解説

変革期にサーバをどう選択するか?

デジタルアドバンテージ 小林 章彦
2005/07/09
解説タイトル

 64bit対応やデュアルコア化、PCI Expressの登場など、サーバが大きく変革する時期に入ってきている。すでに2004年末にはWindows NT Server 4.0のサポートが終了し、2005年6月末にはWindows 2000が延長サポート・フェイズに移行した。Windows NT Server 4.0を搭載したサーバは、もはやリプレイスが待ったなしの状況にある。単にOSをWindows NT Server 4.0からWindows Server 2003にアップグレードするだけで済めばよいが、性能や機能、信頼性などの点でサーバ自体のリプレイスが必要になることも多いだろう。またWindows 2000 Serverのリリース当初に導入したサーバも、稼働開始から5年が経過しており、そろそろリプレイスを検討する時期に入っている。そこで、ここでは2005年後半から2006年前半にかけてサーバを選ぶ際のポイントを解説する。

デュアルコア・プロセッサのサポート状況は?

 2005年4月に発表されたIntelの「Pentium Processor Extreme Edition 840(Pentium XE 840)」とAMDの「デュアルコアAMD Opteronプロセッサ 800シリーズ」によって、x86アーキテクチャのデュアルコア化がスタートした。デュアルコアの効果は、アプリケーションによって大きく異なるが、サーバのように同時に複数のトランザクションが発生するような用途では、デュアルコアによって大幅な性能向上が見込める可能性が高い。

 またデュアルコア化によって、これまでの2ウェイ・サーバが4ウェイ・サーバと同等の性能を得ることができるため、サーバの導入コストを大きく下げられる可能性がある。特にIntel Xeon MPでは、プロセッサ・バスの仕様から、8ウェイ・サーバとなると独自チップセットを開発する必要があるなど、システムが高価になりがちであった。しかし、デュアルコア版Intel Xeon MP(開発コード名:Paxville)を搭載すれば、4ウェイ・サーバでも、8ウェイ・サーバと同等の性能を得ることが可能になる。2005年3月にIntelが出荷したIntel Xeon MP向けチップセット「Intel E8500」は、すでにデュアルコアに対応している。Intel E8500を採用したサーバならば、2006年第1四半期に出荷予定のPaxville(パックスビル)にプロセッサを交換するだけで、大幅な性能向上が期待できることになる。4ウェイ・サーバ・クラスでスケーラビリティを求めるのならば、Intel E8500を採用したサーバを購入しておき、Paxvilleに交換するという方法がある。ただしPaxvilleへのアップグレードがベンダによってサポートされるかどうかは、事前にサーバ・ベンダに確認しておいた方がよい。また、「解説:バラ色ばかりとはいえないサーバ・プロセッサのデュアルコア化」で述べているように、ソフトウェア・ライセンス料をコア単位で算出する一部のサーバ・ソフトウェアでは、デュアルコア・プロセッサに置き換えただけで、デュアルプロセッサと同等のソフトウェア・ライセンス料が課せられる場合があるので注意が必要だ。

Intel Xeon MP向けチップセット「Intel E8500」
4ウェイ・サーバ向けチップセットで、プロセッサ・バスを2つの分離することで、デュアルコア版Intel Xeon MPに対応している(Intel Xeon MPでは、1本のプロセッサ・バスで2プロセッサまでしかサポートできないため)。Intel E8500採用のサーバならば、Paxvilleに対応できるとしている(BIOSアップデートが必要な可能性もある)。

 なお2ウェイ・サーバ向けのIntel Xeonは、デュアルコア化とともに開発コード名「Bensley(ベンスレー)」で呼ばれる新プラットフォーム(チップセット)への移行が予定されている。現行のIntel E7520/E7320では、デュアルコア版Intel Xeonはサポートされない予定だ。つまり現行の2ウェイ・サーバには、デュアルコアへのアップグレード・パスはないことになる。デュアルコア化によるスケーラビリティを求めているのであれば、デュアルコア版Intel Xeonがリリースされてからサーバ導入を考えた方がよい。

 ちなみにBensleyでは、Intel Virtualization Technology(VT)、I/O Acceleration Technology(I/OAT)、Intel Advanced Management Technology(iAMT)といった新機能がサポートされる。VTはコンピュータの仮想化を支援する機能で、次期Windows「Longhorn」などでサポートされる予定となっている。I/OATはI/O処理を最適化する技術で、TCP/IP処理におけるプロセッサ負荷を大幅に減らすことができるとしている。iAMTはシステム管理を容易にする技術で、サーバの状況(電源オン/オフなど)にかかわらず、リモートで管理ができるようになる。またメモリは、従来のDDR/DDR2 SDRAM DIMMからFull Buffered DIMM(FB-DIMM)と呼ばれる新しいモジュールに変更となる。このようにBensleyでは、新技術の採用やメモリモジュールの変更などが行われるためシステムが安定するまで時間がかかる可能性もある。安定した環境を重視するのであれば、現行のIntel E7520/E7320を導入するというのも1つの選択といえるだろう。

