特集
Windows 2000とは何か ?

コラム:Windows NTの歴史

デジタルアドバンテージ
1999/10/26


 Windows NTは、16bitのシングルタスクオペレーティングシステムだったMS-DOSの発展形であるWindowsシリーズ(現在のWindows 9x)とは別に、ビジネスでの利用を前提として、メモリ制限の緩和やシステムの安全性の向上、より円滑なマルチタスクシステムを実現するために、ゼロから新規に設計されたマルチスレッド対応の32bitオペレーティングシステムである。NTは「New Technology」の略。1993年の初期バージョンの発表以来、WindowsシリーズのOS(Windows 3.1、Windows 95、Windows 98)に対し、Windows NTという名称が一貫して使用されてきたが、Windows 9xとNTを32bitカーネルで一本化するという決定がなされたため、Windows NT 4.0の次バージョンの名前はWindows 2000に決まった。しかしその後、一部のゲームソフトウェアなど、ハードウェア性能を最大限に引き出すソフトウェアをサポートするなどの目的で、Windows 9xコアを採用したOSもしばらくは残ることになり、Windows 98 Second Editionの次バージョンとなる「Millennium(開発コード名)」までは、Windows NTカーネルを持つWindows 2000と、Windows 9xが併存することとなった。

 Windows NTが発表される以前にMicrosoftから提供されていたWindows Ver.3.1は、MS-DOSをベースとして、これにウィンドウシステムを追加するもので、16bitプロセッサであるIntel 80286アーキテクチャに強く依存した部分を持っていた(事実、MS-DOSとWindowsは別々のパッケージで販売されており、Windowsをインストールするには、別途MS-DOSをシステムに組み込んでおく必要があった)。このためアプリケーションは、セグメントと呼ばれる64Kbytesのメモリ境界や、0〜640Kbytes、640Kbytes〜1Mbytes、1Mbytes以上というシステムメモリの領域ごとに割り当てられた異なる役割を意識しながら、アプリケーションを設計する必要があった。また、Windows 3.1によってマルチウィンドウ、マルチタスク環境が実現され、複数のプログラムを同時に実行できるようになったものの、これらのアプリケーションは1つのメモリ空間を互いに共有しており、あるプログラムが、他のプログラムのメモリ領域を破壊するような処理をシステム側で禁止する術が用意されていなかった。さらにWindows 3.1では、「ノンプリエンプティブなマルチタスク」と呼ばれるマルチタスク方式が採用されていたが、この方式では、アプリケーションが、一定時間内に自主的に制御を解放する(そして他のアプリケーションが処理を実行できるようにする)必要があり、何かのトラブルにせよ、故意にせよ、あるアプリケーションが制御を自主的に解放しないと、他のアプリケーションはもちろん、Windowsシステムまでもが処理不能になってしまうという大きな問題があった。

 トラブルやデータの破壊などがひとたび発生すると、莫大な損害が発生してしまうビジネス用途では、Windows 3.1はシステムとして十分な条件を満たしていなかった。こうした問題を抜本的に解消するために、新たに開発されたオペレーティングシステムがWindows NTである。このためMicrosoftは、DEC社のミニコンピュータ、VAX用のVMSオペレーティングシステムを開発した中心人物の1人であるDavid Cutler(ディビッド・カトラー)氏を迎えた。 Windows NTの歴史をまとめると以下のようになる。

Ver 出荷時期(米国/日本) 主要な機能追加/拡張/改良点

3.1

'93年7月/'93年末 DEC社よりOS開発の第一人者だったディビッド・カトラー氏を招き、マイクロカーネル技術を活かした32bitのマルチスレッド/マルチタスクOSとして新規に開発
3.5 '94年9月/'94年12月 Ver.3.1の性能を向上させ、安定性を向上させた。ロングファイルネームFAT、DHCPサーバ機能などを追加
3.51 '95年6月/'96年1月 コモンコントロールサポートなど、Windows 95とのアプリケーション環境の共通化を図った。NTFSボリュームの圧縮機能を追加
4.0 '96年8月/'96年12月 Windows 95シェルを搭載し、ユーザーインターフェイスを共通化。インターネット機能を強化
Windows NTバージョンアップの主要な変更点

Windows NT Ver.3.1

 米国では1993年7月、日本では1993年末より販売が開始された。Windows NTの初期バージョンであるにもかかわらず、3.1というバージョン番号が割り当てられたのは、これが当時すでに普及していたWindows Ver.3.1との互換性を意識したためである。

