特集
クライアントの保守管理ツール「デプロイメント・ツール」を試す(前編)

1. Symantec Ghost 7.5によるイメージ作成の実際

元麻布春男
2002/10/16


 シマンテックは、トラブル対策などのツール集である「Norton Utilities」やウイルス対策ソフトウェアの「Norton AntiVirus」で知られるソフトウェア・ベンダだ。Symantec Ghost 7.5は、同社が販売する法人向けのデプロイメント・ツールである。そのサブセットが個人向けに、Norton Ghost 2002*2というパッケージで販売されている。名前は似ているが、Symantec Ghost 7.5とNorton Ghost 2002は対象ユーザーだけではなく機能も大きく異なる製品だ。ここで取り上げるのは、あくまでもSymantec Ghostの方である。

*2 すでに次期バージョンのNorton Ghost 2003が発表済みである。
 
Symantec Ghost 7.5
シマンテックが擁する法人向けのデプロイメント・ツール。個人向けのNorton Ghostシリーズとは名前が似ていて、技術的にも共通している部分はあるが、法人向けに機能が大幅に拡張されている。

 Symantec Ghostの基本的な構成は、DOS上で動作するイメージ作成/書き込みソフトウェアであるGHOST.EXEを中心に、Windows上で動作するサーバ・ユーティリティならびにコンソール・ユーティリティ、イメージ・ファイルの検証/編集用ユーティリティ、クライアントのWindowsに常駐してサーバからのリクエストに応じて仮想DOSパーティション上のGHOST.EXEを起動するエージェントなどから構成される。GHOST.EXEは、あくまでもDOSプログラムであり、スタンドアロンの状態でローカル・ディスク上のイメージ・ファイルを扱う場合には、FAT*3ファイルシステムだけがサポートされるが、ネットワーク経由でイメージ・ファイルを扱う場合は、この制限は該当しない。GHOST.EXEは日本語化されていないが、そのおかげで日本語フォントなどが不要になり、1枚の起動フロッピーで利用することが可能となっており、一概に悪いということはできない。

 
*3 この制限は、イメージ・ファイルの格納場所がローカル・ディスクの場合のみである。バックアップ/リストア対象のパーティションは、FAT以外のフォーマットも選択できる。
 
DOS上で動作するGHOST.EXEの画面
「Ghostコンソール クライアント」と呼ばれるこのプログラムは、このとおり日本語化されていないが、フロッピー1枚でクライアントを起動できる手軽さは大きなメリットといえる。

イメージ作成の実作業はDOS上で実行される

 Ghostによるイメージの作成は、いくつかの方法で行うことができる。分類すると、

  1. GHOST.EXEを含んだブート・フロッピーか、あるいはハードディスク内のGhost専用ブート・パーティションでクライアントPCを起動し、ローカルのハードディスクやリムーバブル・ドライブ、あるいはネットワーク・ドライブにイメージ・ファイルを保存する
  2. サーバのGhostコンソールから「プル」する形でクライアントPCのハードディスク情報を吸い上げる
  3. サーバ側でGhostCastのサーバを、クライアント側でGhostCastのクライアント(実体はGHOST.EXE)をそれぞれ手動で起動してイメージを作成する

という3種類の方法がある(GhostCastの詳細については後述する)。1番目と3番目の方法は、明示的にユーザーがDOSでクライアントPCを起動して、DOSで動作するGHOST.EXEプログラムを実行する必要があるが、Ghostコンソールを用いた2番目の方法はそれが不要という特徴がある。正確にいえば、2番目でもDOSが起動してGHOST.EXEが動作するものの、ユーザーには隠ぺいされた状態で自動実行される。いずれの方法でも、DOSの起動が必要なため、クライアントPCのOSがいったん停止することには注意が必要だ。

Ghostコンソール
上記で2番目の方法を利用する際は、主にこのコンソールを操作することになる。Symantec Ghostの主要なユーザー・インターフェイスが集中しているプログラムでもある。

