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2006年、SODECに見るリッチクライアント&帳票製品

ナレッジオンデマンド
宮下知起
2006/7/1


  今年もソフトウェア開発環境展が開催された。6月28日から3日間の日程で催された展示会場では、いくつかのリッチクライアント&帳票関連の製品の出展が見られた。中にはまだ製品化されていない目新しいものも目立った。

■リッチクライアントにフレームワークが登場

 リッチクライアント分野でもっとも大きなブースを構えていたのはカールだ。カールは、住商情報システム傘下に入ってから国内市場のニーズを着実に製品に反映してきた。会場では6月23日に8月1日からの出荷が発表されたCurl ver.4.1が紹介されていた。

マーキュリーと連携するCurl(クリックすると拡大)

 Curl ver.4.1ではマーキュリー・インタラクティブ・ジャパンが提供する自動機能テストツール「Mercury QuickTest Professional」と連携し、Curlアプリケーションの機能テストおよび回帰テストを自動化できる。カールの採用の広まりとともに高まる開発フェイズの効率化への要求に応えた格好だ。そのほかには、ランタイムであるSurge RTEが、自動バージョンアップに対応。ビジュアルにカールアプリケーションを設計・開発するVisual Layout Editorの機能向上も図られている。

 近年メインフレーム資産からのマイグレーションにリッチクライアントが用いられるケースが増えている。カールのブースでは、IBM System i5(旧AS400)の資産であるRPGをCurlと組み合わせ、キャラクタベースの画面をリッチクライアント化した事例が紹介されていた。

AS400の資産との連携を紹介するパネル(左)と、実際にCurlで再構築された勤怠管理システムの画面(それぞれクリックすると拡大)

 参考出展の中で興味を引いたものにCurlのフレームワークがある。Web系のソフトウェア開発では開発期間がどんどん短期化する中で、リッチクライアントにもJavaにおけるStrutsのようなフレームワークを求める声が少なくない。Curlフレームーワークによって、開発者は画面デザインに注力し、より少ないコードの記述量でシステム開発を実現できるという。Curlフレームワークは、今夏以降に出荷が予定されており、価格等はまだ未定だという。

CurlフレームワークはVisual Editorと組み合わせるとさらに効果を発揮する。あらかじめ用意された画面部品の挙動をプロパティで制御できる(クリックすると拡大)

 Curlと並ぶメジャーリッチクライアントにFlexがあるが、キヤノンソフトウェアはAdobe Flexの最新バージョンAdobe Flex2に向けたフレームワークを参考出展した。同社のWebアプリケーションコード自動生成ツール「Web Performer」をFlex2に活用したもので、サーバ側のデータスキーマに対応したFlex側のコード(MXMLとAction Script)を自動生成する。同社は企業の基幹システムのリッチクライアント化のソリューションとして同製品を位置付ける。Flexに注目する理由として「リアルタイム処理に強い」「音声・画像などのリッチメディアに対応」「従来のFlexに比べてFlex2はパフォーマンスが約10倍となりハイパフォーマンスになった」「Flash Playerは全PCの98%にインストール済み」などを理由に挙げていた。

 Web Performerは、今後Ajaxにも対応予定であり、今秋にはAjaxベースの業務アプリケーションを容易に構築できるソリューションとして出荷予定だという。ただ、肝心のFlex2フレームワークについては、今後のマーケットの動向を睨みながら製品化するか否かを決定する予定であり、製品として確実に出荷されるかは未定だという。

Web Performerで自動生成されたFlex2アプリケーションの画面

 今回のSODECではリッチクライアント製品の出展は、前述の2社のほかにはメディア情報開発のみだった。メディア情報開発のVisual Frameは、WebTribeと呼ばれるツールでアプリケーションの設計を行い、Visual Frameのフレームワーク上で設計情報に従ってコードが動的に生成される。アプリケーションの実行はJava Web Startの仕組みによってJavaアプリケーションがサーバ側からクライアントにダウンロードされて実行されるしくみだ。HTMLクライアントをリッチ化するソリューションではない。同社では、HTMLアプリケーションに対して、Swingアプリケーションをリッチクライアントと呼んでいる。リッチクライアントという売り出しではあるが、どちらかといえば業務アプリケーションをノンプログラミングで実現できる開発ソリューションだと認識したほうが正しい。基幹システムのオープン化で非常に需要があり、最大の販売パートナーはNTTデータだという。

■コンプライアンスを意識した帳票製品

 帳票製品も出展は少なかったが、中で注目したのはプリズムの「XRF Series」だ。同製品はウイングアークのStraFormと同様に、既存の紙の帳票やWord、Excelで作成された帳票を独自の形式(同製品の場合はXRF形式)にに変換。帳票の電子化や容易なカスタマイズを実現するものだ。企業のIT統制が意識される時代にあって、帳票の容易な電子化もマーケットの大きなニーズだ。

プリズム「XRF Series」の説明図。XRF Designerは新規に帳票を作成できるだけでなく既存の帳票を容易に電子化(XRFデータ化)する。XRF化された帳票データのサイズはPDFの100分の1だという

XRF Designerはスキャンした紙の帳票のデータをもとにXRF形式の帳票を作成する


 2008年からの施行が見込まれる通称J-SOX法に対応した帳票製品も登場した。インフォコムのNEOSSは、ワークフロー機能、スタンプ(押印)機能、操作ログ管理機能を備え、企業の内部統制の観点から電子帳票システムに求められるアクセスコントロール、アウトプットコントロール、アクセスログに対応した。

 昨年のSODECと比べるとリッチクライアントや帳票関連の新製品の出展は非常に少なかった。一方で、開発生産性の向上が意識されるフェイズに来ている。それがフレームワーク製品の登場にもつながっているが、まだ各社の製品は、これからの点が多く、今後の充実が期待されるところだ。帳票製品については、J-SOX法の施行をまえに、企業のコンプライアンスという視点で整備が進みそうだ。今後はここを狙った製品が次々と投入されてくだろう。




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