Insider's Eye

エンタープライズ管理ソフトもWebサービス時代へ突入

―― マルチベンダ、ロング・トランザクションというWebサービスの特徴を踏まえ、これらを集中管理可能にするモジュールが続々登場。マイクロソフトはこの分野にまもなくMOMの新版を投入予定 ――

Chris Alliegro
2004/03/03
Copyright(C) 2004, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.


本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌『Directions on Microsoft日本語版』 2004年2月15日号 p.26の「ISV製品がWebサービス管理を補完MOMの管理パックが各社から」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。

 Microsoftのパートナー数社がWebサービス・アプリケーションの管理を支援する、Microsoft Operations Manager(MOM)用の管理パックを相次いでリリースしている。

厄介なWebサービスのアプリケーション管理

 こうした機能はWebサービスの信頼性を確保する上で不可欠だが、実装が困難なこともある。Webサービスを使用するアプリケーションは多くの場合、(例えば、J2EEベースと.NETベースの両方のサービスを含む環境など)多様なコンピュータやコンピューティング・プラットフォームにまたがる長時間のトランザクション(ロング・トランザクション)で構成されているためだ。

 現行のMOMにはネイティブなWebサービス管理機能が欠けているが、Microsoftは次期リリースでサポートする計画だ。これはWebサービスを導入しようとしている企業にとって朗報だろうが、Webサービス・アプリケーションの管理ツール市場の開拓を目指すISV(独立系ソフト・ベンダ)の計画の障害になる可能性もある。

■必要不可欠な非Microsoftシステムへの対応
 アプリケーション固有の状態情報にアクセスして管理することは、アプリケーションの信頼性を確保する上で非常に重要だ。だが、Webサービスの世界ではそう簡単にはいかない。Webサービス・ベースのアプリケーションは、各種のOSや実行環境が動作するリモート・システムで実行される長時間のトランザクションを含むことが多い。このため、こうしたアプリケーションの構成要素の状態情報を収集し、相互に関連付けて包括的に提示するのは厄介だ。

 MOMは、開発者や管理者がWebサービスをホストするWindowsベース・システムの基本的な管理を実現するための基盤を提供する。MOMは、Windows Serverコンピュータの重要なイベントを監視して(中央データベースに保存し)、問題発生時には管理者が提供したルールやスクリプトを基に自動的に対策を講じることができる。またMOMでは、Windows OSのInternet Information Services(IIS)などのサービスを監視するためのルールやスクリプトをあらかじめパッケージ化した管理パックが多数用意されている。

 しかし、MOMはWebサービス・アプリケーションに即した高レベルの機能、例えば非Microsoft技術に基づくWebサービス・コンポーネントの可用性のチェックや、そうしたWebサービスが適切に動作しているかのチェックを行う機能などは提供しない。

 こうした管理上の困難な問題の解決は、MicrosoftのWebサービス戦略の成功に不可欠だ。解決策が提供されなければ、企業は基幹業務を担う機能やアプリケーションのWebサービス・アーキテクチャへの移行に二の足を踏むだろう。

MOMの穴を埋めるISV製品

 ベータ2テストに入ったばかりのMOM 2004では、非Microsoftシステム上で動作するWebサービスへの対応も含め、Webサービスの監視および管理機能が強化される。MicrosoftがMOM 2004に先立って、MOM Service Pack(SP)1の拡張アドオンとして無料配布しているMOM Connector Framework(MCF)は、アラートなどの管理および制御情報をMOMとサードパーティ・ツール間で交換するためのメカニズムを提供している。MicrosoftはMCFが、ISVによるMOMと各社製の管理ツールの統合を促進することを期待している。

■異種混在環境におけるソリューション製品
 2003年10月に開催されたProfessional Developers Conference(PDC)で、ISVのActional、Amberpoint、Computer Associates(CA)はこの期待に応え、各社のWebサービス管理プラットフォームとMOM間でMCFを介した情報交換を可能にする管理パックを発表した。この管理パックは、顧客が異種混在環境でWebサービス・アプリケーションを管理する際の課題を解決するために役立つだろう。

●ActionalやAmberpointとの連携
 Actional Web Services Management Packは、Looking Glass MOM Connectorと呼ばれるActionalのMCFコネクタを利用して、Webサービスの使用状況統計と状態情報を収集してMOMに渡す。これらの情報はMOMコンソールで集約して表示でき、運用管理担当者はサービスの動作を1つのコンソールから監視できる。

 同様に、Amberpoint Management Pack for MOM 2000は、AmberpointのWebサービス管理製品が収集したWebサービスのパフォーマンスや可用性のデータなどの情報をMOMコンソールに渡し、運用管理担当者が監視できるようにする。運用管理担当者はActionalやAmberpointの管理コンソールをMOMから起動して、これらのベンダの製品で提供される高度なWebサービス管理機能に直接アクセスすることもできる。例えば、運用管理担当者はAmberpointやActionalの管理コンソールを立ち上げ、いくつかのWebサービスを含む出荷トランザクションで発生した緊急アラートを分析し、トランザクション障害の発生個所と原因を特定し、トランザクションの再開などの対応策を取ることができる。

●CAからUnicenter管理ツール
 CAも先ごろ、Unicenter Web Services Distributed Management(WSDM)のリリースによって管理ツール・スイートのUnicenterにWebサービス対応機能を追加した。Unicenter WSDMはCAが最近Adjoin Solutionsの買収で獲得した技術をベースにしている。また、Unicenter Web Services Management Packにより、MOMユーザーはUnicenter WSDMの特定の処理をMOMコンソールから設定できるようになる。例えば運用管理担当者は、Webサービスのパフォーマンスに関連する特定のデータを収集し、それらを基に対策を行うようにUnicenter WSDMを設定できる。End of Article

参考資料

Directions on Microsoft日本語版
本記事は、(株)メディアセレクトが発行するマイクロソフト技術戦略情報誌「Directions on Microsoft日本語版」から、同社の許可を得て内容を転載したものです。『Directions on Microsoft 日本語版』は、同社のWebサイトより定期購読の申し込みができます。
 
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