解説

Pentium 4の新チップセット「Intel 845G」の機能と性能
――企業向けPCの新プラットフォームを検証する――

4. ベンチマーク・テストの結果

元麻布春男
2002/05/28


 最後にIntel 845Gの性能を検証した結果をまとめる。D850EMV2(Intel 850E)と条件を揃えてテストを行うため、グラフィックス・カードとして「ATI RADEON 8500 64MB」を差している。これは純粋にメモリとチップセットの差がどれくらいあるかを確かめるためだ。実施したテストは、SYSmark2002、3DMark 2001 SE、PCMark2002の3種類だ。PCMark2002は、プロセッサとメモリの結果のみを掲載している。

プロセッサ Pentium 4-2.53GHz
グラフィックス・カード ATI RADEON 8500 64MB
LAN EtherExpress PRO/100+
サウンド AC'97 CODEC(オンボード)
ハードディスク Seagate Technology製ST360021A(Barracuda ATA IV)
ディスプレイ設定 1024×768ドット/32bitカラー、85Hz
テストに用いたシステム環境
 
D845GBV D850EMV2
Intel 845G Intel 850
SYSmark2002 Rating 233 241
Internet Content Creation 324 333
Office Productivity 168 174
3DMark2001 SE 9280 3DMarks 9418 3D Marks
PCMark2002 CPU 6198 6187
Memory 5328 6119
ベンチマーク・テストの結果

 PCMark2002の結果を見れば、やはり利用可能なメモリ帯域に差があることは明らかであるし、それが3DMarkやSYSmarkの結果につながっているわけだ。しかし、メモリの帯域差が約13%であるのに対し、ほかのベンチマーク・テストの差はおおむね3.5〜1.5%にとどまっていることから考えても、Intel 845Gは善戦しているといえるだろう。

 DDR SDRAMが十分な性能があると分かったところで、今度は内蔵グラフィックスの性能を、バリューPC向けの定番的な存在である2種類の外部AGPカードと比べてみることにした。ここでも実行したのは、上と同じ3種類のテストだ。ハードウェア構成は下表のとおり。

プロセッサ Pentium 4-2.53GHz
マザーボード D845GBV
メモリ 512Mbytes PC2100
LAN EtherExpress PRO/100+
サウンド AC'97 CODEC(オンボード)
ハードディスク Seagate Technology製ST360021A(Barracuda ATA IV)
ディスプレイ設定 1024×768ドット/32bitカラー、85Hz
テストに用いたシステム環境
 
     内蔵グラフィックス GeForce2 MX GeForce4 MX 420
  グラフィックス・メモリ UMA(DDR-266) 32Mbytes SDRAM(166MHz) 64Mbytes SDRAM(200MHz)
SYSmark2002 Rating 221 234 236
Internet Content Creation 303 320 329
Office Productivity 161 171 169
3DMark2001 SE 1474 3DMarks 2855 3DMarks 4094 3DMarks
PCMark2002 CPU 6135 6184 6169
Memory 4452 5144 5102
ベンチマーク・テストの結果

 さすがに3DMark2001 SEのスコアが悪いが、Intel 845GのグラフィックスだけがハードウェアT&Lをサポートしていないことを考えれば、これもやむを得ないところだろう。逆に、SYSmark2002のスコアはかなり健闘している。3Dグラフィックスを多用するようなアプリケーションでもない限り、十分な性能を持っているといえる。ビジネス・クライアントPCのプラットフォームとしては、コストパフォーマンスが高いチップセットといえるのではないだろうか。

 PCMark2002のメモリのスコアは、メイン・メモリだけでなく、グラフィックス・メモリに対するアクセスが含まれており、スコアの差はこれを反映したものになっている。しかし、これでも十分なスコアではないかと思う。ただ、これには今回用いたメモリがDDR-266メモリであることもかなり貢献しているハズだ。Intel 845GでPC133 SDRAMをサポートしたマザーボード/システムが登場するとは思えないが、Intel 845GLならこの組み合わせも可能性がある。この場合にどれくらいの性能が落ちるのか気になるところだ。

