XML関連仕様の動向を毎月お届け!
W3C/XML Watch - 4月版

混迷の続くXPointerはついに落着?

加山恵美
2003/4/11

 新年度が始まりました。新たに社会人となられた方、またITやXMLの分野で新たな一歩を踏み出す方もいらっしゃるでしょう。この連載では、W3Cが行うXML標準策定の進ちょく状況や、ますます活発・複雑化するXML業界の動向を月ごとに簡潔に報告していきます。どうぞよろしくお願いします。

 ではまず3月にW3Cから発表されたXML関連仕様について紹介していきましょう。

3月の勧告、勧告案、勧告候補

 3月は勧告が3本、勧告案はなし、勧告候補が1本発表になりました。勧告となった3本はすべてXPointer関連です。

 3月末に勧告候補としてDOM3 XPathが発表になりました。同時にDOM3イベントの最終ドラフトも公開されています。

3月のドラフトとノート

 ドラフトは全部で13本発表になりました。そのうちラストコール付きはCC/PPとDOM3イベント仕様に、OWLの5本をあわせた合計7本です。CC/PPとはComposite Capability/Preference Profilesの略で、サーバにアクセスするデバイス(パソコン、携帯電話、PDA)やソフト(OSやブラウザ)に応じてコンテンツの変換や選択を行うための仕様の1つです。CC/PPの技術では、サーバ側とクライアント側の2種類のプロファイルを使い、環境やユーザー設定に応じたコンテンツを提供するようになっています。今回のドラフト発表をもってCC/PP関連仕様は、CC/PPワーキンググループからデバイス非依存ワーキンググループへと移管されることになりました。

 また3月末付けでOWL(Web Ontology Language)がまとめて6本追加になりました。それぞれ、概要、ガイド、リファレンス、セマンティックと絶対構文、テストケース、使用事例と要件、と内容が分かれています。このうちテストケースを除いた5本にラストコールが設定されています。

 そのほかのドラフトは本数は少なめですが、重要なものが多くあります。WSDL、アクセシビリティが2本、特許方針、WWWのアーキテクチャの5本です。

 ドラフトの中でも、特許方針はほかのドラフトの進捗に大きな影響力を持っています。2002年11月に発表された前回のドラフトではラストコール期限が2002年末に設定されていました。今回の最終ドラフトは、そのコメント募集期間に浮上した問題点などを整理して更新したものです。これは、W3Cの一般的な仕様策定手順において勧告案の段階に当たります。

 最新のドラフトではW3Cのオープン性、つまり特許をロイヤリティフリー(RF)でライセンスすることが基本方針として掲げられていますが、特定の条件下では例外もあり得るという妥協案も盛り込まれています。今回のドラフトには要約版もありますので、興味があれば目を通してみてください。4月30日までをコメント募集期間として、5月には結論を出す予定となっています(参考記事「特許論争に揺れるW3C」)。

 Architecture of the World Wide Web(WWWのアーキテクチャ)は今回で3回目の更新になります。WWWのシステムや挙動に影響する要件、原理、設計を明示しています。本文では識別(URI)、表現、相互作用の技術的な3要素に加えて、情報共有の場としての社会的な要素も触れています。この文書は2002年の8月に初めて登場しました。WWWの歴史から考えたらごく最近のことです。WWWを取り巻く技術が多様化、複雑化するなかでWWWという情報ネットワークの本質となるアーキテクチャを体系づけようとする試みです。

 3月に発表されたノートは1本で、SOAP 1.2関連です。

混迷の続くXPointer

 3月に勧告となったXPointerは驚くほど長い歴史があります。XPointerをさかのぼると1997年のXML: Part 2. Linkingが源流です。XML Part 2という名前からして、当初からXMLと非常に密接な仕様であったことが分かります。発展の経緯で名前や構成の変更があり、勧告候補からドラフトに戻されることが繰り返されました。

