XML関連仕様の動向を毎月お届け!
W3C/XML Watch - 5月版

Webサービス・セキュリティ v1.0、待望のOASIS標準

加山恵美
2004/5/18

 4月はDOM3の基本的な仕様が2本勧告になりました。ほかにもキー管理のXKMS 2.0とXInclude 1.0が勧告候補になり、新作のドラフトも目立ちます。OASISではロゴを一新し、委員会ドラフトが多く発表されています。

4月の勧告、勧告案、勧告候補

 それではW3Cの動きから見ていきましょう。4月は勧告が2本、勧告案がなし、勧告候補が3本ありました。勧告となったのはDOM3コア、DOM3ロード&セーブの2本です。DOM3コアは、文書の内容、構造、スタイルへのアクセスや、動的な更新を可能にするインターフェイスです。DOM3ロード&セーブは、読んで字のごとしですが、環境に依存しないXML文書の読み込みと書き出しに使われる仕様です。

 勧告候補の3本は2本がXKMS 2.0、つまりXMLキー管理仕様です。XKMS 2.0そのものと、XKMS 2.0バインディングの2本です。XKMSはW3C勧告のXML署名XML暗号化、これらを複合的に利用するときに適した、公開鍵の配布と登録について定めています。

 XIncludeとは、複数のXMLインフォメーションセットを1つのインフォセットに合成するための一般的なプロセスモデルと構文です。複数のXML文書を合成するメカニズムをアプリケーションに提供することで、XMLのモジュール化を促進させる狙いがあります。

4月のドラフトとノート

 4月に発表されたドラフトはラストコール付きが1本、ラストコールなしが4本でした。ノートは2本でした。

 ラストコール付きの1本は、呼び出し制御記述言語のCCXML 1.0です。3月に勧告になったVoiceXMLと同じ音声ブラウザワーキンググループの仕様です。最近では音声インターフェイスの躍進が目覚ましいです。

 ラストコールなしには初登場が多く見受けられます。まずxml:id 1.0はIDとして取り扱い可能な事前定義済みの属性名を導入するための仕様です。次にP3P 1.1が更新されました。3つ目のWebサービスコレオグラフィ記述言語(WS-CDL)1.0は、Webサービスを使ったピアツーピアの相互接続で、例えば、一方はBPEL、もう一方は.NETで構築された2つのWebサービスが対話をする際の相互運用性を保証するための仕様です。最後のSOAPリソース表現ヘッダは、SOAPメッセージ内のリソース表現を伝達するために用いられる、SOAPヘッダブロックのセマンティックとシリアル化を記述する仕様です。SOAPメッセージ内に記述されるWebリソース(画像データなど)について、ヘッダブロックの中にbase64エンコードされた値を保持するというものです。

 ノートは以下の2本でした。XMLプロセッシングモデル要件と、RDFステートメントをXHTMLでエンコーディングするGRDDLです。

W3Cの新活動、SYMM

 W3Cで新たなアクティビティが発足しました。シンクロナイズド・マルチメディア(SYMM)アクティビティです。共同議長にソニーの権野善久氏とノキアのGuido Grassel氏が就任することになりました。同アクティビティでは2001年にW3C勧告となったSMIL 2.0の拡張を中心に活動を進めていくようです。ということは次世代SMILの動向がこのアクティビティから展開されていくことになりそうで楽しみです。アクティビティはまだ発足したばかりですが、Webページにはこれまでの経緯や資料が豊富に掲載されています。

OASISに新ロゴ登場

OASISの新しいロゴがお目見え

 OASISのロゴが変わりました。新しいロゴにはチャプター(§)に似た図柄があります。オープン性、協調性、国際性がコンセプトとなっているそうです。

 まずは技術委員会の動きです。新たに参加要請が発行された技術委員会にはCGM Open WebCGM技術委員会があります。これはOASISの加入団体であるCGM OpenがWebCGM技術委員会を立ち上げたものです。CGMとはComputer Graphics Metafileで、構造化された画像オブジェクトを交換するための国際標準(ISO/IEC 8632:1999)です。WebCGMはW3Cでもプロファイル勧告が公表されています。新しい技術委員会ではこの国際標準CGMの採用、アプリケーション開発や実装を加速する取り組みを行います。

 次に各技術委員会で草案の決定がいくつかなされました。Open Office XML Format技術委員会が、Open Office 1.0仕様を委員会草案として承認しました。この仕様はオフィスアプリケーションと、そのセマンティック用XMLスキーマを定義しています。また、XACML技術委員会は、RBACプロファイル(PDF)を委員会草案とすることになりました。さらにアプリケーション脆弱性技術言語(AVDL)技術委員会では、AVDL 1.0を委員会草案として承認しました。これらの委員会草案はOASISに上程し、無事に承認されればOASIS標準となります。

 4月にOASIS標準として承認されたものとして、4月6日にはWeb Services Security (WSS) version v1.0がOASIS標準として発表されました。各種技術文書はWSS技術委員会から参照できます。

 また6月15日から2日間、東京品川でOASISのイベント「OASIS Open Standards Days Tokyo 2004」開催されます。焦点はアジアの電子商取引市場の活性化です。上記サイトから申し込みできます(記事執筆時点で申し込みページは準備中です)。

