帳票ベンダ・インタビュー 第24回
イノーバ×インフォテリア


データ流通の媒体に選んだのはExcel帳票。
人間の判断も組み込みながら、
基幹システムとの自動連携が可能に。


吉田育代
2008/9/10

インフォテリア×イノーバの出した帳票への解。文書流通メディアとしてExcelを活用し、人間系処理も加味して、基幹システム連携を実現した
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 オープン環境の企業情報システムにおいて、帳票ニーズはいまどのような状況になっており、それに対して帳票ベンダはどのようなソリューションを提供しているのか。帳票ベンダへの直接取材でその解を探るシリーズ。

 第24回は、インフォテリアイノーバが提供するExcel帳票ワークフローソリューションを取り上げる。これは、柔軟な帳票開発が可能で、しかも最も普及した文書流通メディアであるExcelを有効活用し、人間系処理も加味しながら基幹システム連携を実現させようというもの。デザインツールの活用により、プログラミングを行わない短期・低コストでのシステム構築を目指している。

 

文書流通メディアとして優れた特性を持つExcelだが……。

 Excelは、業種・業態を問わず日本の企業文化に本当に根付いた文書流通メディアである。およそ組織で働いている人ならほぼ“Excelのファイル作成や加工ぐらいならできる”というぐらいにはリテラシーのすそ野が広がり、また、バージョンはともかく組織の枠を超えてほとんどのPCにもインストールされているという普及率の高さから、社内ばかりではなく社外とのコミュニケーションや取引の媒体にExcelが検討されるケースはますます増えている。

 受発注などの企業間取引で利用する場合、Excelも電子帳票の一形態であると考えれば、基幹システムとの自動連携まで持っていくことができれば、スピードの点でも業務効率の点でも理想である。残念ながら、これまではそこに具体的な解決策がなかったために、Excelで届いた帳票を見ながら人間が、基幹システムに対してデータの再入力作業を行っていた。

 そうしていたのは、技術上の問題に加えて、業務プロセス上の問題もあったかもしれない。届いたExcelの帳票の内容に対して、人間が意思決定を行うというのもよくあることだからである。例えば、受注は企業にとってうれしいことではあるが、数量や納期などによってはやみくもに引き受けられない場合もある。しかるべき部署のしかるべき権限を持った人間が判断して、時には複数部門にまたがるカタチでコンセンサスを取って、初めて受注を承諾できるなどといったこともある。届いた電子帳票のデータを、基幹システムへ何でもかんでも流し込むわけにはいかないのである。そのため、企業によっては費用を掛けて独自の決済ワークフローシステムを構築しているところもあった。

 さらに昨今は、内部統制という問題もある。Excelをベースにした帳票は柔軟性も高いが、セル上の文字・数字を変更できてしまうという点でリスクも包含している。特に契約や金銭にかかわるものをExcelでやりとりする場合には、何らかの方策を打つことが求められるようになっている。

 

矛盾した要望をかなえるExcel帳票ワークフローソリューション

 ビジネス社会に広く普及したExcelを社内外の取引媒体に使いたい。しかも、できるだけ業務効率を上げる形で使いたい。しかし、人間の関与も欠かすことはできないし、セキュリティの確保も必要だ。

 このような一見矛盾した要望を一気にかなえてしまおうというのが、インフォテリアのEAIソフトウェア「ASTERIA WARP」とイノーバのワークフローシステム「Innova Process Navigator」を連携させたExcel帳票ワークフローソリューションだ。

 どういう仕組みで実現するかというと、取引先からWebや電子メール、FTP、EDIなどさまざまな手法で取得したExcelファイルをまずASTERIA WARPが受け取り、Innova Process Navigatorの構成要素の1つであるビジネスプロセスエンジンのInnovaFlowに必要なデータを渡す。ワークフローにより担当者がデータを確認し、しかるべき権限者が意思決定すると、それらのデータがASTERIA WARP経由で基幹システムに投入される(図1)。

図1 基本的なアーキテクチャ

 ASTERIA WARPが取引先と基幹システムとの間に入ることにより、システム、人間を問わずさまざまな手法でExcel帳票を受け取ることができ、またこの製品のExcelのデータ変換機能、データ転送機能、基幹システム連携を利用することで、帳票内容によって判断の必要のないものは直接基幹システムへ、判断の必要があるものはInnova Process Navigatorへ渡すというような振り分け処理が可能になるというわけだ。

 この連携ソリューションは、インフォテリアが「@WARP」の名の下に、ASTERIAを介して各種企業向けパッケージソフトウェア製品とほかのシステムとの連携を推進する制度の中で誕生したものだという。大きく、基幹業務系アプリケーション、フロントアプリケーション、ミドルウェアと3つの連携プロダクトジャンルがあり、現在46社53製品が@WARPに加盟している。その中で、Innova Process Navigatorとの連携は、フロントアプリケーション連携に当たる。この制度により、ASTERIA WARPを介した接続について技術支援・共有や告知が行われるため、エンドユーザーサイドではスムーズな導入が期待できるようだ。

 

デザインツールの活用により、プログラミングの要らない開発を志向

 さて、このExcel帳票ワークフローソリューション、最も大きな特長は、短期間・低コストで仕組みを構築できることにあるという。その理由は、全体のフロー設計に両者の用意するデザインツールを利用でき、専門技術者によるプログラミングの必要がないから。

 まず、取引先から取得するExcel帳票をどう基幹システムまで受け渡していくかという全体の流れは、ASTERIAのフローデザイナーで行う。この連携ソリューションでは、フローデザイナーの中にASTERIA連携コンポーネントとして、あらかじめ2つのInnovaFlowタグがアドインされている(画面1)。

