第6回 プロプライエタリ2.0からAjaxの公開/非公開部分を考える

株式会社ピーデー
川俣 晶

2006/3/25
 AjaxうきうきWatchではWebアプリのユーザビリティを改善しまくるAjaxAjax、それはWeb2.0へと続く道どんなに無茶をやっても「それもありかな」なAjax自動車業界のAjaxを活用したキャンペーンを目撃せよとAjax界隈での動向をお伝えしている。
 前回「“どのブラウザでも動くAjax”を共有財産として育てよう」からスタートした本連載主導のAjax大プロジェクト、ここからがいよいよ勝負だ。


ハイライト1・ここからが勝負、Ajax非互換性データベース

あなたの忌憚なきご意見、お待ちしています

 姉妹企画のAjax非互換性データベースもよろしく! ちなみに、趣旨がまだ理解されていないのかという懸念があります。これはAjaxの動きを見せたい成果物でも、「私たち」のデータベースでもなく、「みんな」のデータベースです。みんなで情報を持ち寄ることで価値が何倍にも膨れ上がるものです。

 残念ながら、待っていれば誰かが情報を入れてくれる……のではなく、情報を必要としている人たちが情報を持ち寄ることで、このデータベースは機能を発揮します。ちなみに、初期状態で私の入れた情報も多くありますが、これは公開時に空では困るという理由で手持ちの情報を入れただけの話で、継続的に情報を入力していけるわけではないのです。

 私はAjaxウオッチャーではありますが、現役Ajaxプログラマではありません。現場レベルの生々しい非互換情報の持ち合わせはすべて書き込みました。もう1つ、何回でも繰り返して強調しますが、このデータベースで最も重要なのは、個々の非互換情報に対してより多くのWebブラウザの種類とバージョンごとの情報が蓄積されることです。

 そのためには、Webブラウザのユーザーコミュニティの熱心な取り組みが不可欠です。もし、「(読者の)私」が愛用するWebブラウザをサポートするAjaxシステムを増やしたいと願うなら、すでにデータベースに含まれているすべての非互換情報について、レポートを登録するという作業を行わねばなりません。

 Ajax非互換性データベースが使いにくい点や、利用規約上の懸念事項なども、どしどし編集部あて(info@atmarkit.co.jp)にぶつけてください。ただ、改善のできる予算が現在ありません^^。データベースの使い勝手の改善にボランティアとして一役かってくださるという方、もしくはコストをかけずに、みんなが入力したくなる仕組みを一緒に考えてくださるという方、ご連絡くださると幸いです。いっしょにいいデータベースにしていきましょう。

ハイライト2・Ajaxを力強く後押しするプロプライエタリ2.0

  • すでに存在しないのでリンクはありません

 “プロプライエタリ2.0”というコンセプトを提唱しているブログ記事がありました。前回のこの連載で取り上げようと思ったのですが、話題が多く泣く泣く切ったものの1つです(ちなみに、今回も泣く泣く切った話題は多いです)。しかし、残念ながら現在ではすでにこの記事は公開されていません。意図的に削除されたようなので、その意図をくんでどこのブログにあった記事であるかは述べません。

 さて、本文の内容も保存していないので、筆者の記憶だけに頼った要約を書くならば、この記事の趣旨は、あまりにも悪い印象を与えられた「プロプライエタリ」という言葉の復権と、公開すべき情報と非公開とする情報の線引きの再検討です。

 なぜこれをこの連載で取り上げようとしたのかといえば、まさにAjaxの問題とイコールだと感じたためです。現在、Ajaxの世界には、自由にアクセスすることができない閉ざされた情報の部分と、開かれた情報の部分があります。開かれた部分は、オープンソース、クリエイティブコモンズ、自由放任、あるいは自由黙認といった原則で扱われていますが、閉ざされた部分についてはオープンソース関係者が「プロプライエタリ」と呼ぶ原則によって動かされている面が多くあります。たとえ、そのためのシステムがオープンソースのOSやApacheのようなオープンソースソフトウェアで構築されていようとも、その上に存在する情報やサービスの本質は公開されることがないケースも多いと感じます。

 その状況を私は肯定します。あるがままの現在のAjaxを肯定します。

 そこで重要になるのが、「非公開部分」の存在を正しく「肯定」することと、「公開部分」と「非公開部分」の境界線について考えることです。前者を行うためにできることの1つとして、例えば「プロプライエタリ」に与えられたあまりにも悪い印象を払しょくするという試みがあり得るでしょう。後者は、例えばGoogleやAmazonが提供するAPIとして見ることができます。

 さて、ここで1つ補足的な話を書きます。最近、香山リカさんの「テレビの罠―コイズミ現象を読みとく」という本を読んで、なるほど! と思ったことがあります。この本では、明らかに低所得者層に不利な政策を打ち出す小泉首相を支持して投票する人たちが、低所得者層に多い理由について考察されています。詳細は本筋ではありませんし、私が正しく説明するのは荷が重過ぎるので書きませんが、どうも、ポストモダンの時代、東西対立のような「大きな物語」が消失した後、自由になったはずの人々は、自分たちに不利になるという認識を持つことなくファシズム的な方向性を示すようです。このような認識は、「プロプライエタリ」の問題にそのまま当てはめることができると私は感じました。

