[運用]
3大仮想化ソフトウェア機能比較 第1回

2.VMware Infrastructure 3の概要

日本アイ・ビー・エム株式会社
Microsoft MVP for Virtualization - Virtual Machine(Jul 2007 - Jun 2009)
渡邉 源太
2009/02/19

VMware Infrastructure 3のアーキテクチャ概要

 x86ベースのアーキテクチャにおいて、仮想化の仕組みを初めて実現したのがVMwareである。VMwareは、1999年にx86ベースのコンピュータ上に仮想マシンを構築するVMware Workstationを発表し、PCの仮想化を実現した。この技術をサーバに応用したものが、2001年にリリースされたVMware GSX Serverおよび2002年に発表されたVMware ESX Serverで、これらはVMware Workstationの技術をベースにサーバを運用するためのさまざまな管理機能を付加している。

 特にVMware ESX Serverは、x86サーバ向けとして初めてベアメタル型のハイパーバイザ方式を採用した仮想化ソフトウェアであるところに特徴がある。ハイパーバイザ方式を採用したことにより、WindowsやLinuxなどのホストOSが不要になり、より少ないオーバーヘッドで動作するようになった。それによって、従来はテスト/開発環境のための利用にしか耐えられないと考えられていたx86サーバの仮想化技術が、本番(実運用)環境でも使用できるようになった。

 また、VMware VirtualCenterによって、複数の物理サーバを統合管理できるだけでなく、仮想マシンを稼働中にほかのホストに対して動的に移動させるライブマイグレーションの機能として、VMotionを実装している。現在は、VMware ESX 3.5とVMware VirtualCenterの組み合わせによって、仮想インフラストラクチャを実現する製品群として、VMware Infrastructure 3や、サーバ上に仮想化されたデスクトップを集約するVMware View 3などの製品を出荷している。なお、VMwareは製品名称の大幅な変更を発表しているが、ここでは製品名の混乱を避けるため基本的に従来の名称にて記載している。旧名称と新名称の対応については以下のWebページを参照していただきたい。

VMware ESX 3.5のアーキテクチャ

 ここでは、VMware Infrastructure 3のベースとなるVMware ESX 3.5とVMware VirtualCenterのそれぞれについて、アーキテクチャの解説を行う。

■VMware ESX
 VMware ESXのアーキテクチャの中心となるのが、VMkernelと呼ばれる専用のハイパーバイザである。VMkernelは、プロセッサ、メモリ、ストレージおよびネットワークといったハードウェア資源を抽象化して管理し、要求に応じた資源の割り振りを行っている。VMware ESXは、完全仮想化を実現するハイパーバイザ方式の仮想化ソフトウェアである。そのため、WindowsやLinuxといったような一般的なホストOSを持たず、ハイパーバイザが直接x86ハードウェア上で動作することになる。VMkernelでは64bitのゲストOSを稼働させるときのみIntel VTやAMD-Vなどのプロセッサの仮想化支援機能を使用しているため、32bitのゲストOSだけを稼働させている環境ではこれらのプロセッサ側の対応は必要としない。

 VMware ESXは、VMkernelのほかにLinuxベースのサービス・コンソールと呼ばれる管理用のOSを持っている。管理者は、リモートの管理端末にインストールされたVMware Infrastructure Clientを使用してグラフィック・ユーザー・インターフェイス(GUI)により管理を行う。また、ローカルのサービス・コンソールを使用して、コマンドライン・インターフェイス(CLI)によって操作することも可能だ。ただし、VMware Infrastructure Clientで行える操作とコマンドラインによって可能な範囲には違いがあり、すべての管理をコマンドラインで行うことはできない。そのため、管理者が仮想マシンの作成やハードウェア資源の割り当て、ゲストOSのインストールなどの作業を行うためには、VMware Infrastructure Clientのインストールが必須である。

VMware Infrastructure Clientの画面
仮想マシンの管理は、VMware Infrastructure Clientと呼ばれるツールによって行える。

