第3回 どんなに無茶をやっても「それもありかな」なAjax

株式会社ピーデー
川俣 晶

2005/12/28

 AjaxうきうきWatchではWebアプリのユーザビリティを改善しまくるAjaxAjax、それはWeb2.0へと続く道とAjax界隈での動向をお伝えしている。
 今回は「Backbase」という開発言語とツールや「BrowserHawk」というWebブラウザ自動判定ツール、すぐに反応が返ってくるチャット、「ConnectiveChat」をメインに今月の動向を解説する。


ハイライト1・Ajax開発用強力言語 & ツール Backbase

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 Ajax関係のツールやライブラリがいろいろ生まれつつあります。特に、アメリアかでは商用の製品も次々とリリースされつつあります。実は、これらの製品のサイトを見て困るのは、具体的にそれが何をしてくれるものであるのか読み取りにくいことが多いことです。Ajaxの特質として、実際に動くデモを見せるのは容易です。例えば、この製品の場合、Backbase RSS Readerというデモのリンクをたどって、RSSリーダーのデモを見ると、それが良くできていて動いていることはすぐに分かります。しかし、この製品がこのRSSリーダーを作成するに当たって、どのように貢献したのかがピンと来ませんでした。

 というわけで、ドキュメントをいくつかざっと見てびっくり。これは、クリック数回でJavaScriptのコードを自動生成して便利ですよ、と主張するタイプの「第1印象はすごいが、現場ではいまひとつ使えないツール」ではないのです。手軽にコードを自動生成するツールの問題は、生成できる機能が限定されてしまうことと、生成した後のコードのメンテナンスが面倒なことです。しかし、このBackbaseは、そういうアプローチでAjaxアプリケーションを開発するのではありません。

 BackbaseでAjaxアプリケーションを記述するために使うのは、BXML(Backbase eXtensible Markup Language)というXMLによって作られた独自言語です。この言語をXHTML文書の中に埋め込んでコンテンツを記述することができます。BXMLは、XHTMLよりもはるかに高度かつ強力な機能を提供するので、より手軽にリッチなAjaxアプリケーションを開発できるわけです。

 もちろん、独自に決めた言語をXHTML文書に埋め込んでWebブラウザに送っても、それが解釈されることはありません。そこで出てくるのがBPC(Backbase Presentation Client)というJavaScriptプログラムです。XHTML文書には、このBPCへの参照を含めておき、文書が読み込まれた時点でこれが実行されるようにします。そして、このBPCがBXMLで記述されたコンテンツを解釈して実行します。(おそらく、Webブラウザ内で動的に解釈と実行が行われると思います)

 このようなアプローチには、当然のことながら長所と短所があります。長所は、もちろんより高水準の使いやすい言語でアプリケーションを開発できることです。これによって開発効率が上がるのは間違いないでしょう。一方で、短所としては独自言語を解釈するまでの手順が生じるため、ページを表示するときの待ち時間が増えることがあります。また、1企業の独自言語を習得するというのも、覚えた知識の再利用性が制限されるという意味で、短所と見なせるかもしれません。

 ちなみに、BackbaseにはVisual Studioでビジュアル開発するプラグインであるとか、J2EEと連携するツールなどもあり、開発効率は高そうです。

 さて、Backbaseのような独自言語を使ってしまえ、というアプローチは、実はJavaScriptで開発することを条件の1つに据えているAjaxの定義に反すると見ることができます。確かに最終的にはJavaScriptとして実行されますが、主たる記述言語はJavaScriptではありません。

 この点に関していえば、Ajaxにタブーはなく、JavaScriptで記述するであるとか、XMLHttpRequestオブジェクトを使うといったAjaxの定義に含まれる条件はいくら破っても構わないと考えます。事実、Ajaxブームの原点ともいえるGoogle Mapsで地図がマウスドラッグでスクロールする機能を実現するために、XMLHttpRequestオブジェクトは特に寄与していないのです。原点からしてこのような状況ですから、既存のWebブラウザ上でユーザビリティを上げる手法を用いたものはすべてAjaxと呼んで差し支えない……、つまりAjaxにタブーはないと考えます。


ハイライト2・Webブラウザの違いを自動判定・BrowserHawk

 このBrowserHawkというソフトも、一見して何をしてくれるのか分かりにくいものでした。これは、サーバ側でWebブラウザの種類を判定して、処理を変えるためのソフトです。ブラウザの種類を定義する“visual browser definition editor”とサーバ側のActiveXコンポーネントまたはJavaBeanから構成されます。これがどれぐらい詳細なWebブラウザのチェックを行ってくれるかは、以下のデモページを見ると分かると思います。

Analyze your browser

 これを見ると分かるとおり、単にWebブラウザの種類やバージョン、プラットフォームなどを調べるだけでなく、クッキーやSSLがユーザーの設定で有効か否か、SVGなどのプラグインがインストールされているか、Flashプラグインのバージョンはいくつかなどもすべてチェックされます。しかも、恐れ入ったことにブロードバンド接続かどうかも判定され、接続スピードも計測されています。これらの情報を元にして、プログラムに最適な動作を行うようにできれば、非常に使いやすく優れたソフトができるでしょう。

 ちなみに、このツールはサーバ側のツールということもあって、Ajax専用という訳ではないと思います。しかし、Webブラウザの非互換性を前にして「標準に適合しないから駄目だ」と不平をいいつつコードは書かない態度よりも、すでにあるWebブラウザの種類ごとに動作させるコードを変えることで今すぐ動くコードを作っていこうという態度は、Ajaxの精神に沿ったものであるように感じられます。

ハイライト3・すぐに反応が返ってくるチャット ConnectiveChat

 Ajaxにタブーはなく、すでにあるものを使って創意と工夫で乗り越えていくことが肯定されます。このチャットプログラムは、まさに創意と工夫でハンデを乗り越えた好例だと思います。

 通常、Webアプリケーションは、クライアント側で構築する場合でも。サーバ側で構築する場合でも、通信開始の主導権はクライアント側が持ちます。例えば、何かのデータを取得するボタンをクリックしたときに、通信が発生することになりますが、これはクライアント側の操作がトリガとなって通信が始まることを意味します。

 しかし、このようなアーキテクチャは、サーバ側で発生した状態の変化を機敏に察知してクライアント側に反映させることが困難です。典型的な例が、チャットを行うプログラムです。チャットは複数のクライアントから不定期にメッセージが送信され、それがすべての利用者に転送されます。しかし、メッセージを受け取ったサーバは、即座にメッセージがあるという事実をすべてのクライアントに通知する手段がありません。通信を開始する主導権はクライアント側にあって、サーバ側にはないからです。その結果、一定時間ごとにクライアント側がサーバに問い合わせるポーリングというテクニックが定番として使われることになります。ところが、このポーリングという処理は、間隔が長いと届いたメッセージが反映されるまでのタイムラグが長くなり、逆に間隔を短くするとネットワークとサーバの負荷が高くなるという問題が生じます。

 さて、このConnectiveChatは、この問題を創意と工夫で解決しました。複数のパソコンから接続して試すとすぐに分かりますが、1つのクライアントに入力したメッセージは、即座にすべてのパソコンに反映されます。これはクライアント側が先に通信を開始させておき、それに対する応答を別のクライアントからのメッセージを受信するまで遅延させるという方法で実現されています。まさにクライアント側で処理を行うAjaxならではのテクニックといえます。サーバ側のプログラムで、これと同等の処理を行うことはおそらく困難でしょう。


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どんなに無茶をやっても「それもありかな」なAjax
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