ソーシャルカンファレンス2012まとめレポート

いまの日本は「ソーシャル」が何か分かっていない


ソーシャルカンファレンス2012まとめレポート

五味明子
2012/7/6

Facebookを見て「通信キャリアも変わらなくちゃ」


KDDI 新規事業統括本部 新規ビジネス推進本部 オープンプラットフォームビジネス部 パートナーズ推進2G・3G グループリーダー
傍島健友氏「世界はソーシャルでもっと楽しくなる」

 「Facebookを見ていると通信キャリアも変わらなくちゃいけないとつくづく思う。変化を恐れない姿勢は長くサービスを続けていくために非常に重要」(傍島氏)

 KDDI 新規事業統括本部 新規ビジネス推進本部 オープンプラットフォームビジネス部 パートナーズ推進2G・3G グループリーダー 傍島健友氏は「Social Discovery」と題したセッション中、こう実感を込めて語る。かつてない膨大なデータが世界を流れる時代、その流れをコントロールする立場にある通信キャリアはソーシャルにどう向き合おうとしているのだろうか。

 傍島氏はKDDIの前身であるDDI(第2電電)から固定とモバイルの両方からインフラ構築にかかわってきた人物。DDIは2000年にKDD、IDOと合併し、KDDIとなったが、当時はようやくモバイルインターネットがスタートし始めたころで「144kbps程度のスピードに速いなーと感心していた時代」だったと振り返る。

「ZimbraとRiyaに大きく衝撃を受けた」

- PR -

 KDDIのFMC(固定・携帯融合)サービスなど企業向けのインフラサービスにも携わってきた傍島氏だが、2006年、ちょうど「Web 2.0」という言葉がはやり始めたころに登場した2つのWebサービス「ZimbraとRiyaに大きく衝撃を受けた」と言う。

 ZimbraはAjaxベースのコラボレーションソフトで、2010年にヤフーに買収されている(その後ヴイエムウェアに買収された)。もう1つのRiyaは顔認識技術を使ったWebアルバムサービスで、こちらは後にLike.comに社名を変更し、2010年にグーグルに買収された。

 Web上でリアルタイムに近い感覚で複数のメンバーと情報共有を実現するZimbraと、顔認識という画像マッチング技術で個人をタグ付けし、新たなコミュニケーションを可能にしたRiya。傍島氏は当時のKDDI社長だった小野寺正氏の下に行き、夢中でこの2つの技術のプレゼンテーションを行ったという。

 「これからのインターネットは、こうしたサービスが主流になる。データはデスクトップではなくデータセンタにアップされる時代になる。そういう時代を迎えたとき、われわれ通信キャリアはどうあるべきなのか。そんなふうに社長の前でやたらと熱く語ったのを覚えています。社長は『しょうがないな』という感じで苦笑いしていましたけどね(笑)」(傍島氏)

 その熱意が通じたのか、以来、インターネット上のサービスをキャリアとして支援する立場で、さまざまな企業とコラボレーションを図ってきた傍島氏。現在はグリー、グーグル、コロプラ、アクロディア、トータル イマージョン、フェイスブックといった国内外を問わずソーシャルで強い存在感を持つ企業6社と提携し、多様なつながりから新たなビジネスチャンスを創出する「Social Discovery」の方向性を探り続けている。

KDDIが提携するソーシャル企業6社(傍島氏の講演資料より)。コロプラは日本最大級の"位置ゲー"を提供するオンラインゲーム企業。トータル イマージョンはARアプリ開発プラットフォーム「SATCH」のエンジンを提供している

