Insider's Eye

Longhornの機能と構造
―― PDC 2003レポート No.3 ――

1.Longhornファースト・ルック

デジタルアドバンテージ
2003/11/14

 PDC03では、Longhornのテクニカル・プレビュー版(ベータ版以前のバージョン)のDVD-ROMが配布された(配布された物についてはPDCレポート第1回参照)。今回は、これを実際にインストールして、Longhornについて見ていこう。

 このプレビュー版の完成度はまだ低く、パフォーマンス・チューニングは一切行われていないため、インストールするには以下のような仕様のPCが要求される。

項目 要求仕様
CPU 1.6GHz以上
メモリ 1Gbytes以上
ディスク 特に指定なし。30Gbytes程度で、Longhorn本体とLonghorn SDK、ベータ版Visual Studio(Whidbey)などをインストール可能
グラフィックス 解像度1024×768ドット以上、32bitフルカラー、DirectX 7以上をサポートしたもの(DirectX 9サポートが望ましい)、VRAM 32Mbytes以上(64Mbytes以上が望ましい)。ただしゲームほど性能を要求されるわけではないので、そこそこのものでもかまわない
光ドライブ DVD-ROMドライブ(インストール・メディアがDVD-ROMのため)
Longhornプレビュー版(開発環境)をインストールするために必要なシステム

 Longhornが実際に出荷されるころ(おそらく数年後)のシステムならば、この程度でも問題はないレベルだろうが、現在では「1Gbytes以上」というメモリ・サイズがネックになるかもしれない。このプレビュー版では、WinFSの処理が非常に重く、実際に1Gbytes程度を実装していないとつらいと思われる。ほんの少しWinFSでファイルを操作するだけで、使用メモリ・サイズ(コミット・チャージの合計)はすぐに1Gbytes近くに達してしまう(後述するサイド・バーの処理などに問題があり、エクスプローラがメモリ・リークを起こしていたりするので、必ずしもWinFSだけの問題ではないのだが)。

Longhornのデスクトップ画面

 さて、Longhornを起動してログオンすると、以下のような画面が表示される。エクスプローラの外観がやや派手になってはいるが、基本的にはほぼ現在のWindows XPシステムを踏襲しているといえる(実際、現状のプレビュー版では、Windows XPをベースにさまざまな機能を搭載しただけなので当然なのだが)。画面の下にはタスク・バーがあるし、左下には[Start]メニューが存在する。右端にある縦の黒いウィンドウは「サイド・バー」と呼ばれ、さまざまな情報や通知メッセージなどを表示するために用意されている。従来はタスク・バーの右端にあるシステム・トレイに小さなアイコンが表示されるだけであったが、使用中のアプリケーションに邪魔されずに常時情報を表示させておくために用意されている(必要なければ下のボタンをクリックして、従来のように非表示にすることも可能)。デフォルトでは、クイック起動バーや時計、スライド・ショー、(従来の)システム・トレイ、同期(ほかのシステムとのWinFSの同期、オフライン・フォルダの同期など)が用意されている。

Longhornのデスクトップ画面
エクスプローラの外観がやや派手になってはいるが、基本的にはほぼ現在のWindows XPシステムを踏襲しているといえる。
  現在表示しているフォルダ名。longhornでは「Computer」が最上位になる。
  前進と後退ボタン。後退ボタンが大きいのは、よく使うからか。
  メニュー。今までの位置ではなく、ここにメニューが表示されるようになった。
  現在選択されているファイルやフォルダの名前。
  タスク。現在選択されている項目に対して適用可能な作業。
  検索。インターネット検索やヘルプ、コンタクト・リスト検索などがすばやく行える。
  お気に入り(Favorites)。
  絞り込み検索用のキーワード入力欄(wordwheel)。ここに文字を入力すると、インタラクティブ・サーチにより、現在表示されている項目の中からすばやく絞り込み検索が行われる。
  WinFSによって作成されたストレージ。これらのフォルダの内容は、実際にはデータベースからダイナミックに検索され、表示される。
  スライド・ショー。数秒間隔で画像が次々と表示される。
 

同期。フォルダやWinFS、Exchange Serverなどとの同期を行う。

  システム・トレイ(通知領域)。
  クイック起動バー。
  時計。クリックすると、大きなカレンダーと時計がポップアップ表示される。
  サイド・バー。手前にあるアプリケーション・ウィンドウに隠されずに、常に見えるようにしておきたい情報を表示させるために使う。
  これをクリックすると、サイド・バーの表示/非表示を切り替えることができる。
  WinFSによるドキュメント・フォルダ(「マイ ドキュメント」ではない)。
  WinFSによる音楽ファイル・フォルダ(「マイ ミュージック」ではない)。

 次に、どれかフォルダをダブルクリックしてみると、エクスプローラの表示は次のようになる。ここでは写真データを格納している「Photos and Videos」フォルダを開いてみた。

エクスプローラのプレビュー表示
フォルダ中のアイコンをクリックすると、そのファイルに関する詳細情報がタイトル・バーの下に表示される。
  フォルダの名称。これはWinFS中に存在する、写真やビデオを格納するためのフォルダ。
  アドレス・バー。最上位階層が「Computer」で、その下に「Photos and Videos」フォルダが存在している、という意味。階層が増えると、順次右側へ追加表示される。各フォルダの右側にある三角マークをクリックすると、同一階層にあるフォルダの一覧がドロップダウン・リストで表示されるので、すばやく移動することができる。
  選択したファイルのプレビュー領域。
  選択したファイルの名前などの情報。
  ファイル内容の縮小表示。
  縮小表示サイズのズーム。これを上下させると、下に並んでいる縮小表示のアイコンのサイズを簡単に変更できる。
  選択されているファイルに対するタスク。印刷したり、CD-Rに焼くなどの操作が簡単に行える。

