第8回 強化されたIIS 7.5(前編)Windows Server 2008 R2の真価(3/3 ページ)

» 2010年01月28日 00時00分 公開
[奥主洋( エバンジェリスト)マイクロソフト株式会社]
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 本記事の読者は、運用管理やサーバ・システムの構築に興味がある人が多いかもしれないが、ここで.NETの実行基盤としてIIS 7.5とWindows Server AppFabricについて取り上げておく。 このコラムで取り上げるテーマは開発者寄りの話を含んでいることをあらかじめ断っておく。しかし、システム開発/構築全般としては大事な変化なので、IISとともに理解しておくと、今後.NETアプリケーション基盤を取り扱うことになった際に役に立つだろう。

■.NET Framework基盤について
 初めての方にも理解しやすいように、.NETの基盤についてここで少し解説しておく。.NETはJavaと対局に語られることが多いが、インフラ視点で見ると、アプリケーションの基盤、プラットフォームである。少しほかのソリューションと違うのは、実行環境として必要なさまざまな機能をWindows Server自身が持っている(ことが多い)ということである。サーバ・マネージャを眺めていても、.NETという文字が目に入ってくることからも分かるだろう。IISの役割サービスにもASP.NETや「.NET拡張性」というチェック・ボックスがあり、アプリケーション・サーバという役割には.NET Framework自身も含んでいる。

 .NET Frameworkとは具体的に何を含んでいるのだろうか? いろいろな解説と説明の仕方があるが、筆者は「Win32 APIとさまざまなランタイムを全部1つにまとめたものの進化系で、さらに .NETの各Foundation(基礎)機能を利用するための実行環境を提供するもの」ととらえている。WPF(Windows Presentation Foundation)はGUIなどのビジュアルな拡張を実装するための基盤、WCF(Windows Communication Foundation)は通信基盤、WF(Windows Workflow Foundation)はワークフローのような流れを実装する基盤であると思っている。こう考えるとそう難しくないであろう。これ以外にもWindows CardSpaceも含んでいるが、これについての解説は省略する。

■IIS7をベースとするWindows Azureプラットフォーム
 別の観点からの潮流も書いておこう。そう「クラウド・コンピューティング」である。マイクロソフトの提供するクラウド・プラットフォームである「Windows Azure」が登場し、これからはアプリケーションの実行環境として利用されるようになってくるだろう。だが運用を仕事にしている人は「そうなったら私の仕事じゃない」と思うかもしれない。しかし、もっとマクロな視点から、大きい目で考えてほしい。いま、組織や企業には、最適なインフラ規模をそのときどきで選択できる迅速さが必要になってきている。そうなると、あるWebサーバで動いているアプリケーションの利用者がパンクする前にサーバを増設する、あるいはスタンバイを起動するというような話が、パブリック・クラウドのリソースを利用するというような議論になってくる。

 ここで問題になってくるのがアプリケーション基盤の標準化、あるいはクラウド利用できる基盤になっているかという話である。Windows Azureは「Windows Server 2008+IIS7+.NETベース」の基盤である。当然Web標準に沿っていろいろな相互運用ができることになるが、組織内のシステムも同じ仕組みで作られていれば、Windows Azureのリソースを利用しやすいのは自明の理だ。

■マイクロソフトの推進するアプリケーション基盤
  さて、クラウドの話を離れてまたアプリケーション基盤の話に戻ろう。WPFに比べ、WCF/WFを利用したサービスは、結構大きなシステム開発でもこれまでもかなり行われてきている。だが実際に運用環境にした場合、パフォーマンスをチューニングする、あるいは運用をどう行うかで苦労しているケースがある。これは .NET Frameworkや開発ツール自身のせいというよりは、OS自身が持っているアプリケーション基盤としての運用機能やキャッシュなどのチューニング要素がまだまだ不足していることを表している。実際、ほかのアプリケーション基盤ではそこだけで有償の製品が結構出ているエリアである。

 この状況を踏まえ、かつ、Windows Azureへのシステム拡張を踏まえ、マイクロソフトではこれから製品を順次出荷していくことになる。

クラウドを含めたマイクロソフトのアプリケーション基盤

■Windows Server AppFabricアプリケーション・サーバ
  特にIIS 7を拡張するという観点から、ここでは「Windows Server AppFabric」に触れておきたい。Windows Server AppFabricはクラウドとは関係のない、いままでのアプリケーション・サーバとしてのWindows Serverを強化する製品である。WCF/WFのサービスを運用する際に利用するが、いままで行うのが困難であった環境設定面でのGUI、監視機能や新しいキャッシュ機能などが盛り込まれる予定である。

 現在Windows Server AppFabricはベータ版の段階であり、まだ内容は変化する可能性があるが、開発コード名「Dublin」と呼ばれていたWCF/WF運用基盤の強化、開発コード名「Velocity」と呼ばれていた新メモリ・キャッシュ機能を搭載することになる。これはmemcached(分散型のメモリ・キャッシュ技術。関連記事参照)に似た機能である。

 これからパブリック・クラウドとの相互運用モデルはどんどん採用が進んでいくことになる。日本は業務システムの構築や開発に携わっている方が多いといわれている中、今後数年間におけるこのアプリケーション基盤のエリアも目を離せないところである。なおWindows Azureプラットフォームに関する日本語情報は今はまだ多くないが、「Microsoft Tech・Days 2010(2010年2月23日〜24日開催。PDCの日本版ともいうべき技術カンファレンス)」などを機に、今後は充実してくるだろう

 次回の後編では、IIS 7.x向けの拡張機能について解説する。


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