特集

ブレード・サーバの真実と未来
――ブレードは第3のフォームファクタになるか?――

デジタルアドバンテージ
2002/06/28


 ここ数年の急速なインターネットの普及は、eビジネスの規模を急速に拡大させるとともに、それを支えるサーバ・システムの変化をも促した。その代表的なものの1つがサーバの高密度実装であり、昨今の1Uラックマウント・サーバ(1Uの厚みは約4.4cm)の隆盛につながっている。そして2001年、さらなる超高密度実装の要求にこたえるべく、新しい形態(フォーム・ファクタ)のサーバが登場した。それが「ブレード・サーバ」である。

 ブレード・サーバの「ブレード(Blade)」とは「刀身」「刃のような平たい部分」という意味だ。「刀身」とは、サーバなどの機能を凝縮した1枚の細長い回路基板のことを指す。これを2U〜4Uサイズの「エンクロージャ(Enclosure)」と呼ばれるケースに6枚〜20枚を装着することで、1Uサーバ以上の高密度なサーバを実現している。

今回試用したブレード・サーバ2製品
左がコンパックコンピュータのProLiant BL e-Classで、右がトラストガードのTrustGuard/HiServer。3Uサイズのエンクロージャに差し込まれている細長い基板が「サーバ・ブレード」で、1台のサーバに相当する機能を備える。1Uサーバなら3台分に相当する体積に、18〜20台分のサーバを詰め込める超高密度のシステムだ。

 2002年に入ってサーバ・ベンダ各社は、日本市場にもブレード・サーバを投入し始めている。そこで本稿では実際にブレード・サーバ2製品を試用しつつ、最新の製品動向もチェックすることで、その特徴やメリット、現時点の問題点を探ってみる。

「高密度サーバ」の成り立ち

 ブレード・サーバが登場した背景は、1Uサーバのそれと同一線上にある。まずは、これらの「高密度サーバ」が登場した背景を説明しておこう。

 1990年代後半から始まったインターネットの急速な普及は、Webページや電子メールなどのホスティング・サービスの需要増大につながり、各種サービス・プロバイダはデータセンターの増強を迫られた。また企業においても、BtoBBtoCといったインターネット・サービスや、社内のイントラネット向けサービスを拡充するために、サーバ・システム(データセンター)を強化する必要性が生じた。

 サーバ・システムを強化する方策は、サーバの台数を増やす「スケール・アウト」と、個々のサーバの性能を高める「スケール・アップ」の2つに大別できる。インターネット関連サービスにおいては、両方の方策がそれぞれ適材適所で利用されている。例えば、BtoCのシステム構築でよく採用される「サーバの3階層モデル(3ティア・モデル)」では、クライアント(ユーザー)からの処理要求にこたえるために、3階層で構成されたコンピュータ・システムを利用し、それぞれに適したサーバを割り当てる、という方式をとっている。このうち、よくスケール・アウトによる強化策が採用されるのが、下図にあるフロントエンドに属するサーバ(「エッジ・サーバ」とも呼ばれる)である。

サーバの3階層モデル
クライアント(ユーザー)からのサービス要求は、まずロード・バランサ(負荷分散装置)によって複数のフロントエンド・サーバに振り分けられる。フロントエンド・サーバは、ミッド・ティア(アプリケーション・サーバ)やバックエンド(データベース・サーバ)に対して、ユーザー認証や各種リストの生成などを要求し、それをもとに動的にWebページを作成する(単に静的なWebページを送出するだけのこともある)。

 フロントエンドでは、相互に依存する処理がないので各サーバによる並列の分散処理がしやすく、スケール・アウトに適している。また、クライアント(ユーザー)からの要求数が急速に増減しても、スケール・アウトならサーバ台数を増減させることでスループットを維持しやすいというメリットがある(スケール・アップでは、プロセッサやメモリを追加したりしてサーバの性能を高める必要があり、そう容易なことではない)。

 もう1つフロントエンドでは、ミッド・ティアやバックエンドに比べてそれほど性能や拡張性が要求されないという特徴もある。ミッド・ティアやバックエンドのサーバでは、最低でも2ウェイ、できれば4ウェイ程度のマルチプロセッサ構成が求められるし、ハードディスクも3台以上内蔵してRAID 5が構成できることが最低条件となる。これは、ミッド・ティアやバックエンドでは、データベースを利用したアプリケーションなどを動かすため、ユーザーごとに依存性があって分散処理が行いにくく、フロントエンドに比べると重い処理を担当するためだ。これに対してフロントエンドでは、3階層モデルの中では最も性能に対する要求が低い。これは、サーバに搭載するプロセッサやハードディスクの数を減らすことを可能にし、小型化に有利に働く。

