解説

サーバ内蔵ハードディスクの最新トレンド(2006年版)

デジタルアドバンテージ 小林 章彦
2006/02/14
解説タイトル

 サーバ内蔵のハードディスクというと、これまでは3.5インチでSCSIを採用しているものが圧倒的に多かった。これは、信頼性とディスクの本体サイズ、性能面のバランスが優れていたことによる。ここ3年ほどは、エントリ・クラスのサーバでは、3.5インチのIDEインターフェイスを採用したハードディスクを搭載する例も増えてきたが、ミドルレンジ以上では圧倒的にSCSIが主流であった。この状況は、5インチから3.5インチに移行した15年ほど前から変わっていない。

 クライアントPCのハードディスクがIDEからシリアルATA(SATA)に移行しつつあるように、サーバに内蔵されるハードディスクも大きく変わり始めようとしている。ここでは、今後のサーバのハードディスクの移行状況について解説しよう。

サーバ内蔵ハードディスクはSCSIからSASへ

 年々、ハーディスクの容量や性能は向上する一方、ハードディスク・インターフェイスであるIDEやSCSIの進化は頭打ちとなり、ここ数年大きな仕様の変更はなされなかった。これは、IDEやSCSIが利用していたパラレル・インターフェイスの限界に近付きつつあるからだ。パラレル・インターフェイスでは、データの転送に複数の信号線を利用する。例えば、1本の信号線に1bitのデータを割り当て、n本の信号線でn bitsのデータを同時に転送する、といった具合だ。このしくみでは、信号を載せるクロックが速くなると、各信号線におけるデータ伝達のバラツキ(クロック・スキュー)などが問題になり始める。データ転送性能を引き上げるには、ケーブル長を短くするなどしてクロック・スキューなどの発生を抑えるか、信号線を増やす(同時に転送するデータ量を増やす)のどちらかを選択することになる。しかしケーブル長を短くすると、コンピュータ本体内でのハードディスクの搭載位置や接続台数に制限が生じるし、信号線を増やすとケーブルが太くなり、エア・フローの悪化などを招いてしまう。このように、パラレル・インターフェイスの性能はもはや限界に達しつつある。

 そこで、新たにシリアル・インターフェイスを採用したハードディスク・インターフェイスが開発された。シリアル・インターフェイスは、クロック・スキューなどの問題がないため、データ転送性能が引き上げやすく、ケーブル本数も少なくて済むというメリットがある。一方でコントローラなどの負荷が高くなるというデメリットがあるが、その点は半導体技術の進歩により十分にカバー可能だ。

 すでにクライアントPCでは、IDEの後継としてシリアルATA(SATA)が普及し始めている。同様にサーバでは、SCSIからシリアル・アタッチドSCSI(SAS)への移行が2006年後半から本格的に始まりそうだ。SASでは、SATAと互換性を持つコネクタを採用しており、SASデバイスとSATAデバイスの両方を接続できるシステム設計が可能となっている。つまりSASを採用したサーバでは、SASドライブだけでなく、SATAドライブをSASコネクタに直接差すことができるわけだ(ホスト・コントローラやバックプレーンなどがSATAをサポートしている必要がある)。そのサーバが求める性能や信頼性、コストなどに応じてSATAドライブかSASドライブのどちらからかを選択できるため、柔軟なシステム構成が可能になる。

インターフェイス 伝送方式 データ転送速度 ケーブル/ピン数/ケーブル最大長 接続
IDE パラレル 133Mbytes/s ワイド・リボン/40または80ピン/約0.457m チャネル当たり2ドライブ
SCSI パラレル 320Mbytes/s ワイド・リボン/68ピン/12.5m(LVD) チャネル当たり最大15デバイス
SATA シリアル 150Mbytes/s〜600Mbytes/s(将来) 細いラウンド・リボン/4ピン/1m チャネル当たり1ドライブ
SAS シリアル 300Mbytes/s〜1200Mbytes/s(将来) 細いラウンド・リボン/6m 128デバイス(エクスパンダの使用で1万6000デバイスまで接続可能)
表区切り
ハードディスク向けパラレル・インターフェイスとシリアル・インターフェイスの主な違い

 すでに、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)ではIAサーバ「ProLiant」シリーズの複数のモデルでSAS対応モデルをラインアップしている。また日本IBMでは1Uラックマウント型サーバ「xSeries 336」で、サン・マイクロシステムズもAMD Opteron搭載の2Uラックマウント型サーバ「Sun Fire X4200」でSASを採用している。今後、デルなどのほかのベンダへも広がっていくと考えられる。

