Windows NT 4.0 Serverマイグレーションの現状と問題点(1/2)

日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社
ソリューションビジネス推進本部
エックスビジネスソリューションセンタ

センタ長:本間孝一(左)
主任技師:吉池真悟(右)
聞き手、文責:デジタルアドバンテージ
2003/08/22

 最新のWindowsサーバOSとして2003年6月にWindows Server 2003が発表された。しかしいまなお、Windows Server 2003からすれば2世代前に当たるWindows NT 4.0 Server(以下NT4 Server)も現役サーバとして多数が稼働していると聞く。実際、本フォーラムで2003年3月に実施した読者調査でのサーバOSの利用状況では、複数回答とはいえ、実に66%の読者が「Windows NT Serverを利用中」と回答した。未確認の数値ではあるが、一説によれば、NT4 Serverをベースとする企業内サーバは、いまなお数十万台が稼働しているという話もある。しかし周知のとおり、NT4 Serverはマイクロソフトのライフサイクル・ポリシーではサポート対象外のOSになっており、セキュリティFIXの提供も2004年末に終了する予定である。経済情勢を反映してIT予算が圧縮される中、おいそれとシステムをリプレースするのは容易ではないが、一方では、サポートが受けられないサーバをいつまでも使い続けてよいのかという問題に管理者は直面している。

 NT4 Serverのリプレースという課題に直面している管理者は、いま何を考えているのか。移行するとしてどのような選択肢があるのか、移行にあたり準備すべきことや、移行時の問題点にはどのようなものがあるのか。今回は、企業のWindowsネットワークの現場を知るインテグレータを代表して、日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社(日立ソフト)の本間孝一氏、吉池真悟氏からお話を伺った。

Windows NT 4.0 Serverはまだまだ現役で使われている

――  Windows Server Insiderフォーラムで2003年3月に実施したアンケートでは、複数回答ながら、Windows NT Serverの利用者が66%もいるという結果が得られています。実際、NT4 Serverは、それほどまで現役サーバとして使われているのでしょうか。

本間:正確な数字は分かりませんが、ここ最近、NT4 Serverをベースとする既存システムのマイグレーションの案件が増えてきているのは事実です。少なくはないといえると思います。

サーバOSの利用状況
Windows Server Insiderフォーラムにて2003年3月に行った読者調査の結果より(有効回答360件)。複数回答可能ではあるが、実に66%の人がWindows NT Serverを利用中と回答している。詳細は「第9回 読者調査結果」を参照。

―― そうしたNT4 Serverは、どのような用途で使われているのですか。

本間:比較的小規模のファイル/プリント・サーバとして使われているケースが多いと思います。また部門用のイントラネット・サーバとして、IIS(Webサーバ)を利用している場合もあります。

―― 大規模なシステムは少ないのですね。

本間:中央に情報システム部門があり、そこで全社的に情報システムを管理しているような大企業では、すでにWindows 2000 Serverへの移行を完了している場合が多いようです。このような大企業では、Windows 2000 Serverから導入されたディレクトリ・サービスのActive Directoryを利用して、より効率的な管理が可能になっていますから。

―― NT4 Serverが発表された1996年末といえば、PCをベースとするLANが急速に普及し始めた時期でもあります。PC LANで何ができるのか、ボトムアップ的に部門レベルで導入され、ファイル/プリント・サーバとして定着したまま、現在まで使われているという感じでしょうか。

現在まで残っているNT4 Serverは、比較的小規模のファイル/プリント・サーバとして使われているケースが多いと思います。(本間氏)

本間:すべて、というわけではありませんが、専門家ではないボランティアの管理者が、取りあえず構築して稼働しているサーバも少なくありません。部門単位でドメインを構築して、それぞれ独自に管理しているようなケースです。このようなケースでは、部門ごと、事業部ごと、工場や事業所ごとなどにドメインが乱立しており、組織的には管理されていません。何とか動いていますが、どこで何が起こっているのか、全体としてはだれも把握していません。残念ながら、日本国内では、このような状況にあるシステムも少なくないようです。

