帳票ベンダ・インタビュー 第21回

ノンプログラミングで電子帳票化し
CD-R配布もできる


吉田育代
2008/1/10

エンドユーザー視点で開発されノンプログラミングで業務データの電子帳票化を実現するシステムとは? CD-R配布できるメリットとは何か?

 オープン環境の企業情報システムにおいて、帳票ニーズはいまどのような状況になっており、それに対して帳票ベンダはどのようなソリューションを提供しているのか。帳票ベンダへの直接取材でその解を探るシリーズ。第21回は、中央コンピュータシステムのTrinitat(トリニテート)を取り上げる。この製品は1990年代前半という早い段階から電子帳票の可能性に気付いた同社が、コツコツ作り上げてきたシステム。現在のバージョンは7で、オープン系帳票設計ツール「System5000」、データ加工・生成ツール「Generator」、電子帳票ビューア「System35」などから構成される。エンドユーザー視点で開発されたシステムは、ノンプログラミングで業務データの電子帳票化を実現する。

 

データの記録媒体として
紙は便利なれども悩ましい

 正直、紙というのは、現代人にとって非常に悩ましい存在である。持ち運ぶのが容易で、読みやすい。だからこそ、1000年以上の長きにわたって重要な記録媒体として用いられてきたのであるが、今日のように社会や生活の中に電子機器が普及して紙でなくても読むことができるようになると、いささかその欠点も目立つようになってきた。

「紙」の欠点【その1】ページの検索

 例えば、求めるデータに一発でたどり着けないということ。分厚い冊子ともなれば、大体の目安は付けることはできても、詳細はページを繰りながら該当個所を探していくしかない。時間がかかる。

「紙」の欠点【その2】データの二次利用

 また、データの二次利用ができない。紙で来たらもはやデッドエンドだ。そこにあるデータを使いたかったら、自分でPCなり、別の紙なりに転記するしかしようがない。

「紙」の欠点【その3】物流・保管の必要性

 さらに、持ち運べるということは、逆に持ち運ばなければいけないということである。たとえたった1枚であっても物流が必要だ。そして運んだ先では保管の必要が生じる。スペースが要るのである。

「紙」の欠点【その4】セキュリティの確保

 加えて、セキュリティの確保が難しい。読まれないように守ることは一応できる。しかし、いったん人目に触れてしまったら、その言語や記号を理解する人間には誰にでも読まれてしまう。

「紙」の欠点【その5】劣化の危険性

 おまけに、劣化する。紙は古びる。大切に守った揚げ句に、虫に食われたり、風化して読めなくなってしまったりというような危険がなきにしもあらずだ。

 

1990年代前半から電子帳票の可能性に
気付いて作り上げられたシステム


 こうした問題を解決しようとして開発されたのが、中央コンピュータシステムの電子帳票システム「Trinitat(トリニテート)」だ。同社はまず1993年に、大型汎用コンピュータ(ホストコンピュータ)やオフィスコンピュータ向けに帳票変換ツール「System3000」を開発した。これはホストからダウンロードした帳票データを、同社の電子帳票ビューアソフト「System35」に表示できるファイル形式に変換するためのシステムだ。

 続いて同社は、UNIXマシンやWindows PCなどのオープンシステムで管理している帳票データを電子帳票に変換する帳票設計ツール「System5000」を、Trinitatのバージョン7をリリースするタイミングで発表した。

 また現在では、System5000とも組み合わせて使用できる、ノンプログラミングのデータ加工・生成ツール「Generator」や、運用自動化システム「BookMan」なども加わって、一連のTrinitatファミリーを形成している。今回はオープン系の「System5000」を中心に「Generator」「BookMan」「System35」の機能を紹介していく。

名称の由来聞いてびっくり

 ちなみに、このシステム名称に付されている数字には隠れた意味がある。ホスト系のSysyem3000の3000は「産前(さんぜん)」で、System35の35は、「産後(さんご)」なのだそうだ。電子帳票の誕生前、誕生後ということらしい。

 ではSystem5000の5000は? こちらはなんと「婚前(こんぜん)」らしい。後から生まれたシステムが婚前というのはちょっと展開としては苦しいのだが、韻を踏んだらこうなったようだ。次に出てくる製品が、System55、「婚後(こんご)」という名称になるかどうかは定かではない。

