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過小評価されやすいIT Proの本当の価値を広く認めさせるには

―― 米国IT Pro大規模コミュニティ、CulminisのIT Pro地位向上戦略 ――

Dave Sanders
Culminis, Inc.
http://www.culminis.com/
President/CEO

聞き手:Windows Server Insider編集長 小川 誉久
2006/07/21


 ソフトウェア開発者向けのユーザー・コミュニティには活発なものが多いが、情報システム管理者などを対象とするコミュニティはあまり多くない。こうした違いの背景には何があるのか? IT Pro同士が相互扶助できるコミュニティはどうやってつくればよいのか? IT Proの作業環境、地位向上には何が必要なのか? 全世界で100万人を超えるIT Proの組織化に成功したCulminis(カルミニス)のCEO、Dave Sanders氏に伺った。

―― Culminisというのはどういう意味か。

 

Sanders:ラテン語の“culmin”と英語の“culmination”にちなんで作った造語。どちらも「頂上」というような意味がある。

―― 現在のCulminisの規模や活動内容は。

 

Sanders:Culminisは、Windowsを中心とする情報システムに関与するIT Proコミュニティの活性化に向けて、全世界規模で活動する非営利団体である。約2年前に設立され、現時点では、全世界60カ国で700を超えるユーザー・グループが参加しており、これらのユーザー・グループに参加しているIT Proを総計すると100万人を超える(2006年6月30日時点で102万5731人)。Culminisの目的は、全世界にあるIT Proのユーザー・グループやコミュニティを支援することで、それらのコミュニティに参加するIT Proのスキルアップや問題解決、地位向上、若手技術者育成などを促すことだ。具体的には、ユーザー・グループの効率的な運営指導、技術セミナーなどで利用できる各種カリキュラムの提供、ユーザー・グループ間の連携支援などを行っている。

―― Culminisがいう“IT Pro”とは。

 

Sanders:私たちの定義では、システム・エンジニアやネットワーク・エンジニア、ネットワーク管理者、デスクトップ・サポートなどをIT Proと呼んでいる。ソフトウェア開発者は含まない。ソフトウェア開発者向けのコミュニティとしては、すでにINETA(The International .NET Association:アイネタ)などがある。ただし実際には、INETAとCulminisの双方のユーザー・グループに参加しているIT技術者も少なくない。

―― 日本では、システム管理者などIT Proの価値が正しく評価されておらず、地位もあまり高くないという傾向があります。

 

Sanders:それは日本だけでなく、世界で共通した問題だ。Culminisの大きな活動目的も、そうしたIT Proの地位向上にある。

―― IT Proの地位向上に向けた具体的な取り組みは。

 

Sanders:例えばセキュリティ管理のように、IT Proの仕事は、必ずしもすべてが企業の生産性につながるものばかりとは限らない。この点を理解せず、生産性だけに注目してIT Proの価値を評価している企業があまりにも多い。この問題に対する1つの方策は、地域の学校などでコミュニティ活動やボランティア活動を積極的に実施し、プロフェッショナルとしての尊敬を勝ち得ることだ。特に北米地域では、こうした社会活動を企業の経営者に認知させることに成功した。企業によっては、スポンサーを名乗り出るところが現れるなど、非常に成功している。もう1つは、企業の経営層を構成するビジネス・コミュニティに対し、積極的な告知活動を実施することだ。ニュース・レターやWebサイトなどでの告知活動を実施している。

―― 開発者コミュニティが活発なのに比較し、システム管理者からなるIT Proのコミュニティはあまり活発ではありません。

 

Sanders:ソフトウェア開発者には、ソース・コードという共通の土台があり、コミュニケーションを取りやすいという環境がある。対してIT Proには、このような土台がない。ただし、システム管理ツールの進化などによって手作業が減少し、共通基盤が整備される方向にはある。またIT Proは、「コミュニティを通じて新しいことを知りたい」という気持ちがある一方で、「コミュニティで自分の経験やノウハウを教えてしまうと、自身の価値が下がってしまうのではないか」というジレンマを感じている。実際には、コミュニティに参加して、相互に情報交換することで、お互いに技術力を高めることができる。こうしたコミュニティの正しい価値を広く知らしめなければならない。

