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D89クリップ(4) Webデザインのヒントになるインタビュー

ペパボ社長・家入氏が語る、
バカとまじめの振り子の関係

仲里淳
2009/2/17
ユニークなデザインやサービスで注目されるペパボ。創業者の家入氏に、クリエータ兼経営者としてペパボが生み出す独創的なサービスへのこだわりを聞いた

 自分にできるのはクリエータとビジネスの仲介人

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 ユニークなデザインやサービスで注目されるpaperboy&co.(以下、ペパボ)。創業者である家入一真氏は、デザイナ/Web開発者としてキャリアをスタートさせ、現在ではそれを支援する側に身を置く。2008年12月に上場を果たし経営者として成功。そんな家入氏に、クリエータとして独創的なサービスを生み出すこと、経営者として会社を成長させることのこだわりについて聞いた。

――もともと自らもクリエータだったわけですが、それを支援する側になろうと思ったきっかけはなんでしょうか?

 高校を中退した後に油絵の学校に通っていたのですが、父親が交通事故に遭ってしまい、就職せざるを得なくなりました。その事故がなければ、三浪、四浪をしてでも続けていたと思います。でも、そのころ、どこかに「表現者として大成できないな」という、ものづくりにおける自分の限界も感じていました。きっかけは父親の事故ですが、根本にはそういう気持ちがあったのです。

家入一真(いえいり かずま)。paperboy&co.代表取締役社長。1978年12月生まれ。2001年、地元福岡で合資会社を設立してレンタルサーバ事業を開始。2003年、有限会社paperboy&co.設立。2004年、株式会社化、GMOグループに参加。2008年12月、JASDAQ上場(証券コード:3633)。個人ブログは「hbkr

 昔からずっと絵を描いたり、何かを作ったりするのが好きだったので、それをやり続けたいという思いもありました。でも、それで生活していけるかといえば、まったく自信はなかったです。

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家入一真氏に、このイベントで会える!@IT主催「おばかアプリ選手権」チケット絶賛発売中

 そんな中で自分にできることを考えたときに、クリエータのサポートならできるなと。自分の強みは、クリエータの気持ちが分かることと、それをビジネスとして考えることができること。どちらも理解できるなら、その間を取り持てばいいじゃないかなと思って、経営者をやっているところがあります。いろんな人と会う機会がありますが、経営を極めようとしている人やアートを突き詰めている人と話をしていると、劣等感を感じることがあります。支援するというと偉そうですが、中途半端なところで自分ができることをやっているというのが実際です。

――上場企業として経営の仕事もさらに大変になると思いますが、家入さん自身はサービス企画や開発に割ける時間はあるのでしょうか?

 私の意識としては、経営よりも現場に力を入れたいという気持ちはあります。サービスのクオリティコントロールであるとかデザインチェックであるとか、そういう部分にガッツリかかわりたいなと。いままでは経営の方に注力していたというか、意識的にそうしていた面もあります。ただ、自分の一番得意なことは現場の仕事なので、そちらに力を注ぐ方が会社にとってもメリットがあると思っています。

 私の信条は、「一経営者である前に、一クリエータでありたい。一クリエータである前に、良き二児の父親でありたい」というものですから……。ここは笑うところですからね(笑)

 実はいまもちょこちょこ作ってはいるのですが、どういうタイミングで発表するかタイミングを見計らっているところです。ホントはもっとガシガシ作りたいのですけどね。

――ご自身をクリエータとして採点するとしたら何点くらいですか?

 サービスをリリースした瞬間は200点満点(笑)。「俺スゲェー!」って。でも、ブックマークなどをあまりされず、評価してもらえないとものすごく落ち込みます。「もうネットなんかなくなっちまえ!!」くらいの勢いで。

――注目しているサービスはありますか?

 「農力村」というサイトです。農家と一般ユーザーをつなぐというサービスですが、とても素晴らしい。もう、テクノロジーだけではない世界に来ていると思っています。企画だけならみんな思い付くけど、それを実際に形にするサービスや会社が好きなので、できたらそういうこともやっていきたいですね。

農力村は、実際に農家の田んぼを面積単位で契約することで、オーナー気分を味わいつつ収穫したお米も得られるというサービス

 会社全体SNSで共有しているペパボらしさ

――社内でサービスの企画が成立してリリースされるまでのプロセスはどのようになっていますか?

 基本は企画の稟議が上がってくるので、ビジネスモデルが確立できるものならゴーサインを出します。合宿でパッと作るものもあれば、スタッフが個人的に作ったものを会社として運営することもあります。

 人やお金を大きく投資するものはきちんとした会議を経て出しますから、それなりに時間はかかります。逆に、コストをかけずにサクッとできるものは、「じゃ、やってもいいよ」という感じで時間をかけずに進めます。

 事業部の数が多いので、まずは事業部単位で検討して、そこから上がってきたものが私のところに来ます。以前は私も食事や立ち話をしながら議論に参加していましたが、いまは現場に任せています。そうやって企画が上がってくる過程でうちらしくないものはそぎ落とされるので、最終的にはかなり高い精度で「ペパボらしいもの」が残ります。

――「ペパボらしさ」を保つための仕組みや心掛けていることはありますか?

 以前、「ペパボらしさ」というものを言語化しようと試みたことがあります。でも、どうにもできなくて。ただ、「ペパボらしさ」というものは雰囲気として確かに存在していて、そこから外れるとスタッフも「これはうちらしくないよね」といいます。それは、サービスのシステムやデザイン、インターフェイス、ネーミングに至るまでです。「うちらしい」「うちらしくない」というのは会話の端々に出てきて、お互いにチェック体制ができているような感じです。言葉にはできないけれど、「ペパボらしさ」という空気感をお互いに共有できている。ただ、どうやってといわれても、自然と共有されているとしかいえないところですが。

 会社の色というのは、クレイアニメで色の付いた粘土が交ざるようなもので、スタッフ全員交ざったものがペパボらしさ。創業時はもちろん私の色が100パーセントでしたが、もはや私の存在は薄まっていますし、それでいいと思っています。

 現在、スタッフは120名います(2009年2月時点)。1000人、1万人に増えたとき、このままで「らしさ」を保てるのかどうかは分かりませんが、少なくともいまはこれでいいのかなと。そこは常に考えていかなければいけない課題ですね。

ペパボの代名詞ともいえるのが、その激安価格とビジュアルで業界に旋風を巻き起こしたレンタルサーバサービス「ロリポップ」。カワイイのかキモイのかなんともいえないデザインはいまも健在

――「かっこいい」「面白い」など、デザイン的なセンスの共有や向上のためにしていることはありますか?

 「このサイトかっこいいね」といった情報の共有は社内SNSなどで頻繁にしています。あと、入社して間もないスタッフが作るものについては、僕も含めて4人いるシニアデザイナがチェックするので、そこで鍛えられているのかもしれません。

――ネーミングもユニークですが担当のスタッフがいるのでしょうか?

 ネーミングの担当というものはなくて、みんなで意見を出し合います。うちは基本的にボケの人間がほとんどで、アイデア出しをするとひたすらボケ合うことになります。「もっと面白いことをいわないと」という方向にどんどん進んでいくので、最終的にはひどい状態になってしまいます(笑)。ずっと続けていると3日目くらいに「これいいんじゃない?」というものが出てきます。

 

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