Insider's Eye

Sybari買収で見えてきたMSのウイルス対策製品戦略

Michael Cherry
2005/04/21
Copyright (C) 2005, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.


本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌『Directions on Microsoft日本語版』 2005年4月号 p.18の「Sybari買収で見えてきたウイルス対策製品のシナリオ」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。

 Microsoftは、メッセージングおよびコラボレーション・サーバ向けのウイルス対策およびスパム対策ソフトウェアを手掛ける株式非公開企業のSybari Softwareを買収した。今回の買収でMicrosoftが手にするテクノロジは複数のウイルス対策エンジンを同時に実行でき、その技術は特に高い有用性が見込まれることから、次期Windowsに実装されることも考えられる。

 Sybariは約6160万ドルの評価額で新規株式公開準備を行っていたが、今回の買収の金銭的な条件については公表されていない。また、Sybariのテクノロジを基にしたMicrosoftブランドの製品が、いつどのような形で提供されるかについても、明らかにされていない。

 Sybariは、Microsoftが買収したウイルス対策ベンダとしては2社目に当たる。1社目はルーマニアの小規模なウイルス対策ベンダGeCAD Softwareで、Microsoftはこれを2003年6月に買収している。同社チーフ・ソフトウェア・アーキテクトのBill Gates氏が2005年2月に開催されたRSAカンファレンスの基調演説で明言していることもあり、GeCADの買収以来、Microsoftブランドのウイルス対策製品の登場が待たれているが、この製品の詳細やロードマップについては明らかにされていない。

 同社は現時点では、GeCADのテクノロジを基に、ウイルスワームそしてトロイの木馬に感染したPCから削除するウイルス駆除ツール「悪意のあるソフトウェアの削除ツール」を開発している。このウイルス駆除ツールは、月例のセキュリティ・アップデートに合わせて、毎月第2火曜日(日本時間では水曜日)に定期的に更新されている。

●Sybariテクノロジの真の価値
 今回の買収は、GeCADの買収とはいくつかの点で趣を異にしている。まず、Sybariのウイルス対策ソリューションは、デスクトップやクライアント向けではなく、メッセージング・サーバ(ExchangeやIBMのDominoなど)やコラボレーション・サーバ(MicrosoftのWindows SharePoint Services、SharePoint Portal Server、Microsoft Live Communications Serverなど)向けのツールが主流である。実際に、MicrosoftのIT部門も、メッセージングやコラボレーション・サーバ側でのウイルス対策にSybari製品を導入している。しかし、最も重要な違いは、GeCADのテクノロジが(ほかのほとんどのウイルス対策製品と同様に)単一のウイルス・スキャン・エンジンと署名ファイルを使用するのに対し、Sybariのウイルス対策製品「Antigen」は、Sybari Multiple Engine Manager(MEM)と呼ばれるコア・テクノロジにより、固有の署名ファイルを持つ複数のスキャン・エンジンの管理や調整ができることだ。このため、複合的なウイルス対策システムを実現でき、例えば、ウイルスがあるスキャン・エンジンの脆弱性を突いたり、これをくぐり抜けたりしたとしても、異なる署名ファイルを持つほかのスキャン・エンジンによってこれを検出できる可能性が生まれる。

●プラットフォーム統合の可能性
 Sybari製品が多くのユーザーに支持されていること、またほかにはないアーキテクチャを備えていることを考慮すると、今回の買収はスパイウェア対策ベンダのGIANT Company Softwareの買収(2004年12月16日)と同じ展開をたどり、Microsoftは同社ブランドのSybari製品のリリースを急ピッチで進めることになるだろう。しかし、Microsoftにとって本当に重要なポイントは、SybariのMEMテクノロジがWindows OSの新バージョンに組み込まれ、複数のウイルス対策ソフトやスパイウェア対策ソフトを同時に実行できるようになる可能性があることだ。例えば、MicrosoftのGeCADベースのエンジンとMcAfeeやSymantec、トレンドマイクロなどの競合メーカーのウイルス対策ソフトを同時に実行することや、Microsoftのスパイウェア対策ソフトをCA PestPatrolやSunbelt SoftwareのCounterSpyなどサードパーティ製ソフトと同時に利用できるようになるかもしれない。

 Sybari Softwareは、Microsoftサーバ製品用以外にも、Notesやオープンソース製品用のAntigenを提供している。Microsoftは、Notes用Antigenのサポートについては引き続き提供することを示唆しているが、オープンソース用のライセンスの下で提供されているSybari製品のサポートについては具体的な発表を行っていない。End of Article

Directions on Microsoft日本語版
本記事は、(株)メディアセレクトが発行するマイクロソフト技術戦略情報誌「Directions on Microsoft日本語版」から、同社の許可を得て内容を転載したものです。『Directions on Microsoft 日本語版』は、同社のWebサイトより定期購読の申し込みができます。
 
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