第8回 アドレス・クラスとさまざまなIPアドレス基礎から学ぶWindowsネットワーク(1/3 ページ)

規模に応じた柔軟なネットワークを構築する鍵は可変長のネットマスクにあり。さまざまなブロードキャスト・アドレスについても解説。

» 2003年01月17日 00時00分 公開
Windows Server Insider

 

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 IPアドレスは32bitの数値であり、それぞれの値がユニークでありさえすれば、管理者が自由に好きな数値を選択して、各ホストに付けることができると思うかもしれない。だが、IPアドレスの付け方には幾つかの基本的なルールがあるので、ここではそれについてまとめておこう。

 まず重要な概念として、IPアドレスの「アドレス・クラス(address class)」という分類方法がある。最近はサブネットやCIDR(後述)などにより、その重要性が薄れてきているが、それでもネットワークの設計などを行うときには、必ず考慮しなければならない重要な概念であるので(デフォルトのアドレス・クラスというものが存在するから)、ぜひ理解しておいていただきたい。具体的には、このデフォルトのアドレス・クラスを元にして、さらにサブネット化やCIDRへと、IPアドレスの意味付けが少しずつ変わってきている。

 アドレス・クラスとは、IPアドレスの値によって、IPアドレスを幾つかのカテゴリに分類したものである。次の図に示すように、IPアドレスの最上位部分のビット・パターン(図中の赤い部分)の値によって、「クラスA」から「クラスE」までの5つに分類されている。

IPアドレス・クラス
IPアドレスには、そのアドレス値によって、アドレス・クラスという分類がある。IPアドレスの最上位(左端)の1〜4bitのパターンによって、クラスA〜クラスEに分類される。実際にはクラスDはマルチキャスト用の特別なアドレス、クラスEは未使用となっている。

  • クラスA
     最上位の1bitが「0」ならば、そのIPアドレスは「クラスA」になる。具体的には「0.0.0.0〜127.255.255.255」がこのクラスAに該当する。これは全IPアドレス空間(≒42億個)のうち、半分に相当する。
  • クラスB
     最上位の2bitが「1−0」ならば、そのIPアドレスは「クラスB」になる。具体的には「128.0.0.0〜191.255.255.255」が該当する。これは全IPアドレス空間のうち、4分の1に相当する。
  • クラスC
     最上位の3bitが「1−1−0」ならば、そのIPアドレスは「クラスC」になる。具体的には「192.0.0.0〜223.255.255.255」が該当する。これは全IPアドレス空間のうち、8分の1に相当する。
  • クラスD
     最上位の4bitが「1−1−1−0」ならば、そのIPアドレスは「クラスD」になる。具体的には「224.0.0.0〜239.255.255.255」が該当する。クラスDは、マルチキャスト通信で使われる特別なIPアドレスであり、マルチキャスト通信を使ったマルチメディア・アプリケーションなどで使われる。例えば、同じ内容の音声や映像データなどをいっせいに「放送」するような用途で使われる。一般的なノードにクラスDのIPアドレスだけを付けることはない。
  • クラスE
     最上位の4bitが「1−1−1−1」ならば、そのIPアドレスは「クラスE」になる。具体的には「240.0.0.0〜255.255.255.255」が該当する。ただし、このクラスは「実験的」な目的のためにTCP/IP(IPv4)の開発当初から予約されており、実際に使われることはない。

アドレス・クラスとデフォルト・ネットマスク

 全部で5つあるクラスのうち、ネットワーク上の各ノードにはクラスA〜CのうちのどれかのIPアドレスを付ける必要がある(実際には後述するように、ブロードキャスト用のIPアドレスなどのために、幾つか利用できないIPアドレスがある)。

 アドレス・クラスの違いは、デフォルトのネットマスクの違いとなって現れる。前回述べたように(「第7回 IPアドレスとネットマスク―1.IPアドレスとは」)、IPアドレスは「ネットワーク・アドレス部」と「ホスト・アドレス部」の2つから構成されている。ネットワーク・アドレス部を長くするとホスト・アドレス部が短くなり、逆にネットワーク・アドレス部を短くすると、ホスト・アドレス部が長くなる。ネットワーク・アドレス部が長くなるということは、表現できる(識別できる)ネットワークの数が多くなるが、その分、1つのネットワークに接続できるホストの総数が少なくなるということである。逆にネットワーク部を短くすると、表現できるネットワークの総数は少なくなるが、1つのネットワーク内に接続できるホストの総数は多くなる。