 ハードディスク・ベンダも、SASへの対応を積極的に進めている。Seagate Technologyはエンタープライズ向けハードディスクの「Cheetah」「Savvio」の2シリーズですでにSASモデルをラインアップしており、日立グローバルストレージテクノロジーズも「Ultrastar 15K147シリーズ」でSASのサポートを開始している。富士通は、2006年1月13日に発表した「ハードディスク・ドライブ事業の強化について」において、サーバ向けハードディスクとして「成長の著しいSASに集中する」としている(富士通のニュースリリース「ハードディスクドライブ事業の強化について」)。今後、サーバ向けのハードディスクは、エントリ向けはSATA、ミドルレンジからハイエンド向けはSASとファイバ・チャネル(FC)ということになるだろう。

ディスク・サイズは3.5インチから2.5インチへ

 インターフェイスのIDE/SCSIからSATA/SASへの移行と同時に、フォームファクタも3.5インチから2.5インチへと移行が起こりそうだ。これまで、10年以上に渡ってサーバ内蔵のハードディスクは3.5インチが主流であった。ブレード・サーバの登場で、サーバでも2.5インチ・ハードディスクが搭載されるようになったものの、あくまでも主流は3.5インチだった。しかし2005年になって一部のラックマウント型サーバでSASの2.5インチ・ハードディスクが採用され、SATA/SASの普及とともに2.5インチへの移行が見え始めた。

 2.5インチ・ハードディスクは、3.5インチに比べて本体容積が70%以上小さく、消費電力も40%ほど低い。2.5インチ・ハードディスクならば1Uラックマウント型サーバであっても、4台のハードディスクが搭載できるようになる。その際の消費電力も、3.5インチ・ハードディスク3台分よりも低く済む。

 2.5インチ・ハードディスクは、3.5インチ・ハードディスクに比べてディスク容量が小さいというデメリットもあるが、ディスクの記録密度も向上しており、容量的にも実用で困らないレベルに達している。またバイト単価が高い、という不利な点もあるが、2.5インチ・ハードディスクが普及することで価格は下がっていくものと思われる。

 2006年後半は、SATA/SASの本格的な普及と2.5インチ・ハードディスクへの移行が同時に起きることになるだろう。

RAID 6に普及の兆し

 これまでサーバのRAID方式としては、主にRAID 1(ミラーリング)とRAID 5(分散データ・ガーディング)が用途によって使い分けられてきた。例えば、システム・ディスクなどのように復旧に時間がかかると運用に支障が出るものについてはRAID 1で、データなど冗長性に加えてディスク容量が重要なものについてはRAID 5で、といった具合だ。2006年には、データ向けのRAIDとして、RAID 6の利用が増えそうだ。

 これはRAID 5では、1台のハードディスクが故障し、復旧のためにリビルド作業をしている途中で別のハードディスクが故障してしまい、結局データが復旧できない可能性が無視できなくなっているからだ。RAIDを構成するハードディスクは、同じ時期に製造した同じ型番の製品を利用することが多く、まれに同時に故障してしまう。こうした場合、1つのデータ・ブロックにつき1つのパリティしか生成しないRAID 5では、残念ながらデータを復元することができなくなってしまう。特に大容量のストレージが求められる現在では、1つのRAIDボリュームを構成するハードディスクの台数が多くなりがちで、同時に2台以上の故障が発生する危険性も高くなる傾向にある。

 このような場合でも、1つのデータ・ブロックについて2つのパリティを生成するRAID 6ならば、同時に2台のハードディスクが故障しても、元のデータを修復可能だ。しかし、パリティが増える分、その計算や書き込みのオーバーヘッドも増加するため、特に書き込みの性能はRAID 5に比べて落ちる。またパリティ用に2台分のディスク容量を必要とするため、ディスクの利用効率もRAID 5より下がることになる。例えば、容量300Gbytesのハードディスク6台でRAID 6を構築する場合、実効ディスク容量は4台分の1.2Tbytesになる(RAID 5なら1.5Tbytes)。RAID 6を構成するためのハードディスク数も、最低で4台必要になる(RAID 5なら3台)。

 パリティの計算や実効ディスク容量、構成に必要なディスク台数などの制限から、これまでRAID 6はほとんど利用されてこなかった。しかしプロセッサやRAIDコントローラの性能向上により、パリティの計算はそれほど負荷にならなくなった。また前述のように2.5インチ・ディスクへの移行により、1Uラックマウント型サーバでも4台以上のハードディスクが搭載可能になっている。実効ディスク容量が減るデメリットはあるものの、ハードディスク自体の容量が大きくなっていることから十分にカバー可能だ。このように、RAID6普及を阻んでいた数々の問題が解決されれば、より高い信頼性が求められる領域において、今後はRAID 6のサポートが増えてくるだろう。

 2006年後半からのトレンドは、2.5インチSASドライブをRAID 6で内蔵するということになりそうだ。これからサーバを導入する際は、ハードディスクのインターフェイスや搭載可能なサイズなども検討の材料にした方がよいだろう。記事の終わり

  関連リンク 
ハードディスクドライブ事業の強化について
 
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