように

 ただしポイントとして、「表面的にゲーム要素を取り込むだけではうまくいかない」という。ゲーム的な要素に魅かれてやってきたユーザーは、それが表面的なものであれば、間もなく「飽きてしまう」ためだ。米国でも「Badge Fatigue(バッジ疲れ)」などと呼ばれているこうした状況を避けるためには、「なぜ、そのサービスを使いたいのか」という、より本質的な部分に合致したデザインが必要だと深田氏は指摘した。

「ゲーミフィケーションの本質は、人間のモチベーションデザインを効果的に行うために、ゲーム、ソーシャル要素を持ち込むマーケティング手法ととらえることができる」(深田氏)

深田氏の講演資料より

目的は「会社と社員とのエンゲージメントの強化」

 3人目に登壇したのは、ソーシャルメディアコンサルタントを務める岡村健右氏。岡村氏の所属するループス・コミュニケーションズ(以下、ループス)では、企業のソーシャルメディア活用コンサルティングを手掛けている。

TwitterやFacebookでブログが読まれるようになった

 ループスでは、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアによって、企業と顧客、企業と従業員との関係が変化している点に着目し、企業がそれらのツールをいかに活用できるかについてのコンサルティングを行っている。同社では、ソーシャルメディアのプロフェッショナル集団である点をアピールすることを目的に、自社でブログメディアを設置。社員がそれぞれにブログを持ち、得意分野に関する情報の発信を行っているという。

 しかし、「(ブログは)当初、あまり芽が出なかった」という。本格的にブログが仕事の依頼やブランディング確立の手段へとつながりはじめたのは、TwitterやFacebookの仕組みと組み合わせることで、情報の拡散力が高まってからだという。

ブログ月間ユニーク訪問者数と問い合わせ件数の推移(岡村氏の講演資料より)

 また、メンバーがブログを続けていくためのモチベーション維持のシステムとして、TwitterにおけるリツイートやFacebookにおける「いいね!」といった仕組みが大きな役割を果たしたとする。「ブログのエントリと間接的にひも付いて機能するこれらの仕組みも、『人に認められること』が可視化される点で、ゲーミフィケーション的な性質を持っている」と岡村氏は話す。

人に認めてもらうことがモチベーションに(岡村氏の講演資料より)

「顧客の声の共有」「ハッピーストーリーの共有」「社内ロイヤリティの測定」

 岡村氏は、企業内でソーシャルメディアやゲーミフィケーションの手法を活用する場合、その目的は「会社と社員とのエンゲージメントの強化」にあるとする。実施例としては、「顧客の声の共有」「ハッピーストーリーの共有」「社内ロイヤリティの測定」といった、社内にある情報の「可視化」が一般的だ。また、導入の際は何らかのインセンティブによるモチベーション向上の設計を行い、一過性のものにしないような取り組みが重要であるとした。

 次ページでは、パネルディスカッションとRangaswami氏へのインタビューの模様をレポートする。

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 INDEX
Cloudforce 2011セッションレポート&インタビュー
スーパーマリオはソーシャルゲームやゲーミフィケーションに影響を与えた
Page1
エンタープライズとゲーミフィケーション
ゲーミフィケーションで企業内の情報探索コストを下げる
ゲームのノウハウが企業向けのサービスにも使える
目的は「会社と社員とのエンゲージメントの強化」
  Page2
BtoC・BtoB共通の要素は「動機付け」「視覚化」
「外的」よりも「内的」な動機付けをデザインせよ
ゲーミフィケーションは企業内で普通に使われる」


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