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普及が始まった「RAID 6」とは

デジタルアドバンテージ 小林 章彦
2006/09/09

 サーバに搭載/接続されるハードディスクの大容量化は止まるところを知らない。当然ながら、蓄積されるデータ量も増え続けており、ストレージ管理が管理者の大きな悩みとなっている。特にハードディスクが故障すると、重要なデータが失われる危険があるため、その対策には気を使うことになる。

 一般にサーバで利用されるハードディスクは、RAIDによる冗長化を行い、1台のハードディスクが故障しただけではデータが失われないようにしている。しかし現在一般的に利用されているRAID 1(ミラーリング)やRAID 5(分散データ・ガーディング)では、1台のハードディスクが故障した場合のみデータが復旧できるという仕組みであり、2台のハードディスクが同時に故障した場合はデータが完全に失われてしまう。例えば、故障したハードディスクを交換する前や、交換した後のRAIDの再構築作業中に、別のハードディスクが故障すると、もはやデータの復旧が行えなくなる。

 通常、RAIDシステムを構築する場合、同じ時期に製造された同一モデルのハードディスクを利用する。当然、故障時期などにかかわる特性もほぼ共通であるため、1台のハードディスクが故障すると、立て続けに別のハードディスクが故障するということがままある。特にRAIDの再構築作業の際には、データの読み出しが連続的に発生して各ハードディスクへの負荷が高まることから、古いハードディスクが故障しやすい状態となる。

ハードディスクが1台壊れただけでデータが失われる危険性
 1台のハードディスクが壊れただけでも、別のハードディスクの不良ブロックなどによって修復不可能な読み出しエラーが発生するとデータが失われてしまう。この状態は、不良ブロック部分の読み出しはできないものの、ハードディスク自体は動作可能であるため、ハードディスクの故障ではない。不良ブロック自体は珍しいものではなく、どんなハードディスクでも必ず存在するため、いつかは遭遇してしまう。修復不可能な読み出しエラーの割合は、ハードディスクの仕様書にも記載されている。Seagate Technology製ハードディスクを例に挙げると、SCSIインターフェイスを採用するCheetahシリーズは1015〜16 bits当たり1セクタ、IDEインターフェイスを採用するBarracudaシリーズは1014 bits当たり1セクタとなっている。

 一般にSCSIやファイバ・チャネルなどを採用するエンタープライズ向けが1015 bits当たり1セクタ、IDEやシリアルATAなどを採用するクライアント向けが1014 bits当たり1セクタである。クライアント向けが1けたも小さい(修復不可能な読み出しエラーに遭遇する確率が10倍高い)のは、セクタごとに割り当てられているデータ修復用の冗長ビットが少ないためだ。逆にエンタープライズ向けは、読み出しエラーが発生しても、冗長ビットを利用してデータを修復しているわけだ。これは、クライアント向けが価格と容量を重視し、エンタープライズ向けが信頼性を重視するという設計の違いによるものである。

 修復不可能な読み出しエラーが発生すると、データは破損されてしまう。しかしRAID 5の場合、不良ブロックがストライプに存在していても、パリティ情報などから修復され、データ自体が失われることはない。ところが、1台のハードディスクが故障している状態で、別のハードディスクの不良ブロックに遭遇すると、そのブロックが含まれるストライプのデータが失われることになる。

 大雑把に言って、単一のRAID 5ボリュームを構成するハードディスクの台数が多いほど、また単一のRAID 5ボリュームの容量が大きいほど、上記の理由でデータを失うほどの障害に遭う危険性は高まる。すなわち、ストレージ容量が拡大している現在、RAID 5におけるデータ損失の危険性は次第に高まっているといえる。

 そこで、RAID 5を拡張し、2台のハードディスクが同時に故障してもデータが復旧可能な「RAID 6」をサポートするRAIDコントローラなどが登場している。RAID 6では、パリティ用に使用するハードディスク台数が1台増えるため、同じハードディスク台数でRAID 5とRAID 6を構築した場合、実効データ容量がRAID 6の方が1台分少なくなってしまう。しかし、その分信頼性は大幅に向上することになる。

