インスタント・メッセージ(Instant Messaging)、略してIMとは、例えばAOLやMSNのメッセージ機能を指します。中学、高校生は「めっせ」などと呼び、チャットの延長みたいに使われているようです。ここまでは「おこちゃま」の話題ですが、米国では1日1億通のIMが飛び交っているとされ、近い将来、Webコミュニケーションの中核をなす可能性が指摘されています。 IMの威力 IMの詳細については、用語解説(インスタント・メッセージング)をご覧ください。 その特徴は、何よりスピード感でしょう。ほぼリアルタイムの会話感覚でテキストを交換できるのはチャットと同様です。相手がオフラインなら、メールを送るとか、ページング(ポケベルやケータイ呼び出し)や(回線交換の)電話を呼び出すといった多様性も備えています。相手のプレゼンス(在/不在、会議中、昼食中などの状態通知)と連動するところがポイントで、インジケータ領域(システム・トレイ領域)のIMエージェントがコミュニケーション・ポータルを担う、という形が想定されているようです。 例として、MSN Messengerの画面を以下に示します。
MSN Messengerの主要な機能をまとめると次のようになります。
業界対立の構図先の用語解説にあるとおり、IMの原点はイスラエル生まれのフリー・ソフトウェア、ICQです(“I seek you:アイ・シーク・ユー、君を探す”の語呂合わせ。1996年誕生)。そのAOLバージョンがAOL Instant Messenger(略称AIM)で、現在ではICQおよびAIMの無料アカウント総数は9000万前後に達し、圧倒的に他をリードしています。 出遅れたMicrosoftは、1999年7月、MSN Messengerをリリース、AOLと激しい競争になりました。争点は、AIMのプレゼンス情報(ユーザー名データベース)の第三者利用で、これをAOL側は「サーバへの無断侵入」と非難し、MSN側は「AOLの排他的独占支配」を非難しています。このMicrosoftを始め、AOLに対抗する各社は、IMUnifiedという団体をつくり、プレゼンス情報の標準化も提案していますが、先は長そうです(IMUnifiedのホームページ)。
24時間常時接続でIM利用が加速?IM戦争激化の背景として、以下の理由が挙げられます。
ADSLなど、24時間常時接続になると、いつでもIMが使えることになります。その分、電子メール利用の減少が予測されます。ニュースなどの新着通知もIMが有利と考えられます。 同様に、IMのボイス・チャットは回線交換の電話利用を減らすかもしれません。双方が常時接続されたPCなら、タダでいくらでも音声通話を行うことが可能だからです(ただしマイクは必要)。 ただし前出のとおり、MSN Messengerには、PCから通常の電話に接続するサービスもあります(米国net2phone社のOEM機能)。一方では、海外ケータイ業界の大手3社、米モトローラ、ノキア(フィンランド)、エリクソン(スウェーデンも共通IM仕様の開発を始めています(ワイヤレス・ビレッジ構想、2002年製品化予定。ワイヤレス・ビレッジ構想に関するノキアのニュース・リリース[英文])。
IMの展開今後のIM普及のキーポイントとして、次の3点が指摘されています。
IMの業務利用は、商談や会議はもちろん、警察やER(救急医療)など、電子メールでは遅すぎるといった分野への進出が期待されています。障害者の通信手段や遠隔教育、遠隔医療といった分野でも有望とされています。電子メールに比較すると、IMはより音声電話に近い位置づけで、交信記録も後々に残らないという前提のコミュニケーションなので、会話に必要な手間暇が激減するという2次効果も注目されています。ただし、だから危ないという一面もあります。つまり次に挙げるセキュリティ問題が最大のネックです。 最大の弱点、セキュリティとeFront社崩壊事件フリー・ソフトウェア育ちのIMには、セキュリティの概念が希薄です。今年3月、これを象徴するような事件が起きています。 Web営業代行のような事業を展開していたeFront社(カリフォルニア州。eFron社のホームページ)は、ネットバブル崩壊で給料未払いとなり、怒った元社員がCEOのICQ記録を盗んで公開してしまいました。その交信内容で、会社経営の実態がすべて暴露され、大半の幹部は退社、業務は停止してしまいました。 これは氷山の一角で、実際、仕事にIMを使っている人は無数にいるし、社内でプライバシー漏洩といったケースも珍しくはないようです。ICQに限らず、どのIMもセキュリティは保証していません。怖い話です。 ちなみに、企業内IMシステムとしては、IBMのコラボレーション・ツール、Lotus Sametimeがあります。これはLotus Notesとの組み合わせで「e-ミーティング」や「Web会議」を可能にします。外部接続(AIM)も可能とのことです(Lotus Sametimeのページ)。 注目は第三者ソフトウェアAIMやMSN Messengerは、そのユーザー間でだけインスタント・メッセージを交換できます。これは技術的問題というよりIM戦争の弊害みたいなものです。そこで注目されるのが、AOLにもMicrosoftにも縛られない第三者製IMクライアントです。 例えばOdigoは、AIM、ICQ、MSN、Yahoo!と相互通信可能で、その他さまざまな特徴を備えており、今最も注目されているようです(Odigoのホームページ)。このOdigoは、IMUnifiedの共通プロトコルであるIMIP(Instant Messaging Interoperability Protocol)に準拠しています。 なお、細かい話ですが、MSN MessengerはWindows XPに同梱される予定です。IE 6で予定されていたエクスプローラ・バー拡張も微妙な問題をはらんでいます。Public Preview版では、新規に追加されたコンタクト・バーからIMを発信可能ですが、これはAIMメンバには送れません。しかし、また抱き合わせという非難を受けないように、製品版ではこの機能の変更が予想されています。これに対し、ごく最近、「AOLがIEの配布をやめるのでは?」という噂が流れています(以前はAOLのCD-ROMにIEとNavigatorが同梱されていた)。 こうしてみるとIMが便利なことは確かですが、まだ安心できない点もみられます。ビジネスに使う場合、パスワードなど機密情報は隠し、最後にメールによる文書化で確認するといった慎重さも必要でしょう。それでも、この手軽さ、速さは大きな魅力です。やがては、デスクトップ上の唯一のメッセンジャー・オブジェクトがすべての対話(IM、メール、電話、ファイル転送、そしてスケジュールなども)を担うようになるかもしれません。そういう意味でも、しばらくは目が離せない話題のように思えます。 山崎俊一(やまざき しゅんいち) |
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