“超”ネットワークと“脱”ネットワーク"がソーシャル時代の通信キャリアの課題

 Social Discoveryを推進するに当たり、KDDIは「超ネットワーク戦略」「脱ネットワーク戦略」の2つをベースにしているという。

 「回線を太くしたり、超高速通信を実現したり、インフラキャリアとしてネットワークをピカピカにする、これが『超ネットワーク戦略』。一方で、ネットワークを飛び越えて、アプリケーションやデバイスもすべて一気通貫でサービスを構築することが『脱ネットワーク戦略』。KDDIはどちらかに特化するのではなく、両方をやる。脱ネットワークに関してはオープンインターネットの精神の下、自前ですべてやろうとするのではなく、多くの企業と組んで進めていきたい」(傍島氏)

KDDIはソーシャルにおける実験的な試みも多く手がけている。大学生自身にFacebookでの運営を任せている大学生支援サイト「DAIGAKU★GRAFFITI」もその1つ(傍島氏の講演資料より)

Open Graphは世界に“共感”を拡げやすい

 中でも同社はここ最近、定額コンテンツサービスの「ビデオパス」「うたパス」やスマホアプリの「Fashion Wall」「Run & Walk」などFacebookのOpen Graphを導入したサービスを積極的に展開している。

auの定額コンテンツサービスにもOpen Graphが導入されている(傍島氏の講演資料より)

 「Open Graphは世界に“共感”を拡げやすい。誰かがどこかを走った、こんな音楽をいま聞いている、こんな料理を作っている……。その情報に対する共感が新しいサービス、例えばレシピサービスやショップ紹介サービスにつながっていく。また、スマホの時代では、ユーザーが真っ先にアクセスするのは(「Yahoo!」のような)、ポータルサイトではなくソーシャルメディア。このオープンなソーシャルへの流れは、もう止めようがない」(傍島氏)

 ソーシャルがコミュニケーションのあり方を大きく変えているいま、「Social Discovery」を掲げるキャリアとして「産業と産業の橋渡し的な役割、シナジー効果を高める役割を果たしたい。(ソーシャルで)世界は見ているよりも、もっと楽しくなる」と傍島氏。通信キャリアだからこそ可能なソーシャルの基盤作りの道を、提携企業と密にコラボレーションを図りながら推進する。それがKDDIの目指す「Social Discovery」だといえそうだ。

O2O―オンラインとオフラインの融合を現実にするNFC


 PasmoやSuica、パスポートや免許証など、われわれの生活においても身近な存在となっている非接触ICカードだが、実はこれらは互換性のない独自規格であることをご存じだろうか。Pasmo/Suicaに代表されるFeliCa系のサービス(日本やアジアで普及)と、パスポートや免許証で使われているType B系(米Motorolaが開発)は仕様が異なるため、双方で使えるアプリケーションやサービスを開発することはできない。

 だが、これらに対して上位互換性を持つ国際標準規格のNFCであれば、さまざまなデバイスに埋め込むことで、多様なソーシャルサービスの開発が可能だと期待されている。

 NFCの開発に力を入れる凸版印刷から2名のスピーカー――情報コミュニケーション事業本部 TICマーケティング本部 後藤果菜氏、同社情報コミュニケーション事業本部 TIC ITソリューション本部 名塚一郎氏が登壇し、「NFCが描く未来像」と題したセッションが行われた。

凸版印刷 情報コミュニケーション事業本部 TIC ITソリューション本部 名塚一郎氏(左)、同社 情報コミュニケーション事業本部 TICマーケティング本部 後藤果菜氏(右)

「NFCはリアルとソーシャルをつなぐ存在になり得る」

 NFCは「Near Field Communication」の略で、その名の通り10cm程度の近距離間通信を行う技術。NFCを搭載したデバイスをかざすだけで、さまざまなデータのやりとりできるのが特徴だ。読み込みにも書き込みにも対応できるところもメリットの1つである。

NFCは非接触無線通信のあらゆる規格に対応できる標準規格(凸版印刷の講演資料より)