 Windows NTでは、拡張性(市場の変化に応じて改良しやすいこと)や移植性(プロセッサ仕様などに依存しないOS)、信頼性(OS自身が能動的にシステムを保護できる)、互換性(Microsoftの他のOSとの互換性)に優れ、同時にそれらの要求をパーソナルコンピュータで実用的な性能で実行できるように、さまざまな工夫がなされた。

 まずWindows NTは、システム内部の処理がユーザーモードとカーネルモードに分離され、それぞれに異なる保護レベルを割り当てることで、ユーザーモードで実行されるアプリケーションが、カーネルモードで実行されるOSを破壊する可能性をなくした。またOS/2互換環境、POSIX互換環境などを実現するために、アプリケーション環境がサブシステムとしてまとめられ、必要なサブシステムを組み込むことで、Win32環境に加え、OS/2 1.x互換環境(キャラクタモードアプリケーションのみ)、POSIX互換環境が利用可能とされた。

 カーネルモードで実行されるOSのコア部分は、仮想記憶管理やI/O処理、ファイルシステム、プロセス間通信などの機能ごとに部品化され、これらがひとまとまりとなることでOSの処理を行う。これはNT Executive(エグゼクティブ)と呼ばれる。このNT Executiveとハードウェアの間には、HAL(Hardware Abstraction Layer)と呼ばれるレイヤがあり、ここでハードウェア仕様の違いを吸収し、異なるハードウェアシステムへの移植性を高めるようにしている。

 Windows 3.1とは異なり、メモリ空間は各プロセスごとに保護され、あるアプリケーションが、別のアプリケーションやシステムのメモリ領域を許可なく読み書きすることはできない。またマルチタスクシステムは、Windows 3.1のノンプリエンプティブなマルチタスクからプリエンプティブなマルチタスクに変更され、アプリケーションが自主的に制御を解放するかどうかにかかわりなく、システムが強制的にプロセススケジューリングを行えるようになった。

 ファイルシステムとしては、Windows 3.1(MS-DOS)が使用するFATファイルシステムに加え、NT独自に設計されたNTFS(NT File System)が追加され、インストール時に選択できるようになった。このNTFSでは、ファイルシステムの管理方法が抜本的に変更され、大容量のファイルを効率的に管理可能になり、さらにセキュリティ機能や万一のトラブル時の復旧機能も追加されている。

 Windows NT Ver.3.1のパッケージには、クライアント向けの「Windows NT Operating System Version 3.1」と、サーバ向けのAdvanced Serverの2種類が用意された。Advanced Serverでは、LANの各種資源情報などを集中管理するサーバとしての機能が追加された。

プログラムマネージャ
初期バージョンのVer.3.1では、Windows Ver.3.1と同じく、ファイルシステムのブラウザであるファイルマネージャ(現在のエクスプローラ)とは別に、プログラムランチャのプログラムマネージャがあり、ここからアプリケーションを起動するようになっていた。プログラムマネージャは単なるランチャアプリケーションで、ファイルシステムはモニタしていなかったので、ファイルの登録や削除は、ファイルシステムへの操作とは別途実行する必要があった(画面はWindows Ver.3.1のプログラムマネージャ)。

Windows NT Ver.3.5

 初期バージョンであるVer.3.1の市場での評価は厳しく、Win32に対応したWindows NT向けのネイティブアプリケーションもそれほど発表されなかった。この最大の理由は、NTを実用的に利用するには、かなり潤沢なメモリやディスク容量が必要であり、それらのコストに見合うだけのメリットが提供できなかったからである。Windows NT 3.1の必要メモリ量は8Mbytes(米国版)だとされていたが、実際には12〜16Mbytesのメモリが必要だった。また、NTをインストールするだけでも100Mbytesのハードディスク領域が必要であり、さらにアプリケーションをインストールしたり、システムの一時領域として十分な容量を確保したりするためには、最低でも200Mbytes〜300Mbytesのハードディスク容量が必要とされた。メモリやディスクは、当時は非常に高価であり、これらのコストがNT普及のネックとなっていたわけである。

 こうした問題を解決するために、1994年9月(日本版は1994年12月)に発表されたNTの新バージョンがVer.3.5である。Daytona(デイトナ)という開発コード名で呼ばれていたこの新バージョンでは、より少ないシステムリソースでも実用的に利用できるようにするための軽量化、処理性能を向上させるためのチューニング、そしていくつかの機能追加がなされた。