USB 2.0の性能を検証する

 ベンチマーク・テストの最後は、USB 2.0だ。当面、USB 2.0で最も高速かつ大量のデータを転送する可能性があるのはストレージ・デバイスである。しかし、MicrosoftがUSB接続されたハードディスクへのWindowsインストールをサポートしないなど、今後ともネイティブ・インターフェイスがUSB 2.0のストレージ・デバイスが登場してくるとは考えにくい。とはいえ、現時点でハードディスク以上に高速なデバイスも考えにくいため、Maxtor製の7200RPMのドライブ(DiamondMax Plus 60の30Gbytesタイプ)を、ラトックシステム製のUSB 2.0対応ディスク・ケース「RS-U2EC5X」に収め、660480KbytesのMPEG2ファイルをコピーするテストを行った。なおRS-U2EC5Xは、In-System製のUSB-ATAブリッジ・チップ「ISD-300A1」が実装されており、ハードディスクのATAインターフェイスをUSB 2.0に変換している。

 比較したのは、D845GBVのICH4でUSB 2.0対応ドライバをインストールする前とあと(USB 1.1モードとUSB 2.0のHigh Speedモードを強制的に作り出した)、それからD850EMV2にも搭載されている日本電気製のUSB 2.0ホスト・コントローラ・チップ(mPD720100)を用いたPCIのアダプタ・カードの3種だ(本稿執筆時点でMicrosoftが配布しているUSB 2.0のドライバ・パッケージでサポートされているのは、日本電気製ホスト・コントローラ・チップとICH4だけ)。また、参考までに同じハードディスクをICH4のATAインターフェイスに直結した場合とも比べてみた。

 その結果が以下のグラフである。ICH4内蔵のUSB 2.0ホスト・コントローラは、UHCI互換USB 1.1ホスト・コントローラの約12倍の性能を示している。また、現時点で最もポピュラーな日本電気製ホスト・コントローラ・チップを用いたPCIカードも、ICH4のUSB 2.0ホスト・コントローラとほぼ同じレベルの性能であった。ただ、同じハードディスクをATAインターフェイスで直結した場合は、2倍近い性能が出ている。換算されるデータ転送速度がUSB 2.0のピーク・データ転送速度である480Mbit/s(60Mbytes/s)に遠く及ばないことからして、USB 2.0の規格とハードディスク以外のどこかにボトルネックがあることも間違いない。果たしてそれがホスト・コントローラ(ICH4およびmPD720100)なのか、今回用いたUSB 2.0対応ディスク・ケースが用いているIn-System製のブリッジ・チップなのか、はたまたMicrosoftのUSBドライバなのか、このテストでは判断することができない。

USB 2.0のデータ転送速度
PCIアダプタ・カードは、日本電気製のUSB 2.0ホスト・コントローラ(μPD720100)を搭載したもの。ATA内部接続は、システム起動ディスクとは異なるATAチャネルに同じハードディスクを接続したものである。

 それでも、ICH4の採用によって、実効データ転送速度が軽く10Mbytes/sを超える外付けインターフェイスが、事実上タダで手に入るようになったのも事実だ。これだけの帯域があれば、書き換え型DVDドライブも問題なく使える。取りあえずバックアップのオプションは増えるし、無料でインターフェイスが配布されることで、これに対応した周辺機器(特に広帯域を必要とするイメージ関連機器)が多く登場することが期待できる。

 また、直接USB 2.0とは関係ないが、D845GBVのBIOSはUSBデバイスからのシステム起動に対応しており、筆者の手元にあるUSB 1.1対応のSuperDiskドライブ(LK-RF240U)からシステムを起動することが可能だった(D850EMV2にもUSB BootのオプションがBIOSセットアップに用意されているが、LK-RF240Uのシステム起動はできなかった)。PCケースから3.5インチ・フロッピードライブ用のベイが消える日が近づいてきているようだ。記事の終わり

 

 INDEX
  Pentium 4の新チップセット「Intel 845G」の機能と性能
    1.Intel 845Eシリーズの位置付け
    2.Intel 845Gのグラフィックス機能の特徴
    3.Intel 845Gの性能と評価
  4.ベンチマーク・テストの結果
 
 「System Insiderの解説」


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