セキュリティ・ホールの概要と影響度
今回発見されたセキュリティ・ホールは、MHTML形式でエンコードされたHTML形式の電子メールなどをOutlook Expressが表示する際に利用するURLハンドラの処理に起因するものだ。MHTML(MIME
Encapsulation of Aggregate HTML)は、Webページ(HTMLコンテンツ)とその中で参照されている画像などのデータをまとめて扱うための標準仕様であり、Webページの内容を単一ファイルとして保存したり、電子メールに添付して簡単に送付したりすることができる(RFC2557で定義されている)。このセキュリティ・ホールを悪用することで、攻撃者はユーザーのコンピュータ上のファイルを読み取ったり、プログラムをローカル・コンピュータ・ゾーンで起動したりできるようになる。
ローカル・コンピュータ・ゾーンは、ユーザーのローカル・コンピュータ上に存在するプログラムの実行などで使用される暗黙的なセキュリティ・ゾーンのことである。このゾーンでは、実行されたスクリプトやプログラムが、コンピュータ上のファイルにアクセスしたり、操作したりすることが(デフォルトでは)許可されている。従ってこのセキュリティ・ホールを放置すると、システム破壊や情報漏えいなどにつながるシステム上の弱点となる恐れがある。
このセキュリティ・ホールの影響を受けるのは、IEとともにインストールされるOutlook Express(5.01 SP3、5.5 SP2、6、6 SP1)のみである。Microsoft Officeに同梱されるOutlookは直接的な影響は受けない。
ユーザーの環境によっては、WebブラウザとしてIEは使っているが、メール・ソフトウェアはOutlook Express以外を使っているという場合もあるだろう。このようにOutlook
Expressを使っていない場合でも、Windows環境ではOutlook Expressがインストールされている可能性が高い。この場合には、今回のセキュリティ・ホールの影響を受ける。というのも、IEがMHTML形式のWebページを表示する際には、今回のセキュリティ・ホールであるOutlook
ExpressのURLハンドラを利用するからだ。実質的には、ほとんどのWindowsコンピュータが対象となるだろう。
セキュリティ・ホールの詳細
MHTMLは、HTML形式のデータをメールで送受信するためのMIME構造である。Outlook
ExpressのMHTML URLハンドラは、データ内にURLが存在したときに、それをURLとして個別の処理を行う。このMHTML URLハンドラにセキュリティ・ホールが存在し、テキスト・ファイルをHTMLファイルとして参照することが可能になっている。これを悪用すると、攻撃用のスクリプト・コードを含むテキスト・ファイルを作成しておき、これをHTMLファイルとしてIEコンポーネントなどに表示させることで、スクリプトを実行できる。
ユーザーのローカル・コンピュータに直接、攻撃用のファイルを組み込めない場合でも、攻撃用のWebページをインターネットに準備したり、攻撃用ファイルを電子メールに添付して送りつけたりすることで、ユーザーのコンピュータ内にあるファイルを読み取ったり、起動したりすることが可能になる。
注意事項
本件に関するマイクロソフトのTechNetセキュリティ情報を見ると、問題を緩和する要素として、MS03-004(IEの累積的な修正プログラム)の適用を推奨している。MS03-004には、攻撃者がリモートからプログラムを実行しようとするときに、実行可能ファイルにパラメータを渡すことを防止する修正が加えられている。これを組み込むことで、プログラムは起動されても、攻撃者の任意のパラメータは渡せなくなるので、問題を回避できるというわけだ。
ただしこのMS03-004は、IE 6.0 SP1に適用すると、IEの基本認証機能が正しく機能しなくなるなど、複数の問題が発生することがマイクロソフトによって正式に確認されている。
上記のページを読むと分かるが、これらの問題点は、次に述べるMS03-015として提供されたIE向けの累積的な修正プログラムで解消されるという。従って少々分かりにくいのだが、MS03-004をすでに適用している場合、あるいはこれから適用しようとする場合には、同時に次のMS03-015の適用も忘れずに行う必要がある(MS03-015の詳細については、本稿の後半を参照)。なお、すでにMS03-004を適用している場合でも、MS03-004のアンインストールは不要であり、そのままMS03-015を適用しても問題はない。
セキュリティ・ホールの影響を受ける環境
今回のセキュリティ・ホールによって影響を受けるのは、以下の環境である。
| 影響を受けるソフトウェア |
対象プラットフォーム |
| Internet Explorer 5.01 |
Windows 2000 SP3+IE 5.01 SP3 |
| Outlook Express 5.5 |
Windows 98 SE/Me/NT 4.0 SP6a/2000 SP2/2000 SP3+IE 5.5 SP2 |
| Outlook Express 6 |
Windows XP SP未適用+IE 6 |
| Outlook Express 6 ServicePack 1 |
Windows 98/Me/NT 4.0 SP6a/2000 SP2/2000 SP3/XP SP1/XP SP1a+IE 6 SP1 |
修正プログラムの適用テスト
DA Labでは、今回のセキュリティ・ホールの影響を受けるすべてのプラットフォームのうち、Windows NT 4.0/2000/XPに関するものを検証施設内にて再現し、修正プログラムの適用テストを実施して、問題なく適用が完了する(致命的なエラーなどが引き起こされない)ことを確認した(DA
Labの詳細は「DA Labとは?」を参照)。ただしこのテストは、あくまで修正プログラムの適用を実施し、その結果をお知らせしているだけであり、修正プログラム自体の機能性(セキュリティ・ホールが本当に解消されているかどうか)を検証するものではないので注意されたい。
■情報リンク
・マイクロソフト・セキュリティ情報:M03-014
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