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BizTalk Server最新SPと今後のロードマップ
―― Longhorn時代に向け、BizTalkはどう進化するのか? ――

Chris Alliegro
2005/05/24
Copyright (C) 2005, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.


本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌『Directions on Microsoft日本語版』 2005年5月号 p.28の「BizTalk Server最新SP後のアップデート計画が明らかに」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。

 2005年1月のMicrosoftの発表によると、予定されているBizTalk Serverの次期リリース(BizTalk Server 2006)では、管理機能が強化されるほか、SQL Server 2005およびVisual Studio 2005に対応する。また、Windows Serverの次期メジャー・リリース(コード名:Longhorn Server)後に、別のメジャー・アップデートも計画されている。Longhorn対応バージョンのリリースは恐らく2008年になるだろう。またこの発表の前には、BizTalk Server 2004 SP1がリリースされている。SP1では、軽微な不具合に対応するものからパフォーマンスの低下やデータの喪失を招く恐れのある重大なバグに対応するものまで、100余りの修正プログラムが提供された。

広範なバグを修正したSP1がリリース

BizTalk Server 2004の概要
BizTalk Server 2004 SP1情報
Longhornとは?

 2004年4月のBizTalk 2004の発表から9カ月を経てリリースされたSP1では、比較的多くの修正プログラムが提供されている(BizTalk Server 2002 SP1の場合は、リリースがBizTalk Server 2002の発表から17カ月後、提供された修正プログラムの数は50だった)。しかし、BizTalk 2004へのアップデートで施された大規模な変更を考えれば、驚くには値しないだろう。BizTalk Server 2004では、メッセージングおよびオーケストレーションのコア・テクノロジがほぼ完全に書き直された。また、ビジネス・ルール・エンジン、ヒューマン・ワークフロー・アプリケーションの作成を支援するサービス・インターフェイスおよびプログラミング・インターフェイス、BizTalkアプリケーションの監視および追跡用の各種ユーティリティ、Visual Studio .NET(VS.NET)ベースの開発環境など、大掛かりな機能追加も行われている。

 BizTalk Server 2004 SP1で提供される修正プログラムの範囲は製品全体に及んでいるが、その大部分は最もよく利用されている機能に対応するものだ。例えば、約40%はメッセージング・コンポーネントのバグを修正するもので、中でもEDI(Electronic Data Interchange)メッセージの処理に関連するものが多い。残りのほとんどは、BizTalkのオーケストレーション・エンジンとBizTalk 2004で新たに導入されたVS.NETベースの開発環境のバグに対応するものだ。SP1には、ビジネス・ルール・エンジンやヒューマン・ワークフロー・コンポーネントなど、新機能向けの修正プログラムはあまり含まれていない。このことから判断すると、これらの新機能はまだ実際に運用されているケースは少ないことが考えられる。これらについては、今後導入が進むに従い、新たなバグが報告される可能性がある。

 SP1で修正されるバグでは、とりわけ深刻なものはないが、システムを不安定にしたり、パフォーマンスの低下やデータの損失を招いたりする可能性のあるバグ修正も含まれている。例えば、XMLメッセージの処理に関するあるバグは、システムのCPU使用率を100%にしてしまい、ほかのメッセージ処理やオーケストレーションの実行にかかるサーバの処理能力を圧迫する。また別のバグでは、HTTP(ハイパーテキスト転送プロトコル)メッセージの処理時にオーケストレーションをハングさせ、このオーケストレーションを含むBizTalkアプリケーションの再起動を余儀なくする。そのほか、BizTalk側でのメッセージの受信および記録が失敗しているにもかかわらず、これらの処理が成功したことを示す誤った通知がクライアント・アプリケーションに送られてしまうといったバグもある。この場合、クライアント側は正常にメッセージの送信と記録が行われたものと見なし、メッセージが再送されないため、そのメッセージ内のデータが失われることになる。

■監視や移行を支援する新機能

 SP1では修正プログラムのほかに、新機能もいくつか提供されている。例えば、BizTalk Serverのメッセージ・データベース内にあるメッセージの列挙や、これらのメッセージについての情報の取得を可能にするオブジェクトが追加された。そのほか、新しいパフォーマンス・カウンタも導入され、BizTalkのメッセージ処理状態をより詳細に把握できるようになった。