デュアルコアAMD Opteronという選択

 いますぐに安価な8ウェイ・クラスのサーバが必要ならば、デュアルコアAMD Opteron 875/865搭載の4ウェイ・サーバを選択するという手もある。ただデュアルコアAMD Opteronに対応している大手サーバ・ベンダは日本ヒューレット・パッカード(日本HP)のみで、対応モデルも4Uラックマウント型サーバ「HP ProLiant DL585」とブレード・サーバ「HP ProLiant BL45p」しかなく、選択肢が限られる。同様に2ウェイ・サーバも日本HPの2Uラックマウント型サーバ「ProLiant DL385」と日本IBMの1Uラックマウント型サーバ「eserver 326」でデュアルコアAMD Opteron 200シリーズが選択できる程度だ(このほか、日本HPのブレード・サーバ「ProLiant BL25p/BL35p」でデュアルコアAMD Opteronが選択可能)。このように現時点では、デュアルコアAMD Opteronに対する選択肢が少なく、拡張性やフォームファクタなどが用途にマッチしていない場合は選択しにくい現状にある。

PCI Expressの離陸はしばらく先

 Intel E7520/E7320でサーバでもPCI Expressのサポートが開始された。しかし拡張カードとなると、ギガビット・イーサネット・カードやInfiniBandアダプタ、ファイバ・チャネル・ホスト・アダプタなど、種類や各インターフェイスの選択肢が少ない。現在販売されているPCI Expressサポートをうたったサーバは、PCI/PCI-Xもサポートしており、PCI/PCI-X用拡張カードが利用できるため、PCI Expressの拡張カードの種類が少ない点を気にする必要はない。だが、PCI Expressをサポートしているために、ほとんどのサーバが以前のものに比べて、PCI/PCI-Xの拡張スロットの本数が少なくなっている点に注意が必要だ。既存のPCI/PCI-Xの拡張カードを生かしたかったり、多くの拡張カードを差す必要があったりする場合には、PCI/PCI-Xの拡張スロット数を確認しておいた方がよい。

 今後、PCI Express対応の拡張カードが増えてくると思われるが、現在のPCI/PCI-X並みにそろうのは数年かかるだろう。それまではPCI/PCI-XとPCI Expressが共存することになる。今後導入するサーバでは、PCI/PCI-XとPCI Expressの拡張スロット数に気を付けた方がよい。

シリアル・インターフェイスに移行するハードディスク

 ハードディスクも、既存のIDEやSCSIからシリアル・インターフェイスのシリアルATA(SATA)やSerial Attached SCSI(SAS)への移行が予定されている。すでにデスクトップPCではIDEディスクからSATAディスクへの移行が始まっており、エントリ・クラスのサーバの一部でSATAディスクが採用され始めている。SASディスクも富士通やMaxtorから対応製品が発表されており、日本IBMの3Uラックマウント型サーバ「eserver xSeries 460」や日本HPの「ProLiantファミリ」6機種がSASディスク搭載モデルをラインアップしている。日本HPではストレージ製品として、SAS対応の外付け型ストレージ「StorageWorks Modular Smart Array 50」とRAIDコントローラ「Smartアレイ P600コントローラ」もラインアップに加えている。

 SASは、SATAの上位互換を実現しており、SASインターフェイスにSASディスクとSATAディスクの両方を接続することが可能になっている。これにより、性能や信頼性を重視する用途にはSASディスク、コストパフォーマンスを重視する用途にはSATAディスク、といったように両者を組み合わせて選択ができるようになる。将来的には、ミドルレンジ以上のサーバではSASがディスク・インターフェイスの標準になるものと思われる。

日本HPのProLiant DL385 SASモデル
デュアルコアAMD Opteron 200シリーズのサポートと同時に、SASディスクのサポートが行われた2Uラックマウント型サーバ「ProLiant DL385 SASモデル」。ホットスワップに対応した2.5インチSASディスクを最大8基内蔵可能だ。

 このように2005年から2006年にかけて、サーバは大きく変わる時期に入った。新機能によって性能や使い勝手が大きく向上するわけだが、一方でこうした変革期には互換性の問題なども生じやすい。信頼性が重視されるサーバでは、とかく保守的な機種選択が行われがちだ。半面、機能や将来性を考慮すると、当然ながら最新のサーバの方が望ましい。そういった意味では、サーバの選択が難しい時期に入ったといえるだろう。記事の終わり

  更新履歴
【2005/07/11】初出において、「ただデュアルコアAMD Opteronに対応している大手サーバ・ベンダは日本ヒューレット・パッカード(日本HP)のみで、モデルも「HP ProLiant DL585」しかなく、選択肢が限られる。」とありましたが、ブレード・サーバ「HP ProLiant BL45p」もデュアルコアAMD Opteronに対応していました。お詫びして訂正させていただきます。
 
  関連記事 
バラ色ばかりとはいえないサーバ・プロセッサのデュアルコア化

  関連リンク 
SAS対応製品の販売開始に関するニュースリリース
Serial Attached SCSIに関する技術情報
 
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