リッチクライアントベンダ・インタビュー
第9回:株式会社ソフトクリエイト

ナレッジオンデマンド
宮下知起
2006/9/28




 株式会社ソフトクリエイト(以下ソフトクリエイト)が開発した「X-WebForm」は100% Pure Javaで開発できるリッチクライアントソリューションだ。その特徴は、SDKとOracle JDeveloper 10gを開発ツールとして用意し、リッチなフォームの容易な作成とJDeveloperの効率のよいプログラミングを提供している点だ。実行にはサーバサイドにミドルウェア「X-WebForm Server」が必要だ。現在、開発ツールは無償でダウンロード可能で、実行ライセンスのみ料金が設定されている。JDeveloperも無償であるため、開発者数分ライセンスを購入する必要はなく、もちろん評価もソフトウェアのダウンロードですぐに開始することができる。

  ツールのフリーダウンロードは7月から上記のX-WebFormのサイトから開始されており、ダウンロード数からも開発者の関心は非常に高いという。ソフトクリエイト X-point開発部 開発部長 城倉和孝氏は「お客様の関心は2極化しています。Javaの開発に慣れていない方と、経験豊富な方とでは評価ポイントが異なります。前者からはVBライクな開発ができる点を、後者からは煩雑になりがちなJava開発の生産性向上に関心をいただいています」と語る。

従来のクライアント/サーバに似たスタイルで開発ができる

ソフトクリエイト X-point開発部 開発部長 城倉和孝氏

 Java開発に慣れない開発者に評価されている点は、“フォームやフィールド、ボタン等をマウスを使ってビジュアルに作成し、フィールドやボタンに対してイベントハンドらを記述していく”というVisual Basicと同様の開発スタイルを実現している点だという。

 Visual Basicの経験が長いイプログラマは、Javaのオブジェクト指向の概念になかなか慣れないケースも多い。X-WebFormでの開発はJava言語を用いながらも、画面の開発においては画面部品に紐づいたイベントハンドラを記述していくスタイルなので、Javaの本来のオブジェクト指向のスタイルを知らなくてもWebのフォーム開発が可能だ。

 また、SDKに用意されたライブラリは非常に豊富であり、以下のような機能を提供することにより、クライアント/サーバと同等な操作性を実現するという。

  • 入力チェック(バリデーション)
  • 日付自動入力
  • カレンダー機能
  • キーボードコントロール(タブ・Enterキーによる項目の移動)
  • ツールチップ(入力ガイド)
  • コンボボックス、チェックボックス、ラジオボタン等の基本部品
X-WebFormの豊富な機能 (クリックすると拡大表示します)

 また従来精巧な帳票フォームをWebアプリケーションとして作成する場合、HTMLに直接触れて微調整を行う必要があった。しかし、X-WebFormにおいてはGUIツールで精巧なデザインが可能であり、HTMLの知識を一切必要としない点が特徴だ。

このような精巧な帳票もGUIツールで容易に設計できる

 X-WebFormを開発した動機に「日本のユーザーの、精巧なフォームを使いたいというニーズに応えることがあった」と城倉氏は語る。JDeveloperだけでは実現できない緻密さを、X-WebForm+JDevelperで実現したということだ。

 Visual Basic開発者にとってうれしい細かな配慮は数々の仕様に見られる。自分のフォームを操作する際には“Me.[フィールド名].[メソッド名]”と記述することでフィールド操作ができる点や、Visual Basicでデータベースプログラミングを行う際に使うADOオブジェクトに扱いの似た「XWebDatabaseオブジェクト」が用意されているなど、非常に気が利いている。

Ajax、Strutsの開発も容易に

ソフトクリエイト X-point開発部 テクニカルエンジニア 山口直人氏

 特筆すべきはJavaプログラミングがAjaxのコードを生成する点だ。「お客様の要望でクライアントサイドをリッチにせざるを得なくなり、JavaScriptを使うので何日も徹夜をしたり、デバッグにも苦労したという声をよく聞きます。そこでX-WebFormでは、X-WebFromのVisual Basicライクな開発スタイルそのままにAjaxのコードを生成する機能を設けています」(城倉氏)。

 とかく開発生産性が課題視されるJavaScriptだが、デザイン作成からコーディング、デバッグまでをJDeveloper上でワンストップに実現している。

 一方、Javaの上級者にうれしい機能がStrutsとの連携だ。「Strtusで作成が必要なActionクラスとFormBeanの自動生成。フォームフィールドに対するアクセッサクラスの自動生成を行ってくれます。アクセッサクラスに関しては、フォーム変更に対しX-WebFormが常に自動更新してくれるため、開発者が編集する必要がありません」(ソフトクリエイト X-point開発部 テクニカルエンジニア 山口直人氏)。

 X-WebFormは、今後JSF、EJB 3.0にも対応していく予定だという。「常に最新のテクノロジに対応するとともに、初級から上級までのユーザーの幅広いニーズに応えていく方針で、製品をさらによくしていきたい」(城倉氏)。

 ところで、X-WebFormはコードと画面が完全に分離されていてメンテナンスが容易だ。開発のマネージャーからはこの点評価が高いという。

強みは見栄えとデータエントリーしやすいフォーム

 X-WebFormは、見栄えよいフォームの開発のしやすさを生かし、経費清算や稟議書等の帳票の要素が強いWebアプリケーション開発に強みがある。また、Ajaxを駆使できることから、SFAやCRMといった意思決定を支援するアプリケーションにも適しているだろう。

 また帳票ツール的な側面は、企業の情報システム部の担当者に分かりやすく評価が高いという。アプリケーションソフトのような感覚でフォーム作成ができる点で「情報システム部にはリテラシーが高い方ばかりがいらっしゃるとは限りません。X-WebFormの特徴は、目で見ていただけるので理解は早いようです」(城倉氏)。

 また、システムのスピーディーな立ち上がりを評価いただくことも多いという。「JDeveloperはオラクルデータベースを使った開発には非常に高い生産性を発揮します。データベースのスキーマ設計、PL/SQLのデバッグなど、すべてが簡単です。しかも、PL/SQLとJSPのステップ実行によるデバッグは連携(連続)して行うことができます。これはEclipseにはできないことですね」(山口氏)。

 「X-WebFormでは、ユーザーの目の前で画面を修正しながら、スパイラルに作業を進めていくことができます。ウォーターフォールの開発と異なり、はじめからユーザーと画面仕様を共有してプロジェクトを進められます。さらには、プロジェクトリーダーが、エンジニアに画面を設計させる際に、X-WebFormの上でラフスケッチを行い渡すことができます。正確でスピーディーな作業指示ができるわけです」(城倉氏)。

 X-WebFormは、今後もJDeveloperのメリットを生かしながら、ユーザーフレンドリーな製品開発を目指すという。オラクル製品への依存度が高いとはいえ、JDeveloperは無償提供されているので、開発ライセンスのコスト増の心配はない。また、JDeveloperは、Oarcle ADF(Application Development Framework)やOracle Applcication Server 10g、Oracle Database 10gと組み合わせたときにアドバンテージとなる機能を豊富に有している。オラクルへの依存度が高くなるとはいえ、オラクル製品をミドルウェアに選択するユーザーにとっては、サービスのスピーディーな立ち上がりを考慮すると選択肢の有力候補となりうるだろう。



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