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W3C/XML Watch - 6月版

XML文書の正規化新仕様と、W3Cインタロップツアー

加山恵美
2002/6/12

W3Cインタロップツアー開催

W3Cインタロップツアーの様子
(写真提供:W3C)

 W3Cは5月21日から6月3日にかけ、ヨーロッパの4つの都市において「W3Cインタロップツアー」と称した公開イベントを開催しました。日程は以下のとおりです。

○5月21日:パリ(フランス)
○5月28日:ウィーン(オーストリア)
○5月30日:ダブリン(アイルランド)
○6月3日:ブリュッセル(ベルギー)

 このインタロップツアーでは、W3Cのスタッフと各地域を代表する講演者により、W3Cの技術についての講演があったようです。

 W3Cがこれまでに策定し発表してきた勧告を振り返ってみると、すでに40以上にもなります。それらはXML、プライバシー保護のP3P、同期マルチメディアのSMIL、ベクターグラフィックスのSVG、などなどが含まれています。これらの能力を最大限に引き出すアプリケーションを構築するには、何よりも技術の相互運用性が重要になるというのが、W3Cからのメッセージでした。

 そして、このインタロップツアーにおいて、ヨーロッパ内のW3Cオフィスの担当地域拡大が発表になりました。現在、W3Cのホスト(主催者)として、アメリカのMIT、フランスのINRIA(フランス国立情報処理自動化研究所)、日本の慶應義塾大学の3つがありますが、それに加えて12のオフィスが世界中に存在しています。そして、2002年から始まった欧州委員会による「QUESTION-HOWプロジェクト基金」を受け、今回はヨーロッパ内のオフィスの担当地域が変更となりました。今回のインタロップツアーでは、ホストであるフランスのINRIAがあるパリに加えて、新しく担当地域に含まれることになった都市を巡ったようです。

オフィス名と担当地域の変更
W3Cイギリスオフィス→ W3Cイギリス&アイルランドオフィス
W3Cドイツオフィス→ W3Cドイツ&オーストリアオフィス
W3Cオランダオフィス→ W3Cベネルクスオフィス
(ベルギー、オランダ、ルクセンブルクをカバー)

 W3Cのスタッフは世界各地で続々と講演や発表を行っています。このW3CインタロップツアーのようなW3Cのプライベートイベントのほかにも、各種Web技術に関するイベントに講師として招かれています。例えば国内でも、6月5日に開催されたJAGAT(日本印刷技術協会)主催のイベントでは、日本のW3Cのスタッフである萩野達也氏が講演を行いました。そういえば、昨年は日本でW3C Dayも開かれましたし、W3Cは以前よりもずっと啓もう活動に力を入れているようです(参考:XML/W3C Watch 2001年12月版「慶應大学で次世代Webに触れる」)。

5月の勧告、勧告案、勧告候補

 5月は勧告案が1つ、勧告と勧告候補はありませんでした。

 勧告案へと昇格したのは、Exclusive XML Canonicalization Version 1.0です。これと非常に関連性が高い仕様として、2001年3月に勧告化されたXML Canonicalizationがあります。

 XML Canonicalizationについて説明しておくと、この仕様はXML-C14Nと表記されることがあります。14という数字は、「正規化」を意味する“Canonicalization”の最初と最後であるCとNの間に14個の文字があるからでしょう。それはともかくXML-C14Nとは、XML文書の書式を揃えることで、XML文書の内容が本質的に同等かどうか判断するための書式を定めたものです。XML文書では同じ内容でも複数の書式をとることができますが、このXML-C14Nの書式に変換すると統一した書式となり、内容の比較が可能となるのです(参考記事:「XML暗号化と正規化と電子署名」)。

 今回のExclusive XML-C14Nは、XML文書全体を正規化するXML-C14Nに対して、XML文書の一部だけを正規化するといった用途に使える仕様で、XML-C14Nを基に拡張したものと考えることができます。

ドラフトの動き

 5月に発表になったドラフトは8つです。すべて同じ日に発表されています。ただし、分野は2種類に限られています。また、ラストコールが設定されたものは1つだけです。4月の怒とうの発表に比べたら、5月はかなり少なく感じます。思わず拍子抜けしてしまいそうです。いやしかし、問題は数ではありません。W3Cのスタッフは、5月は先に述べたようなヨーロッパを巡回するインタロップツアーの準備に注力していたのではないかと思います。

 まずはQA Frameworkの分野の4つから見ていきましょう。QA(Quality Assurance)とは、品質保証の意味です。4つのドラフトの中で、Introduction(導入)Operational Guidelines(運用ガイドライン)は今年2月に発表されたものからの更新になります。Specification Guidelines(仕様書ガイドライン)Operational Examples & Techniques(運用例とテクニック)は、5月初登場です。QAシリーズは今後も数が増えて充実してきそうです。

 次にCSS関連で4つ発表がありました。この中で、CSS TVプロファイル 1.0がラストコール付きです。5月はCSS3のモジュールが2つ、「行」と「テキスト」に関するもの、またCSSのTVプロファイルとスタイル属性に関するものが発表になっています。

ノート

 5月に発表になったノートは以下の1つです。

 XUPは、SOAPベースのプロトコルで、ユーザーインターフェイスのために、イベントや変更があったことを通知するもののようです。

W3Cスタッフが「若き技術革新者100人」に選出!