 フォルダ中には多数のファイルがあるが、これらは従来のWindowsでいうところの「縮小版」モードで表示されている。つまりファイルのアイコンの代わりに、写真データが縮小して表示されている。どれか1つを選択してクリックすると、ウィンドウの左上にそのファイルに関する詳細なデータが表示される。さらに右側には、そのファイルに対して適用可能なタスクが表示される(ここでは「Print this file」などが表示されている)。また虫めがねの形のアイコンをクリックすると、上の画面のように、上下のスライダ・バーが現れる。これを操作することにより、縮小表示のアイコン・サイズ(画像サイズ)をダイナミックに変更することができる。

データベースによる統合化ストレージWinFS

 最初に示したデスクトップ画面において、一番下に「Storage」に分類されているフォルダがいくつかあるが、これらはWinFSによって実現されている仮想的なフォルダである。通常のWin32のAPIからも見ることができるが、それらのフォルダ中のファイルは、実際にはWinFSというYukon(次期SQL Serverの開発コード名)ベースのデータベースの中に格納されている。そしてユーザーがフォルダをクリックしたり、検索したりすると、データベースの内容からダイナミックにビューが作成され、表示される。

 例えば以下は「Music」フォルダの内容を表示させたところである。MusicフォルダにMP3のような音楽ファイルをコピーすると、実際にはデータベース中に格納され、曲名やアーティスト名、アルバム名、ビットレート、演奏時間などの情報がデータベースで即座に検索できるようになる(MP3ファイルをいちいち解釈するのではなく、データベース検索によってそれらの項目が取り出される)。そしてMP3ファイルへアクセスすると、元のデータがデータベースから取り出され、アプリケーションへと渡される。これらの操作はユーザーからは透過的に行われるので、例えば従来の音楽プレーヤー・アプリケーションでも問題なく再生できる。

WinFSに格納されている音楽ファイルの例
これはアーティスト名で分類(スタック)させたところ。それぞれの山を「スタック」という。積み上げられている書類の枚数は、そのスタックに属するファイルの数に比例している。
  スタックされた状態のアイコン。同じ項目に属するファイルが複数あると、このように重なった紙の状態で表示される。
  現在選択した項目の名称。ここでは、Artist名で分類、スタックさせている。
  紙の高さは、合致する項目の数に比例して変わる。詳細(Details)表示にすると、実際の合致数が表示される。
  これらの項目をクリックして「Stack by ...」を選ぶことにより、希望する項目でソート(グループ化)してスタックさせることができる。

 ここではアーティスト名によって分類された、3人分の音楽ファイルが表示されている(分類せずに一覧表示させることももちろん可能)。従来の「ファイル名に基づいたグループ分け」とは違い、音楽ファイル中に含まれる属性(この場合は「Artist」属性)に基づいて仮想的に分類しており、これを「スタック」という。積み上げられているファイルの高さは、そのスタックに属するファイルの数に比例している。もちろんArtist名だけでなく、タイトルやファイルの日付、サイズなどのほか、データベースに格納されているさまざまな属性をキーにして、ほぼ一瞬で分類することができる。このスタックのうちの1つをダブルクリックすると、それはさらに絞込み検索を行うことになる。これを繰り返せば、何百、何千とあるファイルでも、必要なものを素早く絞り込んで検索できる。従来のファイル名と全文検索を使った検索と比較すると、その違いは明らかであろう。ただしプレビュー版ではまだ処理は重く、パフォーマンス改善の余地は大きいようだ。

 なお、Longhornにおける物理的なファイル・システムとしては、従来どおりNTFSが利用されている。そしてWinFSに格納されるファイルは、「\System Volume Information\WinFS」の下にYukonデータベース用の.MDFファイルなどが用意され、その中に格納されている。上位のアプリケーションから見ると、NTFSとWinFSの2種類のファイル・システムが存在するように見えるが(すべてのファイルやフォルダがWinFSになっているわけではなく、現在のバージョンのLonghornでは、DocumentsやMusicなど、一部のフォルダのみがWinFS対応になっている)、実際にはこのようにNTFSが利用されている。

 ところで以上はWinFSによる検索であるが、Longhornでは、これと似たような機能として、「wordwheel」を使った絞り込み検索機能も用意されている。エクスプローラ画面の左上にある「Filter by」というテキスト・ボックスがそれである(最初の画面の)。あるフォルダを開いたり、検索したりした結果、例えば該当するファイルやフォルダが何百個も表示されたとしよう。詳細表示設定にしていると、ファイル名のほか、例えば文書ファイルならタイトルとか筆者名、カテゴリ、日付など、音楽ファイルならアーティスト名やアルバム名ほか、さまざまな情報が表示されている。その状態で「Filter by」テキスト・ボックスに文字を入力すると、それらの情報(文字列)から一致するものを含む項目だけが絞り込み検索され、表示される。例えば「microsoft」という文字を入力すると、「microsoft」という文字を含む項目だけが表示される(実際にはインタラクティブ・サーチにより、文字を入力するごとに順次絞り込まれていく)。そこでリターン・キーを押すといったん確定し、さらにまた新たに絞り込んで検索することができる。

 これら以外にも、情報管理を助けるための機能は多く用意されている。それらについては、改めて別の機会に紹介することにしよう。

PDC 2003レポート No.2

 INDEX
  Insider's Eye
  Longhornの機能と構造 ― PDC 2003レポート No.3 ―
  1.Longhornファースト・ルック
    2.Longhornを支えるWinFX API
    3.XAMLによる宣言型のアプリケーション開発
 
 「Insider's Eye」


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