Service Packのジレンマ

小川 誉久
2001/07/17


[お詫びと訂正]

 以下の本文中で、「Service Pack 2を適用したWindows 2000 NTFSボリュームでDrive Image 4.0がエラーを発生する」という旨の記述しています。しかしDrive Imageの国内総代理店である(株)ネットジャパンより、「同様の環境でエラー発生は確認できない」とのご指摘を受けました。この連絡を受け、すぐに再現可能なテスト環境で再現テストを実施したところ(Windows 2000 Professional+SP2の環境を新規に構築し、そのNTFSボリュームをDrive Image 4.0にてバックアップ)、指摘のとおり、エラーは再現されませんでした。今回の確認用に構築したものとは異なる環境ですが、記事執筆時のエラー発生は筆者を始め技術スタッフ数名が確認しており、Drive Imageの開発元である米PowerQuest社のサポート情報もあり、エラー発生は間違いないものとして本稿を執筆しました。しかし今述べたとおり、現時点でエラーの再現は確認されていません。

 詳細は現在調査中ですが、取り急ぎ、最も純粋なテスト環境(新規に構築したWindows 2000 Professional+SP2環境のNTFSボリューム)にてエラーが発生していないことをここにお知らせし、読者の皆様、ならびに(株)ネットジャパンの方々に多大なご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。

 なお記事はすでに公開されたものですので、直接訂正はせずに、公開当初の状態を維持します。ご了承ください。(2001/07/25追加)

 読者はすでに、Windows 2000 Service Pack2を適用しただろうか? それによって何か不都合が起きた人は? えっ、特に問題はない? それは何より。今回は、Service Pack2の適用で筆者が経験した、ほんの些細な不都合についてお話ししよう。

 周知のとおり、Windows 2000のService Pack(以下SPと略)とは、Windows 2000のバグやセキュリティ・ホールを修正するためのパッチ・モジュールなどを集大成したものだ。これを適用すれば、そのSPが作成された時点までに明らかになったバグや、セキュリティ・ホールはすべて解消できることになっている(SP2の詳細は「Insider's Eye:速報:Windows 2000 Service Pack 2 日本語版」を参照)。

 これはすばらしい。すぐにでも適用して、システムの健全性を維持しようではないか。私はさっそく、普段使っている作業用のWindows 2000 ProfessionalにService Pack 2(SP2)を適用してみた。インストール作業自体はいたって簡単。SP2を適用しても、目立って何かが変わるというわけではない。本当に適用されたことを実感するには、デスクトップにある[マイ コンピュータ]アイコンのプロパティを表示して、システムのバージョンを確かめる必要がある(SP2が正しく適用されていれば、OSバージョンのすぐ下に「Service Pack 2」と表示されるはずだ)。

 SP2の適用後も、普段の作業は今までどおりに行えた。筆者の場合、作業マシンには特別なデバイスを組み込んだりしていないし、アプリケーション類もMicrosoft Officeなどの定番類がほとんどなので、問題など起こりようがないだろうと高をくくっていた。しかし、意外なところで事件は起こった。

書き換えられたパーティション・ヘッダ

 筆者は、Drive Image 4.0というディスク・イメージング・ツールを使って、ハードディスクのバックアップを行っている。これはハードディスクの物理的なイメージを、ファイルに書き出すというツールで、OS環境も含めて、ファイルにバックアップをとることができるようになる。開発元は米PowerQuest社で、国内ではネットジャパンが日本語版を販売している(PowerQuest社のホームページネットジャパンのホームページネットジャパンのDrive Image 4.0の製品情報ページ)。

 SP2適用後のある日、バックアップをとろうと、Drive Imageを実行した。すると、「#1527 更新のシーケンス番号が無効です」というエラーが発生した。Drive Image付属のドキュメントによれば、エラー番号1527はNTFS診断エラーの1つで、NTFSボリュームが破損している場合に発生するものだという。解決するには「CHKDSK /f」を実行して、ファイル・システムの整合性を修復すべし、とのことだ。しかしCHKDSKを実行してもエラーは検出されないし、説明からしてかなり深刻なエラーのはずなのに、Windows 2000システム自体は何の問題もなく使えている。これはおかしい。

