XML関連仕様の動向を毎月お届け!
W3C/XML Watch - 8月版

リファレンスブラウザ「Amaya5.1」が登場したけれど…

加山恵美
2001/8/8

 7月はW3Cの大きな動きはなかったのですが、8月に入ってふと見ると、8月4日付けでW3Cのサイトの一部が更新されていました。8月4日は土曜日、彼らは土曜日も働いているんですね。

仕様のステータス

 W3CではインターネットやXMLに関する仕様やガイドラインのドキュメントが続々と発行されています。例えばXMLやDOMなどのようにすでに勧告となった仕様や、XPointerのようにまだ勧告になっておらず、ドラフト段階の仕様などさまざまです。

 この「勧告」や「ドラフト」などのことを、仕様の段階を示す「ステータス」と呼びますが、このステータスにはどのようなものがあるのでしょうか。

TR = テクニカルレポート

 先ほどW3Cの「ドキュメント」や「仕様」と表現しましたが、これらはすべてTR(Technical Report)と呼ばれています。発行されたTRや、最近ステータスが変更になったTRなどは、W3CのW3C Technical Reports and Publicationsを見れば分かります。

 TRのステータスには、完成度の高い順に、Recommendations(勧告)、Proposed Recommendations(勧告案)、Candidate Recommendations(勧告候補)、Working Draft(ワークングドラフトまたはドラフト)、Notes(ノート)と分かれています。

Recommendations = 勧告
RecommendationsはW3Cのメンバー組織から承認され、仕様として完成したものを指します。「recommendation」の言葉そのものはrecommend(推薦する)の名詞形なので、「推薦状」や「おすすめ」という意味ですが、最初が大文字になると「勧告」という、指示に近い意味を示します。この用法は、例えば海外のニュースを聞いていると、政府組織からの指示を「Recommendation(勧告)」と表現しているときもあるように、W3Cだけの用語というわけではありません。

Proposed Recommendations = 勧告案
限りなく勧告に近づいたのがProposed Recommendationsです。ここまでくればあともう少しで勧告です。この段階ではほとんど仕様が確定し、関係者が確認して承認するのを待つことになります。ただし過去の事例では、勧告案まで行きながらドラフトに戻ってしまった例もあります。

Candidate Recommendations = 勧告候補
仕様としてほぼまとまったものが勧告候補となります。前段階であるドラフトがほぼ固まると、この段階になります。ドラフトで議論した仕様が本当に要求を満たしているか、いくつかの環境で実装を行いテストを行います。

Working Draft = ワーキングドラフトまたはドラフト
仕様として関係者の間で草案を策定中である段階をドラフトといいます。この段階では、まだまだ仕様としては不完全で、議論の最中と考えていいでしょう。ドラフトには、さらに分けると次の3つに分類できます。
Working Drafts in Last Call」は最終確認待ちという意味で、ドラフトとしてはほぼ完成して次の段階へ進む準備ができた状態です。ドラフトがまさにドラフトである段階、つまり試行錯誤をへいるときは「Working Drafts in development」といいます。また、ドラフトとして存在しているけれども、もうこれ以上は進展することのないもの、つまり企画倒れになってしまったものは「Working Drafts no longer in development」といいます。悲しいですが、こうやって立ち消えていく仕様も存在します。

Notes = ノート
ドラフトよりも前段階のものはノートといいます。仕様のドラフト(草案)を策定する前の検討資料となるものがノートです。段階としては低くても、注目を浴びているものもあります。まだまだ先は長いですが、こうやってノートからスタートして、勧告までのゴールを目指すのです。

 また、ドラフトに限らず、それぞれのステータスで「in last call」という状態になっていることがあります。これはドラフトのときと同様に、その段階での最終確認待ちの状態を示します。last callといえば、空港などで聞くような搭乗の「最終案内」と同じ意味です。

 前述したように、一度勧告となった仕様も、これで全て終了とは限りません。バージョンアップして新たな仕様へと発展していくこともあります。周囲の技術の進化やユーザーからのフィードバックを反映して新たな要件を満たすように、仕様は機能を拡張したり追加されていくのです。

今月の勧告案 - SVG 1.0、SMIL Animation

 今月は解説がずいぶん長くなってしまいました。ではW3Cの7月の動きをみてみましょう。今月はあまり大きな動きはなく、新たに勧告になったものはありません。しかし勧告案に昇格したものが2つあります。「Scalable Vector Graphics (SVG) 1.0 Specification」と、「SMIL Animation」です。

 SVGはロゴや図式のようなベクトル画像、SMIL Animationはマルチメディアに関するSMILをベースにした技術です。勧告案になったということはあともう少しで勧告に昇格すると期待できますが、まだ確定したわけではありません。注意深く見ていきましょう。

今月のドラフト - SOAP 1.2

 7月9日には、XML Protocol Working Groupから、SOAP 1.2のワーキングドラフトが発表されています。現行のSOAP 1.1をベースに、XML Schema名前空間のサポートを明確にし、また処理モデルをリファインしたようです。

Amayaでみた@ITのホームページ。レイアウトが崩れ、日本語が化けている。まだ完成度は高くないようだ(クリックで拡大します)