PC固有の情報を変更する手段は2種類

 SID(Security ID:セキュリティ識別子)やコンピュータ名など重複を防ぎながら、作成した単一のイメージを複数のPCに展開する方法として、Symantec Ghostは2種類を提供する。1つはマイクロソフトの提供するSysPrep(System Preparation)ユーティリティを用いる方法、もう1つが独自のGhost Walkerと呼ばれるユーティリティを用いる方法だ(SysPrepの入手先:Windows 2000Windows XP SP1*4)。SysPrepを利用すると、SIDやコンピュータ名など特定のPCに依存する情報を取り除いた状態のイメージが作成できる。また、コンピュータ名やドメイン名、ネットワーク設定など、無人インストールに必要なほぼすべてのパラメータを事前に設定したり、初回の起動時に最低限の識別情報を入力するとセットアップが完了する、といった形式のイメージを作成したりできるという利点がある。その半面、操作が複雑であり、またWindows 9x系のクライアントOSでは上述の無人インストールのための機能が利用できない、という制限がある。なお、Windows NT 4.0上のSysPrepは機能制限があるため、Symantec Ghostではサポートされない。つまりSymantec GhostとSysPrepによる展開が可能なOSはWindows 2000とWindows XPに限られる。

*4 Windows XPと同時にリリースされたSysPrep(サービスパック非対応)は、Windows XP ProfessionalのインストールCD-ROMの\Support\Toolsフォルダにある。Windows 2000のインストールCD-ROMにも同様にサービスパック非対応のバージョンが含まれるが、Symantec Ghost 7.5のマニュアルでは、Webサイトにある方のSysPrepを使うよう記されている。一方、Windows XP SP1向けのSysPrepについては、特に情報を見つけられなかった。
 
GhostコンソールでのSysPrepの設定
これはSysPrepをGhostコンソールに組み込んだあとで、イメージ作成時にSysPrepを呼び出す設定をしているところだ。これにより、特定のSIDやコンピュータ名などに依存しないイメージが作成できる。ただ、イメージ展開後のセットアップをなるべく自動化するには、SysPrep同梱の「セットアップ マネージャ」というプログラムを利用するなどして、コンピュータ名やドメイン名、ネットワーク設定などOSインストール時に必要なパラメータをイメージ生成前に設定しておく必要があり、その操作が複雑になりがちというデメリットがある。

 一方のGhost Walkerは、イメージからハードディスクに展開した後のOSに対してパッチを適用する形で、SIDやコンピュータ名の書き換えを行う。パッチという性質上、新しいコンピュータ名が以前のコンピュータ名と同じ文字数でなければならない、という制約があったり、マイクロソフトが公認したツールではない、という問題があったりするが、SysPrepに比べて簡便で分かりやすいという特徴がある。どちらを使う方がよいかということは、ユーザーの利用環境によっても変わるから、事前に入念なリハーサルを行った方が良いだろう。もっとも、SysPrepやGhost Walkerに限らずこの種のソフトウェアを使う場合、入念なリハーサルは不可欠である。

Symantec Ghost付属のGhost Walker
インストール済みのWindows OSのコンピュータ名やSIDを変更できるユーティリティ。DOSから起動しなければならない点は面倒だが、単機能である分、多機能なSysPrepより操作や手順ははるかにシンプルである。

 なおSymantec Ghostに付属するユーティリティは、Ghost Walkerだけではない。例えば、イメージ内のファイルの表示や、ファイル単位での取り出しを可能にするGhostエクスプローラと呼ばれるツールも付属している。これと差分バックアップのサポートと合わせ、より汎用的なバックアップ/リストア・ツールとして使えるようになっている。

Ghostエクスプローラ
作成したイメージ・ファイルをGhostエクスプローラで開くと、その中のファイルを参照・抽出できる。ファイルシステムがFATなら、ファイルの追加や削除などの書き換えも可能だが、一方でNTFSは読み出しのみなのが残念だ。

 次ページでは、Symantec Ghostによるイメージ展開方法などを紹介し、Symantec Ghostが適している用途について考察する。
 


 INDEX
  [特集]クライアントの保守管理ツール「デプロイメント・ツール」を試す(前編)
  1.Symantec Ghost 7.5によるイメージ作成の実際
    2.Symantec Ghost 7.5によるイメージ展開の実際
 
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