 RAID 6には、パリティの取り方の違いによって、「2D-XOR」と「P+Q」の2つの方式が提案されている。それぞれのパリティの取り方について解説する。

■対角方向のパリティを取る「2D-XOR」
 2D-XORは、RAID 5の水平パリティ(PH)に加え、複数のハードディスクとストライプをまたがるように対角パリティ(PD)を取り、それを専用のハードディスクに格納する方式である。水平パリティと同様、対角パリティもXOR演算によるパリティであるため、計算負荷が低いのが特徴だ(2方向ともXOR演算のパリティであることから、2D-XORと呼ばれる)。一方で、RAID 4と同様、対角パリティが1つのハードディスクに格納されることから、常にこのハードディスクへの書き込みが発生し、ここが性能のボトルネックになりやすい。

■異なる算出方法のパリティを取る「P+Q」
 P+Qは、算出方法の異なる2種類のパリティ(PとQ)を、RAID 5と同様に複数のハードディスクをまたぐように格納する方式である。ハードディスクが故障した場合は、この2種類のパリティを利用してRAIDの再構築を行う。2種類のパリティを計算することから、書き込み時の計算負荷が高いという欠点はあるが、2種類のパリティをすべてのハードディスクでローテーションしながら書き込むため、ハードディスクに対するアクセス負荷が均一になる。最近では、パリティ計算を行うIntelの「Intel IOP333 I/O Processor」や専用ASICを搭載することで、書き込み時の計算負荷を低減するRAIDシステムなども登場している。

RAID 6のP+Q方式
通常のパリティ(P)に加え、係数による重み付けなど異なる計算手法を用いた別のパリティ(Q)を付加する方式である。

なぜRAID 6に向かうのか

 前述のようにRAID 5でストレージを保護していても、1台のハードディスクが故障しただけで、実際には重要なデータが失われる危険性が生じる。いまや財務データや製品開発にかかわる情報など、企業の存続を左右するものがサーバのストレージに保存されている。RAID 5は、これまでコストと実効容量の両面から企業のストレージ・システムの標準的な地位を確保してきた。だがハードディスクの大容量化と低価格化によって、以前と同じ予算/容量であっても、より高い冗長性が確保可能となっている。例えば、数年前に200Gbytes×4台で構成していたRAID 5(実効容量600Gbytes)を、400Gbytes×4台のRAID 6(実効容量800Gbytes)に置き換えても、ハードディスクのコストはほとんど変わらないか、むしろ安くなる。

 また以前は、サーバ向けのハードディスクというと、信頼性の高いSCSIディスクが標準的に搭載されてきた。しかしSCSIディスクは、信頼性が高い一方で、価格が高く、1台当たりの容量の面でもIDEディスクの数世代遅れという状況である。そのため、エントリ・サーバを中心にIDEディスク(シリアルATAディスク)の採用が増えてきており、その動きはミッドレンジ・サーバまで広がりつつある。

 信頼性がSCSIディスクよりも若干劣るIDEディスクであっても、RAID 6を採用することで、高い信頼性が確保できるのならば、ストレージ・システム全体のコストとしては安価に構築できる可能性がある。実際、そういった外付け型ストレージ製品も登場してきている。もちろんSCSIディスクでRAID 6を構築すれば、いままで以上の信頼性を確保できることになる。

 このようにハーディスクの低価格化と大容量化によって、パリティによる実効容量の低下が十分にカバーできるようになっている。加えて、IntelがRAID 6のパリティ計算を支援するI/Oプロセッサをリリースしたことで、この動きが加速されているというのが現状だ。

 RAIDといえば、RAID 1かRAID 5という時代から、RAID 1かRAID 6という時代を迎えるのも近いかもしれない。 記事の終わり

 
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