 クラスAからクラスCまでのアドレス・クラスでは、それぞれ以下のようなデフォルトのネットマスクの値(=ネットワーク・アドレスとホスト・アドレスを分けるためのマスク値)が決まっている。

アドレス・クラスとデフォルト・ネットマスク
アドレスの各クラスごとにデフォルトのネットマスクが決まっている。ネットマスクはネットワーク・アドレスとホスト・アドレスを分離するための鍵となるデータ(マスク)であり、マスクのデータが1の部分がネットワーク・アドレス、0の部分がホスト・アドレスとなる。クラスAでは、ネットワーク・アドレスは1byteしかないが、収容できるホスト部は3bytes分ある。逆にクラスCでは、ネットワーク・アドレスは3bytes分あるが、ホスト部は1byte分しかない。

  • クラスA
     クラスAでは、ネットマスクの値は「255.0.0.0」となる。この結果IPアドレスは、1byteのネットワーク・アドレス部と3bytesのホスト・アドレス部に分けられることになる。クラスAでは、IPアドレスの最上位bitは常に「0」に固定なので、結局、ネットワーク・アドレスとしては、「0〜127」までの全部で128個が利用でき、それぞれのネットワーク内には最大でそれぞれ約1600万台(0.0.0〜255.255.255)のホストを収容できる。
  • クラスB
     クラスBでは、ネットマスクの値は「255.255.0.0」となる。この結果IPアドレスは、2bytesのネットワーク・アドレス部と2bytesのホスト・アドレス部に分けられることになる。クラスBでは、IPアドレスの最上位の2bitは常に「1−0」に固定なので、結局、ネットワーク・アドレスとしては、「128.0〜191.255」までの全部で1万6384個が利用でき、それぞれのネットワーク内には最大でそれぞれ約6万5000台(0.0〜255.255)のホストを収容することができる。
  • クラスC
     クラスCでは、ネットマスクの値は「255.255.255.0」となる。この結果IPアドレスは、3bytesのネットワーク・アドレス部と1byteのホスト・アドレス部に分けられることになる。クラスAでは、IPアドレスの最上位の3bitは常に「1−1−0」に固定なので、結局、ネットワーク・アドレスとしては、「192.0.0〜223.255.255」までの全部で約200万個が利用でき、それぞれのネットワーク内には最大でそれぞれ約250台(0〜255)のホストを収容することができる。

■クラスの使い分け
 以上のように、クラスが変わると、表現できるネットワークの数もその中に収容できる最大ホスト数も変わることになる。そのため、実際にネットワーク・アドレスやホスト・アドレスをどのように割り振るかは、使用するネットワークの規模に応じて決めることになる。一般的には、イーサネットの1セグメントを1つのネットワーク・アドレスに対応させるのが普通なので(それぞれのセグメントをルータで接続して、全体的なネットワークを構築する)、それぞれのイーサネット・セグメントに何台のホストを接続するかによって、どのクラスを使用するかを選択するとよい。

 例えば、1つのイーサネット・セグメントに接続するホストの数が最大でも200台程度ならば、クラスCのIPアドレスを使ってネットワークを構築すればよいだろう。つまり、各ネットワーク(=イーサネット・セグメント)には192.168.0〜239.255.255のいずれかを割り当て、それぞれのネットワーク内のホストには、1byteのホスト・アドレスを割り当てればよい。

 1セグメントに接続するホストの数がもっと多い場合や、もしくは、管理の都合などでもっと大まかにホスト・アドレスを割り当てるのならば(例:ネットワーク機器のアドレスは10〜99、サーバ系は100〜199、クライアント系200〜などというように、識別しやすいように割り当てたいのならば)、クラスBを使うという方法もあるだろう。

【更新履歴】

【2003/01/17】「IPアドレス・クラス」の図の説明の部分で、当初クラスDのIPアドレスの範囲を「192.0.0.0〜239.255.255.255」と記述しておりましたが、正しくは「224.0.0.0〜239.255.255.255」です。また、各クラスごとに利用可能なIPアドレスの総数などに間違いが含まれていました。お詫びして訂正させていただきます。



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