 主な機能改良・追加としては、

  1. セットアップ作業の簡素化(グラフィックスカードやモデムなどのデバイスの自動認識)
  2. ロングファイルネーム FAT(FAT構造を変えることなく、8.3以上の長いファイル名を保存可能にする機能)
  3. より安全なWin16アプリケーション実行環境(個々のWin16アプリケーションごとに異なるメモリ空間を割り当て可能にした)
  4. ネットワークサポートの充実(NetWareクライアントモジュールを標準添付)、RAS(Remote Access Service)の強化(NetBEUIプロトコルに加え、SLIPやPPPによるTCP/IP、IPX/SPXでのネットワーク接続を可能にした)
  5. DHCPサーバ機能の追加

などがなされた。

Windows NT Ver.3.51

 NT 3.5の発表後、ユーザーインターフェイスを一新したWindows 95が発表され爆発的に普及した。このためMicrosoftが提供するデスクトップOSのユーザーインターフェイスが、Windows 95とWindows NT 3.5という2種類に分かれてしまった。Windows 95との整合性を高めるというのが、このWindows NT Ver.3.51の最大の目的であった(ただしWindows 95シェルは、このVer.3.51には搭載されず、次のVer.4.0で搭載された)。発表は1995年6月(日本版は1996年1月)。

 このWindows NT 3.51では、

  1. PowerPCプラットフォームサポートの追加(ただしPowerPCサポートは、次バージョンの4.0では削除された)
  2. コモンコントロールサポート(Windows 95とのアプリケーション環境の共通化)
  3. Windows 95で導入された新しいヘルプシステムの導入
  4. プロポーショナル漢字TrueTypeフォントの追加(欧文部分にプロポーショナルフォントを使用した日本語フォント「MS P 明朝」、「MS P ゴシック」の追加)
  5. Windows 95で採用された、かな漢字変換インターフェイスの共通化(IME/IMM APIをサポート)
  6. NTFSパーティションの圧縮機能の追加(シームレスに圧縮・解凍を行うことにより、ディスク容量を有効活用できるようにする機能)

、などが追加された。

Windows NT Ver.4.0

 Windows 95と共通のシェルを搭載し、インターネット/イントラネットやRASを始めとするネットワーク機能の強化などを行ったのがWindows NT Ver.4.0である。NT Ver.4.0は、1996年8月より出荷が開始された(日本版は1996年12月)。

 このNT Ver.4.0では、

  1. Windows 95と同じシェルを搭載し、ユーザーインターフェイスを共通化
  2. Internet Explorer Ver.3.0(WWWブラウザ)を標準サポート
  3. WWWサーバの標準サポート(WorkstationパッケージではPeer Web Server、ServerパッケージではInternet Information Server)
  4. TCP/IPのセキュリティ機能の強化(利用可能なTCP/IPのサービスを限定など)
  5. PPTP(Point to Point Tunneling Protocol)によるVPN(Virtual Private Network)機能の追加(インターネットなどを経由して、プライベートなLANを構築可能にする技術)
  6. RASマルチリンク機能の追加(複数のチャネルを同時に利用して、通信バンド幅を向上させる機能)

などが追加された。

 
     
 INDEX
  [特集]Windows 2000とは何か?
  1. イントロダクション
    コラム:Windows 2000ベータ3パッケージの内容
  2. マイクロソフトのWindows2000戦略
  コラム:Windows NTの歴史
    コラム:コンシューマ向けWindowsの今後のロードマップ(1)
    コラム:コンシューマ向けWindowsの今後のロードマップ(2)
  3. Windows 2000 Professionalの概要(1) インストール/セットアップ
  4. Windows 2000 Professionalの概要(2) ユーザーインターフェイスの改良
  5. Windows 2000 Professionalの概要(3) デバイスサポート/電源管理機能
  6. Windows 2000 Professionalの概要(4) システムの強化
  7. Windows 2000 Professionalの概要(5) ネットワーク機能の強化
  8. Windows 2000 Serverの概要(1) 管理ツールとActive Directoryサービス
  9. Windows 2000 Serverの概要(2) ファイル/プリンタ共有サービス
  10. Windows 2000 Serverの概要(3) ネットワークとリモートアクセスサービス
  11. Windows 2000 Serverの概要(4) アプリケーションサービスとAdvanced Server
 
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