 本来、知的所有権とは、持たざる者が富を獲得するための有力な手段です。例えば、パソコンソフトを扱う有力ソフトハウスの多くは、まさにこの手段によって企業として発展してきたといえます。しかし、オープンソースという思想は、知的所有権の行使を大きく制約します。自分の技術力とパソコン1台だけを元手に大富豪になる……という夢を追うことは難しいでしょう。それによって利するのは、ハードウェアやシステムなど、形ある商品を扱う企業群です。それらの企業は、ある程度の資本がなければ成立しないものであり、持たざる者が容易に参入できる世界ではありません。つまり、下克上が起きにくく、貧富の格差が固定されやすい社会に陥ります。いうまでもなく、自分が豊かになれる可能性を夢見ることができない社会ほど住みにくいものはありません。それにもかかわらず、そのような社会を支持する者たちが多く出現し、しかもファシズム的な傾向さえ持っています。例えば、自らの意見に賛同しない者に対する言葉による暴力であるとか、場合によってはまさにネットワークを経由したパケットによる「攻撃」にまで発展することがあります。

 このような状況で、「プロプライエタリ」とは、私の感覚でいえば、言葉による暴力を行使する際に使用される罵倒用語であると感じられます。本来、まったく異なる性質を持ったさまざまなソフトウェアや行為が、「プロプライエタリ」という一言でくくられ、一切の差異を認識されないまま頭ごなしに誤りと決め付けられるのは、コミュニケーションとはとてもいえません。

 そのような背景から考えたとき、現在、罵倒用語としてとらえられてしまいがちな「プロプライエタリ」に、流行語の“2.0”を付けることで、価値観を逆転させてしまおうという発想は、実に痛快で素晴らしいものだと思いました。少なくとも、Ajaxによって自らが社会的な何者かになろうと志す者にとって、「プロプライエタリ2.0」という言葉は、何かの勇気を与える呪文になる可能性があります。

 さて、最後に残された話題に触れてこの項を終わります。「公開部分」と「非公開部分」の境界線について考えるというのは、(SOAPという意味ではない一般論の)WebサービスのAPIや、そのほかのコミュニケーションの標準について考えることを意味しますが、それだけではありません。例えばFirefoxのGreasemonkeyというソフトは、ユーザー側でサーバから送られてくるHTMLやJavaScriptのコードを書き換え、自由に表示や機能性を入れ替えてしまうことができます。このような自由は積極的に肯定して良いのではないかと思います。それによって、サービスの利便性はより大きく拡大するでしょう。それは、誰にとっても損のない話です。「公開部分」と「非公開部分」の境界線を明確化したら、「公開部分」はこれまで以上に積極的に自由な利用を認める……ということも「プロプライエタリ2.0」的な価値観ではないかと思います。

ハイライト3・GoogleがWritelyを買収

Googleが買収したAjaxで実現された英文ワープロソフトWritely

 WritelyとはAjaxで実現された英文ワープロソフトです。それをGoogleが買収したという報道がなされています。これはAjaxの現状をとても象徴的するような出来事だと思うので、特に取り上げました。

 ワープロがAjaxになるというのは、どういうことでしょうか? それは、オンラインのストレージと併せて考えることで明らかになります。対応Webブラウザさえあれば世界のどこからでも自分の文書を開くことができ、しかもほかのユーザーにその文書を編集させることも容易になるわけです。例えば、自宅でワープロ作業の続きをやろうと思ったのに、文書ファイルをノートパソコンにコピーするのを忘れた……などというトラブルは起きなくなります。GMailによって、どこからでも同じメールボックスを見ることができるようになりましたが、それがワープロ文書にも拡大するというわけです。

 しかし、デスクトップのワープロソフトも、山のような便利な機能を備えて進化してきています。それと比較してAjaxワープロがどこまで戦えるかは今後の成り行きを注目したいと思います。この程度の機能で十分だからAjaxで良いぞ……ということになるのか、それとも機能性がやはり足りないと見なされるのか……。いまのところ、結論は見えません。

ハイライト4・FlashとAjaxとLaszlo

FlashとJavaScriptを共存させるライブラリ、AFLAX

 この連載の第4回目に、Flash JavaScript Integration Kitを紹介していますが、FlashとJavaScriptの周辺は非常ににぎやかになっているようです。FlashとJavaScriptは完全に対立するものではなく、どちらも同時に使われるものかもしれません。

 さて、AFLAXは、FlashとJavaScriptを共存させるライブラリです。デモも豊富なのでサイトにアクセスすると概要が分かるでしょう。それに対して、OpenLaszloのサイトはアクセスしてびっくり。これまではFlashランタイムとして使用するシステムを提供していたようですが、筆者がアクセスした時点ではDHTML(Dynamic HTML)を別のランタイムとするというアナウンスが掲載されていました。時代は激動という感じですね。

OpenLaszloもJavaScriptとDHTMLに対応

 激動といえば、最後のFlex-AJAX Bridgeも驚くべきものです。これらはFlashやFlexをAjaxと連携させるためのライブラリなのですが、何とアドビに買収されたマクロメディアのサイトにあります。つまり、Flashの供給元が自らAjaxと連携するためのライブラリを提供してきたということです。

 AjaxとFlashとの関係がどこに向かうのかはまだ分かりませんが、何か熱い動きが続いていることは間違いないでしょう。

 

 


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 INDEX

プロプライエタリ2.0からAjaxの公開/非公開部分を考える
Page1<Ajax非互換性データベース、ここからが勝負>Ajaxを力強く後押しするプロプライエタリ2.0 /GoogleがWritelyを買収/FlashとAjaxとLaszlo
  Page2<そのほかのみどころ> わんわんワールド /Google MarsとUrMap/Windows Live Local Virtual Earth/Bindows/JS-Sorcerer

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