 

データ生成、帳票設計、
すべてのプロセスがノンプログラミング

 さて、トリビアはこのぐらいにして具体的な製品の機能紹介に入ろう。帳票開発のプロセスの手順からいくと、まず利用するのが「Generator」である。

ノンプログラミングのデータ加工・生成ツール「Generator」の特徴

 これはデータソースのデータベースやCSV形式で抽出してきたデータに対して、SQL文を書くことなしに帳票に載せるデータへと生成・加工するツールである。データを結合させたり、四則演算や関数演算をさせたり、集計を行ったりといったことを、PCの画面上で視覚的にデータの加工方法を指定しながら設定できる。

図1 「Generator」の使用例(出典:中央コンピュータシステム)
図1 「Generator」の使用例(出典:中央コンピュータシステム)(クリックして拡大表示)

 1つのデータ加工定義で欲しいデータにたどり着けない場合は、複数のデータ加工定義を組み合わせて実現する。データを結合させて、演算処理をして、集計して、その結果をソートする、といった具合にステップは多段階にわたってしまうが、プログラミングを介在させないため、情報システム部門の技術者でなくてもデータを用意することができる。

 また、この製品にはステップ実行という機能があり、それぞれのステップを確認しながら前に進むことができる。データが正しく加工されているかを視覚的にチェックできるため、安心である。

 さらにデータソースに関しては、異なるデータベース間をシームレスに接続できる。例えば、AccessのデータをOracleに出力したり、データベースとCSVファイル間でやりとりするといったことができ、データベースの違いを意識せずに済む。

 加えて、システム連携のためのAPIが用意されており、別途Trinitat SDKを購入する必要はあるが、「Generator」をほかのシステムの一部として利用することもできる。

帳票設計ツール「System5000」の特徴

 帳票用のデータがそろったら、帳票設計ツール「System5000」の出番だ。これは前述のとおりノンプログラミングでの帳票開発を支援するツールである。

 具体的には、設計画面上に帳票の枠や画像などをビジュアルに配置していく。線の太さ、色など表示形式は書式設定をマウスで操作して細かく指定できる。まさにワープロ感覚だ。座標を入力したり、プログラムをコンパイルしたり、画面を印刷して確認するといった作業は不要である。

図2 「System 5000」の使用例
図2 「System 5000」の使用例(出典:中央コンピュータシステム)(クリックして拡大表示)

 すでに電子化したい帳票イメージがある場合は、画像として取り込んでそれを下絵とすることができる。このシステムは基本的にはCSVファイルのデータを取り込んで電子帳票化するのだが、データ解析という便利な機能があり、取り込むデータのデータ型やサイズを自ら判断して配置スペースを確保してくれる。

 「Generator」と連携すれば、RDB(リレーショナル・データベース)のデータを直接取り込むこともできる。この製品にも連携のためのAPIが用意されており、Trinitat SDKの利用で、ほかのシステム上から「Generator」を操作できる。

独自のデータベースを開発した理由

 データ加工でも、帳票設計でも、ユーザーに一切プログラミングをさせない。Trinitatは電子帳票作成のプロセスがとても分かりやすい。株式会社中央コンピュータシステム システム第三部 システム開発4グループ 西井 傑氏は、製品の設計思想をこう語る。

株式会社中央コンピュータシステム システム第三部 システム開発4グループ 西井 傑氏
株式会社中央コンピュータシステム システム第三部 システム開発4グループ 西井 傑氏

 「プログラムやSQL文を書かなければならないとなったら、帳票開発はどうしても情報システム部門に頼らなければならなくなります。どのような帳票を作りたいかはエンドユーザーの中にイメージがあるのですから、エンドユーザーが最初から最後まで操作できるのが一番だと考えました」

 また、これもこのシステムの大きな差別化ポイントだろうが、Trinitatではデータを格納するのに独自にデータベースを開発している。「DB-ACE」と呼ばれるものなのだが、この理由を、株式会社中央コンピュータシステム 営業推進部 営業課 渡辺 順尚氏は次のように語る。

