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tracertでネットワークの経路を調査する
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| 解説 |
TCP/IPネットワークにおける基本的なトラブルシューティング・ツールとして「pingコマンド」がある。このコマンドは、指定されたあて先ホストに対して、ICMPプロトコル(TCP/IPプロトコルにおける、基本的な制御用プロトコル)を送信し、その応答状態を表示させるコマンドである。pingコマンドの使い方については、「TIPS―pingでネットワーク・トラブルの原因を調査する」を参照していただきたい。
このpingと同様の目的に使われるコマンドとして、Windowsにはtracertというコマンドが用意されている(UNIXやLinuxなどでは「traceroute」という名称になっている)。tracertコマンドも、pingと同じくICMPプロトコルのEcho要求を送信することにより、指定されたあて先への到達可能性を調査する点では同じであるが(UNIX版ではICMPプロトコル以外にUDPプロトコルも使用することができる)、ルーティングの途中で経由したホスト(ルータ)を逐一表示するという点が異なる。
tracertでは、TCP/IPプロトコルにおけるTTL(Time To Live)を使って途中のルータのIPアドレスを求めている。TTLとは、IPヘッダ中に含まれる特別なフィールドであり、IPパケットが通過可能なルータの最大数を表している。ルータがIPパケットをルーティングする場合、ルータを1つ通過するたびにこのTTL値が減らされ、0になるとIPパケットは廃棄される(詳細は「基礎から学ぶWindowsネットワーク第10回― 2.IPフラグメンテーション」参照)。このTTLの値はデフォルトでは64とか128、255など、十分大きな値にセットされていることが多いが、tracertではわざと小さな値にしてルーティングの途中でTTLが0になるようにしている。0になるとIPパケットは廃棄されるが、同時に、そのルータから送信元のIPアドレスに対して、「あて先不達(Destination unreachable)」というICMPのエラー・パケットが送り返されてくる。tracertではこのICMPパケットを受信することにより、どこのルータでTTLが0になったか、つまりどこまでIPパケットが届いていたかを知ることができる。TTLの値を1から順番に1つずつ大きくしてIPパケットを送信することにより、目的のホストまでの経路中に存在するルータを調べることが可能になる。
組織内のネットワークの場合、通過するルータの数もせいぜい数段くらいしかないので、tracertの出番はあまり多くない。だがインターネット上のホストと通信する場合は、経路の途中でトラブルが発生し、通信ができなくなることもしばしばである。そのような場合には、実際に経路が途中で途絶えているのか、それとも単にネットワークが混雑して通信が滞っているのかなどを見極めるためにtracertを活用することができる。
tracertの使い方
tracertコマンドの使い方は、以下のように、引数を付けずにコマンドを実行すると表示される。
C:\>tracert |
pingコマンドと同様に、引数にはあて先となるホスト名(IPアドレスかFQDN名)を指定する。
「-d」オプションは、IPアドレスから名前(FQDN名)を求めないようにするためのオプションである。デフォルトでは、通過したルータのIPアドレスから、DNSを使ってFQDN名を求めて表示するようになっているが、この名前解決のためにいくらか時間がかかるので、これを省略することができる。またFQDN名を割り当てられていないIPアドレス(ルータ)も数多く存在するので、このような場合にも-dを利用すると、結果を素早く表示させることができる。
「-h <ホップ数>」オプションは、tracertで設定する最大TTL数を指定するために利用される。デフォルトでは「30」となっているので、最大では経路途中で通過できるルータ数は最大でも30台までに制約される。経路途中に30台以上ルータが存在する場合は(30ホップよりも遠くにある場合は)、tracertは処理を打ち切ってしまうので、必要ならばこのオプションを利用して、より大きな値を指定する必要がある。
「-j <ホストリスト>」は、通過する経路(ルータ)を明示的に指定する場合に利用する。このオプションはpingでも利用可能であり、一般的には「ルーズ・ソース・ルーティング(緩やかなソース・ルーティング)」と呼ばれるルーティング処理で利用される。「ソース・ルーティング」とは、ルーティングの途中で使用するルータを強制的に指定するルーティング方法であり、あらかじめIPパケットの中に、通過すべきルータの一覧リスト(最大で9台まで指定可能)を埋め込んでおく手法である(通常はルータの持つルーティング・テーブルに従ってルーティング処理が行われる)。「ストリクト・ソース・ルーティング(厳密なソース・ルーティング)」は、指定されたルータ「だけ」を通過するようにルーティングする方法であり、「ルーズ・ソース・ルーティング」は、指定されたルータ「以外も」利用してルーティングすることができる。pingコマンドではこの両方のソース・ルーティングが利用できるが、tracertではルーズ・ソース・ルーティングだけが利用可能となっている。
「-w <待ち時間>」オプションは、ルータからのICMPパケットを受信するまでの待ち時間を指定する。デフォルトでは「4000(=4秒。1/1000秒単位で指定する)」であり、この時間を超えてもパケットを受信できない場合は、応答時間の代わりに「*」が表示される。
tracertの使用例
■ローカルのホストへのtracertの例
まず最初に、LAN上のホスト(つまりネットワーク的に近くにあるホスト)へのtracertを実行してみよう。
C:\>tracert 10.10.22.32 …10.10.22.32へ向けて実行する |
この場合は、目的のホスト(10.10.22.32)に到達するまでに、途中に1台のルータだけしか存在していない。「<1 ms」という値が表示されているが、これは、そのホストからの応答が「1msec(1ミリ秒)」以下であったということを表している。3つ表示されているのは、3回パケットを送って、3回とも応答が1ミリ秒以下であったということである。3回実行するのは、ネットワークの混雑などの影響を見るためであり、ばらつきが大きいようであればネットワークがより混雑していると判断できるであろう。
1行目ではホスト名が表示されているが、2行目ではホスト名は表示されていない。これは、IPアドレスからFQDN名への逆引きができなかったからである。
■インターネット上のホストへのtracertの例
今度はインターネット上のホストへtracertを実行してみよう。ここではインターネットへは、100Mbpsの光ファイバ回線を使って接続されている。
C:\>tracert -d www.microsoft.com |
最初の10行ほどは、応答値が数msecであるが、これは国内のインターネット回線を経由しているからである。11行目から急に応答値が132msec以上になっているが、ここから先は海外(アメリカ)のルータからの応答なので、海底ケーブルを経由する分だけ遅くなっている。3つの応答はそれぞれ似たような値になっているので、ネットワークはあまり混雑していないように見受けられる。
20行目から先は、すべて「* * * Request timed out.」しか表示されていない。これは、そのルータからの応答がなかったということを示している。ルータやファイアウォールによっては、このようにtracertに対して応答を返さないように設定されていることも多く、その場合はこのように表示される。
■ルーティングが失敗する場合のtracertの例
途中でルーティングが行えなくなった場合は、次のようになる。
C:\>tracert -d 172.16.1.2 …プライベートIPアドレスへのルーティング例 |
ここでは「172.16.1.2」というプライベートIPアドレスに対してtracertを実行してみた。プライベートIPアドレスなので、インターネットへ向けてtracertを実行しても、途中で必ずルーティングが失敗することになる。途中で有効な経路がなくなったような場合は、このように最後のルータから「202.239.XXX.XXX reports: Destination host unreachable.(あて先へ到達できなかった)」という応答が戻ってくることがある。これらの情報により、途中のルータのルーティング・テーブルの設定ミスや経路の途絶などが分かる。![]()
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