 またSP1のリリースと合わせて、Adapter Migration Toolkitと呼ばれるツールセットもリリースされた。これは、BizTalk 2002のソリューションをBizTalk 2004に移植するためのものだ。特に、BizTalk 2004のメッセージング・コンポーネントと互換性のないBizTalk 2002用のメッセージング・コンポーネントやツールの移植を支援する。例えば、このツールキットを使用すると、BizTalk 2004用のラッパーが生成され、アプリケーション統合コンポーネント(AIC)と呼ばれるBizTalk 2002のメッセージ処理用カスタム・オブジェクトを再利用できるようになる。AICは、多くのBizTalk 2002ユーザーがカスタムのビジネス・ロジックを実装するために使用している。このツールキットが登場するまでは、コンポーネントの移植には、最初からコードを書き直す必要があった。

2006年版とLonghorn対応版がロードマップに

 Microsoftは、SP1のリリース直後に、今後のBizTalk Serverのロードマップを発表した。次期バージョンのBizTalk Server 2006(以前は、開発コード名でPathfinderと呼ばれていた)において予定されている機能強化は次のとおり。

  • BizTalkアプリケーションの主要なイベントをユーザーに通知する機能の提供。BizTalk 2004では、このような情報はユーザー自身がBizTalkのビジネス監視ツールを使用して「プル」する必要があった。

  • 新しい管理コンソールの提供。BizTalk Serverアプリケーションの導入と監視をより強力に支援する。

  • SQL Server 2005およびx86-64(AMD64/EM64T)プロセッサのサポート。

  • 開発ツールのアップデート。Visual Studio 2005にプラグイン可能になる。

 BizTalk Server 2006のリリースは、2006年前半になる見込みだ。

 BizTalk 2006の次のバージョンは、現在開発中のWindows Longhorn Server向けの製品になる予定である。このバージョン(名称は未定)は、Longhorn Serverでの提供が計画されているWebサービス・メッセージング・システム「Indigo(インディゴ)」に対応する。また、開発環境およびコア・エンジンも改良し、ヒューマン・ワークフローおよびB2Bの両方のプロセスを同じツールやエンジンを使用して開発および実行できるようにする。このリリースは、BizTalk Server 2006とLonghorn Serverのリリース時期によるが、恐らく2008年になるだろう。なお、Indigoが追加導入されたWindows Server 2003でも、このバージョンは実行できる予定だ。

 BizTalk Serverの現行バージョンおよび今後のバージョンと、これらが依存するテクノロジについては、コラム「BizTalk Serverの製品ロードマップ」を参照。End of Article

[コラム]
IM、VoIP、会議サービス製品のロードマップ

 BizTalk Serverの今後のメジャー・リリースは、2006年と2008年に予定されている。2004年4月にリリースされた現行バージョンのBizTalk Server 2004では、メッセージングおよびオーケストレーションのコア・テクノロジがほぼ完全に書き直された。また、ビジネス・ルール・エンジン、ヒューマン・ワークフロー・アプリケーションの作成を支援するサービス・インターフェイスおよびプログラミング・インターフェイス、BizTalkアプリケーションの監視および追跡用の各種ユーティリティ、Visual Studio .NETベースの開発環境など、大掛かりな機能追加も行われている。BizTalk Server 2004は、.NET Frameworkを利用してBizTalk Server 2002よりも高い拡張性と優れたソフトウェア開発機能を提供しているが、結果として下位互換性が失われている。

 次に予定されているBizTalk Serverのメジャー・リリースは、BizTalk Server 2006(開発コード名:Pathfinder)だ。BizTalk Server 2006では、管理コンソールが刷新され、ユーザーにBizTalkアプリケーションの重要なイベントを通知するユーティリティが提供されるほか、SQL Server 2005およびx86-64プロセッサのサポート、Visual Studio 2005にプラグインできる開発ツールも組み込まれる。名称は決定していないが、BizTalk Server 2006に続いてLonghorn Server対応バージョンのリリースが予定されている。このバージョンはLonghorn Serverで提供される新しいアプリケーション間メッセージング・テクノロジ「Indigo」に対応する見込みだ(Windows Server 2003では「WinFX for Windows Server 2003」機能パックとして追加導入される)。

BizTalk Serverの製品ロードマップ

参考資料

Directions on Microsoft日本語版
本記事は、(株)メディアセレクトが発行するマイクロソフト技術戦略情報誌「Directions on Microsoft日本語版」から、同社の許可を得て内容を転載したものです。『Directions on Microsoft 日本語版』は、同社のWebサイトより定期購読の申し込みができます。
 
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