―― その場合、ドメイン同士の信頼関係などは結んでいないのですか。

吉池:必要に応じて信頼関係を構成するなどしていますが、場当たり的な対応が少なくないと思います。

―― それこそ、複数のドメインを効率的に管理できるActive Directoryの面目躍如ではないですか。

吉池:ところがそう簡単でもないのです。仮に現状が管理不全の状態だったとしても、ファイル/プリント・サーバとしては何とか使えているとすると、ユーザー・レベルでは何も困っていないわけです。しかしActive Directoryを導入しようとすると、全体を組織的に管理しなければならなくなる。つまりこれまで見なくて済んでいた管理コストが表面に現れてしまうのです。もちろん、長期的な視点に立てば、セキュリティ面やシステムの柔軟性、TCOなど、Active Directoryを導入するのが得策なのですが、それが当面のハードルになってしまうというのが現実です。

―― インターネット・メール・アドレスは全社で管理せざるを得ないと思います。ということは、インターネット系のサーバは、Windowsサーバとは別に構成され、管理されているということですか。

吉池:大規模なネットワークでは、Active Directoryを導入して、Windowsネットワークのアカウントとメール・アカウントを同期させて管理を一元化させるのは一般的ですが、中〜小規模のネットワークでは、両者を別々に管理しているというケースも多いようです。

―― 現在も稼働しているNT4 Serverは、積極的というより、どちらかといえば消極的に管理される状態にあるということですが、管理者は、既存環境をWindows 2000 ServerやWindows Server 2003に移行しようと考えているのでしょうか。検討しているとすれば、その理由は何でしょうか。

吉池:検討はしていると思います。現実問題として多いのは、サーバ本体のリースアップのタイミングがやってくることです。NT4 Serverはもはや新規購入はできませんから、本体を更新すると、自動的にWindows OSをアップグレードする必要に迫られます。またサポートが終了してしまうという問題と、セキュリティホール対策のHotFixが提供されなくなるという問題もあります。

Linux移行の道はあるか

―― 用途が単純なファイル/プリント・サーバだとすると、LinuxとSambaを組み合わせれば、極めて安価にほぼ同等のサービスを実現可能だと思います。こうした発想を持っている管理者は多いでしょうか。

吉池:特にコスト面から、興味を持っている人は少なくないと思います。しかしUNIX系のOSに特別な関心があるか、コスト面で決定的な理由がない限り、Linuxへの移行というのは現実的ではないでしょう。専業の管理者でないとすると、OS導入のコストはどうあれ、経験のないOSについて学習しなければならないという決定的なコストがかかりますので。

―― ネットワーク・トラブルなどは、原因と現象が違う場所で発生することがあります。例えば、サーバのトラブルがクライアント側で不具合を発生させるなどです。LinuxとWindowsを混在させるようなマルチOS環境では、こうしたトラブルシュートなどが複雑化すると想像されるのですが、この点はいかがでしょうか。

本間:まず、マルチOS環境では、何らかのトラブルがあったとき、現象を確認して、原因の所在がどこにあるのかを把握するまでに時間がかかるケースが多いです。特に込み入ったトラブルでは、双方の環境のエンジニアがそれぞれ原因を調査して、情報交換して初めて原因が究明できます。これには時間がかかります。システム・インテグレータとしては、お客さまの要望があればマルチOS環境も構築しますが、個人的には、シングル・ベンダ環境を推奨したいと考えています。

マルチOS環境のトラブルシュートは難しい。マイクロソフト製品だけで構成されていれば、もっと早期に問題を解決できたと思える案件をいくつも思い出します。(吉池氏)

吉池:これまでの経験でいえば、マイクロソフト製品だけで構成されていれば、もっと早期に問題を解決できたと思える案件をいくつも思い出します。

実績ではWindows 2000 Serverだが、サポート期間の長さからWindows Server 2003の引き合いが多い

―― すると、NT4 Serverから次に移行する先は、Windows 2000 ServerかWindows Server 2003ということになります。ここでは実績のあるWindows 2000 Serverと、最新のWindows Server 2003を選択する必要に迫られます。

