第25回 Ajaxで加速!? エンタープライズ2.0とWebOSの普及

株式会社ピーデー
川俣 晶

2007/9/26



 ハイライト1・Ajaxで日本企業の「2.0」化が加速?

 最近になって、Ajax技術をエンタープライズシステムに応用する動きが活発化してきた感があります。

NECのグループウェア「StarOffice X」のサンプル画面(NECのページより転載)

 これまでのAjaxは、主に不特定多数のユーザー向けのサービスで使われてきたと感じます。しかし、既存のWebブラウザでそのまま動作し、配布やバージョンアップのコストが実質的にゼロであるという特徴は、企業内のシステムでも意味があるはずです。それにもかかわらず、なぜエンタープライズシステムへの展開が遅れたのでしょうか? それは開発の手間が大きかったからではないかと思います。

 例えば、Google Mapsのようなサービスなら1本のプログラムで全世界のユーザーに対してサービスできます。しかし、エンタープライズシステムとなれば、はるかに少ない数のユーザーを相手に、多種類のサービスを行わねばなりません。それ故に、開発のコストや時間を低減するための環境作りの時間が必要だったのでしょう。

 現在のエンタープライズ2.0の盛り上がりとは、そのような環境が動き出したということかもしれません。実際、筆者もさる企業が2007年10月19日に行う「エンタープライズ2.0実践セミナー Ajaxが企業の基幹システムをどう変えていくのか」というセミナーで基調講演を依頼されています。

編集部注エンタープライズ2.0について詳しく知りたい読者は、@IT情報マネジメント用語事典の[エンタープライズ 2.0]をご参照ください。

 ハイライト2・Google、プレゼン機能を提供開始

 従来、“Google Docs & Spreadsheets”という名前で呼ばれていたサービスは、ワープロと表計算機能を持っていました。それに、プレゼンテーションソフトの機能が追加され、名前が“Googleドキュメント”に変わりました。

Googleドキュメントのプレゼンテーション機能の使用例(画像をクリックすると拡大します)

 さて、Ajaxの表計算機能については新しい使い方を切り開く可能性を感じましたが、プレゼンテーションソフトということになると、少し考え込んでしまうことがあります。なぜかといえば、実際にセミナーなどでPowerPointのスライドを見せながら話すとき、インターネットに接続できなかったケースが珍しくないからです。

 また、どのパソコンからでも同じ内容が見えるといっても、大本のサーバやネットワークにトラブルがあれば、どのパソコンからでも見えない状況もあり得ます。スタンドアロンのプレゼンテーションソフトであれば、ソフトとデータを入れた予備のパソコンがあれば、まず大抵の場合はすぐに切り替えられます。

 つまり、プレゼンテーションソフトは、スケジュールが緻密(ちみつ)に組まれて時間を容易に移動させられない場面で使うことが多いため、どうしても確実性が気になってしまいます。

 しかし、これが結論というわけではありません。なぜかといえば、ネットワーク上で行うオンラインのプレゼンテーションという話になると、状況は一変するからです。チャットによってコミュニケーションしつつ、プレゼンテーションを行うこともあり得る選択肢でしょう。そのように考えれば、独立したプレゼンテーションソフトよりも、Ajaxによるサービスの方がより使い勝手がよいかもしれません。

 いずれにせよ、これは未来の領域の話題であり、実際に使ってみて本当に使いやすいか、そしてユーザー側がそれをうまく使いこなしていけるかによって、結論が決まる問題でしょう。興味を持って見守りたいと思います。

 ハイライト3・“ajaxWindows”はWebOSを普及させるか?

 “ajaxWindows”はAjaxで動作するウィンドウの環境です。実際にデモを体験すると分かりますが、ajaxWindows自身の中にスタートボタンやタスクバーがあり、アイコンからさまざまなサービスを開くことができます。

 
ajaxWindowsのサンプルページの使用例(画像をクリックすると拡大します)

 この状態では、Windowsが持つタスクバーとajaxWindowsが持つタスクバーの双方が見えてしまいますが、F11キーを押すと全画面モードになり、Windowsのタスクバーは見えなくなります。本来のOSの存在を忘れajaxWindowsだけを環境として使うことができそうです。また、Firefoxさえ動けば、Windows以外のOS上でも動作するといいます。

 とはいえ、手放しで喜べるサービスともいえません。どこからでも同じ環境が利用できる……、といっても、それはユーザーがいま使っているデスクトップとは違うものです。使い慣れた環境を手放し、新しい環境を一から再構築する必要があります。しかし、遠隔地のPCをそのまま利用するVNCやリモートデスクトップのような機能もある状況で、果たしてそこまで手間を掛ける価値があるでしょうか? OSの上にまたOSを作ることは、「屋上屋を架す」ということわざを連想してしまう話題でもあります。

 それはさておき、私が最も気になったのは、Internet Explorerでアクセスしようとすると、ActiveXコントロールのインストールが要求されたことです(Firefoxでは何も追加ソフトは要求されない)。ActiveXコントロールは、特に信用を置くいくつかのソフトを除き、原則として入れない方針でやっているので、これは試せませんでした(Firefoxで試しました)。

 やはり、追加ソフトを要求することはAjaxサービスとしては問題があり、まして最もユーザーの多いInternet Explorerでそれを要求するのは問題が大きいと感じました。



 
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