 なお、無償で提供されているVMware ESXiには、サービス・コンソールが含まれていないため、ローカルのコマンドライン・インターフェイスを使用した管理には対応していない。その代わりに、リモートの管理端末からRemote CLI(コマンドライン・インターフェイスによるリモート管理ツール)を使用することによって一部の操作を行うことができるようになっている。

 ゲストOSは、VMkernelの上で動作する仮想化されたx86ハードウェアにインストールされる。ゲストOSは仮想マシン上で動作していることを特に意識する必要はなく、WindowsやLinuxをはじめとするx86に対応したさまざまなOSを特別な変更を必要とせずにそのまま稼働させることが可能である。それぞれの仮想マシンは完全に独立しているため、どれか1つの仮想マシンの障害がほかに対して影響を及ぼすことがないようになっている。これを「仮想マシンの独立性」という。なおストレージやネットワークなどのI/OデバイスはVMkernelによって仮想化され、ゲストOSからは直接デバイスが見えることはない。仮想マシンではデバイスをエミュレーションしてゲストOSに見せているため、OSのインストールには標準的なデバイス・ドライバを使用するが、VMware ToolsをゲストOS上に導入することにより、仮想環境に最適化されたデバイス・ドライバが使用されるようになる。

 仮想マシン間の通信は、VMkernel上で動作する仮想スイッチを通して行われる。仮想スイッチはVLANの機能をサポートしており、それぞれゲストOSが異なるネットワーク・セグメントに接続している場合でも1つの物理サーバに統合できるようになっている。

 また、VMware VMFSと呼ばれる共有ファイル・システムを使用しており、複数の物理サーバが同時に1つのストレージ領域をマウントして使用することもできる。後述するVMware VMotionやVMware HAなどの機能を使用する場合は、この共有ストレージの使用が前提となっている。このとき、それぞれの仮想マシンは基本的に1つのファイルとして管理される(カプセル化されている)ため、バックアップによる状態の保存や、ほかの物理マシンへの移動も簡単に行える。下図は、VMware Infrastructure 3のアーキテクチャ概要を示したものである。

VMware Infrastructure 3アーキテクチャ概要

■VMware VirtualCenter
 VMware VirtualCenterは、VMware Infrastructure APIを通してVMware ESXのホスト・エージェントと通信を行い、複数の物理サーバを統合管理するための基盤を提供するものだ。VirtualCenterにより、管理者はVMware Infrastructure Clientを使用して複数の物理サーバの設定や管理が一元的に行える。また、ゲストOSやアプリケーションを導入した仮想マシンをテンプレートと呼ばれる形式に変換し、新たに仮想マシンを作成するときにそのテンプレートを使用することによってゲストOSのデプロイメント(展開)を迅速に行うことが可能だ。

 VMotionやVMware DRS、VMware HAといった、VMware Infrastructure 3の管理機能を使用するためにはVMware VirtualCenterが必要となるため、VMware Infrastructure 3による仮想化環境の運用には実質的にVMware VirtualCenterの利用が必須ともいえる。

VMware Infrastructure 3の管理機能

 VMware Infrastructure 3には、サーバ仮想化の基本的な機能だけでなく、企業の実環境で仮想化環境を運用するために必要となる、VMware VMotionやVMware DRS、VMware HAなどのさまざまな管理機能が搭載されている。ここでは、そのうち代表的なものについて解説する。なおVMware Infrastructure 3には、提供される機能によって下表のようなエディションが用意されている。

  VMware ESXi Starter Edition
(Foundation)
Standard Enterprise
ESX/ESXi
・VMFS
・Virtual SMP
VirtualCenter Agent
 
Consolidated Backup
 
Update Manager
 
VMware HA
 
 
VMotion
 
 
 
Storage VMotion
 
 
 
VMware DRS
 
 
 