1997/4/6:ドラフト
Extensible Markup Language (XML): Part 2. Linking Version 1.0
1997/7/31:ドラフト
Extensible Markup Language (XML): Part 2. Linking Version 1.0
1999/7/9:ドラフト
XML Pointer Language(XPointer)
1999/12/6:ドラフト
XML Pointer Language (XPointer)
2000/6/7:勧告候補
XML Pointer Language (XPointer) Version 1.0
2001/1/8:ドラフト
XML Pointer Language (XPointer) Version 1.0
2001/9/11:勧告候補
XML Pointer Language (XPointer) Version 1.0
2002/7/10:ドラフト
XPointer Framework
XPointer element() Scheme
XPointer xmlns() Scheme
XPointer xpointer() Scheme
2002/8/16:ドラフト(superceded)
XML Pointer Language (XPointer)
2002/11/13:勧告案
XPointer Framework
XPointer element() Scheme
2002/12/19:ドラフト
XPointer xpointer() Scheme
2003/3/25:勧告
XPointer Framework
XPointer element() Scheme
XPointer xmlns() Scheme

 長い歴史を簡単に追ってみます。最初のXML Part 2. Linkingでは編集者にXML策定に深くかかわったティム・ブレイ氏の名も見られます。約2年の沈黙の後、1999年7月にXPointerと名前が変わり、編集者からTim Brayの名が消えてSteve DeRose(ブラウン大学)が残り、Ron Daniel Jr.(当時Datafusion社、後にInterwoven社)やEve Maler(サン・マイクロシステムズ社)が追って加わります。

 2000年6月に一度は勧告候補になりつつも、半年後の2001年1月には再びドラフトに戻されます。これは名前空間の接頭辞を使うためにXPointerxmlns () Schemeが追加されたことによります。そして2001年9月(なんとあの9.11です)で再び勧告候補になりますが、その後2002年7月に4分割されてドラフトに戻ります。

 分割後はXPointer Frameworkと3つのSchemeに分かれます。XPointer Frameworkは複数のアドレス付与構造を提供するXML文書中の領域を認識するためにあります。3つのスキーム群は、ツリー構造のXML要素の基本アドレス付与を可能とするためのXPointer element() Scheme、スキーマ名とポインタ中の名前空間接頭辞を解釈するためのXPointer xmlns() Scheme、より高度なアドレス分配を提供するためのXPointer xpointer() Schemeになります。

 その後、XPointer() Scheme以外の3本は2002年11月に勧告案となり、今回2003年3月に勧告になりました。XPointer() Scheme以外は長く続いた混迷からようやく抜け出して勧告に到達したことになります。

 残ったXPointer() Schemeはほかの仕様から一足遅れて2002年12月に2版目のドラフトを発表しましたが、依然として現在もドラフトのままです。懸案事項として技術的に重要な部分がXPointer() Schemeに内在していること、さらにXPointerやXLinkの開発を行ってきたXML Linkingワーキンググループが活動を停止したこと(技術文書の引き継ぎ先はXMLコアワーキンググループ)もあり、この先のXPointerの前途は険しそうです。

OASISの動き

 先月もお伝えしましたが、OASISでは2月にはWebサービスの信頼性確保のための技術委員会が設置されました。いまのところSOAPを中心に検討するようですが、ほかのメッセージングプロトコルも視野に入れて、信頼性が確保できる、標準的で相互運用可能な方法を画策しています。また、3月10日にWebサービス分散管理(WSDM:Web Services Distributed Management)技術委員会も新たに設置されました。WSDMではWebサービスの分散資源を管理する技術を扱います。ほかにもポータルに関する技術委員会(WSRP: Web Services for Remote Portals)がポータルフロントエンドにおけるWebサービスの仕様作成を進めているところです。

 そのほかには、Topic Maps Published Subjects技術委員会が「Published Subjects: Introduction and Basic」の最終ドラフト文書を発表しました。Topic Mapsとは、XTM(XML Topic Maps)とも表記され、情報資源の構造表記のモデルと文法を提供するものです。この文書はPublished Subjectsを紹介して、PSIセットの発行者に要件と勧告について明示しています。技術的な範囲としてはRDF、セマンティックWeb、オントロジーとも関連してくる分野です。