 不思議に思ってインターネットを検索してみた。するとPowerQuestのサイトのサポート・ページに説明があった(PowerQuestの当該説明ページ[英文])。製品付属のヘルプにあったとおり、このページでも、最初はファイル・システムの破損をCHKDSKで修復せよと説明している。しかしもう少し読み進むと、「Note」の部分に興味深い記述がある。これによれば、現行のDrive Image 4.0は、開発途中であるWindows XPには対応しておらず、XPをインストールしたシステムの任意のNTFSボリュームに対して実行すると、このエラー1527番を発生するというのだ。Windows XPのNTFSでは、パーティションのヘッダ情報が新しいものに更新されてしまい、Drive Image 4.0がこの新しいヘッダ情報に対応していないことから、エラーが起こるらしい(しかも困ったことに、Windows XPをインストールすると、コンピュータにあるすべてのNTFSボリュームのヘッダ情報が更新されてしまうとのことだ)。

 ふむ。Windows XPはまだ開発途中なのだから、これくらいのことはあっても不思議はないだろう。XPユーザーには、Drive Image 4.0の利用はあきらめてもらおう。しかし最も大事なことは、その直後に書かれていた。同様のエラーは、Windows 2000 SP2の適用によっても発生するというのだ!

 はてさて、どうやら、SP2の適用によって、筆者のシステムのNTFSボリュームは、「最新の」ボリューム・ヘッダ情報に更新されたようだ。PowerQuest社の説明によれば、まもなくこの問題を解決するためのパッチを公開するとしている。それが登場するまで、Drive Imageを使ったバックアップはお預けとなってしまった。

行くも地獄、行かぬも地獄

 たまたま筆者は、SP2が副作用を起こすソフトを使っていた不運なユーザーだったのだろうか? インターネット上にある掲示板などでは、SP2の適用によって不都合が起こったという書き込みを散見する。それらがすべて、SP2を原因とするものかどうか、真偽のほどは定かでない。しかし、ほかにも副作用が起こる可能性は否定できないだろう。

 今回問題が起こったのは、個人的に使っている作業用クライアント・マシンであったし、Drive Imageによるバックアップを少しの間だけ辛抱すればよいだけのことだ。しかしこれがクライアントではなく、サーバだったらどうなるのか?

 前述したとおり、SPはWindows 2000に潜む多数のセキュリティ・ホールを解決してくれる。セキュリティ・ホールが重大な影響を及ぼすのは、クライアントよりもサーバであることは説明するまでもない。重要なセキュリティ・ホールについては、すぐにでもこれを適用しないと、攻撃を受ける可能性がある。

 しかしその一方では、SPの適用によって万一の副作用が起こったとき、その影響が大きいのもサーバなのだ。

 セキュリティ・ホールの解消を急ぐために、最新のSPや公開されたパッチを素早く適用するか。それとも、それらによる副作用を心配して、慎重に適用するか。副作用を躊躇して、SPの適用を延ばし延ばしにしている間に、万一セキュリティ・ホールが攻撃されれば、管理者は怠慢だとののしられるだろう。他方、SPをいち早く適用したはよいが、副作用によって業務に支障が出れば、管理者として慎重さに欠けると責められることになる。行くも地獄、行かぬも地獄である。

 残念ながら、ここで明解な指針を示すことはできない。しかしサーバにSPやセキュリティ・パッチなどを適用するときには、万一の副作用を想定して、バックアップをきちんととっておくこと、できれば別のクライアント・マシンなどで重大な問題が起こらないか試してみること、掲示板などに注意し、先人が遭遇した不都合などについて、アンテナを張ることなどが肝要だろう。

 今に始まったことではないが、つくづく、システム管理者は損な役回りである。End of Article


小川 誉久(おがわ よしひさ)
株式会社デジタルアドバンテージ 代表取締役社長。東京農工大学 工学部 材料システム工学科卒。'86年 カシオ計算機株式会社 入社、オフコン向けのBASICインタープリタの開発、Cコンパイラのメンテナンスなどを行う。'89年 株式会社アスキー 出版局 第一書籍編集部入社、書籍編集者を経て、月刊スーパーアスキーの創刊に参画。'94年月刊スーパーアスキー デスク、'95年 同副編集長、'97年 同編集長に就任。'98年 月刊スーパーアスキーの休刊を機に株式会社アスキーを退職、デジタルアドバンテージを設立した。現Windows 2000 Insider編集長。

更新履歴
【2001.7.25】本文中の「Service Pack 2を適用したWindows 2000 NTFSボリュームでDrive Image 4.0がエラーを発生する」という旨の記述に誤りがありました。詳細は本稿冒頭部分に追加していますのでそちらをご参照ください。
 

「Opinion」



Windows Server Insider フォーラム 新着記事
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

Windows Server Insider 記事ランキング

本日 月間