画面1 ASTERIA連携コンポーネントを使ったASTERIAフロー定義

 1つは入力コンポーネントで、これを設定すると、指定のフォルダにファイルを置くことでワークフローを自動的に立ち上げることができる。もう1つは出力コンポーネントで、これを設定すると、ファイルが最終承認された段階でそのファイルを指定のフォルダに自動コピーする。これでInnovaFlowとの間でデータの受け渡しが成立するわけだ。Excel帳票の中のどのデータをワークフローで利用するかもフローデザイナーを使って設定する。

 次に、InnovaFlowでのデータ受け渡しの設定は、Innova Process Navigatorのもう1つの構成要素であるInnovaDesignerというツールを利用して、ASTERIAから受けたデータをどういう経路を通してASTERIAへ戻すかを記述する(画面2)。

画面2  Innovaフロー定義

 ここでは、実務担当者から最終承認者までの単純なエスカレーションは1つのアクティビティとして扱われるという。InnovaFlowでのユーザー登録の際に、その人物のロールとその先のエスカレーションルートを設定しておけば、最初のユーザーを指定することでワークフロールートは一意に決まるというわけだ。データ内容によって、ワークフローに分岐が生じたり与信などのアクションが発生する場合は、新たなアクティビティとして別に設定する必要がある。

 ワークフロー上で回覧するデータのユーザーインターフェイスは、Visual Studioを使って画面を定義することになっている。せっかくExcel帳票を有効活用しようというのだから、画面もExcelのままでいい、というのであればそれをそのままブラウザ表示させることもできる。用意されたテンプレートを使うことで、承認・否認ボタン、伝票番号、件名、日付、添付資料の有無など、必要な情報を付加しながら簡単に作成できるという。

 イノーバ技術本部長大磯和広氏によると、ワークフローのためにユーザーインターフェイスをあえて作成する前提としているのは、1つには内部統制上のニーズがあるからだ。Innova Process Navigatorにはバージョン管理機能もあり、ファイルの原本性を保つことは可能なのだが、安易にデータを改変できないようにするためにWebフォームという選択も用意しているのだそうだ。また、Webフォームにすることで、出力して取引先に対する受注確認書などとして利用できるようにしたいという要望も満たせるようだ。

 しかし、ユーザーインターフェイスをいちいち設計しなければならないとなると、開発工数は大して削減できないのではないかと思われることだろう。ただ、ここで利用するVisual Studioにもイノーバが付加した機能があるらしい(画面3)。

画面3  * Visual Studio でレイアウトを定義(画面定義)

「ツールボックスにイノーバが開発した画面テンプレートが入っており、ユーザーインターフェイス開発というものの、その画面のどこにExcel帳票のどのデータを表示させるかといったレイアウトだけを定義していただければ結構です。画面のデータ項目に対応するデータベース定義は、InnovaFlowが自動的に処理するため、通常のWebアプリケーション開発に比べて生産性ははるかに高いです。

 提案では、“こういうところは工数を掛けずにExcelの利点を生かされたらいかがでしょう”と申し上げていますが、“いや、ここはWebフォームで”というニーズがあることも事実。そういうお客さまにVisual Studioでの支援機能は喜ばれています」(大磯氏)

写真 左からインフォテリア エンタープライズ事業部 企画部 ビジネス企画担当 荒井琢氏、同社 エンタープライズ事業部 企画部 製品企画マネージャ 中嶋誠氏、イノーバ 技術本部長 大磯和広氏、同社代表取締役社長 長田邦男氏

 ただ、こうなると、プログラミングの必要はないとはいうものの、ユーザーはASTERIA WARPのフローデザイナー、InnovaDesigner、Visual Studioという3つのツールの操作を習得しなければならない。理解してしまえば高い開発生産性が確保されるのかもしれないが、業務部門主導で導入を進めようとすると、そこまで到達するのにちょっと時間がかかるかもしれない。

 

電子メールで来る注文書を誤りなく基幹システムへ投入可能に

 図2は、この連携ソリューションを使った業務処理の例である。

画面3 業務例:Email & Excelによる受注プロセスの管理
取引先から届くEmailに添付されたExcelデータ。これまでは社内システムに再入力が必要だったが、ASTERIAで受信し、InnovaFlowでチェックすることにより、処理の精度とスピードが向上した
導入前の課題
導入後の効果
ASTERIAによって受注処理は自動化したが、注文内容の確認プロセスが統制ポイントになった
キャンペーンや個別の取引条件など、システム的にカバーできないチェックロジックが多くなった
与信限度の確認や重複受注などケアーすべき例外処理が多かった
注文の内容を受注後に確認するのではなく、受付時に確認できるようInnovaFlowを導入した
受注内容によっては顧客を担当する営業マンに承認を申請するプロセスに変え精度を向上させた
請求書や納期通知はASTERIAによってメールで顧客に配信され処理速度が向上した

 ここでは、取引先から電子メールを利用してExcelの注文書が送られていた。ASTERIAを導入して受注処理の自動化には成功したのだが、キャンペーンや個別の取引条件など販売オプションが増え、システム的にカバーできないチェックロジックが生じたり、与信限度や重複受注など確認すべき例外処理事項が意外にあるなど課題が生じたことから、ワークフローシステムとしてInnova Process Navigatorを追加導入したという。これによって誤りや訂正のない受注活動が可能になったため、本当の意味での業務効率向上が実現したそうだ。

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