Insider's Eye

WinFSでWindowsのデータ/ファイル管理はどう変わる?(1)

― ベータ1に見る新ファイル・システムの可能性と不透明材料 ―

Rob Helm
2006/01/26
Copyright (C) 2006, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.


本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌『Directions on Microsoft日本語版』2006年1月号p.29の「WinFSでWindowsのデータ/ファイル管理はどう変わる?」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。

 WinFSのベータ1が2005年9月にリリースされ、開発者はWindowsの次世代データ/ファイル管理サービスを評価できるようになった。WinFSは、通常のファイルに加えて連絡先やタスク(仕事)などのデータ・レコードを整理できる単一のデータベースを提供する。こうしたデータベースは、ユーザーがデータを素早く探したり、さまざまなアプリケーションで情報を共用したりするのに役立ちそうだ。だが、この初期のベータ版には、IT部門がWinFSを評価したり、既存のファイル・システムやデータベース技術と比較したりするのに必要なユーザー・インターフェイスや管理コンポーネントが欠けている。

データとファイルを一元化

 WinFSは、個々のデータベース・レコード(連絡先やタスクのレコードなど)とファイル全体の両方を1つのストアに格納できるWindows OSのデータ管理システムだ。WinFSはWindowsの基本ファイル・システムであるNTFS(NT File System)上で動作し、高度な整理、検索、管理機能を提供する。

 WinFSのデータベース(「ストア」と呼ばれる)は、ファイル・システム、リレーショナル・データベースActive Directory(AD)のようなディレクトリ・サービスのそれぞれの機能を兼ね備えている。WinFSのストアには「アイテム」、つまりプロパティを持つデータ・オブジェクトが格納される。アイテムは次のいずれかだ。

  • 1つのデータ・レコード(連絡先やタスクなど)。

  • ファイルとそのプロパティ(撮影日、ピクセル・サイズといったプロパティを持つデジタル写真など)。「ファイルベース・アイテム」と呼ばれる。

  • 他のアイテムを含むコンテナ。WindowsのフォルダやADのコンテナ・オブジェクトと似ている。

 また、WinFSはアイテム間の関連や関係も格納できる。例えば、コンテナとコンテナに含まれるアイテムの関連や、連絡先アイテムと連絡相手を写した写真アイテムの関連を格納するといったことが可能だ。WinFSでは、アイテムをプロパティや関連に基づいて検索するためのクエリ・エンジンとクエリ言語(OPathと呼ばれる)が用意されている。

 WinFSのデータ・モデルは、Windowsのファイル・ボリュームの固定的なフォルダ階層と比べると、データの整理や検索のためのオプションを豊富に提供している。例えば、ユーザーはWinFSストアを対象に、特定のプロジェクトに関連するすべてのドキュメントや、特定の連絡相手が作成したすべてのドキュメントを、ドキュメントがコンテナ階層のどこに位置するかを意識することなく検索できる。

 だが、2005年9月にリリースされたベータ1には、WinFSストアの整理や検索のために手軽に使えるユーザー・インターフェイスは用意されていない。このため、WinFSを利用することで、従来のファイル・システム上でMSNデスクトップ・サーチなどの全文検索ツールを利用する場合と比べて、データ検索がどれだけ簡単になるかを判断するのは困難だ(このように、WinFSのベータ1はむしろテクノロジ・プレビュー版という色彩が強い。テクノロジ・プレビュー版やベータ版の評価上の注意点については、コラムの「WinFS開発版の評価」を参照)。

WinFS開発版の評価

 2005年9月にリリースされたWinFSの開発版は「ベータ1」と呼ばれているが、コミュニティ・テクノロジ・プレビュー(CTP)版という性格を色濃く持っている。こうした名称と実態のずれは、どのような顧客がその評価を行うべきか、そして顧客は何を期待すべきかにかかわってくる。

 以前は、製品のベータ版は通常、コードや機能をすべて含んだものだった。ベータ版では、設計どおりに動作させるにはまだかなりの仕上げやテストを要する機能が一部含まれていたとしても、搭載予定の機能はすべてそろっていた。だが、Windows XP SP2やWindows Vista、WinFSなど、多くの有名な製品や技術の開発過程で、すべての機能がそろっていないベータ版が提供されてきた。主要な機能やユーザー・インターフェイスが初期のベータ版には搭載されず、重要な機能が後の段階のベータ版やリリース候補版(RC版)で整備されることになった。

 WinFSの最初に公開された開発版は、まだ基本的な開発が活発に進められている技術の暫定版であるCTPに近い。Microsoftは比較的短期間にこうしたCTPをいくつかリリースすることが多く、リリースのつど新機能を追加したり変更を重ねたりしていく。

 Microsoftは常々、実運用に開発版を利用しないよう顧客に警告してきた。だが、顧客はまた、名称が「ベータ」か「CTP」かにかかわらず、開発版の評価方法を慎重に判断して、社内リソースを最も有効に活用しなければならない。通常、顧客はCTPやごく初期のベータ版(WinFSのベータ1のような)については、評価を省略すべきだ。その例外は、その製品を早期に採用したいという意向が強い場合か、製品の機能セットの決定に意見を反映させたい場合だ。初期の開発版を評価する顧客は、一般に開発が進んでから実装されるユーザー・インターフェイスや、製品の導入展開、構成、監視といった管理機能などではなく、APIと中核機能に的を絞るべきだ。エンドユーザーや管理者への製品の影響に主に関心を持っている顧客は、すべての機能がそろったベータ版や最初のリリース候補版を待つべきだ。

スキーマ定義があらゆるアプリケーション利用を可能に

 WinFSに格納されるアイテムのクラスとプロパティは、スキーマによって定義される。このスキーマは、リレーショナル・データベースやXMLドキュメントで使われるスキーマと似ているが異なるものだ。Microsoftは、ドキュメント、電子メール・メッセージ、予定表項目、連絡先、タスクといったよく使われるアイテム・クラスの標準スキーマを定義している。だが、アプリケーション開発者はこれらのスキーマを拡張したり、独自のスキーマを作成したりすることで、WinFSがアプリケーション固有のデータ型やファイルを格納できるようにすることができる。

 Microsoftの標準スキーマは、アプリケーション間のデータ共有を容易にするというメリットがありそうだ。例えば、電子メール・クライアントやインスタント・メッセージング・クライアント、CRM(Customer Relationship Management)システムが、WinFSの1つの連絡先ストアを利用して動作し、ユーザーがこれらのアプリケーション間でデータを移動したり同期させたりする必要が少なくなる可能性がある。さらに、WinFSは、新しい対応スキーマが定義されれば任意のアプリケーション・データをサポートできるため、原理上、ユーザーは自分のすべてのアプリケーション・データを1カ所に格納して管理できることになる。現状では、ユーザーはさまざまなアプリケーション・ファイル、データベース、レジストリ・キーをそれぞれ管理しなければならない。ただしもちろん、データの共有や一元的な保存が可能になる前提は、アプリケーション開発者がWinFSを採用することだ。

 

 INDEX
  Insider's Eye
  WinFSでWindowsのデータ/ファイル管理はどう変わる?(1)
    WinFSでWindowsのデータ/ファイル管理はどう変わる?(2)
 
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