元麻布春男の焦点

攻勢に転じたインテルのチップセット戦略
――インテルのサーバ/ワークステーション・チップセット戦略を探る――

元麻布春男
2002/11/29


 2002年11月19日、インテルはFSBを533MHzに引き上げたデュアルプロセッサ対応のIntel Xeon(Intel Xeon DP)と対応チップセット、サーバ・プラットフォームなど関連の製品を発表した(インテルの「Intel Xeonファミリ製品に関するニュースリリース」)。発表されたIntel Xeon DPは、動作クロック2.80GHzを筆頭に、2.66GHz、2.40GHz、2GHzの4種である。同じNetBurstアーキテクチャを採用するデスクトップPC向けのPentium 4に提供されている2.53GHzをスキップしたラインアップとなっている。これは、すでに400MHz FSBのIntel Xeon DPに2.60GHzがラインアップされており、2.53GHzとの差が小さいという判断かもしれない。デスクトップPCと異なり、サーバ/ワークステーションではベンダも動作クロックの細かな違いで製品をラインアップすることはないと思われるので、この程度の動作クロックの差(性能差)があった方がいいのかもしれない。

 インテルは、ここ2年ほどサーバ/ワークステーション向けチップセットの開発に対して少々消極的であった。これは、「開発リソースには限りがあることから、特にサーバ向けチップセットはサードパーティに依存することにしたため」と消極的な理由を説明していた。しかし、サードパーティのServerWorks(Broadcomのチップセット部門)が開発していたサーバ向けIntel Xeon DP/MP用チップセットが遅れたことから、Intel Xeon DP/MPのサーバ向けの出荷もそれに合わせて1年近くも遅れてしまったという苦い経験をした。この反省からか、インテルではサーバ/ワークステーション向けのチップセット戦略を大幅に書き換えている。今回発表となったチップセットは、その成果ともいえるものだ。

新たにラインアップされたチップセットの概要

Intel Xeon DP用チップセット「E7505」
AGP 8xをサポートしたワークステーション向けチップセット。64bit PCI/PCI-Xコントローラ・ハブをサポートする。

 今回の発表でIntel Xeon DP用として追加されたチップセットは、E7501とE7505の2種である。E7501は、基本的に既存のIntel Xeon DP(400MHz FSB)用に提供されているE7500を533MHz FSB対応にしたサーバ向けのチップセットだ。ただし、E7501では400MHz FSBのIntel Xeon DPはサポートしないという。また、デュアルチャネルのメモリ・インターフェイスが従来のDDR-200からDDR-266対応になったこと、デュアルチャネルの片方を無効にする構成も可能になったことの2点がE7500との違いだ。

 一方、E7505はIntel Xeon DPに対応したワークステーション向けチップセットで、RDRAMに対応する従来のワークステーション向けチップセット「Intel 860」の後継ということになる。E7505は、E7501と同じくデュアルチャネルのDDRメモリ・インターフェイスを備えるが、グラフィックス用にAGP 8xをサポートすることが最大の違いとなっている。加えて、E7500/E7501と異なり、E7505は400MHzと533MHzの両方のFSBに対応する。

 11月19日には、もう1つE7205チップセットが発表されている。E7205は、Pentium 4のシングルプロセッサに対応したワークステーション向けのチップセットで、Intel Xeon対応ではない。やはりE7505と同様に、デュアルチャネルのDDRメモリ(DDR-266)、AGP 8xサポート、400MHzと533MHz両方のFSB対応、といった特徴を持っている。Intel Xeon対応でない点を除くと、E7205はE7505とほぼ同一のスペックとなっているが、E7505にある2つ目の64bit PCIならびにPCI-Xに対応したコントローラ・ハブ接続用のHubLinkは省略されている。つまり、拡張バスの系統数は少なくなっており、デスクトップPC向けに近い構成となっていることが分かる。デスクトップPC向けチップセットとの違いを強いて挙げれば、マザーボードのリファレンス・デザインが6層構成の多層基板を前提にしていることくらいだろうか(通常デスクトップPC向けマザーボードは、より安価な4層基板を前提としている)。

大きな図へ
サーバ/ワークステーション向けチップセットの動向
今回の発表により、マトリックスが大きく埋まったことが分かる。逆にいえば、ここ2年ほどはサーバ/ワークステーション向けに、ほとんどチップセットを投入していなかったということでもある。

 今回のチップセットの発表によって、Intel 860がE7505に置き換えられ、Intel 850/850E(RDRAM対応)がこのE7205に置き換えられることになる。これにより、まだRDRAMを最上位に位置付けるデスクトップPC向けチップセットより一足早く、ワークステーション向けチップセットはデュアルチャネルのDDRに移行したことになる。この動きは、2003年のデスクトップPC向けチップセットにも波及することになるだろう。

 さて、以上のラインアップの上で、やはり特異な存在なのがE7205だ。これまでもPentium 4に対応したIntel 850/850Eチップセットが、ローエンド・ワークステーション向けチップセットという位置付けで販売されてきたが、これはもともとデスクトップPC向けとしてリリースされたものである。E7205は、エンタープライズ・プラットフォーム事業本部(EPG)が、企画して発売するPentium 4対応のチップセットなのである。しかも、わざわざリリースしたにもかかわらず、Intelから純正のServer Board(ワークステーション向けだがEPGのマザーボードはこう呼ばれるようだ)がリリースされる予定はない。同時にリリースされるE7505については、IntelからSE7505VB2がリリースされるにもかかわらず、である。

