元麻布春男の焦点
Intelが語る向こう1年のプロセッサ戦略
――明らかになる次期Pentium 4の姿――


1. 次期Pentium 4のプラットフォームはどうなる?

元麻布春男
2002/05/10


 日本ではゴールデンウィーク直前の2002年4月25日、Intelは定例となっているアナリスト・ミーティングを開催した。金融関係のアナリストを対象に開かれるこのイベントは、Intelの事業戦略について説明するものだ。つまり、ここ1年のIntelが主導するコンピュータ業界の未来が予測される場でもある。毎年、同社のトップ・エグゼクティブが参加し、製品計画などが明らかにされる。今回もクレイグ・バレット(Craig Barrett)最高経営責任者(CEO)を筆頭に、ポール・オッテリーニ(Paul Otellini)社長、ロナルド・J・スミス(Ronald J Smith)副社長、ショーン・マローニ(Sean Maloney)副社長、アンディ・ブライアント(Andy Bryant)副社長がスピーチを行った。その中から、筆者が興味をもったトピックをいくつか取り上げてみたい。

徐々に明らかになる次期デスクトップPC向けプロセッサ

 クレイグ・バレット最高経営責任者のスピーチに続き、2番目に登壇したポール・オッテリーニ社長は、もともとIA(Intel Architecture)グループ担当の副社長であった。そのためか、今回のアナリスト・ミーティングでも主にIAプロセッサ関連事業についての説明を受け持った。オッテリーニ社長のスピーチでまず紹介しておきたいのは、2003年に登場する次世代デスクトップPC向けプロセッサ「Prescott(開発コード名:プレスコット)」と、そのプラットフォームに関する情報だ(画面1)。Prescottは2003年中ごろに登場するといわれている。このスライドでは、PrescottがNetBurstマイクロアーキテクチャ(現在のPentium 4やIntel Xeonに採用されているマイクロアーキテクチャ)に基づくものであること、マイクロアーキテクチャに関して「追加的な」強化が施されること、そしてPrescottが90nmプロセス(0.09μmプロセス)製造による最初の製品であることが述べられている(90nmプロセスについては「頭脳放談:第22回 90nmプロセスという21世紀的なるモノ」を参照)。

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画面1 次期デスクトップPC向けプロセッサの概要
現行のPentium 4と同様、NetBurstマイクロアーキテクチャを採用するが、いくつかの拡張が行われることが示されている。また、プラットフォームとして、デュアル・チャネルのDDR333(166MHz×2倍クロックで駆動されるDDR SDRAMメモリ)に対応することが示された。

 ここで注目されるのは、マイクロアーキテクチャの強化策が複数形であることだ。マイクロアーキテクチャを強化する技術の1つが、1つのプロセッサを2つの論理プロセッサに見せることで、複数スレッドの同時実行をサポートするHyper-Threading技術であることはすでに明らかにしている。しかし、このスライドによると、ほかにも何らかの増強が図られているわけだ(Hyper-Threading技術については「頭脳放談:第16回 x86を延命させる『Hyper-Threading Technology』、その魅惑の技術」を参照)。

 先日開かれたIDF Japan 2002 Springにおいても、Prescottでは現行のIntel XeonでサポートされているHyper-Threading技術以外にも、技術的な強化(つまりは性能面の向上)が行われることを示唆する発言があった*1。その一方で、PrescottはIntelにとって(というよりおそらくは世界で)初の90nmプロセス製造による製品であり、慎重なIntelがマイクロアーキテクチャの大幅な変更を加えるとは思いにくい。キャッシュあるいはレジスタの増量といった、量的な強化が最も考えやすいところだ。実際、Pentium 4が0.13μmプロセス製造のNorthwood(ノースウッド)コアに切り替わったときも、仕様変更は基本的に2次キャッシュの256Kbytesから512Kbytesへの増量に限定されていた。だが、Prescottの詳細はもう少し出荷時期が近付くまで明らかにされないだろう。

*1 Intelのデスクトップ・プラットフォーム担当のウィリアム・M・スー(William M. Siu)副社長は、「PrescottのHyper-Threading技術では、画像処理を複数の画像に分割し、それぞれを別スレッドとして処理することで高速化が行える」と述べた。このことから、画像処理によく利用されるSSE2/浮動小数点演算ユニットに何らかの拡張が行われるのではないかという推測もある。

