解説

Pentium 4の新チップセット「Intel 845G」の機能と性能
――企業向けPCの新プラットフォームを検証する――

3. Intel 845Gの性能と評価

元麻布春男
2002/05/28


Intel 845Gのベンマーク・テストの結果

 このD845GBVの性能だが、ここでは「解説:最新Pentium 4-2.53GHzに見るPCの買い替え時」で取り上げたD850EMV2と条件を揃えて(つまりは外部グラフィックスを用いて)比較してみたい。これは純粋にメモリとチップセットの性能差がどれくらいあるか、を確かめるものだ。実施したテストは、SYSmark2002(Office ProductivityとInternet Content Creationに分かれたアプリケーション・ベンチマーク)、3DMark2001 SE(DirectX 8ベースの3Dグラフィックス・ベンチマーク)、PCMark2002(プロセッサ、メモリ、ハードディスクといったコンポーネント・レベルのベンチマーク・テスト)の3種類だ。テストの概要については、「解説:最新Pentium 4-2.53GHzに見るPCの買い替え時 3. ベンチマーク・テストの結果」を参照していただきたい。またテスト環境ならびにすべてのテスト結果は、USB 2.0の性能比較を含めて次ページにまとめて掲載している。ここでは、SYSmark2002の結果のみを掲載しておく。

SYSmark2002の結果(メモリ比較)

 結果を見て思うことは、「かなり善戦している」ということだ。Intel 850Eに対して、利用可能なメモリ帯域に差があることは明らかだ。しかしその差は、メモリの帯域差約13%に対し、ほかのベンチマーク・テストの差はおおむね3.5〜1.5%にとどまっている。どのメモリを選ぶべきか、ということはそのときどきのメモリ価格や入手性などにもかかわる問題だが、現在のPC2100 DDR SDRAMとPC800 RDRAMの価格差(約2倍、512Mbytesを実装するとして差額は1万円強)を考えれば、Intel 845G+DDR SDRAMの組み合わせは十分な競争力を持つといえるだろう。

 DDR SDRAMが十分な性能があると分かったところで、今度は内蔵グラフィックスの性能を、バリューPC向けの定番的な存在である2種の外部AGPカードと比べてみることにした。

SYSmark2002の結果(グラフィックス比較)

 これを見ると分かるように、SYSmark2002のスコアはかなり健闘している。メモリをプロセッサやPCIバスマスタなどと共有するUMAタイプの内蔵グラフィックスというと、どうしても性能が低いという先入観で見てしまいがちだが、このくらいの性能ならば十分に許容できる範囲内ではないかと思う。特にオフィス・アプリケーション用途のクライアントPCならば、十分以上の性能を持つといえるだろう。

 全般的に見てIntel 845Gの性能は、3Dグラフィックスを多用するアプリケーションのユーザーでもない限り、大きな不満のないレベルにある。しかし、グラフィックス機能の評価ポイントは性能だけではない。Intel 810/815の内蔵グラフィックスが、性能以外の面で不満が多かったのは前述したとおりだ。そして、残念ながらIntel 845Gのアナログ的な表示品質は、高解像度を前提にすると、必ずしも満足のいくものではないように思う。

性能は十分だが画質は?

 下の写真は、GeForce4 MX 420ベースのグラフィックス・カード(1万円弱)の出力と、D845GBVの内蔵グラフィックスのCRTディスプレイへの出力を撮影したものだ(映像信号はアナログ方式)。内蔵グラフィックスは、解像度が1024×768ドットを超えると、やはり文字のにじみが気になってくる(あるいは内蔵グラフィックスは文字が太く見える)。内蔵RAMDACのドット・クロックが引き上げられたことで、解像度の制約はなくなったのだが、最終的な表示品質という点では、やはり外付けのグラフィックス・カードにはまだ及ばない。この問題を克服する一番良い方法は、上述したADDカードで映像信号をデジタル出力し、DVI-Dに対応した液晶ディスプレイと組み合わせることだろう。この手が使えないIntel 845GLベースのマザーボード/システムを購入する際には、実物を見て、画質を確認することをおすすめしたい。

Windows XP Professionalのログオン画面を1280×1024ドット32bitカラーでEIZO FlexScan E78Fに表示し、デジタルカメラで撮影したもの
左側がGeForce4 MX 420を搭載したグラフィックス・カード「LeadTek A170TH」、右側がD845GBVの内蔵グラフィックスの画面。D845GBVは全体にぼんやりしており、Corporationの「o」などを見ると明らかな違いが分かる。

最適なプラットフォームはIntel 845GかIntel 845Eか?

 現在、最も高い性能の得られるPentium 4対応プラットフォームといえば、それはやはりDirect RDRAMを用いたIntel 850Eということになる。しかし、Direct RDRAMの半額のメモリ(DDR-266)を用いたIntel 845Gの性能も、悲観するようなものではまったくない。512Mbytesで1万円という価格差を大きいと見るか、小さいと見るかは人それぞれだが、少なくともIntelがメインストリームとして売ろうとしているのがIntel 845Gであることは間違いない。

 Intel 845Gで気になったのは内蔵グラフィックスの表示品質があまり良くない点で、外部グラフィックスを使うのであればIntel 845Eで構わない、という見方もできるだろう。筆者もどちらかといえば、これに近い考えだ。Intel 845Gの方が、グラフィックス機能を内蔵するだけでなく、メモリ・コントローラの世代もIntel 845Eより新しいと思われるが、新しいものに飛びつくのがいいか、枯れたものを使い続けるのが良いかは難しい。性能以外にも、内蔵グラフィックスを使ったあとでAGPカードを差すと、AGPカードがPCIモードでしか動かないことがあるなど、現段階ではWindows用グラフィックス・ドライバの完成度がもう一息な気がするのも躊躇するところだ。しかし、過去の実績からいって、デバイス・ドライバの問題を長期にわたりIntelが放置しておくとは思えない。取りあえず、現時点での最適な選択はIntel 845Eだとしても、夏ごろにはIntel 845Gの方が魅力的になっている可能性もある。ADDカードの流通や、一部のサードパーティがすでに実施しているDDR-333メモリのサポート状況と合わせ、Intel 845Gの今後の動向には注目しておく必要があるだろう。

 なお、次ページに参考までにIntel 845Gのベンチマーク・テストの結果と考察をまとめて掲載している。クライアントPCの導入時の性能指標として参考にしていただきたい。

  関連記事 
最新Pentium 4-2.53GHzに見るPCの買い替え時

 INDEX
  Pentium 4の新チップセット「Intel 845G」の機能と性能
    1.Intel 845Eシリーズの位置付け
    2.Intel 845Gのグラフィックス機能の特徴
  3.Intel 845Gの性能と評価
    4.ベンチマーク・テストの結果
 
 「System Insiderの解説」


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