帳票ベンダ・インタビュー
第6回:富士通株式会社

吉田育代
2005/8/24



 オープン環境の企業情報システムにおける帳票ソリューションはどうあるべきか? 日本企業にとって積年のテーマに対する解を探るため、代表的な帳票ベンダに取材する本シリーズ。第6回は、Interstageブランドで帳票設計から帳票配布・帳票管理までトータルソリューションを長く提供する富士通株式会社(以下、富士通)である。富士通株式会社 ミドルウェアソリューション事業部 事業部長代理 山本昭之氏に話を聞いた。
 
  変化を先取りできる先進的で磐石な環境を求める企業

 富士通では、帳票ソリューションにおけるユーザー動向を次のようにとらえている。大きく分類すると、以下の4つの流れが企業の帳票への取り組みを活発にしてきたという。

  1. 帳票電子化の本格的な立ち上がり
  2. 業務のセンター集約化
  3. マイグレーション気運の高まり
  4. 最新技術/法対応

富士通株式会社 ミドルウェアソリューション事業部 事業部長代理 山本昭之氏 「企業の『顔』というべき帳票開発を長い経験でサポートします」

 1の帳票電子化の本格的な立ち上がりというのは、2005年4月のe-文書法施行で、いままでより幅広い文書の電子保存が認められるようになったことから、企業が紙帳票の保管コストの大幅削減を目指した取り組みを始めていることを意味している。

 2の業務のセンター集約というのは、分散環境を進め過ぎたために管理が煩雑になってしまったことの反省からきたものである。全体最適の観点から、また開発生産性、保守性の向上という観点から、業務をセンターに集中させ一元管理しようという企業は増えている。さらにこれは、ビジネスがグローバル化しても集中化できる業務は集中化させるという流れにもなっている。

 3のマイグレーション気運の高まりが意味しているのは、オープンシステムの充実による適材適所発想だ。また2000年問題でリプレイスされたマシンがまた更改時期にきているということもある。

 4の最新技術/法対応は、先のe-文書法もそうだが、個人情報保護法の完全施行など、企業財務情報のXBRL化対応や、企業をめぐるITの周辺環境は目まぐるしく変化し続けており、帳票もそれへの対応を余儀なくされている。具体的な例では、2006年6月よりコンビニエンスストアでの料金収納を行う企業は、UCC/EAN-128というフォーマットに準拠したバーコードが入った料金収納帳票を利用しなければならない。今日では、こうした変化に振り回されることなく、逆に先取りができる先進的かつ磐石なIT環境が求められているのである。

  帳票は企業の『顔』。企業の高いこだわりに
3つのキーワードで応える

 こうしたさまざまなニーズを受け止めるべく富士通が提供しているのが、帳票ライフサイクルのすべての機能を網羅した帳票インフラストラクチャだ。

図1 富士通Interstageブランドの帳票インフラストラクチャ
企業情報システムで幅広く利用可能な基盤を提供する

 サーバやプリンタなどのハードウェアや各種OS、ERPパッケージ製品や物流システム、ビジネスインテリジェンスシステムなどの業務アプリケーションの間でミドルウェアとして位置し、ハードウェアやOSの進化で発生する変化を吸収するショックアブソーバとしての役割を果たしながら、帳票を作り、配信し、出力し、利用し、保存するというすべてのフェイズに対してトータルのソリューションを提供する。山本氏は同社のソリューションのアピールポイントを次のように語る。

「帳票は企業の『代表』『顔』とでもいうべきものです。企業活動の中で日常的にやりとりするものですから、分かりやすく、美しく、迫力ある帳票を迅速に作成できなければならないと、お客さまはその在り方に大きなこだわりをお持ちです。われわれはそのお求めに対して、『ジャストフィット』『長期保証』『短期構築』という3つのキーワードでお応えします」

 富士通はホスト/オフコン時代から、四半世紀にわたって帳票ソリューションを提供してきた歴史を持つ。その圧倒的な実践経験と、Javaや.Netなどいち早く先進技術にキャッチアップする高い技術力を駆使して、顧客の業務/要求にぴったり合った帳票システムを構築できる。それが「ジャストフィット」というキーワードが示している意味だ。

 「長期保証」というのは、ユーザー資産を守るということである。上記でも少し触れたが、要件が変わらない限り業務アプリケーションが10年、20年というライフサイクルを持つのに対して、ハードウェア、OSは2、3年の短いサイクルで進化していく。実際、それによって既存資産が活用不能になることもままあった。しかし、富士通の帳票インフラストラクチャでは、その変化をミドルウェアの役割として吸収する。そのため、一度作成したユーザー資産や業務アプリケーションのAPIは、変わらず利用できるというわけだ。

 さらに、ソリューションがトータルに提供されているため、新たに開発することなくコンポーネントを組み合わせるだけで必要なシステムを構築できる。もちろん、“小さく生んで大きく育てる”ことも可能なら、他社製品を組み込んだオープンなソリューションも提供可能。それが「短期構築」の意味するところだ。