 スライドの下半分では、Prescottのプラットフォームについていくつかの情報が公開されている。AGP 8x対応、無線LANの統合、シリアルATAのサポート、DDR333メモリのデュアル・チャネル・サポート、といった情報だ。ただ、これらはあくまでも「プラットフォーム」に関する機能である。必ずしもPrescott向けチップセットである「Springdale(開発コード名:スプリングデール)」が内蔵する機能ばかりとは限らない。特に、無線LANやシリアルATAについては、外付けチップによるソリューションも十分可能であり、この時点でIntelがサポートを行うものという見方もできる。その一方で、AGP 8xのサポートやDDR333メモリのデュアル・チャネル・サポートは、チップセットが内蔵しない限り実現不可能なものである。ただし、これまた慎重なIntelが新しいプロセッサと新しいチップセットを同時にリリースするとは考えにくく、まず既存のチップセットと組み合わせてPrescottをリリースしたあと、チップセットの更新を図る、と考えるのが順当だろう。マイクロアーキテクチャが大幅に変更されることで、プラットフォームの移行が必須ならば、新チップセットとの同時リリースということもあり得るだろうが、現行のPentium 4と同じNetBurstアーキテクチャを採用している以上、同時にチップセットを更新するとは考えにくい。それにしても、現在のメモリ・モジュール(PC133 SDRAMやPC2100 DDR SDRAM、PC800 RIMM)はPrescottのプラットフォームでは使えなくなる可能性が高くなってきた。

2002年末にはデスクトップPCのほとんどがNetBurstになる

 時間的な順番が逆になってしまったが、ポール・オッテリーニ社長は、2002年の事業見通しについても興味深い説明を行っている。画面2は2002年のプラットフォームに関するスライドだが、左のグラフは全Celeronに占めるNetBurstマイクロアーキテクチャ・ベースのCeleronを示したものだ。2002年第2四半期にリリースされる予定のNetBurstマイクロアーキテクチャ・ベースのCeleronが、2002年末にはデスクトップPC向けCeleronの80%を占めるようになることが明らかにされている。マーケティングと価格設定の両面で、相当強力なプッシュが行われるものと思われる。ちなみに、現在提供されているP6コア・ベースのCeleronは、すでに0.13μmプロセス製造によるTualatinコアに移行している。NetBurstマイクロアーキテクチャ・ベースのCeleronは、0.18μmプロセス製造のWillamette(ウィラメット)コアであるといわれており、製造プロセスの面から見ると逆戻りするという珍しい現象が起きる。これもCeleronが技術志向ではなく、マーケティング志向な製品である証、といえるかもしれない。

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画面2 2002年のデスクトップPC
2002年第4四半期にPentium 4-3GHzが投入されることが明らかになっている。また、グラフィックス機能を内蔵したPentium 4向けチップセットのIntel 845Gの出荷量が急速に伸びることも予想している。

 この右にあるグラフは、グラフィックス機能を統合したIntel 845GおよびIntel 845GLチップセットの立ち上げに関するものだ(これらも第2四半期に発表されるという)。この通り、Intel 845G/GLチップセットの立ち上げを、Intel 815(Pentium III向けグラフィックス統合型チップセット)の4倍の速度で行うとしている。Intel 845Gの廉価版であるIntel 845GLがマーケティング面で新Celeron専用チップセット的な位置付けであること、前述したとおり2002年第4四半期までに全Celeronの80%を新Celeronで占める予定であることを考えれば、こうした急速な立ち上げは必須でもある。2002年内にIntel 845G/GLがPentium 4プラットフォームの大半を占める存在となることは明らかだろう。そのために、Intelは新CeleronとIntel 845Gシリーズに思い切った価格付けを行うと予想されている。そこそこの性能を持つコストパフォーマンスの高いクライアントPCの購入を検討しているならば、新Celeronの登場を待った方が良いかもしれない。

 次ページでは、Intelの強さの源泉でもある生産能力やプロセス技術について解説していこう。

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