VMware Infrastructure 3のエディションと提供される機能

■VMware VMotion
  ゲストOSを稼働させたまま仮想マシンをほかの物理サーバに移動させるライブマイグレーションの実行が可能になる。VMotionは仮想マシンの移動にダウンタイムを必要としないため、サーバ・メンテナンス時の計画停止などの場合に効果を発揮する。なお、VMotionを実行するためには移行元と移行先のプロセッサに互換性が必要とされるため、IntelとAMDなどプロセッサの製造元が異なる場合や、同じ製造元であっても世代によってアーキテクチャが大幅に変更されている場合、拡張命令が異なる場合には正常に動作しない。例えば、Intel Core プロセッサ・ファミリの場合はストリーミングSIMD拡張命令のSSE 3/SSE 4.1の有無によってVMotionの互換性が異なっている。プロセッサの機能をマスキングしてSSE 3やSSE 4.1を無効にすることによって異なる世代のプロセッサ間でのVMotionも可能ではあるが、サポートされる構成ではないため注意が必要である。VMotionを使用するときのプロセッサの互換性についての詳細は、以下のWebページを参照していただきたい。

 またStorage VMotionの機能により、同様に仮想マシンの実行中に仮想ディスクを別のストレージに移動させることも可能だ。Storage VMotionはストレージの増設にともなう移行などの際に、ダウンタイムなしに作業が完了でき、VMware VMotionと同様にデータセンター全体の可用性向上に貢献する機能である。

■VMware DRS(Distributed Resource Scheduler)
 複数の物理サーバにまたがったリソース・プールを作成し、仮想マシンの負荷状況に応じて仮想マシンを移動させることで物理サーバ間での負荷を分散し、特定のサーバに対する負荷の集中と、それにともなうサービス・レベルの低下を防ぐことができる。このとき、仮想マシンの移動にはVMware VMotionの利用が必要となる。設定によりVMware DRSの動作レベルを完全自動化から単なる推奨の表示による手動にいたるまで自動化のレベルを変更することが可能だ。

 また、VMware DRSのオプションとしてVMware Distributed Power Management(DPM)の機能を使用することにより、データセンター全体の使用率が低いときに物理サーバの電源を制御し、電力コストを最適化することが可能になる。ただし、VMware DPMは現在試験的サポートとなっている。

■VMware High Availability(HA)
 仮想マシンを実行している物理サーバがダウンしたときに、ほかの物理サーバで仮想マシンを再起動することにより、短いダウンタイムでサービスを再開する高可用性の機能を提供する。また、仮想マシンのハングなどにより応答を停止した場合に、仮想マシンを自動的に再起動させることができる。VMware VMotionの機能とは異なり、無停止で仮想マシンを移動することはできないが、物理サーバやゲストOSの障害に自動的に対処することが可能なため、特に高可用性を必要とされるサーバを仮想化するときに有効な機能となってくる。

■VMware Consolidated Backup(VCB)
 仮想マシンのための統合的なバックアップ環境を提供する。VMware Consolidated Backup(VCB)を使用することにより、仮想マシンを停止させないまま、LANを経由せずにバックアップを行うことが可能になる。VCBでは、Backup Proxyと呼ばれる役割のサーバが直接SAN上のストレージ領域に対してマウントし、バックアップを実行する。このとき、仮想マシンは一時的にスナップショットの機能を使用してI/Oの停止点を作成し、バックアップにともなうシステムの停止時間を最小限に抑えることが可能になる。

■VMware Converter
 物理マシンを仮想マシンに変換する、P2V(Physical to Virtual)の機能を提供することによって、従来物理サーバにて運用していたシステムを仮想化環境へと移行することができるようになる。また、VMware Converterによって、Windowsを実行している物理マシンだけでなく、Symantec GhostやMicrosoft Virtual Serverなどの物理マシンおよび仮想マシンのイメージをVMware形式の仮想マシンに変換する(I2V、V2V)ことができる。

 以上のような機能により、VMware Infrastructure 3は単にサーバ仮想化の機能を提供するだけでなく、高可用性や管理性を向上させる機能によってデータセンターの運用効率の向上に貢献し、管理者が仮想化によるメリットを最大限に享受することができるようにしている。

 次回は、Citrix XenServerを中心としたXen、およびMicrosoft Hyper-Vのアーキテクチャと管理機能について解説し、それぞれの違いについて明らかにしていく。End of Article


 INDEX
  [運用] 3大仮想化ソフトウェア機能比較
  第1回 VMware ESXのアーキテクチャ概要
    1.仮想化環境の基礎
  2.VMware Infrastructure 3の概要

 運用

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