 山本氏によると、富士通の帳票ソリューションは2004年度末で7万8000サーバのインストールベースがあるという。この数字こそが、同社が顧客ニーズに密着した柔軟なソリューションを提供している証左だろう。

  「作る」から「保存する」まで、
帳票ライフサイクルのすべてをカバー

 では、具体的にInterstageブランドが提供している帳票ライフサイクルの各フェイズを順に見ていこう。

図2 Interstageの帳票ライフサイクルの各フェイズ(画面をクリックして拡大表示)
自社環境にあわせ、必要なコンポーネントを組み合わせ構築する

 まず「作る」「出力する」というフェイズで活躍するのが、帳票設計ツールのList Creator、帳票生成ツールであるList Managerである。

 List Creatorは、スクラッチからの帳票設計はもちろんのこと、OCR機器からの紙帳票の取り込みにも優れている。業界に先駆けてカラーイメージ対応を果たし、画面上で簡単にカラーを復元することができる。この製品はまた上流設計ツールとも連携が可能で、システム開発の際の要件定義の段階から利用すると、高い開発生産性を発揮するという。さらに、業務アプリケーションと印刷制御を分離可能なList Managerの特性により、出力制御がその帳票定義画面内で設定でき、出力先を変更したい場合も、業務アプリケーションを修正する必要はない。

図3 積み立て女性保険契約申込書のイメージ(画面をクリックして拡大表示)
帳票のオーバーレイも、印刷出力感覚で簡単に作成できる

 「配る」フェイズの担い手もまた、List Managerである。ここでの最大の特徴はデータの送信方式だ。一般に、1万枚、2万枚といった大量の帳票を配信する場合、イメージデータやスプールデータで送ると、そのネットワークへの負荷は相当なものになる。しかし、富士通の場合、帳票のレイアウトデータと論理データ本体を分離・圧縮して送り、しかも同じレイアウトデータは一度しか送らない。それを拠点側に配置されたList Manager Agentが解凍して合体させ、大量印刷するスタイルを取るため、スプールデータで送信する方式に比べて、転送するデータ容量は1万枚の配信で約1/40になるという。印刷を開始するまでの時間を比較すると約1/490だそうだ。送信管理機能にも力を入れており、印刷スプールだけでなく、FAX送信やPDF変換などの出力状況をセンター側で一元的に管理できる

 List Worksは、「使う」「保存する」というフェイズを担当する製品だ。今日の情報流出や情報漏えいが多発する社会状況を考えると、セキュリティ確保は企業にとって最優先課題といえるが、電子帳票ならその管理を厳密化できる。これを支援するのがList Worksで、ユーザーの帳票閲覧/印刷/再加工の可不可といった権限管理が容易であるだけでなく、ドラッグ&ドロップでフォルダ移動が可能な電子帳票の管理機能を提供しており、職制変更や人事異動などにも即日対応することができる。

 富士通の帳票ソリューションを語るうえで忘れてはならないのが外字管理機能を提供するCharset Managerである。全社レベルで外字にきちんと対応しようとすると、外字が必要になるたびにそれを作成し、クライアントシステムすべてに配布する必要がある。管理が煩雑になるため、顧客満足度の向上につながると分かっていても外字の利用をあきらめる企業も多かったのだが、富士通はこうしたニーズに応えるためにCharset Managerのオプションで、約9万字の外字データライブラリを提供している。

 特筆すべくは、この約9万字の外字データライブラリが、富士通だけでなく日立、IBM、NECといった主要なホストメーカーの外字を網羅していることである。また、日本企業の中国進出にも配慮して、中国簡体字/繁体字も組み込んだ。そこに戸籍で使われている文字や最新の人名漢字なども加わって、そこでは企業活動上必要な外字がほぼカバーされている。Charset Manager Web入力というオプション製品を用いれば、プログラムや外字を配布することなくインターネット上で外字を入力することが可能になる。

図4 一般旅券発給申請のイメージ(画面をクリックして拡大表示)
どんな外字もリストから選ぶだけ。顧客満足度向上に貢献するCharset Manager

  いち早くSOAにも対応へ

 ユーザーニーズを見据えた完成度の高い帳票ソリューションを提供している富士通だが、今後はどのような方向に進んでいくのだろうか。山本氏に尋ねてみた。

「富士通では、SOA(Service Oriented Architecture)対応に一丸となって取り組んでいます。帳票プロジェクトでも、XMLやSOAPといったインターネット上の標準技術への対応を加速し、Webサービスを前提としたより一層柔軟な帳票ソリューション提供へといち早く駒を進めていきます」

 このほかにも、セキュリティ機能の追加やさらなるノンプログラミング化、さらなるグローバル化にも意欲を燃やしているといい、進化のロードマップは終わりを知ることがない。



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