 こうした点について、今回の発表に合わせて来日したIntelエンタープライズ・プラットフォーム事業本部エンタープライズ・プロセッサ・マーケテイング・ディレクタのリサ・グラフ(Lisa Graff)氏に話を伺った。

サーバ/ワークステーション向けチップセットに関するQ&A

 まず、E7205がデスクトップPC用のチップセットに極めて近いスペックである点についてだが、「ワークステーション用のチップセットが、往々にしてデスクトップPC用の延長線上にあるためだ」という。2002年、Intelはチップセットの開発について、サーバ/ワークステーションを担当するEPGと、クライアントPC製品を担当するデスクトップ・プラットフォーム・グループ(DPG)の2つに分離した。EPGのチップセットが「E」で始まる型番が与えられているのもその証だ。

 しかし、実際には現時点において、チップセットの開発リソースはほとんどがEPGとDPGで共有されているとのことである。チップセットの開発においては、サーバ/ワークステーションとデスクトップPCで共通するベーシックな部分があり、そこに適用分野に応じたグラフィックスやメモリのECCなどの機能を加えたり、異なるバリデーション(検証)を行ったりすることで、異なるチップセットとしてリリースされるということであった。

 E7205のAGP 8xやデュアルチャネルのDDR DRAM対応といった機能は、2003年に登場するデスクトップPC向けの開発コード名「Springdale(スプリングデール)」で呼ばれるチップセットなどに類似している。そのため、「マーケット規模の小さなワークステーション市場でテストしているのではないか」あるいは「一般的に高価なワークステーション向け製品を購入するカスタマに対し、こうしたスペックを先取りすることで、一種のインセンティブを与えているのではないか」などとも考えられる。しかし、筆者のこうした考えは否定された。あくまでもPentium 4対応のワークステーション向けチップセットをEPGがリリースするのは、「そのプライス・ポイントに企業ユーザーの需要があり、そのプライス・ポイントに合わせて技術を選択した結果にすぎない」ということであった。

 今回発表されたE7205とE7505は、Intelが久しぶりにリリースしたワークステーション向けのチップセットであり、Intel製チップセットとしては初めてAGP 8xに対応した製品でもある。しかし、すでにIntelは2003年末から2004年前半にかけて、PCI Expressに対応した製品をリリース予定であると明言している。PCI Express対応チップセットでは、グラフィックス・チップの接続に16レーン(x16)のPCI Expressスロットが使われるものと想定される。いい換えれば、AGP 8xがハイエンドである期間は、これからPCI Express対応チップセットが登場するまでの1年半程度しかないことになる。それでも、AGP 8xは必要なのだろうか。この問いに対する答えも、やはり「イエス」であった。EPGでは、「AGP 8xを将来に対するヘッドルームではなく、現在のワークステーション・ユーザーに求められている仕様だと考えている」とのことである。そして、ワークステーション・ユーザーは、常に最新の技術と、それによる高性能を求めているため、いまAGP 8xに対応した製品を購入しても、1年半後にはやはりPCI Express製品を求めるだろうとのことであった。

 このPCI Expressに絡んで、もう1つ気になるのはPCI-X 2.0の動向だ。今回発表されたE7501/E7505とも、PCI-X 1.0に対応したハブ・コントローラ(82870P2)をサポートしている。PCI-X 1.0の後継であるPCI-X 2.0とPCI Expressは、登場時期も恐らく似通っており、わざわざ両方をサポートする必要があるのか疑問もある。もちろん、PCI Expressの先にブリッジ・チップを用いてPCI-X 2.0をサポートすることも可能であり、必ずしも排他の関係にあるわけではないが、同じような機能・性能を持つ仕様の必要性はあまりないように感じる。そこで、IntelがPCI-X 2.0をサポートしたチップセットをリリースする予定があるかどうか、たずねてみたが、現時点ではその予定はないということであった。いまのところ、IntelはPCI-X 1.0からPCI Expressに移行する予定のようだ。

 今回発表された3種類のチップセットで、EPGのチップセット・ラインアップは特にワークステーション分野を中心に改善された。残る分野、いい換えればサードパーティ製チップセットに依存した分野は、Itaniumプロセッサ・ファミリに対応したワークステーション・チップセットと、Intel Xeon MPに対応した4ウェイ以上のサーバ向けチップセットということになる。これらの開発予定についてもたずねてみたが、「現時点ではどちらが先になるかを含め、答えられない」ということであった。ただ、両方ともリリースする予定であることは確かなようだ。

 前述のようにインテルでは、サーバ/ワークステーションのチップセット開発をEPGでも担当するようになった。これにより、サーバやワークステーションのニーズが反映されたチップセットが開発されるようになるのは間違いないだろう。ここ数年、ServerWorksに依存していたサーバ/ワークステーションのチップセット戦略は、ここに来て大きく変わったことが分かる。もちろん、ServerWorksもインテルに対抗するために、より魅力的なチップセットを投入していくことになるだろう。両社が競い合うことで、魅力的なサーバ/ワークステーション向けチップセットが次々と開発されることを願いたい。記事の終わり

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