XMLコンソーシアムで国際郵便のワーキンググループ設立

 日本のXMLコンソーシアムでは、多国間の郵便情報を扱うIPACT(International Postal Address Components and Templates)を研究するワーキンググループが設立されました。IPACTとは、国際郵便のための国連機関UPUが提唱する多国間でのXML標準フォーマットです。このワーキンググループではIPACTの日本国内での適用を研究するだけではなく、2002年XMLコンソーシアムで制定されたContactXMLとの整合性も研究し、国内と国外の両方を視野に入れて郵便情報のやりとりの促進化を図ります。

 ではまた来月、お会いしましょう。


バックナンバー

2001年
 ・ 7月版 「XMLBase、XML Linkが勧告に」
 ・ 8月版 「リファレンスブラウザAmaya 5.1が登場したけれど」
 ・ 9月版 「MITが停電! そしてマルチメディア言語SMIL」
 ・ 10月版 「XMLの改定仕様はブルーベリー」
 ・ 11月版 「W3C Dayが待ち遠しい」
 ・ 12月版 「慶應大学で次世代Webに触れる」
2002年
 ・ 1月版 「XML 1.1、XSLT 2.0のドラフトついに登場!」
 ・ 2月版 「Webサービスアクティビティが発足」
 ・ 3月版 「XMLが4歳の誕生日を迎えました」
 ・ 4月版 「XMLを作った人たちが殿堂入りの栄誉!」
 ・ 5月版 「P3Pが勧告、そして怒とうの文書公開」
 ・ 6月版 「XML文書の正規化新仕様と、W3Cインタロップツアー」
 ・ 7月版 「SOAP 1.2のドラフトが発表」
 ・ 8月版 「4つのXPointerのドラフト、WSDL 1.2も登場」
 ・ 9月版 「ロゼッタネットとUCCが合併、XMLマスターに上級資格」
 ・ 10月版 「具体的な技術論へ移るセマンティックWeb」
 ・ 11月版 「XML 1.1が勧告候補、特許問題はついに決着か」
 ・ 12月版 「DOM2関連がもうすぐ完結、Webアーキテクチャも登場」
2003年
 ・ 1月版 「この1年でW3C勧告になったのは7つの仕様」
 ・ 2月版 「Webサービスの『振り付けグループ』が発足」
 ・ 3月版 「旅行業界がXML化へ、MSからは『InfoPath』が登場」
 ・ 4月版 「混迷の続くXPointerはついに落着?」
 ・ 5月版 「Webサービスの実験成功。WS-Iからは互換性ツール」
 ・ 6月版 「あいまいな部分を排除したSOAP 1.2、PNGはISO標準へ」
 ・ 7月版 「MITのW3Cオフィスはもうすぐ引っ越し、国連がebXMLを承認」
 ・ 8月版 「Webサービスが日本のAmazonからも利用可能に」
 ・ 9月版 「IEの特許侵害判決でW3Cが緊急会合」
 ・ 10月版 「IEの特許侵害判決がWebに与える影響は?」
 ・ 11月版 「IE特許問題で、W3Cが米国特許庁へ再審査を請求」
 ・ 12月版 「OfficeのXMLスキーマ公開、XML 1.1は勧告間近」
2004年
 ・ 1月版 「セマンティックWebに向けた動きが活発に」
 ・ 2月版 「日本人による標準技術発信が進むOASIS」
 ・ 3月版 「ついにXML 1.1が勧告へ、影響を受けるのは?」
 ・ 4月版 「XML Schema、3年ぶりの改訂が迫る」
 ・ 5月版 「Webサービス・セキュリティ v1.0、待望のOASIS標準に」
 ・ 6月版 「TravelXMLのWebサービス実証実験デモが成功」
 ・ 8月版 「SOAPメッセージ最適化をめぐる仕様が活発化」
 ・ 10月版 「W3Cの設立10周年を祝う記念祝賀イベント開催」
 ・ 12月版 「年の瀬に、WebとW3Cの功績に思いを馳せる」
2005年
 ・ 2月版 「XMLマスター資格試験が6月にリニューアル」
 ・ 4月版 「WS-Security 2004の日本語訳をXMLコンソーシアムが公開」
 ・ 6月版 「“愛・地球博”でビュンビュンWebサービス」
 ・ 8月版 「XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)が勧告に昇格」
 ・ 10月版 「QAフレームワーク:仕様ガイドラインが勧告に昇格」

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