―― 情報システム環境は企業によってまちまちです。コミュニティのための共通の土台という意味では障害になりませんか。

 

Sanders:環境によらず、興味分野に集中できるように、Exchange ServerやSQL Serverなど、製品ごとに議論できるスペシャル・ユーザーグループを用意している。また相互運用を中心に扱うユーザー・グループもあり、Linux、Sun、Appleなどのマルチベンダ環境でビジネス・アプリケーションをどう扱うかという議論を行っている。

―― Culminisは学生向けの活動も手掛けていますね。

 

Sanders:IT Proの地位向上という意味でも、若手技術者の育成は非常に重要だと考えている。職場で必要とされる生きたIT Proの技術とはどんなものかを学生に教えるカリキュラムを用意し、教育支援を積極的に行っている。また学生向けには、インターンシップによる就職機会も提供している。

―― 日本では、優れたIT Proの育成に苦労しています。

 

Sanders:これも全世界共通の悩みだ。すでに述べたとおり、まずはコミュニティ活動を通じて、IT Proが尊敬される存在だということを広く認知してもらい、IT Proを目指す若手を増やすことだ。もう1つは、経営者層にIT Pro育成に向けた投資が無駄ではなく、妥当な見返りがあると理解してもらうことである。これには、優れたIT Proが企業に存在することが、どれだけ企業の価値を向上させるかを経営層に知らせる必要がある。

―― 経営層にアピールするのは容易ではないのでは。

 

Sanders:私たちはまず、いかに多くのIT Proが恵まれない環境で仕事をしているか、過小評価されているかを議論し、それに対して情報を共有できる場をつくった。この場にビジネス・パーソンにも参加してもらい、IT Proを正しく評価し、整備された環境で優れた仕事をさせることが、ビジネスにどれだけメリットをもたらすかを知らせた。IT Proのコミュニティだけでなく、開発者コミュニティやビジネス・パーソンのコミュニティなど、異なるコミュニティとの接点をつくることが大切だ。ただし、本当に自分の価値をアピールしたければ、声を上げるだけでなく、IT Proの側にも努力が必要である。このためCulminisでは、IT Proを対象としたビジネス・プロセス管理や、プロジェクト管理の教育カリキュラムも提供している。IT Proとしても、ビジネスが何たるかを理解しなければならない。技術だけでなく、ビジネスに関しても総合的に理解することが重要だ。

―― IT Proコミュニティを活性化させる秘けつはありますか。

 

Sanders:IT Proに限らず、技術者コミュニティ全般にいえることだが、IT Proは技術者同士のコミュニケーションは得意でも、マーケティングや広告は不得手である。このためCulminisでは、ユーザー・グループをうまく広告するためのテンプレートを作成して提供した。またどんなユーザー・グループが、いつ、どこで、どんなイベントを開催するのかがひと目で分かるようなロケーター機能をCulminisのサイトに作成し、参加者が簡単に調べられるようにした。

―― Culminisの日本での活動は。

 

Sanders:世界の地域ごとに異なる文化やニーズを理解する必要がある。日本にとってどのような活動がベストなのかを検討している。

―― 日本の印象は。

 

Sanders:私の祖先はネイティブ・アメリカンのチェロキー族だ。日本のコミュニティ・リーダー何人かに会った感想として、日本人は自分がどう考えるかではなく、他人が自分をどう見ているのかということを重視するように思える。チェロキー族にも同じようなマインドがあり、私としては非常に身近な文化だと感じる。

―― 最後に、日本のIT Proに対してメッセージをどうぞ。

 

Sanders:ぜひとも日本にも、強力なIT Proのコミュニティを構築したいと考えている。今後、私たちが持っている英文の各種ドキュメントを日本語化するなど準備を進めるつもりだ。ただしCulminisは非営利団体であり、膨大なローカライズ作業のすべてを有償で依頼できるような資金力はない。これには日本のコミュニティ・リーダーの方々の協力が欠かせない。どうぞ皆さんの力をCulminisに貸してください。End of Article

 
 「IT PRO POWER INTERVIEW」

ホワイトペーパーTechTargetジャパン

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