解説

新Intel XeonはAMD Opteronを打ち落とせるか?

デジタルアドバンテージ 小林 章彦
2006/07/15
解説タイトル

 2006年6月26日、当初はデスクトップPC向けからのリリースが予定されていたIntel Coreマイクロアーキテクチャ採用のプロセッサが、予定を2カ月ほど前倒しして、サーバ向けからリリースされた。Woodcrest(ウッドクレスト)Conroe(コンロー)Merom(メロム)の開発コード名で呼ばれる3兄弟は、それぞれサーバ向け/デスクトップPC向け/モバイル向けとして、各用途向けに最適化が行われるが、同じマイクロアーキテクチャを採用したプロセッサとして提供されることになる。

 サーバ向けプロセッサのブランド名は従来と同様、「Intel Xeon」が継承され、プロセッサ・ナンバとして5100番台が割り当てられる。つまり、Intel Coreマイクロアーキテクチャ採用のIntel Xeonは、「デュアルコアIntel Xeon 5100番台」ということになる。なお、デスクトップPC向けとモバイル向けプロセッサのブランド名は、「Intel Core 2」になることが明らかにされている。

 Intel Coreマイクロアーキテクチャについては、「解説:Intel Coreマイクロアーキテクチャの目指す世界」を参照していただきたいが、最大の特徴は性能だけでなく、電力効率の向上も目指していることだ。インテルのニュースリリースによれば、Intel Xeon 5160(動作周波数3GHz、TDP 80W)とデュアルコアIntel Xeon-2.80GHzとの比較において、Intel Xeon 5160は最大135%の性能向上と最大40%の消費電力削減を実現していると述べている。つまり2倍以上の性能向上を実現しながら、消費電力は半分近くまで低減しているということになる。価格的にもWoodcrestでは、Paxville(パックスビル)Dempsey(デンプシー)と同等に設定されているので、コストパフォーマンス的にも大幅に向上していることになる。

 デュアルコアIntel Xeon 5100番台の製品ラインアップは、下表のとおりである。

プロセッサ・ナンバ 動作周波数 システム・バス TDP 2次キャッシュ容量 価格(1000個ロット時)
5160
3GHz
1333MHz
80W
4Mbytes
9万7000円
5150
2.66GHz
1333MHz
65W
4Mbytes
7万9000円
5140
2.33GHz
1333MHz
65W
4Mbytes
5万2000円
5130
2GHz
1333MHz
65W
4Mbytes
3万6000円
5120
1.86GHz
1066MHz
65W
4Mbytes
2万9000円
5110
1.60GHz
1066MHz
65W
4Mbytes
2万4000円
表区切り
デュアルコアIntel Xeon 5100番台(Woodcrest)の製品ラインアップ

 このうち動作周波数と価格に注目すると、エントリ・クラスからハイエンドまで全6種類のフルラインアップでの提供になっていることが分かる。2006年5月23日にデュアルコアIntel Xeon 5000番台(開発コード名:Dempsey)がリリースされたばかりであることを考えると、デュアルコアIntel Xeon 5100番台のラインアップは、いままでにない展開だ。

 これまでのIntelは、新しいマイクロアーキテクチャを採用したプロセッサをリリースする際、上位モデルとして2〜3種類リリースし、順次、下位モデルに下ろしていき、既存のプロセッサと入れ替えるといった戦略を採用してきた。リリースしたばかりのプロセッサは、歩留まりが安定せず、フルラインアップを展開するには供給面に不安があるからだ。また既存のプロセッサが不良在庫になるのを防ぐといった意味でも、順次、上位から下位に展開していった方がよい。しかし今回は、Dempseyをリリースしたばかりだというにもかかわらず、一気にフルラインアップでリリースしている。これには、AMDに追い詰められたIntelが、Woodcrestで攻勢をかけたいという意気込みを感じる。逆にいえば、それほどIntelが追い込まれている状態にあるわけだ。

 実際、Woodcrestの発表会では、Intelのデジタル・エンタープライズ事業本部長 副社長 兼 サーバー・プラットフォーム事業部長のカーク・スカウゲン(Kirk Skaugen)氏がプレゼンテーションを行い、AMD Opteronとの消費電力当たりの性能比較を強調した。これまでIntelは、記者向け発表回など公式な場で、AMD製プロセッサに対するコメントや露骨な比較は避けてきた。今回このような説明が盛り込まれた背景には、競合戦略の大きな転換があるものと想像される。