 かくしてデータセンターにおけるフロントエンドの層には、サービス要求の規模に応じた数のサーバが配置されるようになった。ここで問題になるのが、サーバを設置する場所のコストである。通常、データセンターでは高度なセキュリティと災害対策を施しているため、一般的なオフィスより単位面積当たりのコストが高い。従って、サーバ1台当たりの設置面積が大きいと、サーバ数を増やすほど場所のコストもどんどん増え、ひいてはサービス提供価格の上昇につながってしまう。そこでサービス・プロバイダは、サーバの性能を必要な分だけ維持しつつ、その設置面積をできる限り小さくして、コスト競争力を維持しようとする。こうしたニーズにより、1Uサーバという高密度サーバの登場に至ったわけだ。

極薄の1Uサーバでも無駄がある?

 1Uサーバの登場により、1ラック当たりの最大搭載台数は従来の2倍以上となり、サーバ1台の設置に必要な場所のコストも(相対的に)大幅に減少した。その1Uサーバの薄型化は、拡張スロットやドライブ・ベイの数を減らしたり、内蔵パーツを薄型の形状に作りかえたりすることで実現されている。その点では、2U以上の厚みのサーバと1Uサーバの違いは量的なものであり、質的には大きく変わってはいない。例えば、ラックマウント型IAサーバの場合、

  • 19インチ・ラック対応のケース1つにつき、1台のサーバとして振る舞う
  • コンソールなど汎用のインターフェイス/デバイスを装備し、スタンドアロンでも動作する
  • (程度の差はあれ)ハードウェアの拡張性を備える。

といった点は、1Uでも2U以上でもほとんど共通である。

 そのため、サーバ実装の高密度化を最優先に考えると、極薄の1Uサーバにも、まだまだ削減できる無駄なスペースがあるといえる。例えば、多くの1Uサーバはコンソール(キーボード/マウス/ディスプレイ)接続用コネクタや、フロッピードライブ、CD-ROMドライブを装備している。しかし、これらが必要になるのは故障時やOSのインストール時など特殊な状況であり、通常運用時にはほとんど利用しない。つまり、普段は使用しないハードウェアをあえて内蔵していることになる。また拡張スロットについても、特にフロントエンドでは、すべてのサーバに何らかの拡張カードを増設しなければならない状況は考えにくい。もし必要になるなら、最初からそのハードウェアをマザーボードに実装しておき、拡張スロットを省いた方が、スペースだけではなく保守コストや消費電力の面でも効率的だ。

 ただし、高密度化にはメリットだけではなくデメリットもある。高密度化を行うと、ラック単位での消費電力や発熱量は上昇することになり、フロアの電源設備や冷却設備により多くの負担がかかることになる。そのため、高密度化とともに、消費電力と発熱量の低減も求められる。

1Uサーバの内部構成の例
これはデルコンピュータのPowerEdge 1650という1Uサーバだ。最大2基のプロセッサ、3台分のハードディスク・ベイやリムーバブル・ドライブ、2つの拡張スロット、最大2基のリダンダント(冗長)電源ユニットなど、1Uにしては豊富な装備を持つ。しかし、高密度化を最優先に考えると必ず内蔵すべき装備ばかりとはいえない。またマザーボード上の部品も、それほど高密度に実装されているわけではなく、隙間が目立つ。これは19インチ・ラックマウントという幅広なケースに収まる程度に部品の実装密度を高めた結果だろう。つまり1Uというケースにサーバ1台分しか収めないことが、密度を高める上でのボトルネックになっている。

 このような1Uサーバにおける一種の「無駄」を省き、さらなる高密度化を達成すべく開発されたのがブレード・サーバである。2U以上から1Uへの変化と違い、1Uサーバからブレード・サーバへは、電源ユニットの共用化など、明らかにに質的な変化も含まれる。その具体的な変化について、次のページから実在のブレード・サーバで確認していこう。

  関連記事 
高密度サーバはどこに向かうのか?
基礎から学ぶIAサーバ 2002年度版
ブレード・サーバに見る信頼性と冗長性の関係
Dellが考える高密度サーバの世界
IAサーバ製品カタログ
 
  関連リンク 
ProLiant BL e-Classの製品情報ページ
TrustGuard/HiServerの製品情報ページ
PowerEdge 1650の製品情報ページ
 
 
 

 INDEX
[特集]ブレード・サーバの真実と未来
    1.高密度最優先のブレード・サーバ「ProLiant BL」
    2.OSセットアップまでリモートから行うProLiant BL
    3.2種類のブレードをラインアップするTrustGuard/HiServer
    4.コンソールからフロッピーまで共有可能なTrustGuard/HiServer
    5.2タイプに分かれてきた最新ブレード・サーバ
    6.現在のブレード・サーバが抱える課題とは?
 
 「System Insiderの特集」

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