 先月は米INFO WORLDの「Hall of Fame 2002」に受賞したティム・ブレイ(Tim Bray)氏のことを伝えましたが、また今月も受賞のニュースです。

 Technology Review誌による、若手の技術革新者100人を選出した「2002 TR100アワード」に、W3Cのジョセフ・リーガル(Joseph Reagle)氏が選出されました。彼のインターネットとWeb分野での活躍が受賞理由に挙げられています。彼はW3Cの中では「技術と社会ドメイン」に属しており、近年は各イベントでXML署名に関するプレゼンテーションを行ったり、最近はIETFと共同でXMLの暗号技術の作業にかかわったりしているそうです。1996年MIT卒業、ベジタリアンの29歳。そんな彼の今後の活躍に期待しましょう。

 ではまた来月お会いしましょう。


バックナンバー

2001年
 ・ 7月版 「XMLBase、XML Linkが勧告に」
 ・ 8月版 「リファレンスブラウザAmaya 5.1が登場したけれど」
 ・ 9月版 「MITが停電! そしてマルチメディア言語SMIL」
 ・ 10月版 「XMLの改定仕様はブルーベリー」
 ・ 11月版 「W3C Dayが待ち遠しい」
 ・ 12月版 「慶應大学で次世代Webに触れる」
2002年
 ・ 1月版 「XML 1.1、XSLT 2.0のドラフトついに登場!」
 ・ 2月版 「Webサービスアクティビティが発足」
 ・ 3月版 「XMLが4歳の誕生日を迎えました」
 ・ 4月版 「XMLを作った人たちが殿堂入りの栄誉!」
 ・ 5月版 「P3Pが勧告、そして怒とうの文書公開」
 ・ 6月版 「XML文書の正規化新仕様と、W3Cインタロップツアー」
 ・ 7月版 「SOAP 1.2のドラフトが発表」
 ・ 8月版 「4つのXPointerのドラフト、WSDL 1.2も登場」
 ・ 9月版 「ロゼッタネットとUCCが合併、XMLマスターに上級資格」
 ・ 10月版 「具体的な技術論へ移るセマンティックWeb」
 ・ 11月版 「XML 1.1が勧告候補、特許問題はついに決着か」
 ・ 12月版 「DOM2関連がもうすぐ完結、Webアーキテクチャも登場」
2003年
 ・ 1月版 「この1年でW3C勧告になったのは7つの仕様」
 ・ 2月版 「Webサービスの『振り付けグループ』が発足」
 ・ 3月版 「旅行業界がXML化へ、MSからは『InfoPath』が登場」
 ・ 4月版 「混迷の続くXPointerはついに落着?」
 ・ 5月版 「Webサービスの実験成功。WS-Iからは互換性ツール」
 ・ 6月版 「あいまいな部分を排除したSOAP 1.2、PNGはISO標準へ」
 ・ 7月版 「MITのW3Cオフィスはもうすぐ引っ越し、国連がebXMLを承認」
 ・ 8月版 「Webサービスが日本のAmazonからも利用可能に」
 ・ 9月版 「IEの特許侵害判決でW3Cが緊急会合」
 ・ 10月版 「IEの特許侵害判決がWebに与える影響は?」
 ・ 11月版 「IE特許問題で、W3Cが米国特許庁へ再審査を請求」
 ・ 12月版 「OfficeのXMLスキーマ公開、XML 1.1は勧告間近」
2004年
 ・ 1月版 「セマンティックWebに向けた動きが活発に」
 ・ 2月版 「日本人による標準技術発信が進むOASIS」
 ・ 3月版 「ついにXML 1.1が勧告へ、影響を受けるのは?」
 ・ 4月版 「XML Schema、3年ぶりの改訂が迫る」
 ・ 5月版 「Webサービス・セキュリティ v1.0、待望のOASIS標準に」
 ・ 6月版 「TravelXMLのWebサービス実証実験デモが成功」
 ・ 8月版 「SOAPメッセージ最適化をめぐる仕様が活発化」
 ・ 10月版 「W3Cの設立10周年を祝う記念祝賀イベント開催」
 ・ 12月版 「年の瀬に、WebとW3Cの功績に思いを馳せる」
2005年
 ・ 2月版 「XMLマスター資格試験が6月にリニューアル」
 ・ 4月版 「WS-Security 2004の日本語訳をXMLコンソーシアムが公開」
 ・ 6月版 「“愛・地球博”でビュンビュンWebサービス」
 ・ 8月版 「XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)が勧告に昇格」
 ・ 10月版 「QAフレームワーク:仕様ガイドラインが勧告に昇格」

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