カーク・スカウゲン事業部長のプレゼンテーション
AMD Opteronと性能を比較するなど、これまでのIntelでは考えられないプレゼンテーションを行った。

 またIntelのホームページ上でも、AMD Opteronと性能を比較したページを用意するなど、やはりIntelの強い対抗意識が感じられる(インテルの「インテル Xeon プロセッサー サーバーのパフォーマンス)。

サーバ購入はWoodcrestまで待ち

 このWoodcrestだが、プラットフォームはDempseyと同時にリリースされたIntel 5000X/5000P/5000Vチップセット(Bensleyプラットフォーム)に対応する。Bensley(ベンスレイ)プラットフォームは、デュアルコアIntel Xeon 5000番台(Dempsey)から2007年第1四半期リリース予定のクワッドコア(Clovertown:クローバータウン)、その次の45nmプロセス製造によるクワッドコア/デュアルコア・プロセッサまで複数世代に渡ってサポートすることが明言されている。ただ、途中でFB-DIMMのインターフェイスやプロセッサ・バスの動作クロックなどが変更される可能性もあるので、いまのBensleyプラットフォームが将来のプロセッサを搭載できることを保証するものではない点に注意してほしい。

 さてWoodcrestとDempseyは、同じBensleyプラットフォームに対応することから、両方を選択可能なサーバが販売される可能性がある(Dempsey搭載モデルを用意しないベンダも多いようだが)。この場合、どちらを選択すべきかが問題になる。

 前述のインテルの「サーバーのパフォーマンス」のページでは、AMD Opteronのほか、デュアルコアIntel Xeon 5080(Dempsey:3.73GHz)とも比較している。これを見ると、デュアルコアIntel Xeon 5160(Woodcrest:3GHz)は、デュアルコアIntel Xeon 5080(Dempsey:3.73GHz)に対して、平均して30%ほど速い(アプリエケーションによっては4%程度しか速くないものもある)。消費電力も、DempseyのTDP 130Wに対して、Woodcrestは65W(5160のみ80W)と半分である。消費電力の高さは、運用時の電力コストに大きく影響する上、発熱による障害の発生を低下させる効果もある(発熱が大きいと、それだけ熱によるチップや冷却ファン、ハードディスクの故障が増える)。

 原稿執筆時点では、同じサーバでDempseyとWoodcrestが選択可能なサーバがなく、単純に価格の比較ができないが、プロセッサ単体ではデュアルコアIntel Xeon 5080(Dempsey)とデュアルコアIntel Xeon 5160(Woodcrest:3GHz)で同じ851ドル(1000個ロット時)に設定されている。つまり、Woodcrestは性能向上や低消費電力化に対するプレミアを価格に上乗せしていないことが分かる。このことから、サーバの価格も、WoodcrestとDempseyでそれほど変わらないものと予想する。

 となると、当然ながら性能と消費電力面で優れているWoodcrestを選択するのが妥当ということになる。Woodcrest搭載が待てないというのであれば、エントリのDempsey(デュアルコアIntel Xeon 5050)搭載モデルを購入して、プロセッサを後からWoodcrestにアップグレードする、という手もある(サーバ・ベンダがこうしたプロセッサの交換を保証している場合に限られるが)。サーバ・ベンダがWoodcrestをほとんどのデュアルプロセッサ対応サーバにラインアップするまで少し時間がかかると思われるが、よほど切迫した状況にない限り、Woodcrest搭載まで待った方がよいだろう。

 このようにWoodcrestは、魅力的なプロセッサに仕上がっている。Woodcrestによって、デュアルプロセッサ対応サーバ領域ではAMD Opteronに奪われたシェアを取り戻すことができるかもしれない。しかしAMDもAMD64マイクロアーキテクチャを強化し、浮動小数点演算性能の向上や消費電力の低減などを予定していることから、当面は熾烈な争いが続くことになるだろう。まずはWoodcrestによって、IntelがAMDに奪われたサーバ向けプロセッサの地位を奪い返せるかどうかが、将来に向けた一つの試金石になるだろう。記事の終わり

  関連記事 
Intel Coreマイクロアーキテクチャの目指す世界

  関連リンク 
インテル Xeon プロセッサー サーバーのパフォーマンス
 
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