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急成長するネットワーク・ストレージ「SAN」「NAS」を整理する

デジタルアドバンテージ
2003/04/18


 景気の低迷からサーバの出荷台数/金額が減少を続ける中、SANやNASなどのネットワーク・ストレージ市場は堅調な成長を続けている。調査会社のIDCのレポートでも、2002年第4四半期の世界市場におけるSANの成長率は対前期比14%、NASは同4%と堅調である(IDCの「2002年第4四半期のストレージに関する調査結果」)。このようにネットワーク・ストレージが成長する背景には、サーバの利用形態の変化が挙げられる。

 これまでサーバのストレージ(ハードディスクやバックアップ装置)というと、ハードディスク(RAIDシステム)をサーバ本体に内蔵するか、もしくは外部ディスク・ユニットをSCSIインターフェイスで直結する(Direct Attached Storage:DAS)のが一般的であった。ところが、オープン・システムやサーバの多階層モデルの普及とともに、複雑化する管理を容易にしたいなどの理由から、分散するストレージをまとめたいという要求が出てきた。また、サーバ内蔵のストレージやDASでは、急速に増大するデータ容量に柔軟に対応できないという問題もあった。そこで、注目を集め始めたのがSANやNASといったネットワーク・ストレージである。SANとNASは、ネットワーク・ストレージとしてひとくくりにされることが多いが、その用途や性格、導入コストは大きく異なっている。ここでは、NASとSANの違いについて解説していこう。

NASとSANは何が違うのか?

 まず、NASとSANのそれぞれがどのようなものなのかを見ていこう。

NASとSANの接続形態の違い
NASは、このようにLANに直接接続し、ファイル・サービスを提供する。一方、SANはファイバ・チャネルを用いたストレージ専用ネットワークを構築し、SAN対応ディスク・システムやバックアップ装置を接続する。これにより、SAN対応ディスク・システムなどを異機種間で共有できるほか、ストレージ専用のネットワークによって高い帯域が確保できるというメリットがある。

■NAS(Network Attached Storage)
 NASとは、その名前のとおり、LAN(イーサネットやFDDIなど)に直接接続されるストレージである。実態としては「ファイル・サーバ・アプライアンス」といった方が分かりやすいだろう。

 ほとんどのNASは、RAID構成のハードディスクを内蔵し、NAS専用OS(NAS OS)によってネットワークを経由したファイル共有を可能にしている。クライアントとの通信インターフェイスはネットワークのみであり、設定なども通常はネットワークを介して行うことになる。クライアントからは、NFS(Network File System)やCIFS(Common Internet File System:Windowsネットワークでネットワーク上のリモート・ファイル・システムにアクセスするためのプロトコル)などのファイル転送プロトコルを使って、ファイルの読み書きが可能である。このようにファイル転送プロトコルを用いるため、異機種間のファイル交換や共有も可能となっている。

 NAS自体は、x86系プロセッサを搭載したPCアーキテクチャをベースにしたものが多く、ハイエンド製品ではIntel Xeonのように高性能なプロセッサを搭載するものもある。また、PowerPCMIPSなどの組み込み向けRISCプロセッサを採用した製品の中には、SOHO向けにブロードバンド・ルータなどと一体化したものや、ユーザー管理などを簡素にしたホーム・ユーザー向けの製品も登場してきている。ハードディスクの構成は、機種によって異なるが、企業向けの製品はRAID 5をサポートするのが一般的である。ミッドレンジ・クラス(20万〜100万円)のNASともなると、3〜8台のハードディスクが内蔵可能で、100G〜1Tbytesのデータ領域が確保可能だ(外部増設ディスクにより数T(テラ)bytesをサポートするものもある)。

 前述のように、NASには、NAS OSが搭載されており、ユーザー管理や各種設定は専用ユーティリティまたはWebブラウザによって行うようになっている。NAS OSとしては、当初はLinuxやBSD UNIXをベースにしたものがほとんどであったが、2002年ごろからはWindows Powered Network Attached Storage(Windows Powered NAS)を採用する製品が増えている。Windows Powered NASは、Windows 2000 Advanced Serverをベースに、NASを実現するのに不要なサービス/アプリケーション類を省き、NASの運用に必要な設定や管理をWebブラウザで行うための「Web UI」を実装したものである。Windows 2000 Advanced Serverをベースとしているため、Windowsネットワークとの親和性が高く、ドメイン・ネットワークであればユーザー管理などをドメイン・コントローラで統合できるメリットがある。一方、LinuxやBSD UNIXをベースとしたNAS OSでは、基本的に各NASサーバごとにユーザー設定が必要となる(一部機種では、Windowsのドメイン・コントローラの情報をコピーするなどして、簡単にユーザー情報を取得できるものもあるが、各NASごとにユーザー管理を行う点は同じである)。

 LinuxやBSD UNIXベースのNAS OSを採用した製品の中には、専用OSの本体をフラッシュ・メモリやROMに搭載して、起動を高速化をしているものもある。フラッシュ・メモリにOSを搭載することで、ハードディスクが故障した場合でもOS本体が失われなく、復旧が早いというメリットもある。ハードディスクにOSが格納されているようなNASでは、万が一OS本体が失われると、ユーザー自身の手でOSを復旧する手段がなく、復旧までに長い時間が必要とされる。

 またWindows Powered NASの場合、電源オンから実際にファイル共有が行えるようになるまで10分以上の時間がかかるが、フラッシュ・メモリベースのシステムでは、5分程度で起動できる。設定時など、頻繁に再起動が必要な場面ではメリットといえるだろう。ただ、こうしたハードウェアやNAS OSの違いは、クライアントから共有ファイルを利用するときに意識することはほとんどない。

