第8回 ターミナル・サービスによるクライアントの仮想化(前編)Windows Server 2008の基礎知識(1/3 ページ)

大幅に強化・拡充されたWindows Server 2008の注目機能、ターミナル・サービスの概要。待望の新機能RemoteAppとは?

» 2008年02月07日 00時00分 公開
[安納順一(IT Pro エバンジェリスト)マイクロソフト株式会社]
  Windows Server 2008の基礎知識 ―― 新サーバOSで何が変わるのか? ―― 
Windows Server Insider

 

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「Windows Server 2008の基礎知識」は、Windows Server 2003の後継OSとして2008年に出荷が予定されている、Windows Server 2008の注目機能について解説するコーナーです。本記事は記事執筆(2007年12月初旬)時点の最新ビルドであるRC1をベースに記述しており、製品出荷時に変更の可能性があります。ご了承ください。


 Windows NT 3.51からWindows NT 4.0への切り替わりの挟間に、開発コードネーム「Hydra」で呼ばれていた製品があった。2000年、いまから8年ほど前のことだ。複数の頭を持つ神話上の生物をコードネームに持ったその製品は、後にWindows NT 4.0 Terminal Server Editionとして登場することになる。これは、Windows NT 4.0をベースにマルチユーザー機能を付加した製品で、1台のサーバ上で「WinStation」と呼ばれる複数の仮想的なWindows NT環境をサポートできる。リリース当時は大いに話題になり、シン・クライアント時代の到来かといわれたが、実際のところ現在でも浸透したとまではいえないだろう。

 しかしここにきて再び脚光を浴びつつある。それはさまざまな仮想化の波に後押しされているためだ。Windows Server Virtualizationによるサーバの仮想化や、SoftGrid*1によるソフトウェアの仮想化に加え、「ターミナル・サービス」によるクライアント自身の仮想化を求める声も大きくなりつつある。

*1 SoftGrid とは、特別な手法でパッキングしたアプリケーションをサーバ上に格納しておき、クライアントからのアクセスに応じて必要なモジュールをクライアントに配信して実行する機能である。ターミナル・サービスとの大きな違いは、ソフトウェアの実行にクライアント側のCPUを使用するところである。そのため、一般的に、ターミナル・サービスと比べてサーバ側のリソースを減らすことが可能だ。


 Windows 2000 Server以降、ターミナル・サービスはWindows Server標準搭載となり、デフォルトでは管理目的で最大2セッションまでの利用が許されるようになった。これで多くの管理者に受け入れられ、それまでの「Windows ServerはGUIベースだから管理がしづらい」という印象を一掃した。そのため、ターミナル・サービスは仮想クライアント技術というより「管理ツールの一部」と誤解されることも多かった。しかしいま、多くのニーズを受けてターミナル・サービス=仮想クライアント(マイクロソフトはプレゼンテーション層の仮想化と呼んでいる)技術はひそかに進化を遂げ、Windows Server 2008とともにIT環境を大きく変化させようとしている。

 本稿では、システム構築を担当するシステム管理者などを対象に、Windows Server 2008のターミナル・サービスが何を目的に強化されたのか、どのように仮想クライアントを実現するのか、サービスを展開するのにどのような作業が必要なのか、といったことを解説していく。前編ではターミナル・サービスの基礎知識とWindows Server 2008における新機能の概要を、中編では個別の機能の詳細を、そして後編では実際に構築する際のポイントについてそれぞれ解説する。

ターミナル・サービスとは

 新機能の詳細などに入る前に、まずWindows Server 2008のターミナル・サービスの基本的な知識から解説する。なお、ターミナル・サービスを取り巻く仮想化の包括的な解説については、マイクロソフトのVirtualizationサイトが参考になる。

 ターミナル・サービスとは、一言でいえばデスクトップ環境を仮想化するための仕組みである。デスクトップ環境とは、まさにクライアントやサーバのデスクトップを指す。これにより、アプリケーションをリモートに設置したターミナル・サービス上で動作させ、アプリケーションの画面だけを手許のコンピュータに表示させることができる。例えば性能の劣るクライアントを手許で使用している場合、最新のアプリケーションを直接そのクライアントにインストールして動作させることは難しいだろう。そこで、サーバ側にターミナル・サービスを導入して、そちら側で重いアプリケーションを実行することで、新たなクライアント・コンピュータを購入したりハードウェアを強化したりすることなく、新しいアプリケーションをクライアント上で使用できるようになる。

 なお、ターミナル・サービスの生い立ちや内部制御について詳しく知りたい方は、ぜひともマイクロソフトWindows開発統括部のblogを参照してみていただきたい。元マイクロソフトの及川卓也氏が興味深い記事を投稿している。

 以下にターミナル・サービスの動作イメージを示す。ターミナル・サービスを使用すると、クライアントからはマウスとキーボードの操作情報のみが送信され、ターミナル・サービスからは画面のみが転送されてくる。この際に使用されるプロトコルは「RDP(Remote Desktop Protocol)」と呼ばれ、もともとテレビ会議用に開発されたものである。執筆時点での最新バージョンはRDP 6.1であり、Windows VistaおよびWindows Server 2008上で使用することができる。

ターミナル・サービスの動作イメージ ターミナル・サービスの動作イメージ
ターミナル・サービスでは、クライアントではなくサーバ上でアプリケーションが実行される。サーバからクライアントには画面データが、クライアントからサーバにはキーボード/マウスの操作情報がそれぞれRDPによって転送される。

 以下に、Windows Server 2008ターミナル・サービスの主要な新機能および拡張機能を示す(RemoteApp以外の詳細は中編を参照)。

 このほか、表示画面サイズの拡張やマルチ・モニタのサポート、リムーバブル・デバイスのリダイレクション機能拡張など、利用者の使い勝手が向上している。


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