解説

変更されたItaniumプロセッサのロードマップに見るIntelの思惑

デジタルアドバンテージ
2003/01/21

解説タイトル


 2003年1月16日、IntelはItaniumプロセッサ・ファミリ(IPF)のロードマップを更新した。ここでは、公開された新しいロードマップがハイエンド・サーバ市場に与える影響について考察する。また、次世代Itaniumについて明らかになった事実を合わせて紹介しよう。

新しいIPFロードマップの内容

 まず、以前のIPFのロードマップを整理しておこう。2003年には、0.13μmプロセス製造による開発コード名「Madison(マディソン)」と「Deerfield(ディアフィールド)」と呼ばれるItanium 2が、2004年には90nm(=0.09μm)プロセス製造による開発コード名「Montecito(モンテシト)」が、出荷される予定であった。今回のロードマップでは、2003年の予定に変更はないものの、Montecitoを2005年に延期し、その代わりにMadisonの内蔵3次キャッシュを9Mbytesに拡張した「Madison 9M」を出荷することとした。

変更となったIPFのロードマップ
ポイントは、Montecitoが2005年に延期され、それがデュアル・コアを採用することになったこと。それにともない、2004年にはMadisonの内蔵3次キャッシュの増量と動作クロックの向上が行われることになる。

 また、2005年に延期されたMontecitoは、90nmプロセス製造によるデュアル・コアとすることを明らかにしている。Intelは、IDF(Intel Developer Forum)などでIPFに対してデュアル・コアとマルチスレッディング・テクノロジ*1を適用する可能性について述べてきていた。今回のロードマップ変更で、Montecitoにデュアル・コアが適用されることが明らかになったわけだ。Intelは今回のロードマップ変更について、「2005年時点でのデュアル・コアの製造にメドがついたこと」を理由として挙げている。なお当初のロードマップでは、Montecitoは90nmプロセス製造であったが、シングル・コアであった。Montecitoという同じ開発コード名ではあるものの、以前のロードマップとはまったく異なる製品となっている。

*1 1つのプロセッサをOSやアプリケーションからあたかも複数のプロセッサのように見せ、複数のスレッドを実行させる技術。IntelはすでにIntel Xeon/Xeon MP、Pentium 4で、マルチスレッディング技術の1種であるHyper-Threadingテクノロジをすでに採用している。IPFに採用されるマルチスレッディング・テクノロジは、Hyper-Threadingとは異なるものになるようだ。

 さて、ここで新しいロードマップをベースに2005年までのロードマップを整理しておこう。2003年の夏頃(7月前後)に出荷予定であるMadisonは、0.13μmプロセスで製造され、動作クロックは1.5GHz、内蔵する3次キャッシュは6Mbytesとなる。これらにより、既存のItanium 2に対して、30〜50%の性能向上が実現するとしている。

 2003年には、Madisonの派生品として、廉価版となるDeerfieldがラインアップされることになっている。Deerfieldの詳細は明らかになっていないが、内蔵する3次キャッシュが減り(3Mbytesといわれている)、SMP構成はデュアルプロセッサまでに制限されるようだ。その分、現在のItanium 2のエントリ・モデルである動作クロック900MHz、3次キャッシュ1.5Mbytesモデルの16万6250円よりも、大幅に価格が引き下げられることが期待されている。なお出荷時期は、Madisonから若干遅れ、2003年末になる予定だ。Deerfieldの登場により、これまでハイエンド・サーバ/ワークステーション向けであったIPFが、現在のIntel Xeon/Xeon MPの領域(ミッドレンジ・サーバ/ワークステーション)までカバーすることになる。

 2003年は、IPF対応のサーバOSとして、64bit版Windows Server 2003が正式に加わることになる(現在は、Limited Editionであり、サポートや機能などに一部制限がある)。さらにSQL Serverなど、対応製品が次々とリリースされる予定である。すでにLinuxやHP-UXなどについては、対応OSは出荷されており、研究所や企業のデータベース・サーバとしての導入も始まっている。ただ、多くの企業にとってIPFは、様子見の段階である。実際、RISC/UNIXサーバと対等に争えるほどのソリューションが揃っている状態ではないため、様子を見るしかないという面もある。こうした状況は、Windows Server 2003の登場により、大きく変わることが期待されている。RISC/UNIXサーバにはない、IA-32プロセッサで作られた多くのWindowsソリューションが、IPFに移植される可能性があるからだ。低価格なDeerfieldの登場は、こうしたWindowsソリューションの裾野を広げる可能性がある。

 2004年に出荷予定のMadison 9Mは、Madisonと同様、0.13μmプロセスで製造される。内蔵3次キャッシュは9Mbytesと、Madisonの1.5倍となり、動作クロックも1.5GHz以上(2GHz前後と思われる)となる。Deerfieldに対応するプロセッサの2004年の予定が明らかになっていないが、当然ながら廉価版が用意されることになるだろう。なおMadison 9Mまでは、製品名として「Itanium 2」が使われ、現在のItanium 2プラットフォームと完全な互換性を持つことが約束されている。これは現在のItanium 2を購入しても、プロセッサ・アップグレードにより、Madison 9Mまでは性能アップが図れることを意味する。

 今回明らかになったMontecitoは、2005年に前述のようにデュアル・コアで登場する。Montecitoは、Itanium 2と同じ「PAC611」と呼ぶパッケージを採用し、同じバス・プロトコルとなることも明らかになった。チップセットならびにファームウェアが、現在のItanium 2プラットフォームと互換性があるのかどうかは明らかにしていない。だが、同じバス・プロトコルであることから、少ない改変で対応可能なものと思われる。当然、性能面でも大幅な向上が期待される。

 今回のロードマップ変更と合わせて、Intelでは並行して6製品のIPFを開発中であるという点も明らかにしている。開発コード名が公開されているMadison、Deerfield、Madison 9M、Montecitoの4製品に加え、開発コード名が明らかになっていないMadison 9Mに対する廉価版、Montecitoの次世代製品ということのようだ。現在、2006年に出荷予定の製品までは開発を行っていることになる。

ロードマップ変更の意味

 Montecitoが採用するデュアル・コアについては、すでにIDFなどで、研究・開発中であることを公表していた。IBMのPOWER4は、すでにデュアル・コアであり、目新しい技術ということではない。しかし、なぜ現時点で前倒しをすることを公表したのであろうか。

 ハイエンド・サーバは、一度導入されれば、4年以上にわたって使われることになるし、開発したアプリケーションは大事な資産としてさらに長期間使われることになる。ハイエンド・サーバ本体だけでなく、ソフトウェア資産を含めると、企業の投資は莫大なものとなる。ハイエンド・サーバ市場において新参者のIPFを採用するということは、こうした資産をユーザーならびにサーバ・ベンダが新たに作り込むことを意味する。しかし製品の出荷や性能向上が、継続的に行われることが保証されなければ、だれもIPFに莫大な投資をしようとは考えないだろう。つまり現在のItanium 2を販売するためにも、数年先のロードマップを明らかにし、企業に継続的な投資が有効であることを示さなければならないわけだ。

 今回Intelは、2005年のデュアル・コア対応を明らかにしたことで、2005年以降もIPFの性能を向上させ続けることを示したことになる。マルチスレッディングなど、まだ導入が決まっていない、研究中の技術も残されている。IPFの普及によって、高嶺の花であったハイエンド・サーバが少しでも身近なものになるのかどうか、廉価版の行方などを含め、今後とも注目していく必要があるだろう。記事の終わり

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