Amaya 5.1が登場

 また、7月11日にはW3C製のWebブラウザ兼オーサリングツールの「Amaya5.1」がリリースされました。Amayaはブラウザとオーサリングツールのリファレンス実装を目指しており、このバージョンではHTML 4.01, XHTML 1.0, XHTML Basic, XHTML 1.1, HTTP 1.1, MathML 2.0、そして多くのCSS2機能と、SVGの機能の一部がサポートされたそうです。ただし、試した限りではまだ日本語が表示できず、動作速度もいまひとつのようなので、日常的なブラウザに使うことは考えないほうがいいでしょう。Amayaのホームページでは、10月末までに次のリリースを発表すると早くも表明されていますので、今後のバージョンアップに期待です。

WebサービスとXML Webサービス

 W3C以外にも今月は、BEAやIBM、マイクロソフトなど各社がWebサービスに対応した製品を次々に発表しています。BEAは8月に入って国内で発表したWebLogic 6.1でWebサービスをサポート。IBMも今月発表予定のWebSphere 4.0でWebサービスのサポートを表明しています。また、マイクロソフトは先日、Visual Studio.NETの説明会を開いた際に、Webサービスのことを今後、「XML Webサービス」と呼ぶと発表しました。ただし、この呼称について他社が追随する動きはいまのところ見られておらず、今後この用語が定着するのかどうか、見守っていきたいところです。

 それではまた来月。


バックナンバー

2001年
 ・ 7月版 「XMLBase、XML Linkが勧告に」
 ・ 8月版 「リファレンスブラウザAmaya 5.1が登場したけれど」
 ・ 9月版 「MITが停電! そしてマルチメディア言語SMIL」
 ・ 10月版 「XMLの改定仕様はブルーベリー」
 ・ 11月版 「W3C Dayが待ち遠しい」
 ・ 12月版 「慶應大学で次世代Webに触れる」
2002年
 ・ 1月版 「XML 1.1、XSLT 2.0のドラフトついに登場!」
 ・ 2月版 「Webサービスアクティビティが発足」
 ・ 3月版 「XMLが4歳の誕生日を迎えました」
 ・ 4月版 「XMLを作った人たちが殿堂入りの栄誉!」
 ・ 5月版 「P3Pが勧告、そして怒とうの文書公開」
 ・ 6月版 「XML文書の正規化新仕様と、W3Cインタロップツアー」
 ・ 7月版 「SOAP 1.2のドラフトが発表」
 ・ 8月版 「4つのXPointerのドラフト、WSDL 1.2も登場」
 ・ 9月版 「ロゼッタネットとUCCが合併、XMLマスターに上級資格」
 ・ 10月版 「具体的な技術論へ移るセマンティックWeb」
 ・ 11月版 「XML 1.1が勧告候補、特許問題はついに決着か」
 ・ 12月版 「DOM2関連がもうすぐ完結、Webアーキテクチャも登場」
2003年
 ・ 1月版 「この1年でW3C勧告になったのは7つの仕様」
 ・ 2月版 「Webサービスの『振り付けグループ』が発足」
 ・ 3月版 「旅行業界がXML化へ、MSからは『InfoPath』が登場」
 ・ 4月版 「混迷の続くXPointerはついに落着?」
 ・ 5月版 「Webサービスの実験成功。WS-Iからは互換性ツール」
 ・ 6月版 「あいまいな部分を排除したSOAP 1.2、PNGはISO標準へ」
 ・ 7月版 「MITのW3Cオフィスはもうすぐ引っ越し、国連がebXMLを承認」
 ・ 8月版 「Webサービスが日本のAmazonからも利用可能に」
 ・ 9月版 「IEの特許侵害判決でW3Cが緊急会合」
 ・ 10月版 「IEの特許侵害判決がWebに与える影響は?」
 ・ 11月版 「IE特許問題で、W3Cが米国特許庁へ再審査を請求」
 ・ 12月版 「OfficeのXMLスキーマ公開、XML 1.1は勧告間近」
2004年
 ・ 1月版 「セマンティックWebに向けた動きが活発に」
 ・ 2月版 「日本人による標準技術発信が進むOASIS」
 ・ 3月版 「ついにXML 1.1が勧告へ、影響を受けるのは?」
 ・ 4月版 「XML Schema、3年ぶりの改訂が迫る」
 ・ 5月版 「Webサービス・セキュリティ v1.0、待望のOASIS標準に」
 ・ 6月版 「TravelXMLのWebサービス実証実験デモが成功」
 ・ 8月版 「SOAPメッセージ最適化をめぐる仕様が活発化」
 ・ 10月版 「W3Cの設立10周年を祝う記念祝賀イベント開催」
 ・ 12月版 「年の瀬に、WebとW3Cの功績に思いを馳せる」
2005年
 ・ 2月版 「XMLマスター資格試験が6月にリニューアル」
 ・ 4月版 「WS-Security 2004の日本語訳をXMLコンソーシアムが公開」
 ・ 6月版 「“愛・地球博”でビュンビュンWebサービス」
 ・ 8月版 「XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)が勧告に昇格」
 ・ 10月版 「QAフレームワーク:仕様ガイドラインが勧告に昇格」

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