 「もともとは配布無償の他社製品データベースを利用していたのですが、あるタイミングで有償化されることになりました。そのままだとお客さまにデータベースを別途購入してもらうことになってしまいます。他社の思惑に左右されるぐらいならTrinitatに合ったものを自社で開発しようということになり、全社からエンジニアを集めて、1年半かけてリレーショナルデータベースを作り上げました。ホスト並みの処理性能およびセキュリティ、システムとしての独立性にこだわって完成させた意欲的なミドルウェアです」

 

運用の現実を見据えたツールを
数多くラインアップ


運用自動化システム「BookMan」の特徴

 これでデータソースのデータを電子帳票化するための準備は整った。次は、これをどう運用するかだが、このプロセスを自動化するのが「BookMan」である。この製品がインストールされたPCに帳票データが送られると、帳票の作成、仕分け、配信などの作業が自動実行される。

図3 「BookMan」の使用フロー(出典:中央コンピュータシステム)
図3 「BookMan」の使用フロー(出典:中央コンピュータシステム)

 仕分けというのは、作成された帳票を、例えば、それを必要とする部門ごとに分類するということで、配信はそれを部門ごとのフォルダに配ってしまうということだ。

 Trinitatでは、フォルダ単位でアクセス権限に応じたセキュリティを掛けることができ、ユーザーは閲覧を認められたフォルダ以外は表示もされない。

電子帳票ビューアソフト「System35」の特徴

 こうして完成された電子帳票(ファイル形式は拡張子「.bok」)を、専用のビューアソフト「System35」で見る。ボリュームのある帳票も素早く開くことができること、付せんを付けたり、スタンプを押したり、ブックマークを付けたりできるオブジェクト機能が充実していることが大きな特徴だ。

図4 「System35」の使用例(出典:中央コンピュータシステム)
図4 「System35」の使用例(出典:中央コンピュータシステム)

 また、目次を利用した検索、キーワードによる検索、複数の条件を組み合わせたグループ検索、複数のフォルダのファイルをまとめて検索できる複数ブック串(くし)刺し検索など、検索機能も豊富である。付せんに書き込んだ文字列で検索することもできる。

 帳票上のデータを二次利用したいときは、フィールドコピー、マルチ行コピー、データブロックコピー、イメージコピーなどの機能を利用してコピー&ペーストする。

 

ネットワークがなくてもOK
オプションでCD-R配布ソリューションを用意


CD-R配布ソリューション「TrinitatCD」の特徴

 Trinitatにはもう一つユニークな特徴がある。それは、電子帳票ビューア・帳票データを同梱した「TrinitatCD」という参照オプションが用意されていることである。作成した電子帳票をネットワーク経由ではなくCD-Rで物理的に配布してしまおうというのである。企業導入の際のカスタマイズでこのような形が実現することはよくあることだが、初めからソリューションとしてラインアップされているのは珍しい。

 「昨今、ネットワークが浸透したといいますが、店舗など一部ではPC1台を置くのがやっとというところもあります。そうしたところでは必要な電子帳票をCD-Rで配布した方が現実的なので、このオプションを用意しています」(渡辺氏)

自動CD-R/DVD-R書き込みシステム「DiskMan」の特徴

 これとは別に、CD-R/DVD-R書き込みシステム「DiskMan」という出力オプション機能もあり、ライター機との連携で大量の帳票データを自動的にCD-R/DVD-Rに書き込む処理を実現する。重要な法定帳票の長期保存や帳票のバックアップ対策としてニーズが高いという。

電子帳票集中管理オプション「ServerEdition」の特徴

 このほか、同社が最近推奨している参照オプション機能として「ServerEdition」がある。基本システムではクライアントPCで帳票保存が必要になるなど、クライアントサイドに大きく依存する部分があるのだが、「ServerEdition」を利用すると、サーバ側で電子帳票を集中管理でき、セキュリティが高まるとともに高速な検索処理も可能になるという。

 価格的にも、こちらは同時アクセスユーザーライセンス体系を取っており、100人を超える企業でTrinitatを利用するなら「ServerEdition」の方が割り得だそうだ。

 




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