 このNFCをスマートフォンや身の回りのデバイスに搭載し、ソーシャルと結び付けることでどんなサービスを実現できるのか、凸版印刷では現在さまざま企業とコラボレーションを図りながら実験を進めている。「特に注目しているのは、オンラインとオフラインの融合。NFCはリアルとソーシャルをつなぐ存在になり得る」と後藤氏は強調する。

NFCを使ったの1つの解「リアルいいね!」

 例えば、化粧品メーカーのレブロンとのコラボでは、青山のフィアットセンターで行われた同社のイベントでNFCタグが埋め込まれたリストバンドを来場者に配布。来場者が気に入った商品サンプルの上にリストバンドをかざすと、Facebook上のレブロンのページに「いいね!」が記録される。

 この仕組みは、その場の体験をすぐに共有できるので「リアルいいね!」とも呼ばれる。「期間中、685回の「いいね!」を獲得、約22万人にリーチできた」(後藤氏)とのこと。このリストバンドを使った「リアルいいね!」はサイバーエージェントのイベントやGAP JAPANの店頭でも期間限定で行われた。

リストバンドに埋め込まれたNFCタグやNFC搭載スマホを使って行う「リアルいいね!」の仕組み(凸版印刷の講演資料より)

 また、映画祭で有名なフランス・カンヌ市と日本で唯一、姉妹都市提携を結んでいる静岡市では5月に「シズオカ×カンヌウィーク2012 − 野外と映画とフランスの3日間」を開催、その際、事前登録者にFacebookのIDを埋め込んだNFCリストバンドを配布している。

 参加者はスタンプラリー方式で会場内の9カ所に設置したリーダーにリストバンドをタッチして「リアルいいね!」を行い、6カ所以上にタッチした参加者には景品をプレゼントするというキャンペーンで、ソーシャルを活用した地域活性化の取り組みの一例として注目された。

導入コストの低いNFCを決済システムとして使う

 海外の事例としては、NFC搭載のスマホを使って駐車場の時間管理に応用している例(英国)や、パス停のポスターに埋め込まれたNFCにスマホをタッチするとバスの到着時刻が表示される例(韓国)など、世界的にもNFC採用が拡がっている動きが紹介された。

 特に、POSレジに代わる決済システムとして導入コストの低いNFCが採用されるケースが増えているという。

ブラジルのアパレル店がハンガーに埋め込まれたNFCを使ってリアル「いいね!」を可視化→ネットワーク化している事例(凸版印刷の講演資料より)

「日本ならではのO2O事例をNFCで作りたい」

 今後は集めた情報をどう可視化/ネットワーク化し、具体的なビジネスにつなげていくかが課題となる。「ソーシャルメディアとNFCは、とても相性が良い。この相性の良さを生かし、日本ならではのO2O(Online to Offline)事例として拡げていきたい」と後藤氏。

 何かにタッチすれば、それが可視化されたアクションとなってソーシャルに拡がっていく。いまいる場所とは違う世界に働きかけることができる――近未来として語られていたことが、いま現実になろうとしている。NFCは、その変化の中枢を担う存在となるのだろうか。今後の新しい動きに引き続き注目していきたい。

1-2-3-4-5

 INDEX
ソーシャルカンファレンス2012まとめレポート
いまの日本は「ソーシャル」が何か分かっていない
  Page1
コンプガチャ、炎上など問題点が多い「ソーシャル」
コンシューマライゼーションが生み出す“うねり”
Page2
Facebookを見て「通信キャリアも変わらなくちゃ」
O2O―オンラインとオフラインの融合を現実にするNFC
  Page3
コンプガチャはクリエイティブじゃない
企業は“コミュニティ”で消費者と社会をつなげ
  Page4
ソーシャルで変わっていくテレビの役割
  Page5
ブランディング、運用、ビッグデータ分析、キュレーション
われわれの「ソーシャル」はまだ始まったばかりだ!


 Smart&Social フォーラム トップページへ



Smart & Social フォーラム 新着記事
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

Smart & Social 記事ランキング

本日 月間