HIPAA、米国における健康管理の電子化

 米国医療業界におけるXML技術の参入を見てみましょう。キーワードとなるのが、1996年のクリントン政権時代に制定されたHIPAA(Health Insurance Portability and Accountability ACT、医療保険の携行性と責任に関する法律)という連邦法です。これは米国で流通している民間の健康保険を州を超えて利用できるようにするための法律です。ここに州の独立性という米国のお国事情がうかがえるのですが、それはさておき。

 近年ではHIPAAへの対応として、医療情報を電子的に交換するための標準化やセキュリティの保護規定が順次着々と公表されています。4月末に米国ルイジアナ州で開催されたOASISのシンポジウムの中のeHealthワークショップでは今後の健康管理の業界展望などが示されました。特に金融機関と顧客との相互接続として、どのようなキャッシュ管理サービスにするのかが焦点となり、健康管理インフラとしてebXMLの役割が注目されています。ワークショップでは、MBProject米国立保健研究所HL7などからのプレゼンテーションが行われました。

 日本で保険の携帯性が問題になることはありませんが、HIPAAは電子カルテなど医療のIT化という観点で、医療情報関係者から動向が注目されています。

ティム・バーナーズリー氏、Millennium Technology Prizeを受賞

 サー・バーナーズリー氏の次なる受賞です。同氏は4月15日にフィンランドの技術賞財団法人からMillennium Technology Prizeを授与されました。財団法人からのプレスリリースによると、人間の価値を基にして生活のクオリティを向上させ、継続的な経済発展に寄与したことなどが受賞理由として挙げられています。

 余談ですが、最近ではブログを開設している人が増えています。IT業界の著名人のブログも発見できるかもしれません。ニュースの裏話や意外な一面も垣間見ることができるかもしれませんよ。ではまた来月、お会いしましょう。


バックナンバー

2001年
 ・ 7月版 「XMLBase、XML Linkが勧告に」
 ・ 8月版 「リファレンスブラウザAmaya 5.1が登場したけれど」
 ・ 9月版 「MITが停電! そしてマルチメディア言語SMIL」
 ・ 10月版 「XMLの改定仕様はブルーベリー」
 ・ 11月版 「W3C Dayが待ち遠しい」
 ・ 12月版 「慶應大学で次世代Webに触れる」
2002年
 ・ 1月版 「XML 1.1、XSLT 2.0のドラフトついに登場!」
 ・ 2月版 「Webサービスアクティビティが発足」
 ・ 3月版 「XMLが4歳の誕生日を迎えました」
 ・ 4月版 「XMLを作った人たちが殿堂入りの栄誉!」
 ・ 5月版 「P3Pが勧告、そして怒とうの文書公開」
 ・ 6月版 「XML文書の正規化新仕様と、W3Cインタロップツアー」
 ・ 7月版 「SOAP 1.2のドラフトが発表」
 ・ 8月版 「4つのXPointerのドラフト、WSDL 1.2も登場」
 ・ 9月版 「ロゼッタネットとUCCが合併、XMLマスターに上級資格」
 ・ 10月版 「具体的な技術論へ移るセマンティックWeb」
 ・ 11月版 「XML 1.1が勧告候補、特許問題はついに決着か」
 ・ 12月版 「DOM2関連がもうすぐ完結、Webアーキテクチャも登場」
2003年
 ・ 1月版 「この1年でW3C勧告になったのは7つの仕様」
 ・ 2月版 「Webサービスの『振り付けグループ』が発足」
 ・ 3月版 「旅行業界がXML化へ、MSからは『InfoPath』が登場」
 ・ 4月版 「混迷の続くXPointerはついに落着?」
 ・ 5月版 「Webサービスの実験成功。WS-Iからは互換性ツール」
 ・ 6月版 「あいまいな部分を排除したSOAP 1.2、PNGはISO標準へ」
 ・ 7月版 「MITのW3Cオフィスはもうすぐ引っ越し、国連がebXMLを承認」
 ・ 8月版 「Webサービスが日本のAmazonからも利用可能に」
 ・ 9月版 「IEの特許侵害判決でW3Cが緊急会合」
 ・ 10月版 「IEの特許侵害判決がWebに与える影響は?」
 ・ 11月版 「IE特許問題で、W3Cが米国特許庁へ再審査を請求」
 ・ 12月版 「OfficeのXMLスキーマ公開、XML 1.1は勧告間近」
2004年
 ・ 1月版 「セマンティックWebに向けた動きが活発に」
 ・ 2月版 「日本人による標準技術発信が進むOASIS」
 ・ 3月版 「ついにXML 1.1が勧告へ、影響を受けるのは?」
 ・ 4月版 「XML Schema、3年ぶりの改訂が迫る」
 ・ 5月版 「Webサービス・セキュリティ v1.0、待望のOASIS標準に」
 ・ 6月版 「TravelXMLのWebサービス実証実験デモが成功」
 ・ 8月版 「SOAPメッセージ最適化をめぐる仕様が活発化」
 ・ 10月版 「W3Cの設立10周年を祝う記念祝賀イベント開催」
 ・ 12月版 「年の瀬に、WebとW3Cの功績に思いを馳せる」
2005年
 ・ 2月版 「XMLマスター資格試験が6月にリニューアル」
 ・ 4月版 「WS-Security 2004の日本語訳をXMLコンソーシアムが公開」
 ・ 6月版 「“愛・地球博”でビュンビュンWebサービス」
 ・ 8月版 「XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)が勧告に昇格」
 ・ 10月版 「QAフレームワーク:仕様ガイドラインが勧告に昇格」

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