特集
ブレード・サーバの真実と未来

4. コンソールからフロッピーまで共有可能なTrustGuard/HiServer

デジタルアドバンテージ
2002/06/28


 前のページに引き続き、TrustGuard/HiServerについて見ていこう。

コンソールとドライブを切り替えられるI/O切り替え用ブレード

I/O切り替え用ブレード(通称KVM&CF)
これはエンクロージャに接続した一組のコンソール(KVM: Keyboard/Video/Mouse)と、内蔵のフロッピードライブおよびCD-ROMドライブを、各サーバ・ブレードで共有するための専用ブレードだ。パネル上のボタンを操作して、対象のサーバ・ブレードにコンソールと2つのドライブを接続することで、BIOSセットアップなどの操作やCD-ROMからのOSインストールなどといった管理・保守作業を行える。アダプタなどの追加なしで簡単にコンソールなどを利用できるのは便利だ。

 このI/O切り替え用ブレードでは、あるサーバ・ブレードとフロッピードライブ/CD-ROMドライブの接続をロックしたまま、別のサーバ・ブレードにコンソールだけを切り替えられる。この機能は一方のサーバ・ブレードでOSのインストールを実行しつつ、別のサーバ・ブレードの状態を監視したりする際に便利だ。

 難点は、切り離された側のサーバからは、PS/2キーボードやマウス、CD-ROMドライブがデバイスとしてまったく認識されなくなることだ*1。そのためWindows 2000では、切り替えによってキーボードが認識されなくなるのを防ぐため、PS/2キーボード/マウス・インターフェイス用に専用ドライバを組み込む必要があった(Linuxでは不要)。ベンダによれば、今後の製品では、より本格的な切り替えシステムを搭載していく予定とのことだ。

*1 市販されているPC用のKVM切り替え器は、切り離された側のPCに対してダミーの信号を送出することで、キーボードやマウスが存在するように見せかける機能を持っている。これにより、デバイスが見えなくなってエラーとなったり、誤動作したりするのを防いでいる。

 
5基も電源ユニットを搭載するエンクロージャ

多重化されている電源ユニットと空冷ファン
これはTrustGuard/HiServerのエンクロージャのリアパネル。上側に並ぶのは4基の空冷ファンのユニットで、下側には右から5基も電源ユニットが並ぶ。どちらもホットスワップ対応である。
  各種インターフェイス・コネクタ。コンソール・デバイス接続用コネクタやリモート管理用イーサネット・ポートのほか、I/O切り替え機能のデイジーチェイン・コネクタも装備されている。これをエンクロージャ間で接続することにより、最大14台のエンクロージャで一組のコンソールが共有できる。

 
サーバ管理者としてブレード・サーバを選ぶ際のポイントとは?

 今回試用したProLiant BL e-ClassとTrustGuard/HiServerは、どちらも3Uサイズのエンクロージャに18〜20枚のサーバ・ブレードを装着できる、高密度実装を志向したサーバ・システムである。その割には意外なほど、両者の仕様や使い勝手は異なる。

 ProLiant BL e-Classは、サーバ・ブレードに搭載するハードウェアをなるべく減らすことでサーバ・ブレードの小型化と低消費電力化を図り、その一方でサーバ・ブレードに対するリモート管理/制御機能を充実させることで使い勝手の良さを維持しようとしている。普段の運用中に使用しないコンソール接続コネクタやリムーバブル・ドライブは、サーバ・ブレードどころかエンクロージャからも排除し、代わりに少しでも多くのサーバ・ブレードを詰め込むのだという方針が感じられる。大規模なデータセンターのフロントエンド・サーバ専用、という印象を受けた。

 一方TrustGuard/HiServerについては、コンソールとリムーバブル・ドライブをいつでも使えるようにしておくという設計方針だ。管理や保守をすべてリモートで行うほどではない小規模なシステムには、この方が扱いやすいかもしれない。I/O切り替え用ブレードを標準装備とすることで、サーバ・ブレードの最大枚数はProLiant BL e-Classより2枚ほど少ないが、これは規模がかなり大きくなければ問題にならない差である。また、そこそこの拡張性や性能を持つHDB31670をラインアップに加えているのは、単なるフロントエンド・サーバだけではなく、アプリケーション・サーバなどの用途もカバーしようとしていることを表している。

■イーサネット・ケーブルの扱い方にも相違がある

 どちらかといえばProLiant BL e-Classが大規模システムを、TrustGuard/HiServerがやや規模の小さいシステムを主眼としていることは、イーサネット・ケーブルの取り扱いにも表れているように感じる。ProLiant BL e-Classでは、非常に多数のサーバ・ブレードを運用する場合、インターコネクトトレイをギガビット・イーサネット・スイッチ内蔵タイプにすれば、エンクロージャ外に接続されるイーサネット・ケーブルを大幅に減らせる。

 一方、TrustGuard/HiServerではサーバ・ブレードのフロントパネルに直接イーサネット・コネクタが露出している。非常に多数のサーバ・ブレードを集中して配置すると、フロントパネル側にイーサネット・ケーブルが非常に多く飛び交ってしまうだろう。また、イーサネット・スイッチを別途設置するスペースが必要になる点もデメリットといえる。しかし、規模が小さいシステムなら、いちいちリアパネル側をアクセスしなくても、フロントパネル側だけで配線が完了するのはメリットといえる。

 サーバ管理者としてブレード・サーバを選ぶ際の重要なチェック・ポイントには、少なくともコンソールとイーサネット・ケーブルの取り扱いを含めるべきだろう。

 次のページでは、ほかのブレード・サーバ製品の最新動向を確認しよう。

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高密度サーバはどこに向かうのか?
基礎から学ぶIAサーバ 2002年度版
ブレード・サーバに見る信頼性と冗長性の関係
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IAサーバ製品カタログ
 
  関連リンク 
ProLiant BL e-Classの製品情報ページ
TrustGuard/HiServerの製品情報ページ
 
 

 INDEX
  [特集]ブレード・サーバの真実と未来
    1.高密度最優先のブレード・サーバ「ProLiant BL」
    2.OSセットアップまでリモートから行うProLiant BL
    3.2種類のブレードをラインアップするTrustGuard/HiServer
  4.コンソールからフロッピーまで共有可能なTrustGuard/HiServer
    5.2タイプに分かれてきた最新ブレード・サーバ
    6.現在のブレード・サーバが抱える課題とは?
 
 「System Insiderの特集」



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