解説

チップセットがサポートするソフトウェアRAIDの実用性

2.ベンチマーク・テストの結果

元麻布春男
2003/08/12

解説タイトル


PCMark2002の結果

 PCMark2002は、プロセッサやメモリ、ハードディスクのコンポーネントごとにテストを行い、システム性能を示すベンチマーク・テストだ(FutureMarkの「PCMark2002の製品情報ページ」)。ここでは、PCMark2002の中からハードディスクのテスト結果のみを示す。

PCMark2002のHD Score
ハードディスクの総合性能。RAID 0がずば抜けて高いことが分かる。その一方で、RAID 1の性能がハードディスク1台の場合とそれほど変わらないことも見て取れる。

■ファイルの書き込みテスト
 1Kbytesから128Mbytesの18個のファイルを書き込み、その平均書き込み性能(単位はMbytes/s)を計るテスト。18個のファイルは、新たに作られたディレクトリに対してランダムに書き込まれるため、ランダム書き込みがシミュレートされるとしている。また、テストでは1Mbytesのメモリをバッファとして確保し、そこに常にデータを書き込んでいる。1Mbytesよりも大きなファイルの場合は、複数回に分けて、このバッファを利用する。このバッファの利用方法で、「Cached file write」と「Uncached file write」の2種類のテストが用意されている。「Cached file write」では、ハードディスクへの書き込みの前に常にバッファに対して書き込みを行う。「Uncached file write」では、常にバッファを消去してからファイルの書き込みを行うテストである。通常、「Uncached file write」よりも「Cached file write」の方が遅い結果となる。

PCMark2002のCached file write
ファイルの書き込み性能。次の「Uncached file write」と比較すると分かるように、RAID 0とそのほかの差が小さい。それでも、RAID 0の性能の高さは際立っている。
 
PCMark2002のUncached file write
ファイルの書き込み性能。RAID 0の性能が高く、RAID 1は2台のハードディスクへの書き込みが必要なためか、若干性能が落ちている。

■ファイルの読み出しテスト
 書き込みテストで用いたディレクトリを用いて、ファイルの読み出しを行い、その平均読み出し性能(単位はMbytes/s)を計るテスト。書き込みテストと同様に1Mbytesのメモリをバッファとして確保する。このバッファの利用方法で、「Cached file read」と「Uncached file read」の2種類のテストが用意されている。「Cached file read」では、ハードディスクからのファイル読み出し時に、バッファにもそのデータのコピーを作成する。「Uncached file read」では、バッファへのコピー作成は行わない。通常、「Uncached file read」よりも「Cached file read」の方が遅い結果となる。

PCMark2002のCached file read
ファイルの読み出し性能。RAID 0の性能が高いのはもちろん、ハードディスクが1台の場合に比べてRAID 1の性能も高くなっている。
 
PCMark2002のUncached file read
やはりRAID 1の性能が高い。読み出しでは、RAID 1の性能が向上すると思われたが、意外と値が低い。

■ファイルのコピー
 異なるディレクトリ名へファイルをコピーするテスト(単位はMbytes/s)。読み出しと書き込みの総合性能を計る。ファイルのコピー後、一時ファイルは削除される。

PCMark2002のFile copy
ファイル・コピーの性能。RAID 0は、読み書きとも性能がよかったため、当然の結果である。一方、RAID 1は書き込み性能が低いことが影響してか、ハードディスク1台に対して若干性能が落ちている。
 
  SATA 1台(IAAなし) SATA 1台(IAA 3.5) SATA 2台(RAID 0) SATA 2台(RAID 1)
HDD Score 921 938 1426 930
Cached file Write 24.0Mbytes/s 25.1Mbytes/s 31.9Mbytes/s 23.2Mbytes/s
Uncached file write 38.7Mbytes/s 38.4Mbytes/s 73.0Mbytes/s 36.6Mbytes/s
Cached file Read 31.3Mbytes/s 31.8Mbytes/s 43.5Mbytes/s 38.4Mbytes/s
Uncached file read 38.7Mbytes/s 38.4Mbytes/s 62.3Mbytes/s 36.1Mbytes/s
File copy 10.6Mbytes/s 11.1Mbytes/s 17.7Mbytes/s 9.2Mbytes/s

参考:HDBench Ver3.40 beta6

 参考として、EP82改/かず氏作成のディスク・ベンチマーク・テストの結果も示す。結果は、PCMark2002と同様、RAID 0の性能が高いという結果となった。ランダム読み出しに関しては、なぜかRAID 1の性能が高いが、原因は不明だ。

  SATA 1台(IAAなし) SATA 1台(IAA 3.5) SATA 2台(RAID 0) SATA 2台(RAID 1)
読み出し 37869Kbytes/s 37007Kbytes/s 63602Kbytes/s 30476Kbytes/s
書き込み 38309Kbytes/s 38095Kbytes/s 78890Kbytes/s 37426Kbytes/s
ランダム読み出し 14959Kbytes/s 14659Kbytes/s 20157Kbytes/s 20868Kbytes/s
ランダム書き込み 19737Kbytes/s 17759Kbytes/s 35225Kbytes/s 17379Kbytes/s

 この結果を見ると、RAID 0の性能が高いことが分かる。ビデオ編集などの高いハードディスク性能を求める場合は、容量の大きなハードディスク1台よりも半分の容量のハードディスクを2台接続して、RAID 0構成とした方がよいことが分かる。しかし、RAID 0では冗長性がなく、1台のハードディスクが故障した時点ですべてのデータが失われることに注意したい。一方、RAID 1は思ったよりも性能の低下が低いことが分かった。ほぼハードディスク単体の性能と同等といえるだろう。記事の終わり

  関連リンク 
PCMark2002の製品情報ページ
 
 

 INDEX
  チップセットがサポートするソフトウェアRAIDの実用性
    1.IAA 3.5によるソフトウェアRAIDの構築と性能
  2.ベンチマーク・テストの結果
 
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