■SAN(Storage Area Network)
 SANとは、サーバとストレージ間を接続する専用のネットワークを示す。また、SANに接続されたディスク・サブシステムを指すことも多い。ここでは、専用のネットワークとディスク・システムを明確に分けるため、ネットワーク部分をSAN、そこに接続されるディスク・システムをSAN対応ディスク・システムと呼ぶことにする。

 NASは、NFSやCIFSといったファイル転送プロトコルを用いていたが、SANではSCSIプロトコルを用いたブロック単位での書き込み/読み出しが行われる。そのため、ファイル共有ソフトウェアなどを用いないと、WindowsとUNIXなど異なるOSでファイル共有を行うことが難しい。また、現在のところSANの管理ソフトウェアに互換性がなく、異なるベンダの機種を導入した場合に一元管理が行えないなどの問題も残っている(現在、標準化作業中)。

 また、NASが接続媒体としてイーサネットを採用しているのに対し、SANはファイバ・チャネルが一般に用いられている。ファイバ・チャネルは、媒体として光ファイバ(銅線もサポートするがSANでは一般的ではない)を利用し、1Gbits/sのデータ転送速度を持つインターフェイス規格である。ファイバ・チャネル・スイッチを利用することで、複数のサーバとSAN対応ディスク・システムを接続して、その共有が行える。また、LANとは別のストレージ専用のネットワークとなるため、サーバが抱える大容量データのバックアップなどが発生しても、LANへの負荷がほとんど発生しないというメリットがある。また、Windows Server 2003などのSANに対応したOSでは、SAN対応ディスク・システム上からOSをブートすることも可能である。

クライアントから見たNASとSANの違い

 クライアントからNASはファイル・サーバに、SAN対応ディスク・システムはサーバに内蔵/接続されたハードディスクにそれぞれ見える。

クライアントから見たNASとSAN
クライアントからNASはファイル・サーバに、SAN対応ディスク・システムはサーバのローカル・ディスクと同様に見える。単純にファイルの読み書きを行うならば、どちらもまったく同じである。

 では、複数のWebサーバと専用のLANでNASを接続した場合、このNASはSAN対応ディスク・システムとはいえないのだろうか。ここで重要なのは、Webサーバがどういったプロトコルで、WebサーバとNASを接続しているかだ。前述のようにサーバとSAN対応ディスク・システムは、SCSIプロトコルを利用し、ブロック単位での読み書きを行う。ところが、この場合のWebサーバとNASでは、NFSやCIFSといったファイル転送プロトコルを利用して、ファイル単位での読み書きを行っている。つまり、いくらストレージ専用のLAN(イーサネット)を構築してNASを接続しても、このNASはSAN対応ディスク・システムとは呼ばないし、このLANもSANとはいわない。

 しかし、このストレージ専用のLANに、ブロック単位の書き込みが可能なiSCSIといったプロトコルを利用し、iSCSIをサポートしたSAN対応ディスク・システムを接続すると、途端にこのLANはSAN(一般にiSCSIを採用したSANを「IP-SAN」と呼ぶ)に変わることになる。つまり、NASとSAN対応ディスク・システムの違いは、接続媒体(イーサネットかファイバ・チャネルか)の違いではなく、利用形態(利用するプロトコルの違い)に集約される。ファイル単位の共有を行うのが「NAS」、データベースなどを効率よくアクセスするためにブロック単位の読み書きを行うのが「SAN対応ディスク・システム」ということになる。

 このようにNASとSAN対応ディスク・システムは、大きく性格が異なっている。NASは、アプライアンス・サーバの特性から管理が容易であり、企業内のファイル・サーバの代わりとして用いられることが多い。一方、SAN対応ディスク・システムは基幹業務システムなどでデータベース用に利用さえることが多いようだ。

 そのため求められる処理性能も異なる。NASが、せいぜいミッドレンジ・クラスのIAサーバ程度なのに対し、SAN対応ディスク・システムではハイエンド・クラス相当の処理性能が求められるようだ。実際、NASがハイエンド製品でもIntel Xeonのデュアル・プロセッサ構成であるのに対し、SAN対応ディスク・システムではエントリ製品でもIntel Xeonをストレージ・プロセッサと組み合わせて4個以上搭載する。もちろん、システム構成が異なるため、プロセッサ数で単純に性能は比較できないが、SAN対応ディスク・システムには高い性能が求められていることは推測できるだろう。もちろん、こうしたシステムの違いはシステム価格にも反映され、NASでは10万円から300万円程度が現在の売れ筋であるのに対し、SAN対応ディスク・システムの場合はエントリ・モデルで300万円程度、ハイエンド・モデルとなると数千万円になる。SANの場合は、このほかにファイバ・チャネル・スイッチとサーバごとにファイバ・チャネル・ホストアダプタが必要になる。

 ただ実際には、NASとSAN対応ディスク・システムのどちらとしても利用可能な製品や、SAN対応ディスク・システムに接続することでNASとして利用可能にする「NASヘッド」「NAS over SAN」と呼ばれるアプライアンス製品、IP-SANの普及により、両者を明確に分けることが難しくなってきている。企業内に分散するストレージを統合する技術として、ネットワーク・ストレージ市場は成長が期待されている。今後も注目したい分野といえるだろう。記事の終わり

  関連リンク 
2002年第4四半期のストレージに関する調査結果
 
 
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