本間:時期的に考えて、Windows Server 2003を提案から外す理由はありません。しかしWindows Server 2003の特徴を見ると、例えばActive Directoryの機能強化では、フォレスト間の信頼を結べるなど、大規模環境を意識したものが少なくありません。だとすれば、中〜小規模環境のユーザーなら、何が何でも最新のWindows Server 2003に移行しなくても、まずはWindows 2000 Serverにステップアップするというのが順当かもしれません。

日立ソフトのエックスビジネスソリューションセンタでは、各社のサーバなどを用意してテスティングや検証を行っている。

吉池:Windows Server 2003の最大のメリットは、最新OSであることから、Windows 2000 Serverよりもサポート期間の寿命が長い(5年間のサポートが受けられる)ということです。もちろん、Windows Server 2003ではさまざまな新機能追加や機能拡張が行われていますから、目的とする用途とこれらの機能が合致すれば、それがユーザーのメリットになります。例えば、Windows Server 2003では、管理用のコマンドライン・ツールが拡充されているのですが、これが便利なのでWindows Server 2003を選んだという管理者の方もいらっしゃいました。Windows Server 2003で強化されたグループ・ポリシーが魅力だという声を聞いたこともあります。

―― ユーザー側の反応はどうでしょうか。

吉池:内容にもよりますが、現実にはWindows Server 2003を検討するユーザーの方が多いと思います。やはりサポート期間が長く、安心して使えるということが理由になっているようです。

NT 4 Server→Windows 2000 Serverへの移行のポイント

―― それでは、NT4 Server環境からWindows 2000 Server/Windows Server 2003への具体的な移行のポイントについて教えてください。

本間:残念ながらWindows Server 2003は登場したばかりの製品なので、当社としてもまだ実績が少なく、お話しできるほどのノウハウはありません。しかし基本は、NT4 ServerからWindows 2000 Serverへの移行と大きく変わらないでしょうから、以下ではWindows 2000 Serverへのマイグレーションを基に説明させていただきます。

―― 日立ソフトさんは、NT4 Server環境からWindows 2000 Serverへのマイグレーション・サービスを2000年に発表されていますね(日立ソフトのニュース・リリース)。ニュース・リリースとしては珍しく、その中で「Windows 2000 Serverへの移行のポイント」が示されています。これが御社の移行ガイドラインになりますか。

本間:ケースによって、すべて当てはまらない場合もありますが、基本的にはこのガイドラインに従って移行作業を実施しています。

―― エックスビジネスソリューションセンタでは、各社のサーバなどを用意してテスティングや検証を行っているということですが、このマイグレーション・サービスの一環として、実地検証を行うこともあるのでしょうか。

吉池:すべてではありませんが、必要があれば実施します。現在では、基本的なWindows 2000 Serverマイグレーションのポイントは分かっていますので、検証が必要になるとすれば、ユーザーが独自に開発した業務アプリケーションの互換性テストでしょうか。この場合には、センタ内にユーザーのミニチュア版環境を作って検証を行います。

Windows NTからWindows 2000への移行ポイン 導入フェイズ 日立ソフトの対応するサービス
既存DNS、ネットワークへの影響、ドメイン構成検討などに関して段階的な検討が必要 システム構築プランニング コンサルティングサービス
PC、ネットワークなど補充すべきリソースの洗い出しが必要 システム構築プランニング 評価サービス
API変更による既存アプリケーションへの影響の事前検証が必要 システム構築プランニング 評価サービス
システム大規模化により、運用方法の見直しが必要 移行・運用計画策定 コンサルティングサービス
スムーズな移行作業の検証が必要 移行・運用計画策定 コンサルティングサービス
既存環境に十分配慮した確実なシステム構築技術が必要 システム構築 構築サービス
大規模な環境での適用、基幹業務への適用では確実な運用体制が必要 システム運用 運用サポートサービス/ヘルプデスクサービス
日立ソフトが公開した「Windows NTからWindows 2000への移行ポイント」
Windows 2000マイグレーション・サービスに関する日立ソフトのニュース・リリースより抜粋。

 

 INDEX
  [Trend Interview]
NT4 Serverマイグレーションの現状と問題点(1/2)
  NT4 Serverマイグレーションの現状と問題点(2/2)
 
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